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No.21903の一覧
[0] 【習作】Metal Gear East ~Sage Eater~【東方×MGS】[ビアード](2010/11/06 17:59)
[1] 序章1[ビアード](2010/09/16 15:32)
[2] 序章2[ビアード](2010/09/16 15:31)
[3] Mission1[ビアード](2010/09/26 23:15)
[4] Mission2[ビアード](2010/11/06 17:59)
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[21903] 序章1
Name: ビアード◆84e2b218 ID:49b23b13 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/16 15:32

西暦1961年。
アメリカ合衆国において、60年代以内に月面着陸を成功させるという声明が、アメリカ大統領より発表された。
その背景には、第二次世界大戦後のアメリカとソ連による冷戦、宇宙開発競争があった。

その発表は、我々月の民の耳にも届いた。
そして、にわかに月の都は慌しくなった。
当然である。
元々月に住む私たちにとって、それは侵略以外の何物でもない。
地上人侵略から月の都を守るため、私達月の使者は非常線を張った。
そんな、ある日の事だった……。


私は、自室の椅子に座り仕事にふけっていた。
机の上に積まれた、おぞましい紙の束。
全く、報告書の整理っていうのも楽ではない。

「豊姫様っ!」

ものすごい声と共に、ものすごい勢いで部屋の扉が開かれた。
その扉から放たれたジェットストリームにより、机の上に積まれた紙の束が若干吹き飛んだのは言うまでもない。
そして、私がそれに少し苛立ったことも……。

「レイセン。入るときはノックを忘れないでって言ってるでしょ?」
「す、すみません……」
「それで、また弱音を吐きに来たのかしら?」

少しきつく言い過ぎたかなぁ、って今なら反省しないでもないけど……。
とにかく、このときの私は少し気が立っていた。

「私には無理です……だって、下手をしたら死ぬんですよね……?」
「死にたくなかったら、相手を殺すしかないわ」
「こ、殺す……っ!?そ、そんなこと出来ませんよっ!」

彼女……レイセンは、ひどく怯えていた。

「殺すか殺されるか。それが戦争よ」
「それは……わかっています。でも、ほかに道はいくらでも……っ!」
「言ってみなさい。戦争を回避する方法があるのならね」
「そ、それは……話し合いとか……」

怒りを通り越して、呆れてきた。
あまりにも呆れたので、持っていた資料を思わず机に投げ捨ててしまった。

「話の通じる相手ではないわ。そもそも相手は、私たちの存在自体知らないんだからね」
「それは、そうですけど……」

ようやく私も気が落ち着いてきた。
そこで、これ以上押し問答を続けても意味がないことを悟れた。

「貴方は月の使者担当の玉兎よ。月の使者は月の都を守るのが仕事。分かるわね?」
「はい……」
「今、月の都は危機に直面している。それを脱却するには、貴方の力が必要なの。それも、分かるわね?」
「……私には、出来ませんよ」
「貴方は元々、薬搗きの担当だった。でも、それが嫌で貴方は逃げ出し、月の使者の担当になった。それなのに、貴方はまた逃げようというの?」
「…………………………」

レイセンは今にも泣きそうなのを、ぐっと唇を噛んでこらえている。
彼女の心の中でいろいろな思いが葛藤しているのだろう。

「今日はもう休んでいいわ。一人になれば、考えもまとまるでしょう」
「……豊姫様。もし、私が死んだら……その……」
「やめなさい。自分が死んだらなんて、考えるものじゃないわ」
「…………………………」

彼女はしばらく黙り込んだ。
5分ぐらいしてからようやく口を開き、小さく「失礼しました」と言って部屋を出て行った。

それが彼女との最後の会話になってしまった。
少なくとも、私はずっとそう思っていた……。


「お姉さまっ!」

翌日。
報告書の整理をしていたら、再び扉からのジェットストリームによって書類が吹き飛んだ。

「依姫。入るときはノックを忘れないでって言ってるでしょ?」
「す、すみません……って、それどころじゃないんですよ!」
「一体何があったっていうの?レイセンが川にでも落ちたのかしら?」
「そのレイセンが、逃げ出したんです!」
「な、なんですって!?」

月の都において、私たちの目が届かない所なんてない。
しかし、都のどこにもレイセンの姿はなかった。
となると、考えられるのは……。

「お姉さま。調べた結果、月の羽衣が一つ無くなっているみたいです」
「そう。じゃぁ、やっぱりレイセンは地上へ逃げたのね……」
「これから、どうなさいますか?」

私は少し悩んだ。
レイセンが逃げ出したのは、自分がしっかりと彼女の事を理解してあげなかったからだ。
だから彼女は、私の元から逃げ出した。
私は飼い主として、最低限の事すらもしてあげられなかった……。

「迎えに行くわ。あの子寂しがりだから、今頃一人で泣いてるかもしれないしね」
「ですが、場所も分かりません……。そうしている間にも、地上人は……」
「分かってるわ。こんなことしてる場合じゃないって……」

その時、少しだけ涙が出そうになった。
それを依姫に悟られたくなかったから、息を呑んでそれを堪えた。

「……ペットが逃げたんだもの。飼い主として、それを探す義務がある……」

何を言おうとしても、涙が出そうになる。
必死にそれを堪えながら、搾り出すように言葉を綴る。

「お姉さま……」
「ごめん、依姫……。もう二度と言わないから、今だけは私のワガママを聞いて……」

結局、涙は堪え切れなかった。
大粒の涙が、頬を伝って床に滴っていく……。

妹にこんなみっともない姿、見られたくなかった。
頭の中が真っ白になった私は、それでもとにかく泣いているって思われたくない一心があった。
だから、精一杯の笑顔を見せた。
しかし、そのせいで逆に依姫へ気を使わせる結果になってしまった。

依姫は私の顔を見て、私が泣くのを我慢していたのを悟った。
だから、そのことについては何も言わないでくれた。
ただ一言、「お気をつけて」とだけ、小さく声を掛けてくれたのだった……。


地上へ向かう時、私は悩みあぐねていた。
このまま裏の地上へ降り、レイセンを探し出し、無理矢理連れ帰ったところでそれが彼女のためになるのか。
もちろん、レイセンを探し出せる保証も無いわけだが……。

悩みあぐねた私は、結局表の地上へ降り立っていた。
レイセンが言った、話し合い……。
そんな手段で、アメリカやソ連の月面探査計画を阻止できるとは思えなかった。
でも、もしそれで解決する事ができたなら、私は笑顔でレイセンを迎えにいけるだろう。
無駄でも良い、やってみなければ分からない……。
そう、自分に言い聞かせて、私は表の地表に立った。

……いや、それも全部言い訳に過ぎない。
結局、私は面と向かってレイセンに会うのが怖かった。
また、逃げられてしまうんじゃないかって……。
だから私は、表へと逃げた。
レイセンが絶対にやって来れない、表の世界へ……。


当時、アメリカでは有人宇宙飛行を完成させるため、まずは人間を地球周回軌道に到達させることを目的とした宇宙ロケットの開発をしていた。
その計画の名は、『マーキュリー計画』。
しかし、当時の宇宙線遮断技術は充分に発達しておらず、乗員の被曝は避けられなかったという。

私が地上に降りたとき、ある一つのロケットの打ち上げが行われていた。
だけど、そのロケットは宇宙線を浴び、更に着水時に大破してしまった。
私はその一部始終を見ていた。

今の地上の技術では、所詮こんなものしかつくれはしない。
でも、この調子で進めば間違いなく10年以内に地上人が月へ到達してしまうだろう。
私はやはり、不安を拭い去ることは出来なかった。

彼らの本気を私は見たのだ。
これを、話し合いで止めさせることなど、出来るはずもない……。


私は大破したロケットの残骸の中から、一人のクルーを助け出した。
そのクルーはほとんど虫の息で、放っておけば時期死に至ったであろう。
でも、私はその人物を月の技術で助けた。
もちろん、単純に良心からってわけじゃない。
地上人の考えを知る必要があったからだ。

月の技術により治療を施したとは言え、その人物は一度死に掛けていた。
そのため、半年間は昏睡状態にあった。

そして半年後、その人物は目を覚まし、初めて会話をする事が出来た。
その人物……女性だったけど、彼女は軍人で「特殊部隊の母」とまで称されていた人物のようだ。
彼女は命の恩人である私に、言われるがままに現在の地上の事を話してくれた。
彼女は私を警戒しなかった。
そして私もまた、彼女を不思議と警戒しなかった。
穢れきった地上に住む人間……そうであるにも関わらず、私は彼女の中に穢れを見出すことが出来なかったのだ。

彼女はアメリカとソ連の冷戦と宇宙開発競争、そして月面着陸への目的を話してくれた。
それを聞いて、私はひとまず安心した。
アメリカの月面着陸計画の目的は、ソ連との宇宙開発競争に勝つこと。
そして、ソ連もまたしかり。
そんな穢れた目的を持つ者たちが、裏の月へたどり着くことはマズありえない。

だけど、私は念には念を入れた。
後にアメリカが月面着陸を成功させた『アポロ計画』。
アポロとは、ギリシャ神話の太陽神アポロンにちなんで名づけられたもの。
この名前がきっかけで、アポロは裏の月へたどり着くことが出来なかった。
なぜならば、その計画の名は太陽神の名だからだ。
アポロ計画という名前自体は、当時のNASA長官が命名したものである。
でも実は、私が気付かれないように裏で手を回して、そう命名させた。
地上人が、裏の月へたどり着けぬように……。

ひとまず地上人侵略の脅威は去ったと言ってもいい。
もちろん、油断は許されないけれど……。
これで、胸を張ってレイセンを迎えにいける。

しかし、それでも私はまだ怖かった。
レイセンに会いに行くのが……。


その軍人の彼女……色々な呼び名があるそうだけど、私は彼女を「ザ・ボス」と呼んでいた。
彼女には不思議な魅力みたいなものがあった。
上手く言えないけれど、彼女の中に穢れを見出せなかったのも理由の一つだと思う。

私は彼女に興味を持った。
だから、もう少し彼女の事をそれとなく知りたかった。

本当の事を言えば、今の自分にある気の迷い。
それを、彼女なら正してくれると思ったからだ。

でも、ザ・ボスに関しては分からないことだらけだった。
特に、愛国心と言う奴が私には最後の最後まで理解できなかった……。


「私には、理解できない……どうしてそこまでして、貴方が国に従うのか……」
「そのほうが良い。国に忠を尽くすか、己に忠を尽くすか……それを決めるのは、自分自身だ」
「そして貴方は、国を選んだ……」

彼女は国のためなら死ねる覚悟だと言った。
確かに、私も月の使者のリーダーとして、その覚悟はよく分かる。
でも、彼女の国……アメリカは彼女を裏切っている。

マーキュリー計画で、彼女が非公式クルーとしてロケットに乗り込んだのは、前年彼女がとある作戦で失敗を起こした責任のためだった。
しかも、その作戦の失敗も、彼女に直接的な非があるわけではなかった。

それでも彼女は、国に従う姿勢を崩さない。

「なぜ、そこまでして貴方は国に従うの……?」
「我々に、絶対的な敵など存在しない。敵は常に変化する。我々の相手は、いつだって相対的な敵でしかないのだ」
「それなら、なお更なぜ国に……っ!」
「それが、戦士だからだ」

その言葉に、私は動揺した。
戦士だから……。

「見たところ、お前さんもそれなりの戦士のようだ。どこの軍人かは知らぬが……」
「…………………………」
「逃げられたのだろう?部下に」
「ど、どうしてそれを!?」
「顔に出ている」

何もかもが見透かされているような気分だった。
彼女は軍人としても、指導者としても偉大な人物だった。
私は、それを今更ながらに感じた。

「戦場で、己の弱い感情に支配されたら負けだ。相手に読まれるようなら、なお更な」
「でも……私は……っ!」
「戦場には常に、多くの感情が渦巻く。その中で、特殊な強い感情を抱いたものだけが強くなれる。しかし、弱い感情に支配されれば、その時お前は死ぬ」
「弱い……感情……」
「お前がいつまでもそんなようでは、部下は次々と逃げていくことだろう」
「……っ!」

頭の中が真っ白になってきた。
私が弱いから、レイセンは私の元から逃げてしまった……?
レイセンだけじゃない。
このままでは、私の元から皆逃げていくというの……?

「戦場で最大の敵は己だ。我々にも唯一絶対的な敵が存在するとすれば、それは己だけだ」
「己……」
「国に忠を尽くすことは、己と言う絶対的な敵を倒す数少ない手段といえる。迷えば死ぬ。ならば、何かを信じて戦うしかない」
「だから貴方は、国を信じて戦うの……?」
「……そうだ」

国を信じる……。
私で言えば、それは都を信じると言う事。
でも、私は都を信じることは出来ない。
なぜなら、都は私たちを敵視しているからだ。

「私……一体、何を信じれば……」
「その答えを見つけられるのは、おまえ自身だけだ。これ以上、私が言えることは何も無い」

答え……本当に、そんなものがあるのだろうか?

「自分の信じた道に忠を尽くせ。豊姫」
「……探してみる。私の信じられるものを……」
「早く見付かることを祈っている」

今の私は、まだあまりにも弱すぎる。
レイセンを連れ戻したところで、また逃げられるのがオチだ。
今の自分に、レイセンを迎えに行く資格など無い……。


西暦1964年 8月
私は月の都へも戻らず、あまつさえレイセンを迎えに行くことさえせず、ただ表の地表を彷徨っていた。
私には信じられるものが無かった。
少なくとも、命を懸けてまで守ろうと思うものなど一つも無い。
その資格さえも……。

そんなある日、ザ・ボスがソビエト連邦領に向かったという話を聞いた。
冷戦のさなか、アメリカの軍人である彼女がソ連を訪れるというのは、どう考えても穏やかな事ではない。
気になった私はソ連へ飛び、彼女を探した。

そして、私は彼女と再会した。
敵国であるソ連へと亡命した、ザ・ボスと……。


そこで、私は驚くべき事実を知った。
今、彼女が遂行すべき任務は、自国であるアメリカに抹殺されることなのだと。

私はそこでようやく理解する事が出来た。
彼女は自らが生き延びることを、最善に考えては居ない。
だからこそ、彼女の心に穢れが無かった。
むしろ、穢れていたのは自分の心の方だった……。

彼女は国に忠を尽くすことで、自らの生存本能を消し去った。
そして、穢れから開放された。
しかし、私には信じられるものが何も無かった。
だから、確実に存在している事が確かめられる、自分の命だけを考えていた。
結果的に、それは自らの心に穢れを生んでいた。

レイセンにしても、それは同じだった。
彼女は自らが生き延びることだけを考えていた。
だから、彼女は逃げ出したのだ。

今の私に出来ることは、月の都へ戻り、都へ忠を尽くすこと。
レイセンも、今となっては都に戻るつもりなんてないだろう。
ならば、無理に追う必要は無い。
そもそも、穢れを浄化することの出来なかった彼女に、月の都へ戻る資格も無い。

私は、私の信じた道に忠を尽くすだけだ。


ザ・ボスは、私に最初で最後のお願いをしてきた。
それは、ソ連が作り出した核搭載型戦車。
通称、「シャゴホッド」の設計図を処分することだった。

すでに試作機自体は、完成を迎えているものの、奴等の真の目的はこれを量産することにある。
それを阻止するためにも、この設計図を処分する必要があった。

しかし、ザ・ボスはソ連へ偽装亡命している身。
もし、シャゴホッドの設計図を処分したことがバレれば、今後の作戦にも支障が出る。
だから、第三者である私に処分を依頼した。

私はその依頼を快諾した。
そして、もう二度と会う事は無いであろう恩人に最後の別れを告げ、私は月の都へ帰った。


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