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No.22236の一覧
[0] 異聞・銀河英雄伝説 第一部・第二部完結、外伝更新[凡人001](2011/02/06 21:29)
[1] 第一部 第二話 策略[凡人001](2011/02/06 22:25)
[2] 第一部 第三話 アスターテ前編[凡人001](2011/02/07 08:04)
[3] 第一部 第四話 アスターテ後編 [凡人001](2011/02/07 20:49)
[4] 第一部 第五話 分岐点 [凡人001](2010/10/01 14:12)
[5] 第一部 第六話 出会いと決断 [凡人001](2010/10/01 14:14)
[6] 第一部 第七話 密約 [凡人001](2010/10/01 15:36)
[7] 第一部 第八話 昇進 [凡人001](2010/10/01 15:37)
[8] 第一部 第九話 愚行[凡人001](2010/10/22 10:58)
[9] 第一部 第十話 協定 [凡人001](2010/09/30 01:55)
[10] 第一部 第十一話 敗退への道 [凡人001](2010/09/29 14:55)
[11] 第一部 第十二話 大会戦前夜 [凡人001](2010/10/21 03:47)
[12] 第一部 第十三話 大会戦前編 [凡人001](2010/10/24 07:18)
[13] 第一部 第十四話 大会戦中編 [凡人001](2010/09/30 01:20)
[14] 第一部 第十五話 大会戦後編 [凡人001](2010/09/29 14:56)
[15] 第一部 第十六話 英雄の決断 [凡人001](2010/09/29 14:56)
[16] 第一部 最終話 ヤン大統領誕生[凡人001](2010/10/06 07:31)
[17] 第二部 第一話 野心[凡人001](2010/10/02 12:35)
[18] 第二部 第二話 軋み[凡人001](2010/10/02 13:56)
[19] 第二部 第三話 捕虜交換[凡人001](2010/10/01 20:03)
[20] 第二部 第四話 会談[凡人001](2010/10/02 12:34)
[21] 第二部 第五話 内乱勃発[凡人001](2010/10/03 17:02)
[22] 第二部 第六話 内乱前編[凡人001](2010/10/04 09:44)
[23] 第二部 第七話 内乱後編[凡人001](2010/10/08 17:29)
[24] 第二部 第八話 クーデター[凡人001](2010/10/05 13:09)
[25] 第二部 第九話 決戦前編[凡人001](2010/10/06 16:49)
[26] 第二部 第十話 決戦後編[凡人001](2010/10/06 16:45)
[27] 第二部 第十一話 生きる者と死ぬ者[凡人001](2010/10/07 19:16)
[28] 第二部 第十二話 決着[凡人001](2010/10/08 20:41)
[29] 第二部 最終話 新皇帝誕生[凡人001](2010/10/10 09:33)
[30] 外伝 バーラトの和約[凡人001](2010/10/22 11:02)
[31] 外伝 それぞれの日常[凡人001](2010/10/26 10:54)
[32] 外伝 アンネローゼの日記[凡人001](2010/10/23 19:12)
[33] 外伝 地球攻略作戦前夜[凡人001](2010/10/30 17:08)
[34] 外伝 ヤン大統領の現代戦争講義[凡人001](2011/02/03 12:56)
[35] 外伝 伝説から歴史へ[凡人001](2011/02/03 12:31)
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[22236] 第二部 第七話 内乱後編
Name: 凡人001◆98d9dec4 ID:4c166ec7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/08 17:29
『シャンタウ会戦とそれに前後する事件について

シャンタウ会戦は初めて双璧がぶつかった会戦である。だが、その前にこの開戦前にブラウンシュバイク公爵の甥であるリーム・フォン・シャイド男爵の死亡を伝えなければならない。これは新領地ヴェスターラントで発生したもので、主に食料の徴発が端を発していた。これが会戦終盤に大きな影響をローエングラム陣営に与えるのだが、まずは会戦事態について説明しよう。
この会戦の構図は攻めるローエングラム陣営、守るリップスシュッタト連合軍にあった。当時のリップシュッタト連合軍は、ローエングラム陣営の別動部隊であるキルヒアイス艦隊により、リッテンハイム公爵領土の大半を切り取られており、追い詰められていた。依然7個艦隊を有するとはいえ、ローエングラム陣営は10個艦隊を保有しており戦力比の上での劣勢は明らか。
さらに、中立を表明していたメルカッツ艦隊が皇帝の勅令により、ガルミッシュ要塞を進発したと聞き、危機感を募らされていた。そこで発生したのがシャンタウ会戦である。シャンタウ会戦は皇帝派のウォルフガング・ミッターマイヤーとリップシュタット連合軍のオスカー・フォン・ロイエンタールが衝突した稀有な戦いである。
会戦自体は両者一歩も譲らず、ロイエンタールが別同部隊を大回りさせ背後を突こうとすると、それに対応しバイエルラインを迎撃に、ミッターマイヤー本隊は敵ロイエンタール艦隊本隊足止めすべく10個の小集団に別れ、それを線で結び、ロエインタール艦隊防衛線突破を許そうとした。だが、それは叶わなかった。ロイエンタールはクナップシュッタイン、グリルパルツァーを巧みにスライドさせることでそれを回避して逆に横一文字に展開した艦隊へと出血を強要したのだ。
一方で別同部隊もバイエルライン分艦隊に阻止され、後背を突くというロイエンタールの計画は失敗に終わる。こうして戦線は膠着状態に陥る。結果、消耗戦を嫌った両者は撤退を開始。ミッターマイヤー艦隊のほうが先に撤退したのでこの戦いはロイエンタールの勝利として記録されることになる。もっとも、当時の日記などでは、当人たちは敗北したのは自分だと公言しておりシャンタウ会戦は事実上の引き分けに終ったと言ってよいだろう。兎にも角にも連戦連敗、副盟主とそれに連なるリッテンハイム公爵派貴族全員の死亡とで士気の低下が発生していたリップシュッタト連合軍はなんとかその士気と規律を維持することになる。』

著者ヤン・ラン 『帝国内戦編』より抜粋


『無能で無知蒙昧なる貴族たちよ、貴様らの副盟主ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム公爵は自らの悪行の所業の末に無残で敢え無き最期を遂げた。今降伏すれば寛大な皇帝陛下の名の下に、お前たちを辺境の収容所送りにするだけで済ませてやろう。それがいやならガイエスブルグ要塞と言う穴倉にモグラのように引っ込んでいるが良い。それがお前たちにはお似合いなのだからな。精々その足りない脳みそで十分に考えるが良い。銀河帝国軍宇宙艦隊司令長官ラインハルト・フォン・ローエングラム』

皇帝ラインハルト1世の挑発文より抜粋。


『皇帝の憂鬱

アンネローゼと話をしていて分かったことがある。それはかのものの祖母がかつてわしが初めて愛した、そして初めて宮廷というものの醜さを実感した女性だった。アンネローゼの祖母、アンネローゼ・フォン・リンデールといった。それはわしとの間にクラリベルという長女を授かった。だが、宮廷は侍女と皇族の恋愛など許しはしなかった。
アンネローゼは即座にノイエ・サンスーシを追われ、わしは一人になった。いや、この場合は自業自得というべきか。もしもあの時皇位継承権もなにもかも捨て去ってかのものを追いかければこんなことにはならなんだやも知れぬ。だが、わしにはその度胸も気概もなかった。そうしてわしは女は娼婦に、酒は高級酒に、そして国庫からの資金を湯水のごとくギャンブルに投資した。
わしの所業を最初は兄も弟も苦言したが聞かなかった。そんな事はどうでも良かった。わしは埋められない何かを追い求めて逃げた。そうしてわしはもう一人の孫と出会う。もちろん、そんな事は二人とも知らぬがな。
ああ、あるいはアンネローゼは薄々気が付いているやも知れぬ。だが、ローエングラム伯爵、いや、此度の叛乱を契機に爵位を一つ上げたからローエングラム侯爵か、は、知らずとも良い。実の祖父がわしなどと。それでは簒奪に影響が出よう。そしてこの国改革にも影響がでよう。ならば、わしの残り少ない人生はたった一つの目的のために活かす必要がある。
それは、生きること。あの若者がこの内戦に勝利し、凱旋し、クーデターを起すまで生き残ること。ただそれだけだ。わしの最後の希望、ラインハルト・フォン・ローエングラム、いやミューゼルよ、期待しておるぞ』 





第七話 内乱後編





side マールバッハ


シャンタウ恒星系をからくも死守したマールバッハ伯爵を待っていたのは盟主自らの歓迎であった。
それは派手な歓迎であり、マールバッハ伯爵にとっては不本意極まるものであった。

「ブラウンシュバイク公爵」

「おお、マールバッハ伯爵、よくぞ君臣の肝を排除してくださった」

「流石はマールバッハ伯爵家を継ぐ者。成り上がりの小僧どもとは違いますな」

「そのとおり、このランズベルク伯アルフレッド、感極まりましてございます」

ランズベルク伯爵が感極まったといった感じでマールバッハ伯爵を褒め称える。

「いえ、当然のまでのことを下までのこと」

だがマールバッハ伯爵は心の中ではまったく別のことを考えていた。

(だめだな、こいつらは。早く何とかしないと)

それを知らずに上機嫌に話を進めるブラウンシュバイク公爵。

「園遊会の準備が整っておる。どうじゃ、戦勝祝いに参加せぬか?」

(あれが戦勝か・・・・ふん、よほど頭の中がおめでたいと見える。まあ良いか)

世辞の一つも言えずして、本当の目的は達成できない。
そう判断したマールバッハ伯爵はそれを受け入れた。

「それはそれはこのマールバッハ感謝の極み。
ぜひ参加させてもらいたい、その後でティルピッツ、レーダー、デーニッツという将官らと話がしたいのですが」

ブラウンシュバイクは深く考えもせずに

「うむ、許可しよう」

とだけ言った。

そして宴会もたけなわな頃、一つの報告がもたらされた。
それはシャンタウを奪取したラインハルトの挑発文であり、妙な行動を取る疾風ウォルフの艦隊であった。

そして続いてレーザー水爆ミサイルの直撃である。

振動。食器が割れる。ところかしこから上がる悲鳴。
マールバッハにはそれが超長距離レーザー水爆ミサイルの直撃と分かった。
要塞射程外からの遠距離攻撃。
もっともこの程度で突破されるならイゼルローン要塞で共和国軍があれほどの苦労はしない。
イゼルローンのプロトタイプとして設計されたこの要塞は伊達ではない。

「な、なんだ。アンスバッハ、いったい何がおきておる!?」

アンスバッハは艦隊の整備でシュトライトと共にこの場にはいない
しかたなく苦言するマールバッハ伯爵。

「盟主、敵が要塞主砲射程ぎりぎりで攻撃してきております、如何いたしましょう?」

そこでブラウンシュバイクの悪い癖が出た。
ブラウンシュバイクはこれ以上こやつに、マールバッハ伯爵に人望が集まるのを嫌った。
そこで子飼いの二人に出撃命令を出す。

「ランズベルク伯爵、フレーゲル男爵」

「「ハッ」」

反応する二人の帝国貴族。

「それぞれ1個艦隊を与える、うるさいはえどもを追い払って来い」

それを聞いたマールバッハ伯爵は静かに頭を下げた。
その口元には笑みが浮かんでいた。
艦隊が敵を追い払い、凱旋してきた。
もちろんマールバッハは擬態だと気が付いていたが。

(ふん、俺にはゴールデンバウム王朝もお前たち大貴族どもの未来などどうでも良い)

母親の姿を思い出し、父親の言葉が木霊する。

(むしろ滅びてしまえ、そう思う)

(だが、滅びる前に利用させてもらうぞ、精々な)

そこへシャイド男爵死すの報告が入る。

「シャイドが!?」

「卑民どもめ、よくも我が甥を殺してくれたな!!」

ブラウンシュバイクは人目を気にせず怒鳴る。
まあ、それに賛同する貴族もいつもの事なのでマールバッハは止めなかった。
だが次の瞬間、彼をして耳を疑わせた。

「ヴェスターラントに核攻撃を加える!!」

「お待ち下さい、ヴェスターラントは閣下が皇帝陛下から直接いただいた御領地です」

シュトライト准将が止めに入る。
アンスバッハも同様だ。

「首謀者を処罰すれば良いだけではございませんか」

「それに核兵器を惑星上で使うのは、人類が絶滅しかけた13日間戦争以来の禁忌の筈」

アンスバッハは正論だ。
そしてマールバッハも何もしなかった無能者として歴史に悪名を残したくない。

「臣もそう考えます、どうかご再考を」

マールバッハも流石に慌てて止めに入るが、怒り心頭のブラウンシュバイクは聞こうとしない。
そして親ブラウンシュバイク公爵派の貴族はほとんどが賛成のようだ。

(この下種が!!!)

マールバッハは内心の怒りを抑えながらそれでも説得する。

「戦力を分断します、軍司令官として認められません」

だが、駄目だった。

「盟主はこの私だ!」

こうしてブラウンシュバイクは巡洋艦。駆逐艦を中心とした1000隻の分艦隊を進発させた。




side ラインハルト、キルヒアイス



そうした陽動攻撃を仕掛けている最中だった。
ミッターマイヤーから緊急の報告が入ったのは。

「何、ヴェスターラントへの核攻撃だと!?」

ラインハルトが驚く。

「はい、ロイエンタール大将から直接ミッターマイヤー大将へと連絡があったようです」

ロイエンタール、久しぶりに聞く名前だった。
自分と戦うため、あえて、貴族連合へと走った男。

「何故、ロイエンタールはそんな事を・・・・偽電ではないのか?」

ラインハルトは信じられないという感じでキルヒアイスに確認を取る。
キルヒアイスの代わりにヒルダが発言した。

「ローエングラム侯もロイエンタール提督の人となりはご存知のはずです、その様な策を弄するとは思えません」

キルヒアイスも続けて、

「フロイラインの言うとおりだと私も思います。それに事実であれば絶対に阻止せぬばなりません」

と、同意する。
心なしか普段よりも強い口調で。
いや、心なしではない。断固阻止しろとその目が言っていた。

「そうだな、キルヒアイスとヒルダの言うとおりだ。ミュラーに1個艦隊を率いて防衛戦にあたらせよう、それで良いか?」

キルヒアイスも同感だったのだろう、それに同意した。
そしてヒルダも。

「その通りでかまいませんわ、ローエングラム侯」

と、言って同意した。
即座に書類を作成するラインハルト。

「ヒルダ、すまないがこれをシュタインメッツに持っていってくれないか?」

手渡す。

「ヴェスターラントの件ですね?」

ヒルダも即座に悟った。

「そうだ、相変わらず聡明な女性だな、ヒルダは」

それを聞いてにっこりと笑うヒルダ。

(どうやらこれは、満更でもないらしい)

そうキルヒアイスは感じて。

「ところでラインハルト様」

キルヒアイスが話題を変える。

「そうか、本題があるのだったな」

そう、本題はヴェスターラントではなかった。

「はい、貴族連合軍2個艦隊が陽動に引っかかりました」

「では、せいぜい派手に負けてやるとしよう、貴族の盆暗どもにも分かるように、な」

ラインハルト指揮下のミッターマイヤー艦隊は4度にわたり敗北の擬態を続けた。
そしてそれを勝利と勘違いした貴族連合軍は盟主指揮下の下全戦力を挙げてミッターマイヤー艦隊追撃の準備を開始した。
しかし、キルヒアイスとラインハルトはこの時の決断を死ぬまで後悔することになる。





side ロイエンタール



「いよいよ時が着た」

ロイエンタールは3名の提督を集めてこう言った。

「老兵は死なずただ消え去るのみというが、な」

レーダーが過去の偉大な将軍の言葉を引き合いに出す

「何を言う、すばらしいではないかレーダー提督、これで戦争ができるぞ」

ティルピッツが戦争卿の異名をとる彼らしい発言をする。

「相変わらずだな、ティルピッツ」

デーニッツが抑えにかかる。

そうして密会は進む。

「では、次の会戦時が勝負どころだな。盟主自身から出撃するというし」

レーダーが確認する。

「できるだけ味方には生き残ってもらいたいものだ」

デーニッツが哀れむような言葉をつむぐ。

「ふふ、敗残兵の群れを率いる敗将の艦隊、胸がときめくなぁ」

ティルピッツが案外的外れな、そして正確な論評を下す。

「では、各自の健闘を祈る、幸いにして我々は後衛だ。撤退も容易だろう」

ロイエンタールは計画通り疎まれた。
それは彼の予想通りであったが、ヴェスターラント核攻撃は予想外であった。
そして思い起こされるは盟主との会話。

『マールバッハ伯爵には後衛を担当してもらう』

『前衛はライン侯爵、フレーゲル男爵、ランズベルク伯爵、中衛はわしみずから指揮を取る!!』

『決戦だ!!』

貴族たちの思惑は、ロイエンタールの計画のうちにあった。





side キルヒアイス



(この戦いが終わったら、次の戦いが待っている)

次の戦い、それは帝都オーディンでの軍事クーデター。
詳細はラインハルトとキルヒアイス以外も知っている。
というより、ゴールデンバウム王朝に見限りをつけた者、恨みを持つ者、ラインハルト個人を崇拝する者でローエングラム元帥府は構成されている。
それは偶然ではない。

(それが終わったらアンネローゼ様を解放できる)

キルヒアイスは思う。

(だが、いや、ラインハルト様ならご理解して頂ける筈だ)

キルヒアイスは密かな決意をしていた。
この戦いが終わったら、人生の中で一番の決意を。

それは出撃の前だった。
たまたま二人だけになったときの事。

『ジーク、一つだけお願いがあるの』

『なんでしょうか、アンネローゼ様?』

『私が自由になったら・・・・・・・・・・』

沈黙。

『アンネローゼ様?』

『私を貰って下さらないかしら』

『!!!』

間。

高鳴る鼓動。

そしてようやく捻り出せた言葉。

『私などでよろしいのですか?』

『ジーク、あなただからお願いしているの』

再び沈黙。

『私の答えは・・・・・・』

そこへラインハルトが戻ってきた。

『ひどいなぁ、姉上は』

『あら、ラインハルト。遅かったわね?』

『あんなところに隠すように置いてあるなんて酷いですよ』

それからしばしの雑談の後、時計を見やるアンネローゼ。

『それより、時間じゃないのかしら』

『ちっ、そうですね、元帥府に戻る時間だ。仕方ない、このワインは全員が凱旋した時に3人で飲むとしましょう』

『ラインハルト、ジーク、どうか無事でね』

ラインハルトが先に退出する。
キルヒアイスが席を片付け退出しようとしたまさにその瞬間、消えるような声でアンネローゼがキルヒアイスに語りかけた。

『そしてジーク、今言えなかった言葉を待っています。だから必ず生きて帰ってきてください』

と。

(死ねないな、絶対)

キルヒアイスは決意を新たにする。
生きて、例えどんな汚名を甘受してでも生き残ると。
そう確信して。





side ローエングラム陣営



偵察艇からの報告、『ガイエスブルグより敵7個艦隊進発する』、の報告が旗艦ブリュンヒルトに駆け巡った。

「ついに出てきたか」

ラインハルトが独語する。
ヒルダは専門外な事なので口を慎むようにしている。
アムリッツァの敗戦と犠牲の多さ(と、彼らは考えている)の一つに自分のでしゃばりがあったと感じているからだ。
それを知ってか、知らずかラインハルトは命令を下す。

「ミッターマイヤー、予定通りの行動をとれ」

ミッターマイヤーは少し考えた後、

「ハッ」

と言って命令を承諾した。

「諸卿らも同様だ。ミュラーがいない分戦力は少ないがキルヒアイス艦隊と合流した今、十分だろう」

「「「「「「御意」」」」」」

ラインハルトがマントをはためかせて諸提督を激励する。

「では行こうか、賊軍の立てこもるガイエスブルグ要塞へ」




戦闘が始まった。
いや、戦闘らしきものと言うべきか。

ミッターマイヤー艦隊への発砲。
だが、遠い。
当たらない。いや、もしもこれが共和国軍の新鋭艦艇ならば防御スクリーンを貫通していただろう。
だが、惜しいかな、そんな技術は帝国正規軍にも貴族連合軍には無かった。
もしも次に共和国と衝突する機会があるならば、次は見えない場所からのアウトレンジ攻撃を一方的に食らって沈むのが落ちだろう。
まあ、現在戦闘中の提督たちには関係の無い話であるが。

「ふん、遠いな。間合いも分からぬと見える」

ルッツがそれをみて独語する。

「首尾は?」

ワーレンが確認を入れる。
先年のように伏兵による奇襲攻撃を受けたらたまらない。
だから念には念を入れた索敵網を構築していた。

「ビッテンフェルト提督、敵艦隊、所定の位置まで艦列を伸ばしつつあります」

オイゲン参謀長の言葉に無言で頷くビッテンフェルト。

「ミッターマイヤー提督、ブリュンヒルトから連絡、反撃せよ、以上です」

ミッターマイヤーの顔に喜色の色がともる。

「そうか、待ちかねたぞ、総反撃だ!!」

そして閃光が走った!

「な、なんだ!」

「うぁぁぁ」

ライン侯爵が、その他の貴族連合軍が一気に瓦解する。
それはもっとも難しいとされていた敵前回頭の成功であり、疾風ウォルフに率いられた15000隻の艦隊の総反撃でもあった。
瞬時にして崩壊する前衛。
そして動き出す各艦隊。

「今だ砲撃を開始せよ」

メックリンガーが、

「この戦乱の元凶はブラウンシュバイクだ。生死は問わぬから必ず連れてこい」

ケスラーが、

「ブラウンシュバイクを捕らえたものには一兵卒でも提督にしてくださるとの元帥閣下のお言葉だ。諸君、機会を掴めよ」

ビッテンフェルトが、

「やはり、な。言った通りの結末だったろう?」

ファーレンハイトが、

「焦らずに慎重に敵兵力を削ぐのです。また、投降する艦を砲撃することは禁じます」

キルヒアイスが、

それぞれ思い思いの言葉で嗾ける。
将兵たちも、今こそ今までの大貴族への恨みを返せると感じたのか士気も高い。

そして、結果論であるがガイエスブルグ要塞に逃げ込んだ艦隊は約5個。
うち、4個艦隊はマールバッハ伯爵で戦場の途中で盟主を見限り帰港していた。




side ブラウンシュバイク


「マールバッハは、マールバッハはどこにいる!?」

「銀の鷹の間にいます」

シュトライトが被害艦艇の処理に謀殺されながらも、律儀に答える。

「叔父上!」

フレーゲルも怒り心頭といった感じでついて行く。
そう行って生き残った貴族たちは『銀の鷹の間』に行く。

そして見た玉座に座って頬杖をついているマールバッハの、いや、ロイエンタールの姿を。

「人は平等ではない・・・・・か、それがこの国の国是だな、いや、人は平等だ」

「こと死ぬ、ということに関しては人は平等なのだ」

「何を言っている!」

フレーゲルが叫ぶ。
この男は何を言っているのだ!?

「そうだ、何故わしらを置いて先に逃げ帰った!!」

ブラウンシュバイクがもっともな疑問を投げかける。

「知りたいか、低脳」

バシュ。

思わずフレーゲル男爵がブラスターを引き抜き放つ。
だがそれは強化ガラスの壁に阻まれた。

「ふん、やはりそれが答えか」

ロイエンタールの答えは泰然としていた。

「何故だ、あの精神的に未熟な金髪の小僧を見限って我々に付いたのではないのか!」

ブラウンシュバイクの言葉に露骨に嫌悪感をだすロイエンタール。

「ちがうな、貴様らがゴールデンバム王朝を食い物にしようと俺の知った事ではなかった。
だが、貴様ら如き下種が批判してよいお方に俺は背いたのではない」

そして咆哮する。それはロイエンタールの魂の叫びだった。

「俺が叛いたのは、あのお方と戦い充足感を得るという俺自身の野心の為だ!!!」

その叫びと共に4つのドアから装甲服とレーザーライフルで身を固めた兵士の大群がレーダー、ティルピッツ、デーニッツに指揮されは入ってきた。
それをみて形勢逆転だとばかりに笑う生き残りの貴族たち。

「よくきてくれたレーダー提督、あの裏切り者を処刑してくれ」

貴族の一人が彼にそう言って近付く。
レーダーは無言で頷き、そしてブラスターを引き抜き、放つ。

件の貴族の眉間へ。

それが合図だった。一斉に発砲するレーザーライフルの光。
光、光、光、光、光。
銃声が一斉に木霊する。
そして、静粛が訪れた。

「ふふふふ、まあ、裏切りは戦場の華ともいうべきですからな」

まだ生きている貴族に止めを刺しながら鼻歌を歌うティルピッツ。
ブラウンシュバイクは生きていた。
だが瀕死の重症だ。

そこへ強化ガラスが開けられ、ロイエンタールが降りてくる。

「く、くそ」

同じく瀕死のフレーゲルが発砲するが当たらない。
撃ち返すロイエンタール。
そしてフレーゲルは死んだ。

「帝国、万歳」

と言い残して。

「マールバッハ伯爵、なんだ、何が望みだ、わしを、わしを助けろ。わしは死にたくない」

「わしを助けてくれたら、孫のエリザベートをやろう、そうすれば次期皇帝は・・・・・・・・・」

最後まで言えなかった。容赦なく、額を打ち抜く。

「ふん、最後まで不愉快な男だったな。俺が最後に殺した貴族どもの中で唯一武器を持ってないとはな」

そこで胸騒ぎを駆けつけたアンスバッハが駆け込んできた。
10名ほどの部下にはアントン・フェルナー大佐、コウプトマン少佐も混じっている。

「閣下! マールバッハ、貴様!」

即座に撃つロイエンタール。
このときのロイエンタールには容赦というものが無かった。
利き腕と脚を打ち抜かれ、倒れ付すアンスバッハ。

「フェルナー大佐、アンスバッハ准将を手当てしてやれ、そして監禁しろ」

「よろしいのですか?」

フェルナーが恐る恐るといった口調で確認する。

「ああ、そこで裏切られ刃向かって殺されるのならば俺もそこまでの男だということだ」

そしてコウプトマン少佐が近付いてくる。
思わず銃を向ける兵士たち。
それを抑える3名の提督。

「気が晴れましたか?」

ロイエンタールはその言葉に無言で首を振る。
そして付け加えた。

「オーベルトに伝えろ、義理は果たしたとな」

そうしてロイエンタールはガイエスブルグ要塞の指揮権を完全に掌握した。
そこで数万人の脱走者を意図的に出し、コウプトマン少佐は脱出する。
ラインハルト・フォン・ローエングラムも知らない諜報網を使って共和国全土にこの内戦の詳細を伝えるために。

貴族連合4076名中、4070名が命を落としたこの戦いは誰もが収束に向かうと信じていた。
だがそれは、さらなる大決戦の前ぶれに過ぎなかった。


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