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No.2281の一覧
[0] 鬼畜召喚師ランス第四部[Shinji](2006/05/22 05:19)
[1] Re:鬼畜召喚師ランス1[Shinji](2006/05/24 07:40)
[2] Re:鬼畜召喚師ランス2[Shinji](2006/05/24 22:38)
[3] Re:鬼畜召喚師ランス3[Shinji](2006/05/26 05:06)
[4] Re:鬼畜召喚師ランス4[Shinji](2006/05/26 22:59)
[5] Re:鬼畜召喚師ランス5[Shinji](2006/05/29 06:12)
[6] Re:鬼畜召喚師ランス6[Shinji](2006/05/29 23:56)
[7] Re:鬼畜召喚師ランス7[Shinji](2006/05/31 09:37)
[8] Re:鬼畜召喚師ランス8[Shinji](2006/06/01 19:07)
[9] Re:鬼畜召喚師ランス9[Shinji](2006/06/02 15:47)
[10] Re:鬼畜召喚師ランス10[Shinji](2006/06/02 21:28)
[11] Re:鬼畜召喚師ランス11[Shinji](2006/06/05 02:54)
[12] Re:鬼畜召喚師ランス12[Shinji](2006/06/07 04:06)
[13] Re:鬼畜召喚師ランス13[Shinji](2006/06/08 22:19)
[14] Re:鬼畜召喚師ランス最終話[Shinji](2006/06/11 08:49)
[15] Re:あとがき(第四部)[Shinji](2006/06/11 08:31)
[16] Re:ランス一行の旅路[Shinji](2006/06/12 20:51)
[17] Re:エピローグPart1[Shinji](2006/06/16 16:45)
[18] Re:エピローグPart2[Shinji](2006/06/17 23:37)
[19] Re:エピローグPart3[Shinji](2006/06/23 13:43)
[20] Re:エピローグPart4[Shinji](2006/06/27 01:08)
[21] Re:エピローグPart5[Shinji](2006/06/29 00:16)
[22] Re:Last Part[Shinji](2006/06/30 19:26)
[23] Re:鬼畜召喚師ランス あとがき[Shinji](2006/07/01 03:56)
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[2281] Re:鬼畜召喚師ランス2
Name: Shinji 前を表示する / 次を表示する
Date: 2006/05/24 22:38
第2話:カテドラルカオス


「此処はカテドラルへ乗り込んだ者が集まって、できた街だ。
 誰も拒みはしないが、ゆっくりできる場所では無いぞ?」


そう街とダンジョンの間の門に居たガイア教徒に言われ、
ようやく"カテドラルカオス"に辿り着いたランス達。

この時点で、時刻は16時になろうとしていた。

例え遅くなって外が暗くなってしまおうと、
全体的にカテドラルは魔力が働いているのか常に明るいのだが。


「……着いたみてぇだな。」

『これでひとまず、安心のようですね。』

「ねぇ、どうするのぉ?」

「私は洪水が気になりますね、外を見てみる事にしませんか?」

「そうだな、そうしてみるか。」


……ガイア側の街、カテドラルカオス。

街広しと言えど、ガイア側の生き残りが殆ど此処に居る為か、
なかなかの賑わいを見せている様子だ。

場所はダンジョン内でも、街である事には変わりないので、
ランスは雷神剣を鞘に納め、辺りを見回しながら歩き出す。

まず外の様子を見る事にしたようで、一行は出口へと向かっていった。


……


…………


……東京に下された天罰。

それは"大洪水"となって東京全域を飲み込み、
新宿・渋谷・六本木・銀座・品川・池袋・上野・秋葉原等の栄えた街は、
全てが水の底深くに、沈んでしまった。

(崩壊後推定)何十万もの生命を一瞬で洗い流す力が、神にはあるのだ。

これで残っている場所といえば、皇居・西ノ島・スガモプリズン上層・都庁上層。

そして……"カテドラル"のみとなってしまっている。

その光景を外に出た直後に目のあたりにした一行は、思わず言葉を失ってしまった。

カテドラルカオスには、地震後30分以上経過して到着したので、
既に野次馬は殆ど居ないようであり、聞こえるのは波の音だけだった。


≪ザザ~ン……ザ、ザザザ~ン……≫
 

「……凄ぇな。」

「信じられませんね……」

「きっと……死んじゃったんだね、一杯……」


一瞬で洗い流された数十万の命。

ランスは昨日、他人がいくら死のうと"ど~でも良い"と思っていたが、
やはりこう現実に直面してみると、良い気はしない。

自分が気に入らない奴を殺す事は良いが、
勝手に殺されると(只の我侭だが)何となく腹が立つのだ。

正直なところ、女性が星の数ほど殺されたのも腹が立つ大きな理由。


『夢でも見ているようじゃのう~。』

『……(これが、神の……)』

『……私達の世界も、こうなってしまうのでしょうか?』

「馬鹿か、そんな事は断じて許さんッ。」

「では……戻りましょうか?」

「そうするか、時間が勿体無ぇ。」

「(やっぱり……早く"あっち"に戻りたいかもぉ。)」


……


…………


東京沈没を確認してから"カテドラルカオス"に戻ったランス達は、
幾つもの露店や、ガイア教徒の人混みを抜け、街を散策する。

そんな中、ターミナルの場所の特定から始まり、
ガイア神殿や武器防具の露店の場所も見つけることが出来た。

しかし"ターミナル"についてだが、東京が水没した事から、
他の場所への転送データが全て消えてしまい、
カテドラルから離れる事が出来なくなってしまったようだ。

かといって今の所、他の場所に行く予定は無いので、良しといったところか。


「……おぉ、お主ら! 無事来れたようだなッ!」

「良かった……心配していました。」

「へっ、アンタ達も運が良かったみてぇだな。」


ある程度"カテドラルカオス"の街で行きそうな場所を調べた後。

一行はスティーブンにより"転送"して貰った、
回復道場・邪教の館・六本木の酒場の場所を探し当てた。

最初は半信半疑であったが、スティーブンはしっかりと役目を果たしてくれたようだ。

各転送場所とも、カテドラルカオスの外れにあったのだが、
目立つ場所では人が多く、ガイア教徒で無い者が居ては肩身が狭いので、
彼らは転送場所には文句が無いようだった。


「よし……お主は終ったぞ。」

「おじさん、ありがと~。」

「今度はマリス殿だな。」

「すいません、お願いします。」


……今現在は、邪教の館の主と、酒場の店長と美女5名との挨拶を済ませ、
回復道場に戻って一息入れている最中だった。

巫女に癒しの魔法を掛けて貰っているランスに、
リアの治癒を済ませた道場主が、マリスの回復をしながら話し掛けて来る。

余談だが、回復には体に触れる必要があるが、
散々ランスに"変な気は持つな"と脅されているので、今は自然と行えている。


「ところで"カテドラル"の悪魔はどうだったのだ?」

「あぁ、なかなか歯応えがあるぜ?
 俺様は余裕だったが、おっさんなら一瞬で殺されちまうだろうな。」

「うぅむ……確かに、此処の悪魔は、私では骨が折れそうだ。」

「そうですか? 師範であれば、ある程度戦えそうな気もしますが……」

「ランス殿のように、頼りになる前衛が居れば良いかも知れんが、
 彼程の前衛はそう居るものではないしな……
 "デビルバスターだけ"で悪魔と戦うには、
 目的地で出現する悪魔をある程度捌ける"信用できる仲間"が、
 6人も必要だ……それだけの人数を揃える自体、とても難しいのだが、
 "デビルサマナー"は仲魔を使役するので、戦い勝手が歴然としている。」

「そう言われると、デビルバスターってのは、面倒なんだな。」

「うむ。 忠誠心を持った仲魔は、即席の仲間を遥かに凌ぐ働きを見せる。
 "デビルサマナー"がどのデビルバスターよりも優れるのは、その為なのだ。」

「ま、死にたく無ぇなら大人しくしてるこったな。」

「はい……これで治療は終りましたよ?」

「おっ、軽くなったぜ!!」

「リアも元気になったみたいっ。」

「……私もいけそうです。」

「良し、それならもうひと稼ぎするぜッ、まだ休むにゃ早ぇからな。」

「これが若さか……全く元気なものだ。」


会話の中、全員の回復が終ったようで、立ち上がるランス。

どうやら、これからまだ戦う気のようである。

ちなみに、仲魔達も道場内にしっかりとおり、
キクリヒメと香姫は前回と同じように、ちゃぶ台を挟んでお茶を飲んでいる。

また、カミーラは距離を置いて壁に背を預けて静かに立っていた。

メンバーの中で一番総合能力に優れるカミーラは、
回復を特に必要とせず、僅かにあった程度の疲労は、
静かにリラックスしているだけで癒えてしまっている様子だった。


『なんじゃ、もう少しゆっくりしたいのじゃがのう。』

『わかりました……お供致します。』

『……済んだのか?』

「今度からは、戻る場所が判っているので安全そうですね。」

「うむ、ちゃっちゃと仲魔ァ増やしに行くぜ~ッ。」

「はぁ~い。」

「こんな事しか言えぬが、気をつけてな。」

「また、お会いしましょう。」


……


…………


『ゴガァアアァァッ!!』

『……クッテヤルゾ!!』

「ランスさん! この悪魔は!?」

「(ピピピッ)"邪龍 サーペント"か、畜生また外れかよ!!」

「一杯居るよぉ~?」

『どうするのじゃッ?』

「カミーラ、"タルカジャ"を使え!
 香は"マカカジャ"で、お前らは攻撃魔法だッ!」

『わかったぞよっ。』

「うんッ!!」

『……タルカジャ。』

『マカ・カジャ!!』

≪ギュイイィィンッ!!≫


各々の力が大した事が無く、複数出現した悪魔への主な戦法。

それは主にリアの"マハジオンガ"と、キクリヒメの"マハブフーラ"で、
感電もしくは氷結状態にしてしまうのが定石となっている。

他にもパターンはあるが、相手が力だけで捻伏せるタイプ故だ。

全体攻撃魔法は確かに精神力を消耗するが、
街が近い場所での戦いであれば、そんな事を気にせずに戦う事が可能だ。


「(これで何度目かなぁ……)マハ・ジオンガぁ!!」

『手加減せぬぞッ? マハ・ブフーラ!!』

「よっしゃ行くぜ~、続けよッ!?」

「はいッ。」

『くくっ……』


……


…………


……戦いを再開して、約1時間弱が経過する。

殆どの悪魔を問題なく撃退でき、そこそこレベルアップも遂げたランス達。

しかし、ランスは戦いを重ねるに連れて、機嫌が悪くなっていた。

彼の目的は、悪魔を狩ってレベルを上げる事だけではないからだ。


「……出ねぇな。」

「出ませんね……」

「うが~ッ、これだけ戦って仲魔になりそうな悪魔が出ねぇなんて詐欺だぜ!」

「どうしてだろうねぇ……」


ランスの愚痴のように、運が悪いのかニュートラル悪魔は未だ出現していない。

先程の"サーペント"のように、出現した悪魔はダーク悪魔ばかり。

属性が違うLAW系統の悪魔さえ、出現していないのだ。

カテドラルに"強い悪魔"が多いにしても、
これでは"あっち"の強い仲魔を作る目的を成し遂げられない。


『すまんが、流石に疲れてきてしまったのじゃが……』

「リアも疲れちゃったぁ~。」

『私はまだいけますが、ランス様……』

「わかったわかった、面倒臭ぇ! 今日は引き上げるぞ~ッ。」

『…………』


強力な全体攻撃魔法を連発していたリアとキクリヒメは疲労したようで、
仕方なく街に戻る事にしたランス達。

そんな中、歩きながら会話をはじめるランスとマリス。

リアとキクリヒメはあまり喋る気力が無いらしく、
カミーラと香姫はそれぞれの性分から黙って歩いている。


「……ったく、カテドラルに着いたら直ぐに戻れると思ったんだがなぁ。」

「カテドラルは高い上層、深い下層に分かれていると聞きます。
 仲魔を見つけるには、街を離れる必要があるのでしょうか……?」

「頭が痛くなるような事を言うな~ッ!
 レベルが上がったら行けるだろうが、そんな方法じゃ何日も掛かっちまいそうだ。」

「しかし、これほど出現しないとなると……」

「言うなっ! ウロウロしてりゃあ、そのうち出るだろ。」

「だと良いのですが……」


ランスの考えるよう、"そのうち"ニュートラル悪魔は出てくる。

しかし確実に出るのは、"都庁"での戦いの決着がついてからだろう。

勿論、一行はそんな事は知らないので、これからの展開に不安を隠せないが――――


「……マリス、戻ったら情報を仕入れるぞ。」

「情報収集ですか?」

「うむ、カテドラルについては判らん事が多すぎるからな。
 なんだかこのままじゃ、何時まで経っても戻れねぇ気がするぜ。」

「その方が良さそうですね。」

「(着いたか)……良し、リアは先に戻って休んでろ、良いなァ?」

「うん、今日はそうするね~……」

「キクリヒメと香も中に戻れ、明日があるしな。」

『気遣い感謝するぞよ。』

『はい、わかりました。』

≪バシュウウゥゥッ……≫

「それと、カミーラは……そのまま着いて来い。」

『……良いだろう。』

「それではランスさん、リア様を……」

「ケッ、仕方無ぇな。」


……


…………


……30分後、時刻は19時頃。

リアを回復道場に送ってやったランスは、
マリスと護衛役のカミーラの三人で、街中を歩いていた。

強力な仲魔であるカミーラで少し威圧してやったり、
多少の賄賂を渡す事で、マリスが情報を効率良く仕入れてゆき、
彼女は段々と"カテドラル"の状況が理解できるに至っているようだ。

そんな中、数回目の情報収集が終ると、マリスがランスの所に戻ってくる。


「……ランスさん。」

「おう、どうだったんだ?」

「どうやら、カテドラルでの戦いは見当違いだったようですね。」

「何だとォ~?」

「新宿の西に"都庁"という、上層が二つに分かれている非常に高い建物があり、
 現在はカテドラルでなく、"都庁"で戦いが繰り広げられているそうです。」

「それじゃ、どう言う事だ?」

「"都庁"での戦いが一体何を意味するのかは、
 千年王国が絡んでいると言う程度しか判りませんが……
 知識のある悪魔は、皆"都庁"に行ってしまっているようですね。
 仲魔を探すのであれば、"都庁"に行くのが懸命かもしれません。」

「おう、それなら其処に行くっきゃねぇじゃねぇか。」

「ですが……私達には"行く手段"がありません。
 都庁があるのは新宿の西……非常に遠い上、陸地は水没しているので……」

「むっ、流石に泳いで行く訳にゃあいかねぇよな……」

「そうですね……飛べる悪魔は飛んで行け、泳げる悪魔は泳いで行け、
 ガイア教徒とメシア教徒はターミナル経由で戦力を送っているようですが、
 関係無い私達が行くには、"海というモノ"を渡ってゆくしか……」

「う~む、他に方法は無ぇのか?」

「……小耳に挟んだ程度なのですが、
 人を乗せ海を渡れる"魔物を売っていた者"がこの街の外れに居たようです。
 売れないので、もう商売を変えた様だと聞きましたが……」

「だが、そいつを締め上げりゃあ"都庁に行く手掛かり"が判るかもしれねぇな。
(一体どうやってそんな事まで聞けたんだか……これがこいつの凄ぇトコだな。)」

「そうですね。 ですが、できるだけ穏便に……」

「わかったわかった、案内しろ。」

「はい、確かこちらの方だと聞きました……」


ガイア教徒を締め上げ、ターミナルの場所データを聞いて転送しても、
転送先には多くのガイア教徒が駐屯しているので飛んで火に入る夏の虫。

かといって、ガイア教徒に入ってしまっては行動の自由が無くなるので、
目立たないように"都庁"に進入しなくてはいけない。

"都庁"行きを諦めるのであれば、戦いが終るまで待って、
レベルを上げるのも良いが、理想はレベル上げと仲魔探しを同時にする事なので、
時間をロスしてしまう結果になってしまう。

また、カテドラルの上層もしくは下層に行く事で、仲魔を探す方法もあるが、
各サイドとも、屈指の部隊が誰も通さんが如く各階を守っているので、
現在の戦力ではリスクが高すぎるのだ。

よって、僅かな可能性を期待し、三人は街の外れに歩いてゆくのだった。


……


…………


十分ほど経過して、三人は手掛かりの場所に辿り着いた。

その暗い雰囲気の路地は、怪しい感じの露店・店頭が並んでいる。

男を捕まえる売春婦、怪しいアイテムを販売するブローカーetc……

いわゆる、"ブラックマーケット"のように、いかにもカオスらしい雰囲気だ。

常人であれば、そそくさと立ち去るのが懸命だが、
ランスは全く動じる事無く、スタスタと路地にへと入っていった。


「……で、"例の奴"は何処にいんだ?」

「それはこれから、探さなくてはなりませんね。」

「よしマリス、今度も任せた。」

「はい。(骨が折れるものね……)」


……


…………


「…………」(すっ)

「あのお店ですね? 有難う御座います。」

「カネ。」

「……(ランスさん?)」

「……(しょうがねぇな、くれてやれ。)」

「(わかりました。)……どうぞ。」

≪ちゃりんっ≫


十数分に及んだ聞きこみ調査。

基本的にマリスが話し掛けるのだが、
後方でランスとカミーラが睨んでいるので案外答えてもらうのは楽だった。

だが無意味な情報で金を貰おうとするが更に睨まれ、手を引っ込める者ばかり。

……しかし、甲斐あって"例の店"を知っていた男には、
しっかりと500マッカ(約5万円)を握らせてマリスは彼の露店を後にした。


「いや~、なかなか良かったな、あの女。」

「マグロだったけど、二人同時であの値段は安かったよなぁ~。」

「ストレス発散にもなったしな。」

「へへへっ、全くだ。」


「……(ケッ、つまんねぇ事耳に入れさせやがって。)」

「ランスさん、どうしました?」

「いや、なんでもねぇ……で、何処だ?」

「はい、あちらです。」


……


…………


……男が指差した店に、一直線に向かう三人。

店と言っても、看板も何も無く、こんな場所に無ければ店と判らないだろう。

そんな謎の店は、背の低い若い男が開いており、
接客等を全て一人で行っているようで、ランスを"客"と認識してか、
こちらに近寄ってくると、愛想よくランスに話しかけた。

しかし、ランスは彼の呼び掛けマニュアルよりも先に本題に入ってしまう。


「(デビルサマナーかぁ、金持ってそうだなぁ……)
 ちょっと其処のお兄さん、良いスかぁ~?」

「……おいお前、俺様の質問に答えろ。」

「なっ、何ですかあ?」

「お前は以前、海を渡れそうな"魔物"を売ってると聞いたんだが?」

「えっ? あぁ、"亀"の事ッスか?」

「カメ?」

「あの商売はもう終りましたよ、今は別の商売をしてるんでさぁ。」


腰の低そうなこの男は、"カメ"を売っていた男で間違いないらしい。

そんな彼は、ランスを見てくれから"上客"と判断してか、
腰低く手を合わせ、商売人よろしくモミモミしながら言った。

アリストレスの部下にこんな奴が居たな……そう思いながらランスは応える。


「別の商売だと?」

「えぇ……最近"良い女"が入りましてねぇ、安くしておきますよぉ?」

「良い女? "カメ"ってぇのはもう無ぇのか?」

「カメは売れないんで、もう仲間と食っちまいましたよ、
 それよりサマナーさん、女が――――」

≪……ぐいっ!!≫

「てめぇ! 俺様が女に不自由してるような男に見えるってのかぁ、おォッ!?」

「(もしかして、そう見られていたのかしら? 私……)」

「ぎぇッ! そ、そんな意味で言ったんじゃないんですよぉ~っ!!」

「じゃあ"どんな意味"で言ったってんだァ!?」

「は、入った"女"はメシア教徒の幹部だった女なんですよ!!
 そいつを抱けばストレス発散にもなりますし、そういう意味で――――」

「ほほぉ~、メシア教徒の幹部……ねぇ。 」

≪……ぱっ≫

「ランスさん? まさか……」

「いや、そういう意味じゃ~ねえぞ? 拝んでみるのも良いだろ。」

『…………』

「(確かに、興味はありますが……)」

「そっ、それじゃあ早速準備をしますから……って、お客さんッ!?」


胸倉をランスに掴まれて苦しそうだった男だったが、
ランスが"女"に興味を持ったようなので、気を改めて彼を案内しようとする。

しかし、ランスは男の制止を無視して店の中に入った。

鍵は掛かっていなかったようで、こじんまりとした部屋に一つだけあるベット。

ここでの行為が終った後はそれなりに後片付けをしてから接客をしているのか、
それなりに整理されてはいるが、辛気臭さは除けないようだ。

そんな部屋の奥にもう一つドアがあったので、ランスは開け様と進む。


「汚ねぇ部屋だな、こんな所でセックスすんのかよ。」

「ち、ちょっと! 困りますよォ~ッ!」

≪……がちゃっ≫

「……ッ!?」


男はビビっているのか、中途半端な制止しかできない。

勿論それをランスは無視し、ズカズカと踏み込んでドアを開けた時。

彼の前に飛び込んできたのは、拘束されている全裸の女性だった。

……両手を鎖で繋がれ、両膝は地面に付き、Yの字になって拘束されている。

大きな傷は無いものの、決して丈夫そうな類に入るとは言えない体に、
幾数もの斬り傷痕や、ミミズ腫れのような痕がある。

メシア教徒と言う事から、激しいプレイをされた後は傷薬等で、
ズサンな治療しか行っていないのか、痛々しいものだった。

また"買われた"後は体をシャワーでザッと流されたのか、
まだ頭髪はやや水で滴っているようである。

このメシア教徒と思われる女性は、ランスが入って来たのに気付いていないのか、
判断力が低下しているのか、呼吸が聞こえるだけで何も反応を示さなかった。


「(酷いものね……二教徒の対立について聞いた話によれば、
 命があるだけでも"マシ"かもしれないけど……)」

「……この娘が例の女なのか?」

「え、えぇ……そうなんですよ。」

「(あら? でもこの人、何処かで……)」


メシア教徒は、ガイア教徒最大の敵。

その場で殺そうが、拘束して犯そうが、こちらではお咎め無し。

しかし、こう酷な拘束具合を発見されてしまうと、
ちょっとオドオドとしながら、ランスに応える小柄な男。

その会話も聞こえていないような"メシア教徒の女性"は、
虚ろな……焦点が合わない瞳でうわ言の様につぶやいた。

その"うわ言"がランス達の耳に入っていれば直ぐ、
何かこの状況に変化が起こったのかもしれない……が、
この時点では何も、まだ新しい展開は起きなかった。


「……千鶴子……さま……ラファエルッ、さ……ま……」


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