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No.22867の一覧
[0] Lyrical GENERATION(再リメイク検討中)[三振王](2012/11/05 21:33)
[1] Lyrical GENERATION 1st プロローグ「すべてが始まった日」[三振王](2010/11/02 22:18)
[2] 第一話「巡り会う運命」[三振王](2010/11/02 22:23)
[3] 第二話「交錯する閃光」[三振王](2010/11/06 20:30)
[4] 第三話「閉ざした過去」[三振王](2010/11/07 20:44)
[5] 第四話「僕が選んだ今」[三振王](2010/11/09 20:16)
[6] 第五話「僕達の行方」[三振王](2010/11/12 08:30)
[7] 最終話「君は僕に似ている。」[三振王](2011/01/20 09:47)
[8] エピローグ「私は笑顔でいます、元気です。」[三振王](2011/12/14 21:31)
[9] TIPS:とある局員のプライベートメール[三振王](2010/11/21 23:45)
[10] りりじぇね! その1「壊れあうから動けないリターンズ」[三振王](2010/12/17 23:35)
[11] りりじぇね! その2「アリサのメル友」[三振王](2010/12/31 15:53)
[12] りりじぇね! その3「ちょこっと!Vivid!  ~ヴィヴィオの家出~」[三振王](2011/01/03 22:26)
[13] Lyrical GENERATION STARGAZER プロローグ「霙空の星」[三振王](2011/01/20 20:32)
[14] 序章1「新しい生活」[三振王](2011/01/23 19:47)
[15] 序章2「再会する運命」[三振王](2011/01/24 20:32)
[16] 序章3「12月1日」[三振王](2011/01/26 22:21)
[17] 第一話「始まりは突然に」[三振王](2012/01/27 10:52)
[18] 第二話「新たなる生活」[三振王](2011/02/03 20:52)
[19] 第三話「青き清浄なる世界」[三振王](2011/02/05 21:35)
[20] 第四話「隠した心」[三振王](2011/02/08 20:09)
[21] 第五話「交わらない道」[三振王](2011/02/17 20:56)
[22] 第六話「蒼き嘆きの詩」[三振王](2011/02/14 19:52)
[23] 最終話「STARGAZER ~星の扉~」前編[三振王](2011/02/16 21:09)
[24] 最終話「STARGAZER ~星の扉~」後編[三振王](2011/02/17 21:03)
[25] エピローグ「大人になっても忘れない」[三振王](2012/01/27 10:53)
[26] TIPS:ある教授の日誌 +???[三振王](2011/02/20 09:07)
[27] 超級! 魔法武闘伝! プロローグ「交わる物語(ストーリー)」[三振王](2011/05/05 21:33)
[28] 第一話「姉妹」[三振王](2011/05/11 21:18)
[29] 第二話「ガンダムファイター(見習い)VS守護獣」[三振王](2011/05/16 21:59)
[30] 第三話「師匠、海鳴でテロリスト退治をするの巻」[三振王](2011/05/22 21:58)
[31] 第四話「迷子の魔法使い」[三振王](2011/05/27 23:05)
[32] 第五話「接触」[三振王](2011/06/19 22:57)
[33] 第六話「運命の連鎖」[三振王](2011/07/06 22:14)
[34] 第七話「闇を統べる者」[三振王](2011/07/12 22:29)
[35] 最終話「Silent Bible」[三振王](2011/07/15 16:34)
[36] エピローグ「安息」[三振王](2011/07/15 16:36)
[37] Lyrical GENERATION SEED+プロローグ[三振王](2011/12/14 21:30)
[38] 第一話「出発」[三振王](2011/12/29 22:25)
[39] 第二話「3人目の少年」[三振王](2012/01/16 00:17)
[40] 第三話「原罪の創造主」[三振王](2012/01/28 08:08)
[41] 第四話「雷雨の中で」[三振王](2012/02/20 17:32)
[42] 第五話「戦いの前夜」[三振王](2012/05/16 10:06)
[43] 第六話「オペレーション・スピットブレイク」[三振王](2012/05/19 09:10)
[44] 第七話「抱える想い」[三振王](2012/07/11 20:46)
[45] 第八話「使命」[三振王](2012/08/07 17:39)
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[22867] 最終話「STARGAZER ~星の扉~」前編
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:664d5fcd 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/16 21:09
闇の書が完成したころ、なのはとフェイトはリーゼ姉妹によって展開されたクリスタルゲージの中に閉じ込められていた。
「くのー! 全然出れないー!」
「こうしている間にもはやてが……!」

「フェイト! なのは!」
するとそこに救援に駆け付けたアルフとユーノがやってきた。
「ユーノ君! アルフさん!」
「待ってて! 今助ける!」
そう言ってユーノはクリスタルゲージを粉砕し、なのはとフェイトを自由の身にする。
「よし! 出れた!」
「早くはやてを助けに行かないと!」
「うん! 急ごう!」


一方その頃、闇の書を完成させたグレアムは、後方でシンとスウェンと戦っているリーゼ姉妹に指示を出していた。
「二人とも急げ! 奴を完全に暴走させるんだ! デュランダルはもう完成している!」
「「はい!!」」
「あ! 待ちやがれ!!」
シンの制止も聞かず、リーゼ姉妹はそのまま闇の書に突撃していった。
「積年の恨み!」
「今日こそ晴らさせてもらう!」
「……」
それに対し闇の書は、彼女達に向かって自分の手を翳した。
「星よ集え……すべてを導く光となれ」
「!! まずい! 避けろ!」
「……」
「アニキ! しっかりしてください!」
変わり果てたはやてを見て呆然とするスウェンを、シンは手を引っ張って安全なところまで移動させる。
「「はああああ!!!」」
「スターライトブレイカー」
目と鼻の先まで接近してきたリーゼ姉妹を、闇の書はスターライトブレイカーで吹き飛ばしてしまった。
「「ああああああああ!!!!?」」
「あ、アリア! ロッテ!」
自分の使い魔達があっさりやられ動揺するグレアム、そんな彼のもとに闇の書はつかつかと歩いて近づいてきた。
「くっ……ぐぉ!!?」
グレアムは何とか反撃しようとするが、片手で首をつかまれそのまま持ち上げられてしまった。
「貴様……よくも主を傷つけてくれたな、死をもって償え」
「あっ……! がっ……!」
闇の書は殺すつもりでグレアムの首をつかむ手の力を強めた。
「やめろおおおお!!!」
その時、管理局本部から転送されてきたクロノがスティンガーレイを放ち、グレアムから手を放させた。
「貴様……邪魔をするな」
「彼は管理局が裁く! 君に手を下させたりはしない!」
するとそこに、クリスタルゲージから脱出したなのは、フェイト、そしてユーノとアルフもやってきた。
「クロノくん! はやくその人を安全なところへ!」
「後は私達に任せて!」
「解った……頼んだ」
クロノはそう言ってグレアムと地面に落下していったリーゼ姉妹を連れて管理局へ転移していった。
「我は闇の書、我が力のすべては……」
闇の書のただならぬ雰囲気に、なのは達は飲まれそうになっていた。
「みんな気をつけて! 彼女は強い!」
「そうだね……でも私達も負けないよ!」



その頃、スターライトブレイカーの砲撃から逃れたシンは、先ほどから目に生気が宿っていないスウェンを叱咤していた。
「おいどうしたんだよ!!? しっかりしろよ!」
「俺は……守れなかった……みんな……」
スウェンはシグナム達が消えてしまい、はやてが変わり果てた姿になってショックを受けていた。
「ああもうめんどくさいな! まだ助けられるかも知れないだろ! あきらめんなよ!」
「無理だ……どうやって助けられるというんだ? 保証も無いのに無責任なことを言うな」
「こ……! この!」
頭に来たシンはそのままスウェンの顔を拳でぶん殴った。
「ぐっ……!?」
「おおう、青春ッス」
「ふざけんなよ……保証なんて無くったって、俺は可能性があればそれがどんだけ小さくても賭けてやる! もうあんな悲しい思いはたくさんなんだよ!!」
「一度機能停止になるまでぶちのめせば可能性は出てくるかもしれないッス」
「そのためには戦力が一人でも多いほうがいいでしょうね」
デスティニーとノワールの説明を聞いて、若干瞳に生気が戻るスウェン。
「……わかった、見苦しいところを見せた」
「別にいいよ、俺だって泣いているところ結構いろんな人に見られたことあるし……」
「ふっ、そうか」
(お! アニキが笑ったところ初めてみた!)
そしてシンとスウェンは戦列に加わるため、隠れてい場所から勢いよく飛び出した。

一方なのは達は、闇の書が召喚したこれまでヴォルケンリッターが集めたリンカーコアの主である怪獣達と戦っていた。
[アクセルシューター]
[プラズマランサー]
追尾弾と直進弾をトカゲのような怪物に放つなのはとフェイト、その間ユーノとアルフは闇の書にバインドを試みる……が、
「無駄だ」
簡単に引きちぎられてしまった。
「くそう、生け捕りは無理かい!」
「せめて周りの怪獣達をなんとかしないと……!」
その時、地面から突如触手をもった怪獣が現れ、他の怪獣を倒して油断していたなのはとフェイトを触手で絡め捕った。
「きゃあ!!!」
「ううっ!!?」
「フェイト! なのは!!」
それを見て慌てて助けに行こうとするアルフ、しかしよそ見をしていたせいで闇の書の蹴りを横っぱらに受けてビルに激突してしまう。
「わあああああ!!!」
「アルフ! くっ……このままじゃ!」
闇の書の息もつかせない攻撃に思うように行動できないユーノ、そうしている間にもなのはとフェイトは触手によって少しずつ締めあげられていった。
「あっ……ぐっ……!」
「し、シン……!」
二人は意識が遠のいていくのを感じていた、だがその時……上空から雨のようにビームの弾が降り注ぎ、彼女達を触手から解放した。
「フェイト!」
「ふっ!」
力なく落下していく彼女達を、駆け付けたシンとスウェンが抱きとめる。
「し、シン……来てくれたんだ……」
「ごめん! 遅くなった!」

「うにゃ!? あなたはヴィータちゃん達の!!?」
「事情は後で説明する、俺も一緒に戦わせてくれ」

「お前は……」
闇の書はなのはを抱くスウェンの姿を発見すると、悲しそうな顔で胸に手を当てる。
「お前が滅ぶのは主も騎士達も望まない……だから退いてくれ」
「断る、俺ははやてと約束したんだ、みんなと帰ると」
「デスティニー! あれを使うぞ!」
「はい!」
そう言ってシンは翠色のクリスタルをポケットから取り出し、目の前に展開した魔法陣にそれを投げ入れる。
「「クリエイション(創成起動)!」」
そしてクリスタルは周りの物質を取り込んでいき、白と翠のカラーリングの巨大な二頭身のゴーレムに変化していった、シンの新しい魔法、ゴーレムクリエイトである。
「おおお!? すごいシン君!」
「これがヴィアさんが作った新しい魔法……」
なのはとフェイトはシンの新しい魔法を見て驚きの声をあげる。
「主、この子は砲撃が主体なのでブラストと呼びましょう」
「わかった! ブラスト! 周りの怪獣達をぶっとばせ!」
シンの指示を受けブラストは腰辺りに巨大な魔法陣を展開し、そこから二本のビームを放った。
「ギャオオオオオン!!!」
「ウオオオオオオン!!!」
そのビーム砲は地面にいたすべての怪獣を跡形もなく吹き飛ばしてしまった。
「す、すさまじいね……」
「あれがシンの新しい魔法かい」
そんな風に皆がシンの新しい魔法に気を取られている中、スウェンは闇の書から巨大な魔力を感知する。
「おいお前ら! 来るぞ」
「星よ集え、すべてを導く光となれ……」
「まずい! さっきより大きなのがくるぞ!」
「はやく距離をとるんだ!」
シン達はスターライトブレイカーの直撃を避けるため、ブラストをクリスタルに戻し散開して闇の書から距離をとることにした。

「ここまでくれば……」
同じ方向に逃げてきたシンとスウェン、その時シンにアースラにいるエイミィから通信が入ってきた。
(シン君大変だよ! 結界の中に取り残された子達がいるみたい!)
「なんだって!!? 早く助けに行かないと!」
「俺も手伝おう、人手は多いほうがいいんじゃないか?」
「ありがとう! フェイト達も向かっているみたいだから早く行こう!」


そのころ、病院から帰る途中だったすずか、ルイス、留美は街の中から人が消えて呆然としていた。
「なんだろう、アレ……」
「急に人がいなくなっちゃったよ!」
「携帯も通じませんわ、日本ではこういうことしょっちゅうですの?」
「う、うーん……違うと思う……」
すずかは空に浮かぶ桜色の光に不安を感じていた。そこにあたりの様子を見に行っていたアリサと紅龍が戻ってくる。
「やっぱり誰も居ないよ…辺りは暗くなるし、なんか光っているし……一体何が起きているの!?」
「こっちにも人はいなかった、この現象は一体……」
その時、桜色の光から一筋の巨大な光線が大地に向けて放たれ、その衝撃波がアリサ達に襲い掛かる。
「!!?」
「こ、こっちにくるよ!」
「留美!」
思わずお互いを守るように抱きしめあうアリサとすずか。ルイスと留美を庇う様に抱きしめる紅龍。
だが、衝撃波が5人に直撃することはなかった。
「え?」
「一体何が…?」
恐る恐る目を開ける5人、そこにはなのはが、フェイトが、シンが、そしてスウェンが衝撃波から光の壁を展開して自分達を守っているのだ。
「なのは……? フェイト……!?」
「シン君!? それにスウェンさん!?」
「お二人とも、何ですかその格好? コスプレ?」
「確かこの子シン君ってこだよね? アリサの友達の……」
背中から羽根を生やしたり、見たことも無い格好や物騒な武器を持っている彼等に、5人とも頭が混乱していた。
そして衝撃波が収まり、二人は改めていつもと様子の違う彼等を見る。
「アンタ達……その格好は何!?」
「フェイト、水着なんて着て寒くないの?」
「ゴ、ゴメン! 訳はちゃんと後で話す!」
「だからちょっと待っててね!」
シンとなのはが両手を合わせて謝罪のポーズをとる。すると二人の足元が光り、何処かに転送されていった。


「バレちゃったな。」
「そうだね……」
「これ……やっぱり水着に見えるかな?」
悲しそうなシンの言葉に頷くなのは、そして先ほどのルイスの言葉を気にするフェイト。
そんな彼女達の前に闇の書が降り立つ。
「もうやめてくれ……無関係の奴まで巻き込むな!」
スウェンは必死に闇の書に訴えかける。
「我が主はこの世界が、愛する者達を奪った世界が、愛しき者が奪った世界が、悪い夢であって欲しいと願った、我はそれを叶えるのみ。主には穏やかな夢のうちで永久の眠りを……」
「なぁにがはやての願いだ! はやてがこんなこと望むはずがないだろ!!」
「そうだよ! はやては悲しむよ! だからもうやめて!」
シンとフェイトは闇の書がプレシアと重なって見えていた。
「あなたは……それでいいの!?」
「あなたは主の願いを叶えるだけの道具なんかじゃない!!」
「だから武装を解除して、はやてを開放しろ!!」
なのは、フェイト、シンの訴えに、闇の書は目に涙をためて答える。
「我は魔道書……ただの道具だ」
その言葉に、スウェンの堪忍袋の緒が切れる。
「ふざけるなああああああ!!!」
「「「「!!!!?」」」」
スウェンの突然の叫びに、その場にいた全員が驚く。
「お前は戦うだけの……壊すだけの存在なんかじゃない! 兵器がシン達の言葉を聞いて涙を流すものか!!!」
闇の書は慌てて涙を拭った。
「これは主の涙だ……私には悲しみなど……」
「そんな悲しい顔で……! 悲しみなんかないなんて誰が信じるか!!」
その時、結界内に地響きが立ち、地面が割れ、至る所に火柱が立った。
「うわ!? なんだなんだ!?」
シンは火柱に巻き込まれそうになったが、服が焦げる程度ですんだ
「崩壊が始まっています、あの子の暴走が本格化してきたようです」
「早いな……もう崩壊が始まったか、私もじき意識をなくす、そうなればすぐに暴走が始まる。意識のある内に主の望みを叶えたい」
「そんな……! どうしたら!」
その時、スウェンは勢いよく闇の書に向かっていく。
「いいかげんにしろ! 力ずくでも俺が止めてやる!!」
スウェンはフラガラッハを振り下ろすが、防御魔法で簡単に防がれてしまう。
「二人とも……主と騎士達に本当によくしてくれた、だから……」
「……!? ヤバイ! アニキ離れて!」
ノワールは危険を察知したがすでに遅く、スウェンの体は光の粒子になって徐々に消えていった。
「な………!?」
「スウェン!!」
「すべては……安らかな眠りのうちに……」
そしてスウェンとノワールは完全に消えてしまった。
「お前! なにしたんだ!」
シンは訳も判らず闇の書に怒鳴り散らす。
「彼等は私の中で覚めることの無い眠りの中にある。そのほうが……心置きなくこの世界を破壊できる」
「この……駄々っ子!」
「話は終わりだ、デアボリック……」
その時オレンジ色の光弾が飛来して闇の書に直撃し、詠唱を止める。
「よ~し! ストライク!」
「ゴメン! 遅くなった!」
光弾が放たれた先には合流してきたアルフとユーノがいた。
「ユーノ君! アルフさん!」
「たく……遅れた分キリキリ働けよ!」
「何人こようとも……」
闇の書は集まったなのは達五人を見る。
「いっくよーみんな! あのワガママ娘を止めるよ!」
「「「「おー!!!!」」」」
なのはの号令に他の四人も答える。そしてなのは達と闇の書の激闘の火蓋が切って落とされた。










スウェン……スウェン……。


誰だ……俺を呼ぶのは?


起きなさい……スウェン……。


この……懐かしい声は……。


「スウェン、もう朝よー、起きなさーい」
スウェンは気が付くと、どこかの部屋のベッドで寝ていた。
「あれ? ここは……?」
身を起こし、辺りを見回すと、彼は信じられないものを目にする。
「マ……マ……!?」
数年前、自分を庇って命を落としたはずの母親が、何事も無かったかのように自分に微笑み掛けていたのだ。
「ママ……なの?」
「何を言っているの? 早く顔を洗って朝ごはんを食べましょう」
そういうと、スウェンの母はスウェンの部屋から出て行った。
「ここは……」
スウェンは改めて辺りを見回す、そこは自分があの爆発事件に巻き込まれる前の、幼き日を過ごした家そのものだった。そして自分の体を見る、体は先程よりも縮んでいた、つまりスウェンは父と母が生きていた頃にもどってきたのだ。
「これって一体……?」
リビングに行くと、父親が新聞を読みながら朝食をとっていた。
「おはようスウェン、どうした? 狸に化かされたような顔をして?」
「……なんでもないよ、パパ」
何事も無かったかのように、スウェンは朝食が並べられたテーブルに座る。
「もう、スウェンったら……また遅くまで星の映像を見ていたのね、どうやら寝ぼけているようね」
「全く……スウェンは本当に星が好きだな、そういえばこの前プレゼントした望遠鏡はどうだ?」
「うん! とってもよく星が見えたよ! ありがとうパパ!」
「ふふふ……よかったわね、もうすぐ学校へ行く時間よ、早く支度をしなさい」
「わかったよママ」
朝食を食べ終えた後、スウェンは洗面台で顔を洗う。ふと、鏡に映る自分の顔を見る。
「もしかして……これは夢?」
スウェンは鏡に映る四歳若返っている自分の顔を見て戸惑う。
「スウェーン! 時間よー!」
母に呼ばれたスウェンは、慌てて着ていた学校の制服を直し、カバンを手に取った。
「行ってきまーす!」
「いってらっしゃいスウェン」
「車には気をつけるんだぞー?」
父と母に見送られ、スウェンは学校へ向かった。


学校の通学路、そこでスウェンは二人のクラスメートと合流した。
「おはよースウェン、今日も元気かー?」
「シャムス、ミューディー……おはよう」
「あら? どうしたのその本?」
ミューディーと呼ばれた少女はスウェンが抱えている本について聞いてくる。
「ああこれ? 図書室で借りてきた星座の本、今日返さなきゃいけないんだ」
「まったく、おめえはホント星が好きだよなー」
「でもそこがおしゃれでカッコいいわよねー」
「スウェン、今度俺も天体観測に連れて行ってくれ」
ミューディーのセリフを聞いて意見を180度変えたシャムス。
(シャムス……下心見え見えだよ……)
(うっせ! 女子にモテモテなお前に俺の気持ちが解るかよ!)
スウェンはそんなシャムスの三枚目な行動に苦笑いしていた……。

そしてスウェンは学校へ行き、授業を受け、昼休みは友達のシャムスとミューディーと楽しくおしゃべり、放課後は図書室で星の勉強と、他の子供達と変わらない一日を送って行った。

帰宅後、スウェンは今日学校であったことを夕食の食卓で両親に話していた。
「でね、あの後ダナとエミリオがアグニスに突っかかってきて…大変だったよ」
楽しそうに話すスウェンを、父と母は微笑ましく見ていた。
「ハハハ、スウェンのクラスには面白い子が沢山いるんだな」
「そういえばお隣のルーシェちゃんも同じ学校だったわね。見たことある?」
「校庭に迷い込んだ犬と戯れていたよ、動物好きだよね、あの子。」
和やかに続いていく時間、ふと、スウェンはテーブルから立ち、外出の準備をする。
「じゃあいってくるね、父さん、母さん」
「そうか……今日はこと座流星群がやってくる日だったな。」
「気をつけるのよ?夜道は危ないから……」
「うん、わかった」


スウェンは父が誕生日に買ってくれた望遠鏡を持って、いつも星を見る丘にやってきた。
「うわぁ……」
空を見上げると、銀河に浮かぶ幾億の星が宝石のように辺りを照らしていた。
「こんなに星が……すごい……でも……」
先程までの嬉しそうな顔とは打って変わって、とたんに悲しそうな顔になる。
「これは……夢なんだよね」
そこに、スウェンの両親がすまなさそうな、許しを請いたいといった表情でやってきた。
「パパ……ママ……」
「スウェン……ごめんなさい、今まであなたに辛い思いをさせて……」
「ここなら私達がいる、友達もいる、望遠鏡も、星がよく見える場所も、暖かい家もある。夢だっていいじゃないか、だから行かないでくれ……」

「「スウェンが欲しかった幸せ、みんなあげる」」

「僕が望んだ幸せ……」





とてもとても深い闇の中にはやてはいた。
とても眠たく、いつ瞳を閉じてもおかしくなかった。
「そのままお眠りを我が主、貴方の望みは全て私が叶えます」
目の前にいる灰髪の女性……闇の書が語りかける。
(私は何を望んでいたんやったっけ……?)
「夢を見ること、悲しい現実はすべて夢となる、安らかな眠りを……」
「私の……本当の望みは……」





一方なのは達は、戦う場所を海上に移したなのは達は引き続き闇の書との戦闘を続けていた。
「おらぁ!!」
「たぁー!!」
「甘い……」
バルディッシュとアロンダイトの攻撃を同時に防ぐ闇の書。
「穿て、ブラッディダガー」
シンとフェイトは距離をとって襲い掛かる爆発を避ける。
「「バインド!!」」
その時、ユーノとアルフが放った鎖型のバインドが、闇の書の足に絡みつく。
「今だ! なのは!!」
「うん! スターライト……ブレイカー!!」
桜色の閃光が闇の書を包み、爆発が巻き起こる。
「やった!?」
だがその時、爆煙の中から複数のビーム弾が放たれ、なのは達に襲い掛かる。
「きゃあ!?」
いきなりの反撃に避けるのが精一杯の一同。
その時、ビームの一つがフェイトに直撃する。
「あ……」
防御力のないソニックフォームだったフェイトはダメージをモロに受け気絶し、海に落下していった。
「フェイトー!!!」
アルフの悲痛な叫びが木霊する。そして追い討ちを掛けるように、闇の書はフェイトに向けて手をかざす。」
「ディバインバスター」
光線が無防備なフェイトに襲い掛かる。
「こなくそー!!」
シンは全速力でフェイトの下へ飛び、寸でのところで彼女を抱きかかえ救出する。
「大丈夫か! フェイト!」
息を切らしながらもフェイトの無事を確認するシン。
「ご……ごめんねシン、いつも迷惑をかけて……」
「いいんだよ、ちゃんと守るっていったろ?」
「う……うん」
その光景を見ていた闇の書は、シンに問いかけた。
「貴様……なぜそうまでして戦う? この世界はお前とは関係ないのだろう?」
負傷したフェイトをアルフに預けて、シンは改めて闇の書を見る。
「確かに俺は望んでこの世界に来たわけじゃない、でもこの世界には友達が沢山いるんだ! お前なんかに……!!!」
シンの頭の中にこれまで出会った大切な人の顔が浮かんでくる、背中の羽から光の粒子がばら撒かれ、そのまま彼は闇の書に突撃する。
「スターライト……」
その時闇の書の右の掌に桜色の魔力が収束されていく。
「壊されて……!!!」
同時にシンの右腕には青い籠手が装着される。
「ブレイカー」
「たまるか――――――!!!!!!」
次の瞬間、シンの右腕と闇の書の右手がぶつかり合い、彼等を中心に大爆発が起きる。
すると爆煙の中から、ボロボロになったシンが海へ向かって落ちていった。
「シン―――!!!」
思わず悲鳴に近い声でシンの名前を呼ぶフェイト。
「危ない!!」
海に激突する前にユーノがシンを救出する。
「ちくしょー……相討ちかよ!」
ユーノに抱きかかえられながら悔しそうに舌打ちするシン。
そして爆煙が晴れると、そこにはボロボロになった右腕を抱えた闇の書がいた。
「くっ……」
「シン君!」
なのはは慌ててシンの下に駆け寄る。
「ごめん……後は頼んだ」
「わかったよ、私に任せて」
そしてなのはは闇の書のもとへ飛び立った。
対峙するなのはと闇の書。
「お前も……もう眠れ」
「いつかは眠るよ、でもそれは今じゃない」
そしてなのはは大きく深呼吸し、レイジングハートを構える。
「カートリッジロード!! エクセリオンモード……ドライブ!!」
レイジングハートから数個のカートリッジが排出される。
制御を誤ればレイジングハートが壊れてしまうかもしれないエクセリオンモードを起動する、それだけの覚悟で挑まなければ闇の書には勝てないのだ。
(撃てるチャンスさえあれば……! 私だって皆を守りたいんだ!)
そしてなのはは、闇の書へ突撃していった。



「ありがとう……でも僕はもう行くよ」
スウェンは首を横に振った。
「スウェン!? なんで……!?」
「あそこにもどっても辛い思いしかしないのよ!? それならずっと私達と暮らしましょう!」
「パパ……ママ……」
悲しそうな顔でなおも引き止めようとする両親、そんな彼らに、スウェンは笑顔で答えた。
「僕ね……家族ができたんだ」
「家族……?」
首をかしげるスウェンの両親。

「不器用だけど、家族のことをいつも思ってくれているお姉ちゃん」
「料理は下手だけど、それ以外の家事はなんでもこなすお姉ちゃん」
「僕が迷っていたり、辛い思いをしているとき、黙って話を聞いてくれて、相談に乗ってくれるお兄ちゃん」
「ガサツで乱暴だけど、本当は誰よりも家族のことが大好きな妹」
「辛いときも……太陽みたいに笑ってみんなを支えてくれる妹」
「そして……僕の一番の味方の弟」

「僕は今兄弟達に囲まれてとっても幸せだよ、だから心配しないで」
『幸せ』という言葉を聞いて、スウェンの両親は彼を引き止めるのをやめた。
「そうか、スウェンは幸せなんだな……安心したよ」
「なら私達は何も言う事はないわ……」
スウェンは両親のもとに駆け寄り、二人に抱きつく。
「ありがとう……パパとママにもう一度会えてよかった」
「スウェン……」
すると二人の体が、光の粒子になって徐々に消えていく。
「私達は遠く離れてしまうけど……」
「いつまでも、貴方の近くで見守っているよ」
「「だから……」」
そして完全に消える寸前、その言葉をスウェンに贈る。


「「がんばれ!! スウェン!!」」





スウェンだけになった丘。相も変わらず星達は彼を照らす。
「マスター……」
するとそこに、妙にかしこまった様子のノワールが現れた。
「ノワール……行こう、はやて達を迎えに」
「……仰せのままに!!」
そして、その丘からスウェン達の姿は消えていた。





「私が……欲しかった幸せ……」
「ええ、愛する者達とずっと続いていく暮らし」
はやての頭の中に、次々と大切な家族達の顔が浮かぶ。
「眠ってください……そうすれば夢の中で貴方はずっとそんな世界にいられます」
その時だった。
「それは違うよ、それは逃げているだけだ。その夢はカケラでしかない」
突然の来訪者に驚く二人
「スウェン・カル・バヤン……!?」
「スウェン……? なんかちっこくないか?」
はやてはいつもと性格も身長も目つきも違うスウェンに驚く。
「確かに思い通りに生きられないのは辛いけど……夢って見るだけじゃなく、叶えるものでもあるんだよ」
「叶える……もの……」
半開きだったはやての目が徐々に開いて行く。
「僕……思い出したんだ、僕の夢は将来天文学者になることなんだ、でも……眠ったままじゃ叶わない、だってそれは……」
「それは、ただの夢の欠片や」
はやての目ははっきりと開かれ、しっかりと闇の書を見据える。
「私らこんな事望んでへん、貴方も同じはずや……違うか?」
すると、闇の書はポロポロと涙を流し始めた。
「……私の心は騎士達と深くリンクしています。だから騎士達と同じように私も貴方達を愛おしく思っています……」
そして闇の書は固く目を閉じリ、
「だからこそ! 貴方を殺してしまう自分自身が許せない!!」
いままで溜め込んでいた思いを、さらけ出した。
「……覚醒の時、少しは解ったんよ、望むように生きられない辛さは私にもわかる、せやけど忘れたらアカン……」
はやては手を伸ばし、両手で闇の書の頬を触る。
「あなたのマスターは今は私や、マスターの言う事はちゃんときかなあかん」
はやての足元に白い魔法陣が現れる。
「名前をあげる、闇の書とか呪いの魔道書なんて呼ばせへん。私は管理者や、私にはそれができる」
闇の書の目から涙が溢れ出す。
「無理です、自動防御プログラムが止まりません、管理局の魔導師が戦っていますがそれも……」
すると、スウェンが闇の書の頭を優しく撫でる。
「大丈夫だよ、はやてを……みんなを信じて」
「止まって」
その時、魔法陣の輝きが増した。


「動きが……とまった?」
闇の書の動きが止まり、戦っていたなのは達は様子を見る。
『外の方! 管理局の方! こちら…その、そこにいる子の保護者の八神はやてです!!』
「はやてちゃん!?」
「はやて!?」
「無事だったのか!? よかった~。」
『その声はなのはちゃん?それにフェイトちゃんにええっと……シン君!? あの、なんとかしてその子止めてあげたげる!?』
「どうすればいいのはやて!?」
『魔導書本体からコントロールを切り離したんやけど、その子がああしてると管理者権限が使えへん、今そっちに出ているのは自動行動の防御プログラムだけやから……』
「ど……どうすればいいの?」
理解しきれず、なのはは他の仲間達に聞いてみる。
「つまり……アイツにでっかいダメージを与えればいいんだな」
「じゃあなのはの得意なアレだね」
アルフ(大型狼型)の上に乗っていたシンとフェイトは互いに頷く。
「なのはの全力全開を……アイツにぶつけるんだ!!」
ユーノの説明を理解したなのはは、パアっと笑顔になる。
「さすがユーノ君! 解りやすい!!」
そしてなのははレイジングハートエクセリオンを闇の書へ向ける。
「エクセリオンバスターバレル展開、中距離砲撃モード!」
柄が伸び、レイジングハート本体から桜色の翼が生える。
そして、魔力による衝撃波を放った。防御プログラムの自由を強制的に奪う。
「エクセリオンバスターフォースバースト!! ブレイクぅ……シュート!!!」
放たれたエクセリオンバスターは四つに裂け、そのすべてが闇の書に襲い掛かる。


「はやて……先に行っているよ」
「うん、気を付けてな」
スウェンはノワールとユニゾンし、自分の目の前に銀色の魔法陣を展開する。
「いくぞノワール、悲劇の闇を切り裂く銀の閃光、その名は……」


そしてエクセリオンバスターが闇の書を飲み込むのと同時に、その光を貫くように銀の閃光が天に向かって放たれた。


「夜天の主の名に於いて汝に新たな名を送る、強く支えるもの、幸運の追い風、祝福のエール」
辺りが白い光に包まれる中、はやてはその名前を呼ぶ。


「あなたの名は……リインフォース」










ちょっと長くなったので前篇後篇に分けました、後編は明日に投稿します。感想のレス返しは明後日投稿予定のエピローグ後にまとめて書きますので……

ちなみにシンの使った新たな魔法はVividのコロナの魔法を参考にさせていただきました。
クリスタルを使ってSDサイズのインパルスを召喚するってイメージですかね。


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