最終話「STARGAZER ~星の扉~」後編
『リインフォースを認識、管理者権限の使用が可能になります。ですが防御プログラムの暴走が止まりません、管理から切り離された膨大な力がじきに暴れてしまいます』
「うん……まあなんとかなるやろ、ほな行こかリインフォース」
『はい、我が主』
海上に張られた結界内に大きな地響きが起こる。
『皆気をつけて! 闇の書の反応消えてないよ!』
シン達の目の前には大きな黒い塊と小さな白い塊があった。
『下の黒い淀みが暴走が始まる場所になる。むやみに近づいちゃだめだよ!』
その時、白い塊の周りに赤、赤紫、緑、白の光が囲むように現れた。そしてそれは強い光を放ち人の形になった。
「ヴィータちゃん!」
「シグナム!」
そこにはリンカーコアを修復し、復活したヴォルケンリッターがいた。
「我ら夜天の主に集いし騎士」
「主ある限り我らの魂尽きる事なし」
「この身に命ある限り我らは御身の下にあり」
「我らが主、夜天の王、八神はやての名の下に!!!」
その瞬間、中心の白い塊にヒビが入り、杖を持ち騎士甲冑に身を包んだはやてと、ノワールとセットアップしたいつものスウェンがいた。
「はやて! スウェン!」
ニコリと微笑み返すはやてと、コクリと頷くスウェン。
はやては杖を天に掲げて叫ぶ。
「夜天の光よ、我が手に集え、祝福の風、リインフォース、セーット、アーップ!!」
はやての頭が白く染まり、黒い羽が六枚ついたバリアジャケットに身を包む。
「はやて……」
「はやてちゃん……」
ばつが悪そうにはやてを見るヴォルケンリッター。
「リインフォースが全部教えてくれた、けど細かい事は後回しや、皆……お帰り」
「はやて……はやてー!」
目に涙を流し、はやてに抱きつくヴィータ、そんな彼女の頭を、はやては優しく撫でた。そしてヴォルケンリッターはスウェンの方を見た。
「スウェン……ありがとうな」
「お前が頑張ってくれたおかげで、我々はまたこうして主と巡り会うことができた」
「本当に感謝している」
皆、次々とスウェンにお礼を言う
「なに、家族として当然のことをしたまでだ、それより……」
スウェンは黒い淀みを見る。
「あれをなんとかしなければな」
そこになのは達管理局魔導師達が合流する。
「はやてちゃん! よかった~!」
「なのはちゃん、フェイトちゃん……迷惑かけてごめんな。」
ふとはやては体中ボロボロになっているなのは達を見る。
「大変! シャマル、お願いできるか?」
「はい、クラールヴィントの本領発揮ですね」
シャマルは指輪型のデバイス、クラールヴィントに軽くキスをする。
するとなのは達の周りに暖かい光が纏われ、傷はおろかバリアジャケットの綻びまで治ってしまったのだ。
「すっげー! アロンダイトが新品みたいだ!」
シンは腕をぐるんぐるん回しながら、自分が全快になった事を確かめる。その他も皆シャマルの治癒魔法を絶賛した。
「皆、集まっているな、時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ」
そこにクロノがやってくる。
「時間が無いので簡単に説明する、あそこの黒い淀み……闇の書の防衛プログラムが数分で暴走を開始する、僕らはそれを何らかの方法で止めなければならない」
そしてクロノは一枚のカード型デバイスを取り出す。
「何だそれ?」
「これは氷結の杖デュランダル、この氷魔法であの防御プログラムを停止させる。もしくは軌道上で待機しているアースラの魔導砲、アルカンシェルで消滅させる、今あるプランはこの二つだ」
「あの……多分二つとも難しいと思います。」
シャマルが恐る恐る手を上げて意見する。
「主のいないプログラムは魔力の塊みたいなものだからな」
「アルカンシェルも絶対だめ!はやての家が吹っ飛んじゃうじゃんか!」
「そんなにすげえの?」
シンはヴィータの必死な意見を聞いて、デスティニーに聞いてみる。
「先程データが送られましたが……ここで使えば半径数十キロは消滅します、海鳴は壊滅しますね」
「それではここでは使えないな、俺達の帰る家がなくなってしまう」
「だな……じゃあ別の方法を考えないと」
そんなわけでシン達は闇の書の闇を倒すための作戦会議を始める。
『はーい、みんな後五分だよー』
「アレをもっと沖合いに移せないの?」
「海の上でも空間歪曲の影響は出る」
「我らのありったけの魔力をアイツにぶつけて……」
「でも確率は低そうだな」
「あーもうめんどくさい!! みんなであれをズバッとやっつけることはできないのかい!?」
「それが出来たら苦労しないよ……」
会議は平行線になっていた、その時……
「……? なあ、あそこに人がいるぞ?」
ヴィータは海岸沿いに数人分の人影がいるのを発見する。
「あれ!!? 本当だ!」
「逃げ遅れた人かな……」
一同は慌ててその人達のもとに飛び立った……。
その頃海岸沿いでは、安全な場所に転送されたアリサ達が、海上に現れた闇の書の闇を見て混乱していた。
「何あの怪物!? でっかー!!」
「ユニオンの新型MAでしょうか……?」
「そうは見えないが……」
「ねえアリサちゃん、あそこにいるのって……」
「うん、なのは達よね? あんな格好で何をしているのかしら?」
そして彼女達のもとになのは達が集まってくる。
「アリサちゃん!!? すずかちゃん!! それにみんなも!!?」
「どうしてここに!?」
『あらー……安全なところに移動させたつもりが、また巻き込んじゃったみたいだねー』
「なのはちゃんにフェイトちゃん!? はやてちゃん達まで!?」
すずかはなのは達の中に八神一家までいることに驚く。
「今日は仮想パーティーでもありますの? 随分と奇特な格好をしていますわね……」
「すごいね! どうやって飛んでいるのそれ!? CG!? ユニオンの兵器!!?」
「こ、これはその……そうCGなんだよ! ルイスちゃん正解!!!」
なのはは誤魔化す為ルイスの意見を敢えて肯定する、しかし……
「んなわけないでしょーが!!! ちゃんと説明しなさいよ!」
「いひゃひゃひゃ~!!!」
アリサに嘘と見破られ、頬を思いっきり引っ張られる。
「ああアリサ、落ち着いて……」
「こ、コエ~」
「どうします艦長……?」
『もうこうなってしまっては隠せないでしょう』
そしてなのは達はこれまでの事、そして自分達の事をアリサ達に洗いざらい説明した。
「時空管理局……魔法……どれもにわかには信じられないことばかりですわ、でも実物が目の前にありますし……」
「なのはとフェイトは魔法少女なんだ! すっごーい!」
「なるほど、そしてあなた達は今、あれを倒す為に四苦八苦していると……」
「うむ、そういうわけだ」
なのは達の事情を理解したところで、アリサ達も闇の書の対処について意見を出してくる。
「あれを消しとばす方法ね……なんかでっかい大砲みたいなの無いの? それで吹き飛ばしちゃえばいいじゃん」
「それはもう考えたよ……それだとアリサちゃん達が余波に巻き込まれちゃうの」
「軍に協力を要請することはできませんの? これほどの事態なのに……」
「うーん……この世界の軍にアレをどう説明すればいいのか解らないし、後々面倒なことになる」
「完全にお手上げか……」
腕を組んで悩みだす一同、その時……ルイスが手を元気よくあげて意見を出した。
「はいはーい! しつもーん!」
「はいルイスさん、なんでしょう?」
「オイラの好みのタイプはまどか☆マギカのほむほむちゃん!」
「お前は黙ってろ!!」
ノワールがシグナムに頭をはたかれているのを尻目に、ルイスは天に向かって指をさした。
「ねえねえ、魔法であれを宇宙とかに放り出すことはできないの? あそこならここで暴れられるより幾分マシだと思うけど……」
「あれほどの質量の物を宇宙に放り出すのは無理だ……」
「うーん……じゃあゴリゴリっと削って小さくしちゃえば? さっき見た女の人の攻撃がみんなにも出来ればイケるんじゃない?」
「ルイスさん、そう簡単には……」
「いやまて」
そのルイスの意見を聞いて、スウェンが思考を巡らせる。
「管理局の人、ちょっといいか? そのアルカンシェルとやらは宇宙でも撃てるのか?」
『撃てますよー! 宇宙だろうとどこだろうと!』
「スウェン、何かいい方法を見つけたのか?」
「ああ……」
スウェンは自分が思いついた作戦をみんなに話す。
その内容はまず皆で闇の書の闇に総攻撃を行い、戦闘不能まで追い込み、露出させたコアのみを宇宙に転送し、アルカンシェルで消滅させる……というものだった。
「どうだ? これならいけると思うが……」
「俺はスウェンの意見に賛成だ!」
「私もや! 今はこれしか方法があらへん!」
スウェンの提案した作戦に反対するものはいなかった。
『どうやら結論は出たみたいね、相変わらず無茶言うわ』
『でも計算上では可能なんですよね』
「ていうか素人の意見が一番まともな答えを導けるって……あなた達本当にプロですの?」
「ぐっ……!」
『め、面目ない……』
留美の手厳しい意見に、クロノとエイミィは返す言葉もなかった。
「俺はこの作戦は絶対成功すると思う」
「なんだ? 随分と自信満々だな」
クロノは妙に自信に満ちたスウェンを不思議がる。
「ああ、なぜならここにはみんながいる」
「うん、そうだよな」
スウェンとシンはお互い目を合わせ、仲間達を見る。
「守りたいものは皆同じなんだ」
「ぶつかり合ったりもしたけど、味方同士になったらすんげー頼もしいよな!」
「だから皆で守ろう、そうすれば守り抜く事が出来る」
「シン君……そうだね!」
「我々が手を組めば阻める者などいない」
「アタシ達が全部ぶっ飛ばしてやるよ!!」
「ああそうさ、やってやろうじゃないかザフィーラ」
「応!」
「僕もやれる事、全力全開で挑むよ」
「治癒は任せてね、どんな大怪我も直しちゃうから!」
「ウチも皆を守りたい……リインフォースも一緒や!」
「私も……シンと守りたいものは一緒だよ!」
『さあみんな! もうすぐ暴走が始まるよ!』
エイミィの通信を受けて、皆一斉に頷く。
「さあ皆! 全力全開でいくよ!」
「「「「「「「「「「「おう!!!」」」」」」」」」」」
そして、皆は再び闇の書の闇がいる海上に向かった、この世界の未来を賭けた最終決戦が始まったのだ。
見上げる空、哀しみの蒼き嘆きの詩がただ聞こえる
優しい白い瞬き、奪い去った風……彼方
逃げない、僕は決めたよ、君の温もりを傍に感じて
目をそらさずに、全てこの胸に刺さる真実ならば
歩いていこう、歪み塞がれた星の扉の向こうへ……
最終話「STARGAZER ~星の扉~」
「来るぞ!!」
黒い塊が弾け、暴走した防御プログラム…闇の書の闇が姿を現す。至る所に生物的な触手や蛸の足のようなものなどがうねりを上げ、中心には紫色の体をした巨大な女性が張り付いていた。
「デカイな……」
「ああ、でも俺達は絶対負けない!」
そしてそれを見守るアリサ達もなのは達にエールを送る。
「がんばれー! なのは! フェイトー!」
「気をつけてねー!」
「あんな怪物! ぱぱっとぶっとばしちゃえ!!」
「すごい……ちょっと昂揚してきましたわ!」
「これが……世界を守る力……」
「チェーンバインド!」
「ストラグルバインド!」
アルフとユーノのバインドが触手を引き千切り
「縛れ!鋼の軛!でぇえええええい!!」
ザフィーラが残りを切り払っていく。
「ちゃんと合わせろよ! 高町なのは!」
「ヴィータちゃんもね!」
「鉄槌の騎士ヴィータと! 鉄の伯爵グラーフアイゼン!」
カートリッジがロードされ、アイゼンは普段より数十倍巨大なハンマー、ギガントフォルムに変形する。
「轟・天・爆・砕! ギガント・シュラァァァ―――――――ク!!!」
バリアにアイゼンが叩き付けられ、闇の書の闇を守っていた一層目のバリアが破壊される。
「高町なのはとレイジングハートエクセリオン! 行きます!」
魔法陣を展開し、カートリッジをロードする。レイジングハートに桜色の羽が生える。
「エクセリオンバスター! [バレルショット]」
レイジングハートから放たれた衝撃波が闇の書の闇の動きを止める。
「ブレイク……!」
四つの桜色の魔砲がバリアに当たり、
「シュート!!」
五本目が二層目のバリアを破壊する。
「次! シグナムとテスタロッサちゃん!」
「剣の騎士、シグナムが魂、炎の魔剣レヴァンティン、刃と連結刃に続く、もう一つの姿」
剣の柄と鞘を合わせ、カートリッジをロード。
[ボーゲンフォルム]
一つの弓となるレヴァンティン。さらにカートリッジをロードし、矢が形成される。
「駆けよ隼!」
[シュツルムファルケン!]
一直線に放たれた矢は、三層目のバリアを破壊した。
「フェイト・テスタロッサ、バルディッシュザンバー……行きます!!」
魔法陣を展開し、カートリッジをロード、バルディッシュザンバーを振りかぶる。
「撃ちぬけ! 雷神!」
[ジェットザンバー]
バルディッシュザンバーが振りぬかれ、そこから放たれた魔法刃が数十倍に伸び、闇の書の闇を切り裂いた。
「はやてちゃん!」
シャマルの合図と共にはやては杖を構える、だがその時、闇の書の闇がはやて達に向けて触手から複数の魔力弾を発射したのだ。
「アアアアアアアアアアアアアア……」
「なんてしぶといんだい!?」
「このままでは主が……!」
魔力壁を展開しながら皆を守るアルフらサポート班。
「それなら……!」
「俺達に任せろ!」
シンとスウェンは天空高く舞い上がり、ビーム砲、ショーティー、リニアカノンの銃口をすべて闇の書の闇に向ける。
「マルチロック完了、全武装チャージOK、いつでも行けますッス!」
「ビーム砲フルチャージ完了、射線上に味方はいません」
「シン、タイミングを合わせてくれ」
「わかった!!」
それぞれの銃口に光が収束される。
「シン・アスカ、デスティニー行きます!」
「流星の騎士スウェン・バル・カヤンと銀河の騎士ノワール、出る!」
「喰らえ! これがオイラ達の!」
「コンビネーション・アサルト!!」
そしてノワールのショーティー、リニアカノン、デスティニーのビーム砲の順番に光線が放たれる。
闇の書の闇にショーティーの銃弾の雨が降り注ぎ、リニアカノンの光の矢に貫かれ、ビーム砲の雷に薙ぎ払われた。
休む事の無い疾風怒濤の連撃に、闇の書の闇の再生は追いつかなくなってきた。
「「今だ! はやて!」」
「ありがとう二人とも……彼方に来たれ、宿り木の種、銀月の槍となりて、撃ち貫け!」
はやての頭上に展開される魔法陣から、七つの光が現れる。
「石化の槍、ミストルティン!」
七つの光は槍になって突き刺さり、闇の書の闇の本体は石化していく。
「アアアアアアアアアア………」
それでも闇の書の闇は生態部分を増やし、禍々しい姿に変貌していく。
「うわ……こりゃ……」
「なんだかスゴイことに……」
あまりの気持ち悪さに顔をしかめるアルフとシャマル。
「だが俺達の攻撃は通っている……」
「今だクロノ! ぶちかませ!」
「命令するな! ……いくぞデュランダル」
[OK、ボス]
グレアム提督から借り受けたデュランダルを構え、魔法陣を展開するクロノ。
「悠久なる凍土、凍てつく棺の内にて、永遠の眠りを与えよ」
凍りだす闇の書の闇。
「凍てつけ!」
[エターナルコフィン]
闇の書の闇は完全に凍りつき崩れ始めるが、すぐに再生し始める。
「いくよ! フェイトちゃん! シン君! はやてちゃん! スウェンさん!」
なのはの言葉に呼応するように頷く四人。
「全力全開! スターライト……!!」
レイジングハートの先端に桜色の光が収束されていく。
「雷光一閃!プラズマザンバー!!」
バルディッシュの刀身に魔力が蓄積される。
「ごめんな……おやすみな……」
闇の書の闇に一言謝罪し、夜天の書を開き、詠唱を始める。
「響け終焉の笛、ラグナロク……!!」
「デスティニー、俺に……フェイト達を守り抜く力をくれ!!」
ビーム砲を構えるシン、その銃口には紅の魔法陣が展開されていた。
「悲しみの運命を薙ぎ払え!イグナイデッド……!!」
(父さん、母さん、星達と共に見守っていてくれ、俺は……僕は……)
「悲劇の闇を切り裂く銀の閃光、その名は……」
(兄弟達と…仲間達と共に、生きて行くよ。)
スウェンの目の前に、銀色の魔法陣が展開され、背中の羽が変形し、リニアカノンの銃口に銀色の光が収束される。
「星の扉へ導く光、ハルバート……!」
「「「「「『ブレイカー!!!!!!!!』」」」」」
桜、金、白、紅、銀、五色の閃光が、闇の書の闇を飲みこんだ。
「本体コア露出! つかまえ……た!」
シャマルはクラールヴィントが形成した空間から禍々しく輝くコアを捕まえる。
「強制転移魔法発動!!」
「目標! アルカンシェル射線上!!」
「「「転・送―!!」」」
シャマル、アルフ、ユーノの手によってアースラがいる宇宙へ転送される。
地球」の軌道上に待機していた巡洋艦アースラは、地上から転送されてくるコアの到着を待っていた。
「コアの転送来ます! 転送されながら生体部品を修復中! 凄い早さです!」
「アルカンシェルバレル展開!」
アースラの前に三つの環状の魔方陣が展開され、中央に青白い光が集束していく。
「ファイアリングロックシステムオープン!」
リンディの声に反応し、リンディの目の前に鍵穴が着いた球体を立方体で囲んだものが現れる。
「命中確認後反応前に安全距離まで待避します! 準備を!」
転送されながら、禍々しい姿で再生していく闇の書の闇。
それが到達直前まで来る、リンディはアルカンシェルの鍵を鍵穴へと差し込んだ。
立方体が赤く染まり、発射準備が完了し、その瞬間闇の書の闇が軌道上に到着、アルカンシェルの射線上に現れた。
「アルカンシェル! 発射!!」
リンディは鍵を回し、引き金を引くと魔力でレンズ状の物体が生成され、それを通して青白い魔力が撃ち出される。
闇の書の闇に着弾し、一定時間を経過すると、発生した空間歪曲と反応消滅で闇の書の闇が消えていき、巨大な爆発が起こった。
爆発が集束していき、映像から闇の書の闇の姿が消えた。
「効果空間内の物体、完全消滅!再生反応、ありません!」
「うん、準警戒態勢を維持、もう暫く反応空域を観測します。」
リンディの言葉と共に、クルー達は安堵した……。
やるべき事をやり終えた一同は、アースラからの連絡を待った、そして、エイミィから一本の通信が入る。
『みんな! 防御プログラムの消失を確認! 反応はゼロ! 作戦は成功だよ!』
その瞬間、一同は歓喜の雄叫びをあげた。
「やったよー! シン!」
嬉しさのあまり、フェイトはシンに抱きつく。
「ああ! 俺達やったんだな!」
「な、なのは、や……」
「やったねー! シン君!」
なのはも嬉しさのあまり、ユーノの話を聞かずそのままシンに抱きつく。
「うわ!? なのはまで!?」
「シーン!!!」
「ちょ! アルフまでくんな! く、くるし……」
「………………………」
「その……なんだ、生きろ」
「うわ~~~ん!! クロノ~~~!!」
「だあああああ!!!! 抱きつくんじゃない!!!」
そんな微笑ましい(?)光景を八神家はちょっと距離を置いて見つめていた。
「ふふ、騒がしい連中ですね……人のこと言えませんが。」
「ホンマや……な……」
はやては急に体が重たくなり、その場にへたり込む。
「は……はやて!」
「大丈夫やヴィータ……ちょっと魔力使いすぎて疲れただけや。」
「とにかくどこかで休ませましょう」
「だな……行くぞスウェン……スウェン?」
ザフィーラは返事のないスウェンとノワールを不信に思い、肩をポンと叩く。
「どうした? 何を見ている?」
「空……」
ふと、皆は一斉に空を見る、空は先ほどの騒動で雲が晴れており、満天の星が輝いていた、そしてそれだけではない。
「ねえこれ……雪じゃない!?」
「すごい! 天気雪だね!」
しんしんとスウェン達の周りに雪が降ってきていたのだ。
「うわあ! 俺雪なんて初めて見たよ!」
「まるで星が降ってきているみたいだね!」
幻想的な光景にはしゃぐシン達。そしてスウェンはヴィータ達に支えられているはやての傍に寄って行った。
「さあ約束だ……みんなで家に帰ろう」
「待ってえなスウェン、もうちょっとこの光景……みんなで見ていよう」
「……ふっ、それもそうだな」
スウェンははやてに微笑みかけながら、大切な家族、そして新たに出来た仲間達と一緒に、雪降る星空を眺め続けた。
こうして、後に「闇の書事件」と呼ばれる出来事は終わりを告げた。
事件の重要参考人である八神はやてとヴォルケンリッター、そしてスウェン・カル・バヤンは裁判に掛けられる事になるが、裁判終了後の管理局従事の約定により大幅な減刑が見込まれている。
なお今回の事件に関わったギル・グレアム提督とその使い魔の処遇について、
彼はかなり早い段階で八神はやてが闇の書の主と知っていたにも関わらず、管理局にそのことを報告せずなんの防止対策を打たなかった、その行為は悪質でありアースラへの事件捜査の妨害工作も含めてその罪は極刑に値していた。
しかし上層部はグレアム提督を重く罰することにより民衆の管理局への不信感の増大、下部局員の上層部への不信感が増すのを懸念し、提督の罪状を隠匿、彼を降格するのみに留めた。
なお、闇の書の防衛プログラムに関しては、アースラによるアルカンシェルによって消滅したと見なされ、管理局上層部の指示のもと防衛プログラムの所在の調査は完全に凍結されることになった……。
本日はここまで、明日にエピローグを投稿いたします。
あの子の運命ははたしてどうなるのか……奇跡は起こるのか。