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No.22867の一覧
[0] Lyrical GENERATION(再リメイク検討中)[三振王](2012/11/05 21:33)
[1] Lyrical GENERATION 1st プロローグ「すべてが始まった日」[三振王](2010/11/02 22:18)
[2] 第一話「巡り会う運命」[三振王](2010/11/02 22:23)
[3] 第二話「交錯する閃光」[三振王](2010/11/06 20:30)
[4] 第三話「閉ざした過去」[三振王](2010/11/07 20:44)
[5] 第四話「僕が選んだ今」[三振王](2010/11/09 20:16)
[6] 第五話「僕達の行方」[三振王](2010/11/12 08:30)
[7] 最終話「君は僕に似ている。」[三振王](2011/01/20 09:47)
[8] エピローグ「私は笑顔でいます、元気です。」[三振王](2011/12/14 21:31)
[9] TIPS:とある局員のプライベートメール[三振王](2010/11/21 23:45)
[10] りりじぇね! その1「壊れあうから動けないリターンズ」[三振王](2010/12/17 23:35)
[11] りりじぇね! その2「アリサのメル友」[三振王](2010/12/31 15:53)
[12] りりじぇね! その3「ちょこっと!Vivid!  ~ヴィヴィオの家出~」[三振王](2011/01/03 22:26)
[13] Lyrical GENERATION STARGAZER プロローグ「霙空の星」[三振王](2011/01/20 20:32)
[14] 序章1「新しい生活」[三振王](2011/01/23 19:47)
[15] 序章2「再会する運命」[三振王](2011/01/24 20:32)
[16] 序章3「12月1日」[三振王](2011/01/26 22:21)
[17] 第一話「始まりは突然に」[三振王](2012/01/27 10:52)
[18] 第二話「新たなる生活」[三振王](2011/02/03 20:52)
[19] 第三話「青き清浄なる世界」[三振王](2011/02/05 21:35)
[20] 第四話「隠した心」[三振王](2011/02/08 20:09)
[21] 第五話「交わらない道」[三振王](2011/02/17 20:56)
[22] 第六話「蒼き嘆きの詩」[三振王](2011/02/14 19:52)
[23] 最終話「STARGAZER ~星の扉~」前編[三振王](2011/02/16 21:09)
[24] 最終話「STARGAZER ~星の扉~」後編[三振王](2011/02/17 21:03)
[25] エピローグ「大人になっても忘れない」[三振王](2012/01/27 10:53)
[26] TIPS:ある教授の日誌 +???[三振王](2011/02/20 09:07)
[27] 超級! 魔法武闘伝! プロローグ「交わる物語(ストーリー)」[三振王](2011/05/05 21:33)
[28] 第一話「姉妹」[三振王](2011/05/11 21:18)
[29] 第二話「ガンダムファイター(見習い)VS守護獣」[三振王](2011/05/16 21:59)
[30] 第三話「師匠、海鳴でテロリスト退治をするの巻」[三振王](2011/05/22 21:58)
[31] 第四話「迷子の魔法使い」[三振王](2011/05/27 23:05)
[32] 第五話「接触」[三振王](2011/06/19 22:57)
[33] 第六話「運命の連鎖」[三振王](2011/07/06 22:14)
[34] 第七話「闇を統べる者」[三振王](2011/07/12 22:29)
[35] 最終話「Silent Bible」[三振王](2011/07/15 16:34)
[36] エピローグ「安息」[三振王](2011/07/15 16:36)
[37] Lyrical GENERATION SEED+プロローグ[三振王](2011/12/14 21:30)
[38] 第一話「出発」[三振王](2011/12/29 22:25)
[39] 第二話「3人目の少年」[三振王](2012/01/16 00:17)
[40] 第三話「原罪の創造主」[三振王](2012/01/28 08:08)
[41] 第四話「雷雨の中で」[三振王](2012/02/20 17:32)
[42] 第五話「戦いの前夜」[三振王](2012/05/16 10:06)
[43] 第六話「オペレーション・スピットブレイク」[三振王](2012/05/19 09:10)
[44] 第七話「抱える想い」[三振王](2012/07/11 20:46)
[45] 第八話「使命」[三振王](2012/08/07 17:39)
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[22867] 第一話「姉妹」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:664d5fcd 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/11 21:18
 第一話「姉妹」


その日、リンディはミッドチルダにある本局に赴き書類整理を終えて家族の待つ第97管理外世界に帰ろうとしていた、すると彼女のもとに親友であるレティ・ロウラン提督が近づいてきた。
「あ、リンディー、いま帰る所なの?」
「ええ、今日はフェイトの進級祝いをするからね……仕事を早めに片付けたの」
「そう言えばもう養子の手続きをとったんだっけ? 妹も出来てクロノ君喜んでいるんじゃない?」
「そうね、本人はあまり顔に出さないけど……家族が増えて嬉しそうだったわ」
「最近クロノ君もしっかりしてきたし、そろそろ自立してもいい頃合いよね……」
「私もそろそろ隠居とか考えたほうがいいかしら」
そんな世間話に花を咲かせるリンディとレティ、ふとレティはあることを思い出しリンディに伝える。
「そう言えば……今度私のお隣さんの奥さん、今度社交ダンスで出会った人と再婚するらしいのよ」
「あら本当に? 確か息子さんはこの前食品会社に就職したとか言っていたわね」
「ええ、子育ても終わったしちょうどいいって言っていたわ、あなたはそういう予定あるの?」
「え!!?」
レティの予想外の質問にリンディは面喰ってしまう。
「いや……クロノ君もフェイトちゃんも何年かすれば自立するだろうし、何十年もある老後の事も考えて一緒になる人を探したらどう?」
「えー……ちょっと考えた事なかったわ、再婚ねえ……」
リンディはまんざらでもない様子でしばらく考え込んでいたが、すぐに手のひらをぶんぶん振って否定する。
「まあクライド君並みにいい人が居れば考えるけど……今はまだ自分の事を考えている暇はないわ、この仕事の事もあるし……」
「ふーん……まあいいわ、もし何かあったら私も相談に乗るからね」
「ありがとうレティ」

その時、リンディの持っていた通信機に着信が入る。
「あら? 何かしら、緊急事態……?」
リンディはすぐさま通信機を取ると、通信を入れてきた相手の要件を聞く。
「もしもし、どうしたの……え!? アリシアさんが!!?」










同時刻、第97管理外世界の海鳴市にあるはやての家では……
「はやてちゃん! スウェンさん!」
「「「「「「入学おめでとー!!」」」」」」
4月から学校に通うことになったはやてとスウェンを祝いに、なのは、フェイト、アルフ、アリサ、すずか、シン、マユが八神家に遊びに来ていた。
「わあ! 皆ありがとうな!」
「今学期から同級生だね! はいこれうちのケーキ!」
そう言ってなのはは自分の家で作ったケーキをシャマルに渡す。
「それじゃ私、お台所で切り分けておきますねー」
「いやいや、今学期から二人とも学生なんだな、早いもんだー」
「だな……これもリンディ提督が尽力してくださった結果……感謝してもしきれん」
そう言ってこいぬフォームなアルフとザフィーラはテーブルの下で一緒に七面鳥をかじった。
「保護観察期間も終わったからな……これからは管理局の手伝いをしながら学校に通うことになる」
「二人と一緒にいられる時間が少なくなっちまうのがちょっと寂しいけどな……」
「じゃあマユがヴィータと遊んであげる!」
「お前……ホントいい奴だなぁ」

「スウェンさんも良かったですね」
「ああ、でもいいんだろうか……俺まで学校に通わせてもらって……」
「いいと思いますよ、母さんもスウェンさんが勉強好きって事は知っていますし、学校は楽しい所ですよ」
そんなすずかとスウェンとフェイトの会話を聞いて、リインフォースは隣にいたシンとアリサにある質問をする。
「なあ……学校とはやはり楽しい所なのか?」
「うーん、人それぞれなんじゃないか?」 
「リインフォースは学校に行きたいの?」
「いや……だが生まれてこの方、そう言ったところに通った事がないから興味はある」
「リインフォースが学校か……」
シンとアリサは頭の中でリインフォースの色んな学校の制服姿を想像する。
「あー、似合うかもな制服―」
「学校といえば今月はルイスと留美も転校してくるのよね」
「む……確か4カ月前にアドバイスをしてくれた子達か、その子達も海鳴に?」
「ええ、なんでもうちの学校で留学生を募集していたらしくて、二人ともそこに応募したんですって、だからルイスはすずかのおうち、留美と紅龍さんは私の家でホームスティすることになったの」
「へー、またあの二人が来るのか、ここもにぎやかになるだろうなー」


そして一同が和気藹々と会話している一方、デスティニーとノワールは一歩離れた場所で互いの近況を報告しあっていた。
「そういやデス子」
「デス子はやめなさい黒坊主」
「ヴィアのおばちゃんの所のあの子は元気でやっているんスか?」
「アリシアさんですか……実はここ最近、こちらの呼びかけに反応するようになってきたんです、リバースの効果でしょう」
「リインフォースが体張って検体になったお陰ッスねえ、アイツもあれ以来暴走する素振りもないし、ヴィアおばちゃんはホントチートッス」
「アルティメット細胞のおかげでもあるでしょう、あれも……イレギュラーな出来事が無ければ人類を救う夢の技術というわけです」
「いやあ、まさか魔法系統にも効果有りとは……このまま“あの世界”も別の未来を歩めればいいんスけどねえ……」


プリンセスローズ♪キミートー♪
「あ、着信だ」
その時、なのはの携帯から着信を告げる音楽が鳴り響き、彼女は友人たちとの会話を切り上げて電話に出た。
「はーいもしもし、なのはでーす」
『な、なのはちゃん! フェイトちゃんもそこにいる!?』
電話の相手は今アースラにいる筈のエイミィからだった。
「エイミィさん? どうしたんですかそんなに慌てて……」
『そ、それが大変なんだよ! アリシアちゃんがー!』
「……!? アリシアちゃんがどうかしたんですか?」
そのなのはの只ならぬ雰囲気に、フェイトを始めとした他の面々は一斉になのはの方を向いた……。


30分後、アースラのブリーフィングルームに集まったなのは達(アリサとすずかとマユはお留守番)はクロノとエイミィとユーノ、そしてリンディからある映像を見せられていた。
「これは二時間前……管理局本部で保護されていたアリシアさんの病室の前で撮られた映像よ」
モニターには管理局のスタッフや武装局員を次々と電撃で倒していく、長い金髪の少女が映っていた。
「これって……!」
「アリシア!?」
フェイトとシンはモニターに映る少女……アリシアを見て目を見開く。
「現場にいた局員の報告によればアリシアさんは突如目覚めた後、制止しようとした局員を排除して転移装置に入って何処かの管理外世界に転移してしまったそうよ」
「目覚めたって……そんないきなり!?」
「どうしてアリシアちゃん、転移装置なんかに……」
皆の疑問に、フェイトが俯いたまま確信を持って答えた。
「きっと……母さんを探しに行ったんだ」
「確かプレシアは暴走したアルティメット細胞に取り込まれた時の庭園と一緒に虚数空間に入ってそれっきり……」
「まさかアリシアは虚数空間に!?」
「いや、それは無いわ」
するとブリーフィングルームに、沢山の資料を抱えたヴィアがやってきた。
「ヴィアさん、それは無いってどういうことですか?」
「実はアリシアさんが使った転移装置は、ある世界に向かうようあらかじめ設定されていたの、多分あの子は使い方が判らなくてそのまま転移したみたい」
「そ、その世界ってどこなんですか!?」
フェイトはいてもたってもいられずヴィアに詰め寄った。
「場所は……第98管理外世界、ギアナ高地よ」
「第98管理外世界って確か……アルティメット細胞を作った人がいる世界じゃ……!」
「ええ、ちょうど私が赴こうとした時、アリシアちゃんが目覚めて装置を使っちゃったのよ、タイミングが悪かったわね……」
ヴィアの話が一通り終わり、今度はリンディがブリーフィングルームにいた全員に通達する。
「私達アースラはこれより第98管理外世界のギアナ高地に向かい、アリシアさんの行方を捜査します、ギアナ高地は危険が多いので細心の注意を払う様に、以上」

ブリーフィングが終わり、シンとなのはとアルフは顔色の悪いフェイトに話しかけた。
「フェイト……大丈夫か?」
「し、シンどうしよう……アリシアに何かあったら私……私……」
「顔真っ青だよフェイトちゃん、大丈夫、大丈夫だから……」
「震えているじゃんフェイト! 私達がちゃんと見つけるから安心しなよ……」
「でも……でも……!」


一方、微妙に蚊帳の外の八神一家は、フェイト達の様子を窺いながら話し合いをしていた。
「な、なんかフェイトちゃん大変そうやな……」
「私達は何の事だかさっぱりわかんねえよ」
「しょうがないだろう、PT事件は我々の事件の半年以上前に起こった事なのだから」
「聞きたくても聞きにくかったしね……聞いちゃいけない事みたいだし」
「テスタロッサとアスカにとっては相当トラウマになる事件だったらしい……」
「後でエイミィさんに資料を見せてもらいましょう」



そしてさらに30分後、シン、フェイト、アルフ、クロノ、スウェン、リインフォース、ザフィーラ、そしてデスティニーとノワールはアースラからギアナ高地に降り立った。
「うは、蒸し暑いねここ……」
「なのはやユーノ達は上空からアリシアを探してくれ、僕達は地上から彼女を探す」
『おっけーだよクロノ君! それじゃまたあとで!』
『うわー、上空から見てもずっとジャングルやん……早く見つかるとええなあ』
「しっかし……いかにも猛獣とかが居そうな場所だよねえ……」
「我々はそれ以上のものと戦った事があるがな」
「とにかくぐずぐずしていられない、早くアリシアを見つけよう」

そして一行は間髪いれずアリシア捜索を開始した。
「む……羽が木に引っ掛かった……」
「リインフォース……お前は主はやてと共に空で捜索した方がよかったんじゃないか?」

「あーなんか大蛇の映画思い出したッス、日曜の夜にやってたやつ」
「なら貴方は真っ先に食べられるガイド役ですね」
「ひでえー!」

「アリシアー! お願い! 返事してー!」
「ダメか……もっと奥に行かないと」
「においとかで追えればいいんだけどねえ、これだけ広いと……」
「とにかく日が落ちる前に見つけ出す必要がある、急ごう」
「うん……」
クロノの提案にフェイトは半泣き状態で頷く。

(なんかもうボロボロッスね彼女)
(仕方ないだろう、アリシアはフェイトにとって最後の血のつながった家族だ……)
先ほどPT事件の資料を見てだいたいの事情を把握していたスウェン達は、フェイトに聞こえないような声で話し合っていた。
(アルフからも聞いたが、テスタロッサと母親の関係は随分と複雑なのだな)
(ああ、私もヴィアさんから彼女の事はちらほらと聞いていた、なんと言っていいのか……)

そして一行は三本に分かれた道の前までやってくる。
「どうするクロノ? 一本ずつ行くか?」
「その時間は無い、ここはメンバーを三つに分けよう」
「じゃあ一時間後にここで落ち合おう」

そしてシンとフェイトとデスティニー、アルフとクロノとリインフォース、スウェンとノワールとザフィーラはそれぞれ分かれてさらに奥へ奥へと進んでいった……。




シンとフェイトはアリシアの名前を呼びながら森の奥へ奥へと進んでいった。
「アリシア! どこー!?」
「いたら返事しろー! ダメか……やっぱりこの辺にはいないのかな」
「も、もしかしたら何かあったのかも……!」
フェイトは最悪の未来を想像し顔から血の気が引いて行くのを感じていた。
「だ、大丈夫だよ、アリシアはきっと見つかるって!」
「うん……」
シンはそんなフェイトを必死に励ます、しかしフェイトの気持ちは晴れることなく、二人は重苦しい空気のまま奥へ奥へと進んでいった。
(どうしたらいいんだろう……あ、そうだ!)
ふと、シンはあることを思いつき、隣にいたフェイトの手を握った。
「シン……?」
「はぐれるといけないからな、手を繋いでおこう」
「わかった……」
シンはフェイトの不安を少しでも和らげようと手を繋ぐ事を提案し、フェイトはそれを受け入れた。
(そ、そう言えば今、私シンと二人っきりなんだよね……)
手を繋いで今更その事に気付いたフェイトは、今度は顔を赤くしていた。
「あれ!? 今度は顔が赤いぞフェイト?」
「そ、そう? 気のせいじゃないかな……」
その時、フェイトは足に何か絡みついている事に気付き、足元に視線を移す、するとそこには……。
「シャー」
とても小さな、鉛筆程度の大きさの蛇がフェイトの足に絡みついていた。
「ひっ……ひやああああ!!!」
「うわ!?」
突然の事に驚いたフェイトはシンにそのまますがるように抱きつき、そのまま二人一緒に地面にドテンと倒れ込んだ。
「ど、どうしたんだよフェイト!?」
「あ、足に蛇が! と、とってー!」
「蛇ぃ? ああ本当だ、でもまだ赤ちゃん蛇じゃんこれ」
そう言ってシンはフェイトに抱きつかれたまま彼女の足に絡みつく蛇の赤ん坊を手でつまんだ。
「ははっ、こんなに可愛いのに……フェイトは怖がりだなあ」
「だって……いきなり巻きつかれたら誰だって驚くよぉ……」
シンはそのまま涙目のフェイトに、チロチロと舌を出す蛇の赤ん坊を見せる。そして……あることに気付き顔を赤くした。
「そ、それと……そろそろ降りてほしいかな……」
「へ?」
フェイトは自分がシンを押し倒したまま露出の高いバリアジャケット姿のまま抱きついていることに気付き、赤かった顔をさらに赤くした。
「はわわ! ごごごめんね!」
「しょ、しょうがないよ、びっくりしたんだろう?」
慌てて離れたフェイトに対し、シンは赤ちゃん蛇をぽいとそこら辺に逃がしながら彼女にフォローを入れる。
「……」
「……」
そして二人は互いに視線を反らしながら黙りこんでしまう。
「えっと……俺達何していたんだっけ?」
「あそうだ! アリシアだよ! 忘れちゃだめじゃん!」
「そ、そうだった! こんな事している場合じゃない!」
そして二人は本来の目的を思い出して立ち上がり、再びアリシアの捜索のために歩き出した。


「ふっ、お二人とも私の存在も忘れていますね……あれ? 目から汗が……」
その二人の様子を、デスティニーは目からきらめくものを流しながら見守っていた。


数分後、さらに奥に進んだシン達は一旦別ルートを通っていたクロノ達と通信を行っていた。
「じゃあそっちもアリシアは見つけられていないのか……」
(ああ、とにかく君達はこの先に見える滝まで向かってくれ、そこで落ち合おう)
「わかった、フェイト……」
通信を終えてシンはフェイトに話しかける、すると彼女は険しい表情でシンにすり寄ってきた。
「ど、どうしたんだフェイ……」
「しっ、静かに……あそこ見て」
フェイトはシンの口を自分の手で塞ぐとある場所を指差す、そこには……
(……!? 虎!?)
(いえ、あれはピューマですね)
「ウオルルルル……!」
顔に十文字の傷を付けているピューマが、シン達に今にも襲いかかりそうに唸っていた。
「どうする? やっつける?」
「適当に魔法でも見せて追い出そう」
「それがよいでしょうね」
そしてシン達もピューマに対して戦闘態勢をとった、すると……
『ほう、逃げぬとは意外な!』
「「「?」」」
突如ピューマが人間の声でシン達に話しかけてきた。
「今あのピューマ……喋らなかったか?」
「もしかして誰かの使い魔さんなのかな?」
「この世界に魔法は無いですよ?」
ピューマが人語を話す事に対し、あまり驚かないシン達。
『あれ? 全然驚かんのだな』
「いやだってピューマが喋ったぐらいじゃ……」
「この世界には不思議な生き物が沢山いるんですよ、この子とか」
そう言ってフェイトはピューマにデスティニーを見せた。
「ハロー」
『ぬおっ!? 喋っただとおおおおう!!?』
「いやいや……自分も喋るくせに何言ってんだ」
「あ、よく見たら後ろに誰かいるね」
「腹話術でしたか」
するとピューマの後ろにいる人影は、大量の汗を撒き散らしながら必死に誤魔化そうとしていた。
『ち、ちがうぞ! ワシはピューマじゃ!』
「腹話術お上手ですねー」
「あの……俺達暇じゃないんでもう行っていいですか?」
「ていうか無視してさっさと行った方がよろしいかと」
『え……ええいもういい! グッタグタじゃもう!』
するとピューマは糸が切れたように地面に倒れ、その後ろから長い白髪を三つ編みでまとめた40代ぐらいの男が現れた。
「なんじゃいもう! 最近の少年少女はドライすぎる! もっといいリアクションはとれんのか!」
「ご、ごめんなさい……」
「フェイト、謝らなくていいから」
「逆切れですか」

「シーン!」
「テスタロッサー」
するとそこに、別ルートを通っていたスウェン、ノワール、ザフィーラ、リインフォースが騒ぎを聞きつけてやってきた。
「あ、スウェン」
「何をしているんだこんな所で、早くクロノ達と合流しないと……」
「ん? この男は何者だ?」
「いや、なんか急にピューマを使った腹話術を見せてきて……」
「腹話術?」
「い、犬が喋っただとおおおお!!?」
男は狼形態のザフィーラが喋っているのを見て、滝のような汗をかきながら驚いた。
「く……くくく、まさかこの東方不敗マスターアジアが同じ日に二度も驚かせられるとは……! 貴様ら中々やりおるのう!」
「何ッスかこの濃いオッサン?」
「あの……このオッサンはほっといて早くアリシアさんを探しにいったほうが……」
「アリシア? む?」
その時、自分で東方不敗と名乗った男はフェイトの顔を見るや否や、目にも止まらぬスピードで彼女の背後に回り込んだ。
「「「「!!?」」」」
(い、いつの間に!?)
「失礼するぞ」
そして東方不敗は一瞬でフェイトのリボンを取り、髪を下ろした状態の彼女の顔を超至近距離で見つめた。
「じー……」
(うう!? 顔が近い……)
「お、おいオッサン! 何する気だよ!」
シンは東方不敗をフェイトから引きはがそうと彼に掴みかかろうとするが、一緒で後ろに回り込まれてしまう。
「落ち着け……貴様、名をなんと申す?」
「ふぇ、フェイトですけど……」
「フェイト、貴様はアリシアの姉妹か何かか? 瓜二つじゃのう」
「「「「「「「アリシア!!?」」」」」」」
東方不敗からアリシアの名前が出てきた事に驚き、彼に詰め寄った。
「あ、アリシアの事を知っているんですか!?」
「落ち着けと言っておろうが!」
東方不敗は問い詰めるシン達をのらりくらりと避け、フェイトの後ろに再び回り込んで彼女のほどいたリボンを再び結んであげた。
「この娘とよく似た娘なら昨日、弟子に襲いかかってきたのでワシが保護した」
「あ、アリシアは生きているんですか!? よかった……! ううう……!」
フェイトはリボンを結ばれながらうれし涙を流していた、そんな彼女を見てリインフォースがもらい泣きをしていた。
「よかったな、テスタロッサ……グスッ」
「なんでおめーまで泣いているッスか」
「ああ、ええっと……東方不敗マスターアジア、その子は今どこへ?」
「うむ、この先にあるワシのテントで弟子と一緒におる、良ければ案内しよう」
「よし、クロノ達にも知らせよう、合流地点の変更だ」



そして数分後、一行は東方不敗の案内で彼のテントがある場所にやってきた。
「おいドモン! 今帰ったぞ! お客様も一緒だ!」
「ふぉえ? ふぃひょう!?」
すると焚火後から焼き魚を頬張ったままの赤い鉢巻の少年が近づいてきた。
「貴様! 口に物を含んだまま喋るでない!」
「んぐ……ごくん、は! すみません!」
(弟子も暑苦しい……)
「ん? お前達は何者だ?」
「うむ……どうやらアリシアの保護者らしい、今彼奴はどこに?」
「はい! 川に魚を取りに行っております、もうすぐ帰ってくると思いますが……」

「おーい、フェイトちゃん、シンくーん」
「おーいたいた、ここにいたんかスウェンー」
するとそこに、空で捜索活動をしていたなのは達が降りてきた。
「あ、なのは達だ」
「こっちだぞ皆―」
すると鉢巻を巻いた少年……ドモンは空から降りてきたなのは達を見て滝のような汗をかいて驚いた。
「なっ……!? 空から人が!? お前達何者だ!?」
「な、なんだこの暑苦しい奴は……」
「ふっふっふ、ドモンよ……その程度で驚くとはまだまだ修行が足りんのう」
「そういうオッサンだってさっきザフィーラとデスティニーを見てビビって……」
次の瞬間、東方不敗は次の言葉を喋ろうとしたシンに目にも止まらぬ速さで接近して、無言のまま彼の顔を至近距離で見つめていた。
「近っ!? あ、いやその……」
「……」ゴゴゴゴゴ
「なんでもないです……」
シンは東方不敗の放つ威圧感に負け、口をつぐんだ……。


「師匠! ドモン―!」
その時、シン達のもとに巨大な魚を抱えた金髪の少女がやってきた。
「あのねー! さっき池でおっきな魚捕まえたから一緒に食べ……よ……!!?」
「あ、アリシア……?」
フェイトは現れた少女……アリシアの予想外すぎる再会に固まってしまう、そしてそれはアリシアも同様だった。そんな中スウェンはこの中で唯一彼女と面識があるシンとデスティニーに確認をとる。
「シン、あれがアリシアなのか?」
「う、うん……一応……」
「随分とまあ……ワイルドになりましたね彼女」

「ふぇ、フェイト……!?」
「アリシア……アリシアなの!?」
フェイトはアリシアを無事発見でき嬉しくて泣きそうな顔になっていた。
「……!!」
するとアリシアは抱えていた魚を投げ捨てると、そのまま森の奥のほうへ逃げて行ってしまった。
「逃げた!?」
「ちょ、ちょっとアリシア!!? どこいくのー!」
フェイトは慌てて彼女のあとを追って森の中に入っていく。
「フェイトちゃん!? まってー!」
「我々も追いましょう主!」
「解った! シン君とスウェンはここで待っててな!」
そして一歩遅れてなのはとはやてとヴォルケンズもフェイトの後を追って森の中に入っていった……。

「アリシア……」
「ふむ、どうやら複雑な事情があるようじゃのう、良ければワシらにも説明してほしいんじゃが」
突然の事に呆けるシンに質問する東方不敗。
「う、うん……実はあの二人は……」
シンは隠す必要はないと思い、PT事件の事、そしてフェイトとアリシアの関係について東方不敗とドモンに包み隠さず説明した。
「ふぐっ……! まさかアリシアにそんな悲しい過去があったなんて……!」
「ほほう、だからあやつは母親を探していると言っておったのか」
「プレシアさんを? どういうことですか?」
「わしらと出会った時、アリシアは母親を探しにここまで来たと言っておった、しかし貴様の話を聞く限りでは母親はもう……」
「…………」

「シーン、スウェーン」
するとそこに別行動をとっていたクロノとおとなフォームのアルフがやってきた。
「お、クロノ達も来たか」
「待たせて済まない、ところでそこの二人は?」
「ええっと……この辺に暮らしている東方不敗さんと、えっと……」
「ドモン・カッシュだ、なんだお前達は、こいつらの仲間か?」
「カッシュ……?」
クロノはドモンのカッシュという名字に聞き覚えがあるのか、彼にある質問をする。
「もしかして君は……ライゾウ・カッシ博士の関係者か?」
「……? 何故お前が父さんの名前を知っているんだ?」
「実は……」


その頃フェイト達は逃げたアリシアを追ってジャングルの中を右往左往していた。
「まって! どうして逃げるのアリシア!」
「……!」
アリシアはフェイトの言葉に耳を貸すことなく、一心不乱に彼女達から逃げていた。
「ヴィータ! 空から捕まえるんや!」
「わかった!」
ヴィータははやての指示に従い一旦空に上がり、急降下してアリシアに掴みかかった。
「おら! 大人しくしやがれ!」
「う~!! 離せええ!!」
するとアリシアは髪の毛をバチバチと鳴らすと、なんと全身から電気を放流しヴィータをしびれさせた。
「あががががが!!?」
「ヴィータ!!?」
「アレは……テスタロッサの魔法!?」
「バルディッシュ無しで使えるの!?」
一同は逃げるアリシアを追うのを一旦止め、黒こげになっているヴィータに近寄った。
「あがが……しびれる~」
「こりゃアカン、シャマル……ここでヴィータを治療してあげて、私らは引き続きアリシアちゃんを追う」
「は、はい……あら?」
その時、シャマルは自分達が来た方角から誰かが走ってくることに気付いた。
「こっちに向かって誰かきますね」
「アレは……東方不敗さん!!?」

「こらぁぁぁぁ!! またんかアリシアぁぁぁぁ!!」
東方不敗は猛スピードで走りながらフェイト達の横をあっという間に通り過ぎていった。
「足早!?」
「魔法を使っていないのに私達より早いよね……」
「あ、あの人は人間なのでしょうか?」
東方不敗の人並み外れた身体能力を目の当たりにして呆然とするフェイト達、するとそこにシンとスウェンもやってきた。
「みんな! 早くあのオッサンを追うぞ!」
「わ、わかった!」


一方アリシアを追っていた東方不敗は視界に彼女を捉えていた。
「コラアリシア! 家族が迎えに来たのになぜ逃げる!」
「師匠には関係ないもん! あっち行って!」
「ぬうううう! このバカ者があ!!」
東方不敗は懐から長い布を出すと、それをワイヤーのようにアリシアに向かって放つ。
「わああ!?」
アリシアは一瞬のうちにその布にぐるぐると巻きつかれる、そして東方不敗は彼女を捕えたまま木に釣るした。
「ぐわっはっはっは! ワシから逃げられると思うてか!!」
「うう~……無念」

するとそこにシン達と合流したフェイト達が追いついてきた。
「「アリシア!」」
「あ……! フェイト……シン……」
アリシアは彼らの姿を見るや否や逃げ出そうとするが、東方不敗の布はほどけることは無かった。そしてフェイトとシンは彼女に詰め寄った。
「アリシア! どうして逃げるの!?」
「やっぱりプレシアさんを助けられなかった俺達が嫌いなのか……?」
「ち、違うよ! そうじゃない!」
悲しそうな顔をするシンの言葉を慌てて否定するアリシア。
「じゃあなんで私達から逃げるの?」
「だ、だって……私、フェイトとシンに一杯ひどい事したんだよ? それに私のせいで母さんが居なくなっちゃったんだよ、今更会わせる顔がないよ……」
そう言って吊るされたままシュンとしてしまうアリシア。
「違う! アレは誰のせいでもない!」
「そうだよ! 俺はアリシアの事怒ってないよ!」
「でもでも……! 私は母さんをあんな風にしちゃって、フェイトに一杯ひどい思いをさせちゃって、沢山の人を悲しませて、だから……せ、せめて……」
「母親を見つけて、そこの娘に会わせようとしたのか」
すると話を聞いていた東方不敗が初めて会った時のアリシアの言葉を思い出し会話に割って入ってくる。
「プレシアさんを……? でもあの人は見つかる事はないって……」
「嘘だもん! 母さんはきっとどこかで生きている! 私はあきらめないもん!」
アリシアはシンの言葉を拒絶するようにじたばたと暴れ出す。
「どうやら聞く耳持たずやな」
「どうしたらいいんだろう……」
後ろで話を聞いていたなのは達もお手上げ状態といった様子だった。すると……
「あの……マスターさん、アリシアを降ろしてくれますか?」
「……いいだろう」
東方不敗はフェイトに言われた通り、彼女に巻きつかせた布を解き地面に下ろした。
「フェイト……?」
「……」
フェイトは何も言わず、アリシアを優しく抱きしめた。
「ふぇ、フェイト?」
「アリシア……私はね、あなたの事も母さんのことも、全然憎んでなんかいないよ」
「え……?」
フェイトはアリシアの赤い瞳を自分の赤い瞳でじっと見つめながら言葉を続けた。
「私は確かに母さんの本当の子じゃない、アリシアのクローンでこの命は作られたものだけど……でもその代わり、大切なものが沢山出来たんだよ」
フェイトはそう言って後ろにいたなのはやはやて、そしてシン達を見る。
「母さんが私を生み出してくれなかったら、私はなのはやはやてやシグナム達に出会えなかったし、シンと出会えなかった……だから恨んでなんか全然ないよ」
「「フェイトちゃん……」」
(何気にシン・アスカを特別扱いか……)
ちょっと感激するなのは達の中で、シグナムはフェイトの発言の中に含まれているものを感じ取っていた。
「ほ、本当に怒ってないの?」
「うん」
すると、アリシアは目からボロボロと涙を流してフェイトに抱きついた。
「ご、ごめんね……! 私バカだから、またフェイトに迷惑かけたね……!」
「いいんだよ、アリシアの気持ち……私にも十分理解できたから……!」
そう言ってフェイトもまた、アリシアを抱きしめながら大粒の涙を流していた。
「フェイト……フェイトぉ……!」
「アリシア……グスッ……」

「よかった、二人とも仲直りできて……」
そんな二人をシンとなのはは心からほっとした様子で見守っていた。
「そうだね、あの事件で叶えられなかった願いの一つがようやく叶えられたんだ」


「こちらはやて、アリシアちゃんは無事保護出来たで、クロノ君」
『そうか、それじゃ一旦合流してアースラに戻ろう……ドモン・カッシュと一緒にね』
「わかったでー」



こうしてFCでの騒動はあっさりと幕を引いた、しかし……彼らは知らなかった、戻った矢先にまた新たな騒動に巻き込まれる事に……。










とりあえず今回はここまでにします、次回は舞台をアースラに移します。


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