第四話「迷子の魔法使い」
東方不敗らが海鳴に来てから数日、マユはヴィータとここ数日で仲良くなったアリシアと共に近くの公園で遊んでいた。
「だーるーまーさーんーがこーろーんー……」
鬼役のマユは電灯に顔を当ててカウントをしている、すると……
――ドヒュン!
「だ! ってうひゃ!? アリシアちゃんはやーい!」
「へへん! 一番乗り!」
東方不敗の元での修業の成果で脚力を鍛えていたアリシアは一瞬のうちに、振りむいたマユと目と鼻の先にまで移動していた。
「てめえ! マユは子供だぞ! ちょっとは手加減しろ!」
「はっはっは! 勝負の世界は厳しいのだー!」
「でもうごいたからアウトだよー」
「ぬわんってこったー!!?」
「何をしとるんだあいつら……」
「でも楽しそうよね」
そんな三人の様子を、シャマルとこいぬフォーム状態のザフィーラは暖かい目で見守っていた。
「今日はいい天気ね~、はやてちゃんはなのはちゃん達と一緒にすずかちゃんのおうちに遊びに行っているし、スウェンとノワールとリインフォースはシン君とドモン君と一緒にアースラ……シグナムも走ってくるとか言ってどっか行っちゃったし」
「平和だな……」
「平和ねー」
そして二人はまったりゆっくりと遊んでいるマユ達の様子を眺めていた……。
その頃アースラにある模擬戦ルーム、そこでノワールとセットアップしたスウェンと生身のドモンが模擬戦を行っていた。
「いくぞ! 超級覇王電影弾!!」
「見切った」
「避けながらショーティー連射―!」
「ぐわ! 俺の必殺技が防がれた!?」
そしてその様子を、シンとヴィアはモニタリングルームで見ていた。
「すげー、どっちも互角だー」
「フューチャーセンチュリーの人は基本的に身体能力の高い人が他の世界と比べて多いのよね、それでもごく少数、ガンダムファイターと呼ばれる人のみだけど」
「そう言えばヴィアさん、話ってなんですか? 俺とスウェンだけ呼び出すなんて……」
「実はスウェン君の体の事なんだけど……」
「スウェンの?」
「うん、彼が何故魔法を使えるのかさっき調べてみたんだけど……彼の体の中にジュエルシードが入っていたわ」
「……!」
「ジュエルシード……一年前のPT事件の時、貴方がシンやテスタロッサ達に集めさせていたロストロギアですね」
するとそこに“リバース”の接種に来ていたリインフォースが現れた。
「うん、あの時俺の中にある以外の20個のジュエルシードはプレシアさんと一緒にどこかに行っちゃったんだけど……」
「それがどうしてスウェン君に……彼に記憶が無いのと何か関係があるのかしら?」
「スウェンが何故この世界に来たのかも気になります、何者かに連れてこられたのでしょうか……」
数分後、模擬戦を終えたスウェンとドモンはシャワールームに赴き、大量にかいた汗をシャワーの水で洗い流していた。
「? そう言えば今日はお前の師匠の姿が見当たらないな」
「師匠なら今俺の世界の方へ行っている、なんでも他のシャッフルの方達と話があるそうだ」
「シャッフル同盟って五人で編成されているんスよね? あんなのがまだ四人もいるんスか……」
「あんなのとはなんだあんなのとは!? 確かに俺も初めて師匠が戦っている姿を見た時は宇宙人か何かかと思ったが……!」
「お前も大概だな」
それから一時間後、アースラでの用事を終えたシンとドモン、スウェンとノワールはある用事の為それぞれ海鳴市の中を歩いていた……。
「それにしても珍しいな、ドモンが買い食いしたいなんて」
そう言ってシンはいまだに海鳴の町に不慣れはドモンを案内していた。
「いやー、師匠とずっと一緒にギアナ高地で修業していたから、全然甘いものを食べてないなーと思って……翠屋のケーキを食べてその欲望が一気に解放されてしまったのだ!」
ドモンは胸を張りながらお腹をグーと鳴らせて堂々と答える。
「それならまた翠屋に行けばいいんじゃね?」
「いや、実はこの前おいしい鯛焼き屋の話をアリサ達から聞いてな、是非食べてみたいと思ったのだ!」
「ふうん、まあ別にいいけど……」
そして二人はその鯛焼きが売っている露店のある公園にやってきた。
「お、アレかな……すっげーいいにおいがする」
「おおお……よだれが出てきた! 早く行くぞ!……ん?」
その時二人は露店の前で鯛焼きが作られていく行程をじっと見つめている青いツインテールの女の子がいた。
「じー……」
「あのお嬢ちゃん? 買わないなら離れてくれると助かるんだけど……他のお客さんにも迷惑だし……」
露店の店主はその場から石のように動かない少女に弱り果てていた。それを見たドモンは彼女に怒鳴りこむ。
「コラお前! 店の親父が困り果てているだろうが! それと俺が鯛焼き買えないだろ!!」
「うっさいなぁ……なんだよ……」
少女は怒鳴られて不快に思ったのか、不機嫌そうにシンとドモンの方を向いた。
「「……?」」
二人はその少女の顔を見て、思わず首を傾げる。
「……フェイト……じゃないよな?」
「アリシア、イメチェンか?」
その少女の顔は、フェイト、もしくはアリシアと瓜二つだったのだ。
「誰だそれは? 僕の名前は雷刃の襲撃者、レヴィ・ザ・スラッシャーだ!」
(あらやだあの歳で邪気眼に覚醒していましたか)
シンの背負うリュックの中に隠れていたデスティニーはレヴィと名乗った少女を憐れむ目で見ていた。
「む? なんだお前らそのバカにしたような目はー!? 僕は強いんだぞ!」
「強い……? それは聞き捨てならないな」
そう言ってドモンは手をぽきぽきと鳴らした。
「やるかー? 僕にかかればお前なんてケチョンケチョンだ!」
「ふっ、流派東方不敗の俺に敵う敵などいないのだ!」
二人は向き合うと不敵な笑みを浮かべて身構える、その時……。
―――ぐぅ~×2
二人のお腹から腹の虫が鳴いた。
「くっ……ダメだ! お腹が空いて力が出ない……!」
「お、俺もだ……!」
「何やってんだよお前ら」
数分後、三人は露店で買った餡子入り鯛焼きを頬張っていた。
「うまああああああい!」
「鯛焼きはうまいぞはやいぞかっこいいぞー!」
「とほほ、俺のおごりかよ……考えてみればドモンってこの世界のお金は持っていないよな……」
そう言ってシンは軽くなった自分の財布を見て涙をきらりと流した。
「いやーシンって言ったっけ? お前いい奴だなー、おかげで助かったよ! 僕の仲間が皆迷子になっちゃってさー」
レヴィは鯛焼きを平らげると、おごってくれたシンにお礼を言った。
「なんだ友達とはぐれたのか? 何なら一緒に探してやろうか?」
「いーよいーよ! エネルギーも補給したし僕一人で大丈夫! じゃあねー!」
レヴィは再びシン達にお礼を言うと、何処かに走り去って行った……。
「変わった奴だなあ、モグモグ……」
「世の中には似た奴が三人いるっていうけど、本当だったんだなー」
(あの子、どこかで会ったような……)
数分後、レヴィは少し離れた場所で、仲間である少女二人と再会していた。
「あ! シュテル! それにロード! やっと見つけた~! どこに行ってたんだよ?」
「それはこっちのセリフだ塵芥!」
「勝手にふらふらと……あの人も心配していましたよ」
するとレヴィは“あの人”という言葉を聞いて手をポンと叩いた。
「あそっか! さっきのシンって子……アイツとそっくりだったんだ!」
「何を言っている? それよりそろそろ始めるぞ……!」
一方その頃、スウェンはノワールと共にある本を探しに海鳴市の商店街にある本屋にやって来ていた。
「お目当ての本が売っててよかったッスねアニキー」
「ああ、それじゃ家に帰ろう……!?」
その時、二人は異様な気配を察知して立ち止まる。
「人が消えた? 結界か?」
「去年シグ姐さん達が使った結界と似てるッスね」
突如人が消え、辺りが不気味なほど静まりかえった事に気付いたスウェンはバスケットの中から出てきたノワールと共に辺りを見回す。
「とにかくはやて達と連絡を取ろう、それとリンディ提督とエイミィとも……」
「! ちょっと待ってくださいアニキ! あそこに人がいるッス!」
「何?」
ノワールが指差す方向には、空を不思議そうに見上げているメガネをかけた天パーの少年がいた。
「取り残されたのか……ノワール、もう一度隠れてくれ」
「へーいッス」
そう言って再びバスケットの中に入るノワール。それを確認したスウェンはその少年の元に向かった。
「おいそこの君……ここは危ないぞ」
「うん? ああ……解っているさ」
スウェンに声を掛けられた少年は頬笑みながら彼の方を向いた。
「ふふ、どうやら大変なことになっているみたいだねえ……これも魔導の力なのかい?」
「? 魔法の事を知っているのか?」
(……! こいつまさか……!)
ノワールが何かを感じ取る一方、少年は笑顔を絶やさず懐からある物を出しながら言葉を続ける。
「うん、よく知っているよ、魔法の事も……スウェン・カル・バヤン一等兵、君の事もね」
「……!?」
少年の手には、スウェンの名前が刻まれた軍人が首に掛けるダグが握られていた。
「お前はなんだ!? 何故俺の事を知っている!?」
「ああ、そう言えばまだ名前を名乗っていなかったね、僕はリジェネ・レジェッタ……イノベイドさ」
「イノベイド……?」
リジェネと名乗った少年は、ノワールのいるバスケットに声を掛ける。
「君も出てきたらどうだい? 久しぶりに話でもしようじゃないか」
「……あーあ、やっぱりバレてたか……」
そう言ってノワールはひょっこりとバスケットから顔を出す、すると彼の頭の中にリジェネの声が聞こえてきた。
(大丈夫、君の正体は彼に話したりしないよ)
(……一体何が目的だ?)
(つれないなあ……僕はただ真実というカードを持って彼に協力してほしい事があるんだ)
(協力?)
そしてリジェネは再びスウェンの方を向く。
「僕はね……君に会いに来たのさ、真実を伝え、協力してもらうために……」
「協力だと?」
「ああ、それは……」
―――ドゴォォォォン!
その時、スウェン達から少し離れた場所で大きな爆発音が響いた。
「……話は後だ、リジェネだったか……話は後で聞くからここで待っていてくれ」
そう言ってスウェンはノワールとセットアップし爆発音が響いた方へ飛翔した……。
「ふふふ、魔導師の戦いか、今後の為にちょっと覗いてみようか」
リジェネは妖しく微笑みながらスウェンが飛んで行ったあとを追いかけて行った……。
その頃、外でランニングをしていたシグナムもまた、異変に気付きバリアジャケットに身を包んでいた。
「なんだコレは……シャマルの仕業ではないようだが……」
その時、シグナムは何者かが近づいてくるのに気付き、レヴァンティンを構える。
「なんだこの魔力は……かつて感じた物が色々と混じったような……!?」
するとシグナムの目の前に、赤い髪の16歳ぐらいの身丈の少年が降り立ち、彼女はその少年の顔を見て驚愕した。
「シン……シン・アスカ!?」
その少年の顔は、髪の毛の色が違うとはいえ、顔はシンそっくりだったのだ。
(どういうことだ!? まるで……アスカが成長したような姿だ……!)
「へえ、アンタ俺の名前を知っているのか」
シンに似た少年はシグナムを見て不敵に笑う。
「貴様一体何者だ!? 何故アスカと同じ顔をしている!?」
「質問しているのはこっちだぜ、まあいい……今の俺はシンじゃない、俺は……」
少年は自分の身長より大きい剣を構えて答える。
「俺はヴェステージ……今からアンタをたたきのめす男だ」
本日はここまで、短いですね……まあ超級編第二部のプロローグ的位置づけですからね今回の話は。
そう言えばなのはゲーム第二弾の発売日が決まりましたね、そのゲームの内容によってはここの内容も修正しなきゃいけませんかもね。
※補足説明
リジェネには魔法は使えません、作中に出てきた念話は脳量子波によるものです、なんでノワールがそれを受信できたのかはまだ秘密です。