シンはクロノ達と共にレヴィと……自分とそっくりな顔をした男と対峙していた。
「なのは達同様闇の書がシンの姿を真似たのか、でも何故成長した姿で……?」
「なんにせよ、どうやらあいつは説得には応じてくれそうにねーぞ」
対してシンとそっくりの男……レヴィにヴェステージと呼ばれた男は、シンの姿を見て自嘲気味に笑う。
「ハッ、なるほどなあ……闇の書の記憶で見た時は信じられなかったが、どうやら本当に過去の俺が魔法を使ってやがる」
「過去? どういうことなのヴェステージ?」
「なんでもない、そんなことよりボヤボヤするな、あいつらの魔力を狩ってシュテルとロードを取り戻すぞ」
「う、うん……」
レヴィは一瞬迷いながらも、バルニフィカスを強く握りしめて先端をシン達に向ける。
「くっ……もう少しでシンの説得が成功したものを……!」
「仕方ない、皆行くぞ!」
それを見たクロノ、ヴィータ、ザフィーラもそれぞれ身構えて戦闘態勢に入る。
「主、我々も……」
「う、うん」
シンもデスティニーに促されながらアロンダイトを手にとって身構えた……。
その頃、公園で待機していたドモン、シャマル、アリシア、マユはシン達が戻ってくるのをずっと待っていた。
「遅いわねヴィータちゃん達……苦戦しているのかしら?」
「俺達も援護に行った方がいいか? だが……」
「……」
その時、アリシアはマユが何か考え事をしていることに気付き、彼女に話しかける。
「? どしたのマユ? シンが心配なの?」
「……あのね、何となくだけど……マユ、おにいちゃんのところにいかなきゃいけないきがするの」
そう言ってマユは突如走り出し、公園を出てシン達が戦っている場所に向かって行った。
「あ! マユちゃん待って!」
「おいおい! どこに行くんだ!」
そしてドモン達もマユを追いかけて公園を出て行った……。
一方シンとクロノはヴェステージと、ヴィータとザフィーラはレヴィと二手に分かれて戦っていた。
「このぉっ!」
シンはクロノの援護を受けながらヴェステージに接近しアロンダイトを振り下ろす、しかしそれはビームサーベルによって防御された。
「おらよ」
ヴェステージはそのままシンの腹部に右ひざをけり込む。
「うぐぅっ!」
「シン! くそっ!」
クロノはシンが落下していくのを見て舌打ちし、そのままヴェステージに向かって魔力弾タイプのスティンガーレイを放つ。
「甘いな……」
対してヴェステージは左腕に持っていたシールドを投げつけ、スティンガーレイを弾いてしまった。
「な! あんな防ぎ方を……!」
「おまけだ」
ヴェステージはビームサーベルをビームライフルに持ち変えると、その弾を投げつけたシールドに向かって撃った。
「うわっ!」
「あああ!!?」
シールドに弾かれた複数のビーム弾はそのまま軌道を変えてシンやレヴィと戦っているヴィータやザフィーラに直撃した。
「流石ヴェステージ! 強いぞ早いぞかっこいいー!」
「よそ見してるな、落とされるぞ」
「あ、うん……ゴメン……」
レヴィは善戦するヴェステージに称賛の声を送るが、逆に怒られてしまう。
「くそ! なんなんだよお前―!」
シンはダメージを受けながらも再びヴェステージに接近する、すると……。
「動きが単調だバカ」
「うわっ!?」
彼にうまく首根っこを掴まれて、身動きが取れなくなってしまった。
「シン!」
「ダメだ、助けようにも邪魔が入って……!」
射撃魔法で助けようにもシンが盾に恐れがあってクロノ達は何も出来なかった。
「くそ! 離せよこのバカ!」
「自分にバカっつうなよ、てかなんでお前魔導師なんかになったんだ?」
「うっせー! 自分で決めたんだ! もっと強くなって皆を守るために……!」
「ふうん、まあ騙されているだけだろ、お前には何も守れない……守らせてくれねえよ」
「な!?」
シンは自分の目標を否定したヴェステージをにらみつける。
「管理局はお前のようなガキを前線に出して戦わせるような組織だぞ? お前……都合よく利用されているだけだ、使えなくなったら捨てられるだけだ」
「なんだよ! リンディさん達がそんな事するわけ……!!」
「いいや判るね、お前はそう言う星の下に生まれたんだ」
ヴェステージはシンと話を続けたまま、死角から襲いかかってきたクロノの顔に空いていた左手のパンチを放った。
「がっ!」
「クロノ!」
「ついでに忠告しておく……友達や仲間なんて作るな、そんなもの錯覚だ、相手はただお前が利用しやすいから付いているだけだぞ」
「う、うるさいうるさいうるさい!!! 何も知らないくせに好き勝手言うな!!!」
シンの怒りは頂点に達し、首根っこを掴まれたまま力の限り暴れまわる。
「しょうがないな……」
するとヴェステージはシンを掴んだまま空高く飛び上がり、そのまま地面に向かって急降下していった。
「うわあああああ!!!」
「し、シン!!」
その様子を見ていたヴィータが止めに入ろうとしたが、レヴィに行く手を遮られてしまう。
「ヴェステージの邪魔はさせないよ……!」
「くそ! どけよこの野郎!」
そうこうしているうちに、シンはヴェステージに地面に叩きつけられる。
「がはっ……!」
魔法で軽減しているとはいえダメージはすさまじく、シンの全身に電流が流れたような衝撃が襲う。
「……」
ヴェステージは間髪いれずシンの顔や体を踏みつける。
「あがっ! がっ!」
「徹底的に叩きのめせばもう戦いたいなんて思わないだろ……悪いな、これもお前の為だ」
「やめろおおおお!!!」
見ていられなくなったザフィーラがレヴィに目もくれずヴェステージに殴りかかる、しかし彼の拳はひじ打ちで防がれてしまった。
「邪魔くせえな……この駄犬」
「うおおおお!!!」
ザフィーラはそのままヴェステージに掴みかかり、彼をシンから引き離した。
「シン……!」
そこにクロノが降りてきてシンに治癒魔法を掛ける。
「ごめん……油断した……」
「仕方ないさ、とにかくなのは達がくるまで……」
その時、
「うおおおおお!!!!」
「ぬううううう!!!?」
突如ヴェステージがザフィーラの首を掴んだまま戻って来て、そのままザフィーラをクロノに向かって投げつけた。
「うわ!!」
ザフィーラと共にビルの中まで吹き飛ばされるクロノ、そしてヴェステージはそのままシンへのリンチともとれる攻撃を再開した。
「回復魔法はやめておいたほうがいいぞ……苦痛が長引く」
「うわあああああ!!!」
その様子を、クロノは瓦礫にまみれ戦慄しながら見ていた。
(なんだ奴のあの執拗さは……まるで鬼じゃないか!)
「ボサッとしている暇はないぞ……早く助けなければ……!」
すると次の瞬間、彼らのすぐ傍にヴィータがレヴィによって吹き飛ばされてきた。
「うわあああ!!」
「ヴィータ!」
「ふふん! この僕にスピードで勝てるわけないだろ!」
そしてすぐレヴィがヴェステージの元に降りてくる、レヴィはシンを執拗に攻撃しているヴェステージに引きつった顔で止めに入ろうとする。
「あ、あのヴェステージ……もうそのへんにしたほうが……その子、僕にタイヤキ奢ってくれたんだ」
「黙ってろ」
「うっ……」
しかしヴェステージに鬼の形相で睨まれ縮こまってしまう。
「お前はあいつらを相手にしてろ、俺はこいつを痛めつけるのに忙しい」
「う、うん……」
そう言ってレヴィはクロノ達の方に向かって行った。
「さて、俺は……ん?」
ふと、ヴェステージは自分の足がシンに噛みつかれている事に気付く。
「ふー! ふー!」
「ったく悪あがきを……そんな事しても無駄だっていうのに……」
「まるで昔の自分を見ているよう……ですか?」
「あん?」
ヴェステージはふと、シンの傍に30センチ程度の大きさの女の子……デスティニーがいる事に気付く。
「誰だお前? コイツのデバイスか?」
「ええ、デスティニーと申します」
「デスティニー……?」
ヴェステージはその名前に聞き覚えがあるのか、首を傾げる。
「なんでお前、俺のMSと同じ名前してんだよ、しかも武装までそのままだ」
「まあ私は……貴方が知っているデスティニーと“同一人物”といっても過言じゃありませんから」
「はあ? 何言ってんのお前?」
「そんなことより……」
デスティニーは少し殺気の籠った目でヴェステージを睨みつける。
「その足……どけてもらえませんかね? いくら前の御主人とはいえ今の御主人を傷つけられるのは……自傷行為見てるみたいで辛いんですよ?」
「は! 止められるものなら止めてみろよ、お前のその小さな体で出来るならな」
「いえ、止めるのは私ではありません」
その時、突如ヴェステージの頭上から黄色い魔力弾が降り注いできた。
「……!!?」
「止めるのは彼女達です」
ヴェステージはすぐさまその場から離れて攻撃を凌いだ、すると彼の目の前になのは、フェイト、はやてが降り立った。
「シン君大丈夫かいな!?」
「遅くなってゴメン!」
「さ、三人とも……」
シンははやてに抱き起こされ、すぐさま治癒魔法を掛けられる。
「ち、援軍か……管理局の奴らか」
ヴェステージは鬱陶しそうになのは達に向かってビームライフルの弾を放つ……が、なのはが展開した魔力障壁によって防御される。
「あー、こいつは手強そうだ」
「よくも……よくもシンを!」
フェイトは傷ついたシンを見て完全に頭に血が上っており、今にもヴェステージに飛びかかろうとしていた、その時……。
「待ってフェイト……! こいつは俺が倒す!」
治療を終えたシンがむくりと起きあがり、飛びかかろうとしたフェイトの肩を掴んで制止した。
「大丈夫なの? まだまだひどい怪我だけど……」
「平気だよ、なのははあのレヴィって子を止めてくれ」
「んじゃ私となのはちゃんが行くわ、シン君はフェイトちゃんと一緒に戦うとええ」
そう言ってはやてはなのはを連れてレヴィの方に向かって行く。
「フェイト……無茶はするなよ、あいつは強い」
「シンこそ、怪我しているんだから無理しないで、クロスレンジは私に任せて」
対してヴェステージはシンとフェイトを見て鼻で笑っていた。
「はんっ! 仲間なんてそんな下らないものに頼っているようじゃダメだな」
「うるせえ!! お前は俺がやっつけてやる!」
そう言ってシンはフェイトと共にヴェステージに向かって行った……。
一方なのはとはやては消耗しきっていたヴィータ達を安全な場所に移動させ、レヴィと戦っていた。
「くそっ! 二対一なんてひきょーだぞ!」
「これ以上被害を増やすわけにはいかんからな! 手段は選んでられへん!」
「大人しくしてもらうよ!」
そう言ってなのははレイジングハートの先端からディバインバスターを放つ、しかし動きの速いレヴィには当たらなかった。
「へへーんだ! そんなノロい攻撃当たらないよーだ!」
「あーん! どうすればいいのー!」
「フェイトちゃんと同じタイプなんやな、流石似てるだけある……でも本人と比べて慎重さが足りひん」
そう言ってはやてはなのはにレヴィの相手を任せ、自分は魔法の詠唱を始める。
「させないぞー!」
「それはこっちのセリフ!」
はやての詠唱の邪魔をしようとするレヴィの往く手をなのはが阻む。
「むー! 邪魔するな!」
「ごめんね……でもこっちも必死なんだ!」
火花を散らしてぶつかり合うレイジングハートとバルニフィカス、そして一瞬の隙をついてレヴィはなのはを吹き飛ばした。
「くっ……はやてちゃん今だよ!」
「わかった! 響け終焉の笛……!」
次の瞬間、はやての頭上に三つの魔法陣が現れる。
「ラグナロク!」
そしてそこから放たれた光線はすべてレヴィに向かっていった。
「うわわわわわっと!!?」
レヴィはあまりの魔力量に驚きながらもすべて回避してみせた。
「だから何度も言っているだろう! 僕にこんなノロい攻撃は……」
「うん、当たると思ってへんよ」
「え?」
その時、レヴィの両手両足に桜色のバインドが掛かった。
「なっ!? バインド!?」
「私の攻撃は囮や! なのはちゃん!」
「いくよレイジングハート! カートリッジロード!」
なのははレイジングハートからカートリッジを排出して魔力を高め、先端をバインドで動けないレヴィに向ける。
「くそ! 動けない!!」
[Excelion mode]
「いくよ! 全力全開……! スターライトぉ……ブレイカー!!!」
次の瞬間、レイジングハートから特大の桜色の光線が放たれ、レヴィを飲み込んだ。
「うわああああ!! そんな~!!」
レヴィはそのまま力尽きて地面に落下していった。
「ザフィーラ!」
「御意!」
はやては落下していくレヴィをザフィーラに受け止めるよう指示して救い出した。
「ナイスだねザフィーラさん!」
「なのはちゃんも! これで後はあのシン君のそっくりさんだけや!」
一方シンはビームライフルでヴェステージと激しいつば競り合いを繰り返すフェイトを援護していた。
「たあああ!!!」
「ふーん、意外とやるなお前、レヴィと違って冷静さがある」
「くらえこの野郎!」
シンはフェイトに当てないようビームライフルの弾を放つが、ヴェステージに中々当たらなかった。そんな時ヴェステージは必死になって戦っているフェイトに話しかける。
「なあ……君も大切に思っていた人間に手ひどく裏切られた口だろ? 闇の書の記憶が教えてくれたぞ」
「フェイト! 耳を貸すな!」
ヴェステージの問いかけに何も答えないフェイト、それでもヴェステージは話を続けた。
「そんな目に遭って人を信じるなんてバカらしく思わないか? どうせなら一人で生きて行く方が楽でいいぞ」
「母さんの事ですか……確かにつらい思いはしました」
「だろう? なら……」
その時、フェイトのヴェステージへの攻撃にキレが増し始めた。
「でも私には……私を信じてくれている人がいるんです、私はその人達を裏切る事はできない」
「……!?」
するとバルディッシュの刃がヴェステージの頬をかすり、そこから一筋の血が流れた。
「私も、シンも……自分の信じるものと信じてくれている人の為に戦う……! 何もかもあきらめた貴方とは違う!」
「……!!」
するとヴェステージは額に青筋を浮かべながらビームサーベルを振りまわしてフェイトを追い払う。
「何も知らないガキが偉そうなことを! お前は信じてきた仲間に……友達に利用された事はあるか!? 家族と好きだった子を殺した奴に頭を下げる屈辱が判るか!? 尊敬してたやつに理不尽に殴られた上に裏切られて! 挙句の果てに訳の分からない事言って平和になる筈だった世界をぶち壊された奴の気持ちが判るか!? 恋人がそんなカスを庇って土壇場で裏切った奴の気持ちが判るか!? 判んねえだろクソガキ! お前も綺麗事がお家芸か!」
「……」
怒気混じりのヴェステージの言葉にフェイトは何も言わない。
「結局……訳の分からない綺麗事でできてる奴が世界を殺すんだ! 実際殺されたしな!お前らもあの四人と同じだ!」
「うるさい……!」
するとフェイトはスピード形態のソニックフォームに変身する。
「皆をそんな人達と一緒にしないで! 皆……こんなはずじゃなかった世界を生きて生きて生きて今も一生懸命生きているんです! 訂正してください!」
するとフェイトの隣にシンがアロンダイトを持って構える。
「なんでアンタが俺の顔をしているのか知らないけど……俺は絶対アンタみたいにはならない! 一人じゃ何も出来なかったけど、プレシアさんを助けられなかったけど……フェイトやスウェンやなのは達と一緒ならなんでもできるって判ったから!」
そして最後にデスティニーが静かな口調でヴェステージに語りかける。
「貴方は……確かに酷い思いをしてきました、私にはそれが良くわかります……でも、人を信じる事をやめないでください、そんなの……悲しいです」
「……ぅぅぅぉおおおおおおおああああああがあああああああ!!!!! だまれえええええええええ!!!!!」
するとヴェステージは突如狂ったように怒り始め、シンとフェイトに向かって突撃した。
「……もうお休みくださいシン・アスカ、この時間は……彼らの物なのです」
最終話「Silent Bible」
「シン!」
「ああ!」
対してシンとフェイトは互いに頷き合うと、まずシンがヴェステージに向かってビームライフル、フラッシュエッジ、ビーム砲と順番に放っていった。
「く……!」
容赦ない怒涛の砲撃に怯むヴェステージ、そして彼はそのおかげで接近するフェイトに対処することが出来なかった。
「やあああああ!!!!」
光の閃光となってヴェステージを何度も斬りつけるフェイト、するとシンもまたアロンダイトを持ってヴェステージに突撃する。
「あぐっ……! なめるなああ!!!」
ヴェステージは向かってくるシンに対してビームサーベルを振りはらう、しかし……そこにはもうシンの幻影しかなかった。
「エクストリームブラスト!」
シンは一瞬のうちにヴェステージの背後に回り込み、エネルギー態となったアロンダイトを彼の背中に突き刺した。
「やれ! フェイト!」
「せやあー!!!」
フェイトはそのままヴェステージの体をバルディッシュで斜めに袈裟切りした。
「う……ごお……!」
するとヴェステージはそのまま力尽き、ゆっくりと地面に落ちていった……。
「終わった……のかな?」
「みたいだな……」
シンとフェイトが地上におりると、そこには本のページとなって少しずつ消えて行くヴェステージの姿があった。
「アンタ……!」
「ははは……俺はもうこれまでらしい、まあいいさ、こんなクソみたいな記憶もっているくらいなら消えた方がマシさ」
そしてヴェステージは優しい目でフェイトを見つめる。
「俺の傍にも……君みたいな子がいればあんな事にはならなかったのかな?」
「貴方は……」
その時、消えかかっているヴェステージの元に、なのは達に敗れたレヴィが駆け寄ってきた。
「ヴェステージ! どうしたの!? なんで消えかかっているの!?」
「レヴィ……いいんだ、俺はもう色々と疲れた」
「ヤダよ! また面白い話聞かせてよ! 一緒に遊んでよ! おいしいごはん作ってよぉっ! うわあああああああああん!!!」
そう言ってレヴィはヴェステージにしがみ付きながら大声で泣き始めた。
「レヴィ……」
「消えちゃうなんてヤダよぉ! ううぅぅ……! グスッ……!」
「なんだよ、あんたにもいるじゃん、信じてくれる人……」
シンの皮肉に対し、ヴェステージは自嘲気味に笑う。
「ははは、そうみたいだ……俺は……目を背けていたらしい」
「よかったじゃないですか、自分の為に泣いてくれる人がいてくれて……」
その時、シン達の元にある人物が駆け寄ってきた。
「おにーちゃん!」
「あ! マユ! なんでこんな所に!?」
「……!!?」
シンはシャマル達と一緒にいる筈のマユが突然現れた事に驚く。
「あのね、わたしなんだかおにいちゃんのところにいかなきゃいけないとおもってね、あれ?」
その時マユは初めてヴェステージの存在に気付いた。
「おにーちゃんがふたりいる……どうして? フェイトちゃんもふたりいるー」
「私達にもよくわからないんだ、ごめんね」
「マユ……!」
その時、ヴェステージは消えかかっている体を必死に起こしてマユの方を向く。するとその様子を見ていたデスティニーがマユにある提案をする。
「マユさん……その人はもうすぐ消えてしまいます、だから怖くないよう手を握ってあげてください」
「てを? わかったー」
マユはデスティニーの言うことに従い、消えかかっているヴェステージの手を握る、すると……ヴェステージの目から沢山の涙があふれてきた。
「はは……は……まさか、マユとまた出会えるなんて……ごめんな、守ってあげられなくてごめんな……」
そしてヴェステージはそのまま、自分達の様子をじっと見守っていたシンの方を向く。
「シン・アスカ……ちゃんと妹を……家族を守ってやれよ」
「当たり前だ、マユは俺がちゃんと守る」
「私達も一緒です」
シンとフェイトの力強い言葉に、ヴェステージは満足げな表情で眠りに付いた。
「ありがとう……レヴィ、怒ってばっかでごめんな、シュテルやロードにも……よろしく伝えてくれ」
そして、ヴェステージの体は完全に本のページとなってパラパラと消滅していった……。
「ヴェステージ……!! うう……ひっく……!」
「よしよし、もうなかないで」
マユは隣で泣いているレヴィの頭を優しく撫でた。するとそこに……。
「おーいシン君―! フェイトちゃーん!」
「おーい! 終わったのかー?」
「マユちゃーん!どこ行ったのー!」
「主―、皆―」
それぞれ別の場所で戦っていたなのは達、ヴィータ達、スウェン達、そしてマユを探しにやってきたシャマル達が集まってきた。
「これで……一応終わったのか」
「そうみたいだね」
シンとフェイトは集まってくる仲間達を見て、今回の事件が終わりを告げたことを悟り安堵の表情を浮かべていた……。
こうして、後に闇の欠片事件と呼ばれる出来事は終わりを告げた。
シン達に保護されたレヴィらマテリアルズは管理局によって引き取られ、リバースの接種を受けながら更生施設に入り罪を償う事になった。
なお、スウェン・カル・バヤンが発見したというリジェネ・レジェッタという人物に関しては、その後の管理局の調査でも彼を発見することが出来ず、彼は行方不明者として処理される事となった。
だが彼が最後に目撃された前後に管理局のレーダーに強い電波障害が発生していたことが判り、管理局はその事象とリジェネ・レジェッタとの関連性を調べる方針でいる。
今回はここまで、つづけてエピローグを投稿いたします。