エピローグ「安息」
闇の欠片事件終結後、負傷していたシンはアースラの医務室に収容され、シャマルからの治療を受けていた。
「はい終わり、しばらくすれば傷も消えると思うけど……無茶しちゃだめよ?」
「ありがとうシャマル……」
するとシン達のいる医務室に、フェイトが見舞いにやってきた。
「シン……怪我はもう平気なの?」
「なんとかね、心配してくれてありがとう」
「あらあら、それじゃお邪魔虫は退散しましょうか」
そう言ってシャマルはニヤニヤと笑いながら医務室から出て行った。
そして二人きりになった医務室にしばらくの間沈黙が流れる、するとフェイトが意を決してシンに話しかけてきた。
「ごめんねシン……私達がもっと早く駆けつけていれば大けがすること無かったのに……」
「気にすんなよ、こんな傷いつものことだ」
「あはは……」
そして二人は死闘を繰り広げたヴェステージについて話し合った。
「あのヴェステージって人何者だったんだろうね? レヴィ達と同じっぽかったけどマユちゃんの事を知っていた……」
「デスティニーは何も教えてくれない……でも俺思うんだ、あいつはもしかしたら未来の俺かもしれない」
「シンの……未来の姿?」
シンは自分そっくりなヴェステージが辛い過去をさらけ出す様子を見て、自分も将来ああなってしまうのじゃないかと不安に陥っていた。
「何となくだけどね……俺ももしかした将来ああなっちゃうのかな? もしそうだとしたら……」
「邪魔するぞ」
その時、シン達のいる病室にマスターアジアが入ってきた。
「あれマスターさん? 戻ってきたんですか?」
「うむ、つい先ほどな……これまでの事はドモンから聞いておる、災難じゃったのう」
「ええ、まあ……」
ふと、東方不敗はシンの様子がいつもと違う事に気付く。
「む? どうしたのじゃシン、何か考え事か?」
「ええっと、実は……」
シンは先ほど戦ったヴェステージとのやり取りを東方不敗に余す事なく話した。
「成程のう……自分と瓜二つの相手にそんな事を言われたのか」
「うん……俺、このままでいいのかな? もしかしたらあいつみたいになっちゃうのかな……」
すると東方不敗はシンの悩みを鼻で笑った。
「バカ者、貴様は守りたいものがあって強くなろうと思ったのじゃろう? ならその道を信じて突き進めばいいのじゃ」
「でも……力はあればいいってわけじゃ……」
「その通りよ……力あれども、魂なき拳は無用の長物、一人前の武闘家となれ! その拳で自分の歩んできた道を表現できるようにな」
「……! はい! ししょおおおおおお!!!」
シンは悩みが吹き飛んだのか、東方不敗が突き出した拳に自分の拳をこつんと当てた。
「シン!? ドモンみたいになってるよ!!?」
その頃別室では、八神一家が今回の事件の反省会を行っていた。
「ごめんな、私がもっと早く駆けつけていれば皆怪我しなくて済んだかもしれへんのに……」
「そんな! はやてのせいじゃねえよ!」
「しかし……今回の敵は強敵でした、私達ももっと強くならなければなりません」
「うん、そのことでな……皆に相談があるねん、向こうでなのはちゃんとフェイトちゃんと話し合ったんやけどな……私、新しいユニゾンデバイスを作ろうと思うねん」
「「「「え?」」」」
はやての思わぬ提案に、ヴィータ達は目を丸くする。
「リインフォースはヴィアさんのおかげで本調子を取り戻そうとしているけど、すぐにとはいかん、そうしているうちに今回みたいな事件が起きたら大変や、だから新しいデバイスが必要になってくると思うんや」
「むう……悪くない考えだとは思いますが……」
「私に妹みたいなのができるのか……ちょっと楽しみだ」
「名前はどうするのです?」
「そうやなあ、リインフォースが一番目でアインスやし、その子はツヴァイって名前にしようと……ん?」
その時はやては、スウェンが話の輪に加わらず何か考え事をしている事に気付く。
「どないしたんスウェン? 話聞いとった?」
「ん? ああすまない……聞いていなかった」
「もう、しょうがないなスウェンはー」
「……」
その時、スウェンは真剣な面持ちではやて達に話しかける。
「なあ皆……もし俺が居なくなったらどうする?」
「あん? なんだ急に? お前いなくなるのか?」
「いや、もしもの話だ」
「嫌やなー、そんな仮定の話なんて考えたくないわー、永遠ってわけにはいかんけど私はスウェンとずっと一緒にいたいわ」
「……そうか」
スウェンはそれ以上質問することなく、はやてが今度作るデバイスについて意見を出し合った……。
スウェンとノワールがはやて達の前から姿を消したのは、それから三年後の事だった。
CE67、月面都市コペルニクス、その中に一人の少年が一匹のロボット鳥を追って公園を走り回っていた。
『トリィ』
「まってよトリィ、どこ行くのー?」
少年はトリィと呼んだロボット鳥が入っていった草むらの中を覗く、するとそこである物を発見した。
「あれ? なんだろうこの石……とっても綺麗……」
そう言って少年は、その妖しく輝く石に手を伸ばし……。
運命という名の物語が動き出す、舞台を種の運命が巡る世界に変えて……。
Next Stage “Lyrical GENERATION SEED”
これにて超級編の本編は終了です、うーん……もっとヴェステージとマテリアル三人娘の関係を描けばよかった。後日番外編で補完します。
この後師匠に関する外伝を4話ぐらい書いたら、リメイク前の作品ではやらなかったCE71編、もしくはあの人かあの人をヒロインにした外伝のどちらかをやろうと思っています。
どちらにしろシンとGガン勢には少し休んで充電してもらいます、ヒロインもあの子に変更です、ただいま他の作品を書きながら構想を練っていますので、みなさん気長にお待ちください。