――――天志教。
JAPAN最大の宗教組織で、全ての国民に影響を及ぼしている団体。
いわゆるJAPAN版の"AL教団"と言っても良く、
全ての地域に寺があり、全ての大名が何らかの関わりを結んでいる事から、
野蛮な者達が多い毛利家であっても、天志教だけには手を出せない。
かと言って……それだけが"天志教"そのものでは無く、
本来は復活した"魔人ザビエル"を再び封印する為の組織なのである。
その"本来の活動"で欠かせないのが、一年に一度の"8つの瓢箪"の確認。
いわゆる、ザビエル復活の有無の確認であり、
天志教の使者が瓢箪を所持している、各国主の元を訪れるのだ。
しかし、北条家を除き、大名達は瓢箪の本当の役割を知らない。
野心ある者の心を煽ったり、民の不安を募らせないようにする為、
瓢箪は"JAPAN(天志教)に認められた大名"にしか与えられない、
貴重な品だと言う事で、瓢箪を"守って貰って"いるのだ。
その方法は、天志教が本部(なにわ)の宝物庫で瓢箪全てを保管するよりは遥かに安全で、
例え一つが割れたとしても、他の7国の大名に使者を送って協力を促し、
不完全なザビエルを討つ事で、再び封印してしまえば済むのだ。
だが……瓢箪はひとつも割れる事無く、500年以上が経過した。
それにより、代々語り継がれてきた"魔人ザビエル"という存在の恐怖が、
段々と薄れてゆき……民から忘れられようとしてきた時。
――――第4次戦国時代。
愚かにも、多大の犠牲によって生まれた平和までをも、人々は忘れた。
それにより、JAPANは確実に悪き方向へと動き始めていたのだった。
ランスⅦ
~魔人の娘 黒姫 其の2~
……ランス達が毛利領に入ってから数日。
島津家は宣戦布告及び、戦の準備中であり、今の所は動きを見せない。
それを悪い意味で勘違いしたランス達は、まだ焦る必要は無いとのんびりと旅を始めていた。
現在は"戦艦長門"を通り抜け、出雲でたま~に遭遇したモンスターを蹴散らしつつ、
ランスが狙っている"毛利3姉妹"の情報を中心に仕入れていた。
その旅中で、何匹か鬼のような敵を倒したりもしたが、三人は大して気に掛けなかった。
……それに遅れて来た北条家の陰陽師が、鬼を討伐した異人の噂を広めたのは別の話。
「毛利家……ねぇ。 もっと荒れた治安だと思ってたんだけどな。」
「住んでる人達は普通ですし、町並みも島津領とあまり変わりませんね。」
「ええ……民達にとっては、国を毛利が治めていようが、島津が治めていようが、
平穏な暮らしができれば……それで良いのですから。」
「ま~、町の奴等の事なんてど~でも良いんだが、
旅先で普通のもん食えて、普通に寝れ無ぇと困るからな。」
「私は旅行が終わったら、家で普通にしてたかったですけど~……
ザビエルと言う魔人は放っておけませんからね。」
「……ご迷惑を、お掛けします。」
「がはははは、まぁ任せておけ! ……それとシィル、余計な事は口にするなッ!」
≪ゴチンッ≫
「あうっ……」
「あ、あの……だからランスさん、奥さんはもっと大切にしませんと……」
「だ~か~ら、違うと言ってるじゃないか黒姫ちゃんっ! こいつは奴隷なのだと!」
「うぅっ……そ、そうなんです……」
「そう言われましても、JAPANにはそのような言葉は使われてないものですから……」
……
…………
――――毛利三姉妹。
長女の毛利てる……美人で小柄だが、冷酷との事。
次女の吉川きく……美女で巨乳だが、乱暴者らしい。
三女の小早川ちぬ……美少女だが、毒殺が趣味だったりする。
これからランスがセックス、いや……仲間にしようとしている三姉妹は、
どの娘も美しいらしいが、性格が奇特と言う致命的な欠点がある。
だがランスは、全く奇特な性格については気に掛けず、
"可愛いくて強いならグットだ、絶対仲間にするぞ"程度にしか考えなかった。
しかしながら……三姉妹は毛利家国主・毛利元就の娘であるので、
そう簡単にゲットはできそうに無いのは当たり前な話。
よって"三姉妹をゲットする"という事が軽率な判断であり、
一筋縄では成し遂げられない事であるのだと、ランスがようやく気付こうとしていた時……
宿でのんびりとしている中、何やら出雲で毛利軍の動きがあり、
黒姫と共に様子を見に行っていたシィルの2人がパタパタと戻って来た。
「ランス様、ランス様!」
「只今戻りました。」
「おう、何か判ったか?」
「はい。 どうやら毛利軍は姫路の方に向かったみたいですよ?」
「今度は恐らく……明石家に戦争を仕掛けるようですね。」
「ったく、こんな小さなJAPANでドンパチやって、何が楽しいんだかなぁ~。」
「確かに、勢力が凄く多いみたいですよね~……」
「ところで、どうされますか? ランスさん。」
「良し。 それじゃ~ちょっくら、高みの見物といくかッ!」
……
…………
――――毛利家の国主である、毛利元就。
元々から強力な武人であり、軍も屈指の実力を持っていたのだが、
肝心な"作戦"に欠いていた為、大内家や尼子家などの強国を討ち滅ぼす事ができずにいた。
しかしある時……毛利元就が"呪い付き"になってからは、
巨大化した彼の実力だけで、勝ち戦を続ける事ができるようになった。
作戦もクソも無く、突撃のみと言うのは相変わらずなのだが、
体長6メートル以上の巨体で暴れまわる彼を止める事ができる者は誰もおらず、
真っ先に正面から突っ込んだ毛利元就が大剣の一振りで数十名の人間を薙ぎ倒し、
浮き足立った敵軍に全軍が突っ込むだけで、もはや圧倒的な勝利。
また、彼の妻が残した三姉妹のうち二人が吉川家と小早川家を乗っ取ることで、
今や4つの国を支配する西の大勢力となってしまった。
「クッ……ク クくククッ……!! た "楽し" かった、の……ぉお!!」
「ふっ……」
「これが"あの"明石かよ、他愛ねえもんだぜ。」
「い~っぱい殺しちゃったね~☆」
そんな毛利家の次の標的は中堅クラスの勢力の"明石家"であり、
明石家は姫路に向かおうとしてくる毛利軍を、出雲と姫路の境で迎え撃った。
だがその結果は、明石側の負け……7割の兵を失うと言う、大惨敗であった。
兵の質は決して毛利に負けてはいなかったのだが、
巨大メカのように暴れ回る元就を止める事は叶わず、最初の突撃で勝負は決まっていた。
毛利元就を止めれなくして、毛利軍を破る事は不可能なのである。
「ふぅ~む……どうやら毛利側の勝ちらしいな。」
「圧倒的みたいでしたね……」
「巨大な人間……彼が呪い付きの"毛利元就"ですね。」
「いや……あれって人間か? 殆どバケモンじゃね~か。」
「うぅ、見てるだけでも怖かったです。」
「協力を仰ぐのは、難しいかもしれませんね……」
戦に勝利して喜び叫んでいるチンピラ集団。
その毛利軍の様子を、数百メートル離れた草陰で、ランスら三人は見ていた。
いわゆる"偵察"であり、聞くよりも見るほうが手っ取り早いのだが、
想像を上回る"毛利元就"の強さに、ランス達は正直驚いていた。
……かといって、それだけで毛利3姉妹を諦めるつもりの無いランスは、
以前マリアから無理矢理譲って貰った双眼鏡を必死に覗き込んでいた。
「確か三姉妹は四六時中メイド服らしいが……どいつだ、どいつだ?」
「結構遠いですからね……」
「ところで、ランスさんが使っている物は何なのですか?」
「お……おぉっ!? それっぽいのがいた! だが良く見えん~ッ!」
≪ずりずりずり……≫ ←匍匐(ほふく)前進し出すランス。
「えっ~とですね、黒姫様。 あれは"双眼鏡"と言われるものでして~……」
「はい。」
「がはははは。 見えてきた、見えてきたぞぉ~。」
……
…………
「くくくっ、これでは死体の"掃除"に手間取りそうだな。」
「んん~っ?」
≪キョロキョロ≫ ←辺りを見回すきく。
「あれぇ? どしたの、きくおねーたま。」
「へへっ……何だか、ネズミが覗いてやがるみてぇだなぁ。
親父、姉貴。 ちょっくら片付けてくるわ。」
「そぅか!! い いッい…… "行って" こぉい!!」
「ふっ、勝手にしろ。」
「行ってらった~い☆」
「そんじゃな~ッ。」
……
…………
……数分後。
双眼鏡を覗きながら、匍匐前進で無意識のうちに10メートル程進んだランス。
既に思いっきり草陰から出てしまっているが、
それに気付かないほど、ランスは3姉妹の顔を確認するのに必死になっていた。
そうなればツッコミを入れなければならないシィルの出番なのだが……
彼女は黒姫に双眼鏡の説明をした後、何やら二人で雑談を始めてしまっていた。
「え~っと、確かあの小柄なのが、長女の"毛利てる"で……」
「それにしても、黒姫さんが500年以上生きてるなんて、びっくりしちゃいました。」
「失礼な質問かもしれませんが……シィルさんは、お幾つなのですか?」
「あのアホそうなのが、三女の"小早川ちぬ"って娘だな。」
「私は、もう少しで20歳になりますッ。」
「お若いのですね……羨ましいです。」
「となると後は次女だが……何処行ったんだ? 見失っちまった。」
≪ズザッ……≫ ←着地音。
「それは黒姫さんも一緒……あっ!?」
「!? ランスさん、何時の間にそんな所にまで……」
「んんっ? 何だぁ、大事なトコだったってのに、急に見えなく……」
「そりゃそうだ、あたしが邪魔してんだからな。」
そんな時……未だにうつ伏せで双眼鏡を覗き込む、ランスの前に降り立つ影。
それにより視界が塞がれ、ランスが双眼鏡から顔を離してみると……
メイド服を着て、鍋に繋がった鎖鎌を持った女性が、薄笑いを浮かべて立っていた。
彼女は吉川きく……ランスが見失っていた三姉妹の一人なのだが、彼はきくを見上げて一言。
「じ~っ……」
「さ~て、誰だか知らねぇけど、死んで貰――――」
「黒のレース。」
「!? て、てめぇっ! 何処見てやがる!」
≪――――バッ!!≫ ←ランスから飛び退く。
「あの状況で、それ以外どこを見ろと言うのだ。」
「見つかってしまったのですか……」
「ランス様、この人は……?」
「美人で巨乳でメイド服~……多分、毛利3姉妹の次女だ。」
「そう! 毛利三姉妹の次女、料理魔王。 "吉川きく"たァあたしの事だッ!」
「は? 料理? ダサい肩書きだな。」
「う、五月蝿ぇッ! ところでお前らは、明石のモンじゃねーな?」
「あぁ……俺様はな、ただの大陸から来た旅行者だ。
戦いを見学していただけで、決して怪しい者ではない。」
「……(ら、ランス様、それは無理があるんじゃ……)」
「へ~っ、大陸の奴がわざわざ見学に来るなんて、あたしらも有名になったモンだねぇ。」
「まぁ、そんな訳で。 俺様とお茶でもどうだ?」
立ち上がるとランスはシィルに双眼鏡を渡し、じろじろときくを見る。
それにより彼女が三姉妹の次女と判り、ランスは心の中でガッツポーズをしていた。
きくは双眼鏡のレンズが浴びた僅かな逆行を察してしまい、
それを怪しく思った事から、相手が偵察であれば皆殺しにしてやろうと考えていた。
忍者10名程度なら、同様に一流の忍者でもある、きく一人で勝つ事ができるからだ。
……だが、どうしてか"見ていた者"は異人であり、妙な性格をしている。
それに何度かペースを崩されそうになるが、きくは異人のナナメ後ろに立つ黒姫を指差した。
「はっ、騙されねーよ! ……そっちの"黒いの"は日本人だろ?」
「そうですけど……」
「それが、どうかしたのか?」
「つまりだなあ……死ねって事だよォっ!!」
≪じゃらっ……ヒュッ!!≫
「うぉッ!?」
≪ギイィンッ!!≫
「ら、ランス様!!」
「加勢しますっ!」
「いや、必要ね~ぜ! お前らは見てろっ!
(仲間にするにゃあ、タイマンで勝たんとダメだろうしな)」
「ははっ……楽しませてくれそうじゃないかッ!」
きくの鎖鎌による、突然の不意打ち。
それをランスは咄嗟にガードし、響いた金属音が戦いのゴングとなった。
直後にシィルと黒姫も構えるのだが、ランスに止められたので、
周囲を警戒しつつ、二人の戦う様子を見ているしかなかった。
シィルにとってはランスが戦っている姿を見るのは日常茶飯事なのだが、
黒姫は此処で初めて、(きくの体が目当てで)本気の彼の実力を知る事となる。
……
…………
吉川きくは抜群の武器捌きで、まるで生き物のように鎖鎌を操っていた。
時には鍋をも武器代わりにし、ランスを叩くなどして、
素早い動きで翻弄されていたランスは、攻撃の隙をなかなか見い出せない。
パワーは圧倒的にカズヒサの方があったのだが、戦い難さはこちらが断然上だった。
しかし……魔人をも倒した事もあるランスにとって、
彼女の不意を突く方法を思い浮かぶ事に、そう時間は掛からなかった。
彼は自分放たれた鎖鎌を、カオスに巻き付けさせたと思うと、
それを手放し、反動できくのバランスを崩させ、懐に入ると――――
「もらったぁッ!!」
「!? う、うそっ……」
「ランスぱ~んち!」
≪――――どすっ!≫
「ぐぅっ……!?」
腹部にパンチをお見舞いして、彼女を気絶させた。
(それ以前の細かい戦いの内容は、実際のゲームと殆ど同じです)
それによりこの時点で、ランスが勝利した事となる。
負けたきくは地面に倒れそうになるが、はっしとランスは彼女の体を支えられ、
彼は今までの戦いをハラハラと見守っていた二人に向き直る。
「よ~し、きくちゃんゲットだ。 ズラかるぞ。」
「そ、そうですね。 私達に気付いたのは、この人だけみたいですし……」
「……(やはり、この方なら……きっと魔人を……)」
「んっ? どうした黒姫ちゃん……心配せんでも、
流石の俺様でも、こんな所で青姦なんぞせんから安心して良いぞ。」
「いっ、いえ……そう言う訳では……」
『うぉ~い、助けてくれーっ、ワシはこんな趣味は無いぞーっ。』
「今解きます、カオスさん。」
「それにしても……ぐふふふっ、やっぱデカいな。」
完全に意識を失っているきくの胸の感触を楽しみ、ランスは鼻の下を伸ばす。
この後、元就達はきくが帰ってこない事が気掛かりになり、
毛利領に探索隊を出すのだが、結局最後まで彼女の姿は発見できなかった。
再び……吉川きく自身で、元就達の元を訪れるまでは。
……
…………
――――同時刻、カイロ。
「カズヒサ。 そろそろ、毛利が動いた後か?」
「そ~らしいな、今頃明石が敗走でもしてんじゃねぇの?」
「どちらが勝とうと、しった事では無いけどね……」
「……ヨシヒサ兄ちゃん! 軍の配備は完璧だよッ!」
「偵察は?」
「アイツら馬鹿だから、殆どの兵を明石に行かせてるらしいよ。
毛利に仕掛けるなら今しかないみたいだね。」
「そうか。 トシヒサ、火を。」
「はい、兄さん。」
≪ジュボッ≫
「ふぅ~……良し、出よう。」
「なら、いっくよ~っ! 右翼、左翼からカズヒサ兄ちゃんとアギレダの隊が進軍!
その後ろをソウリンとトシヒサ兄ちゃんの隊が追う!
中央からヨシヒサ兄ちゃんのと僕らの隊が進軍だ~ーっ!!」
「よっしゃ! 今日中に"戦艦長門"を落としちまおうぜッ!」
「さて……蹂躙しよう。」
「主戦力は出雲の端みたいだし、反撃戦の事は考えなくて良いよ~ッ!」
「……(黒姫……全ては貴女の為だ……)」
……
…………
……翌日、朝。
吉川きくを捕虜にしたランスは、気絶した彼女を縛って抱えると、
そのまま毛利ではなく、明石領に進んで行った。
そして最寄の宿に入ると、ひとまず一日休んで朝食を取り、
偵察で得た情報を元に、三人は居間で今後について話し合っていた。
「しっかし、えらくデカかったな、毛利元就ってのは……」
「もしかして、魔人よりも強いんじゃ~……」
「確かに無敵効果を除きゃあ、それくらい強いかもしれんなぁ~。」
「まさかあれ程とは思いませんでした。」
「ところで黒姫ちゃん、呪い付きって何なんだ?」
「はい。 呪い付きとはいわゆる、妖怪に掛けられた呪いを意味します。
大抵デメリットばかりなのですが……中には強い力を得れる者もおります。
毛利元就と言う男は、その中でも特別強い力を得れたのでしょう。」
「それじゃあ……呪いを落とす事ができれば、あの人は元に戻るんですかっ?」
「そうなりますね。」
「それは、どうやるんだ?」
「呪いを掛けた妖怪を、倒さなくてはなりません。」
「シンプルだな。 それじゃ~その妖怪を殺して、あのジジィも殺そう。」
「でも、その妖怪が何処に居るかわかりませんよ?」
≪ぼかっ!!≫
「そんなん、いちいち言わんでもわかっとるわッ!」
「い、痛い……」
「黒姫ちゃんはどうだ、何か知らんか?」
「生憎ですが、私もその知識は……あっ、でも……」
「どうした?」
「定かではありませんが、呪いを掛けた妖怪が判るという者が……
織田に居ると言う噂を聞いた事がありますね。」
とりあえず"吉川きく"はゲットしたので、次にランスが狙っているのは、
長女の"毛利てる"と、三女の"小早川ちぬ"。
しかし、あんなモン(元就)が傍に居るのでは口説く事すら出来そうも無いし、
きくが居なくなった事で警戒していると思うので、先に元就を何とかしなくてはならない。
かと言って彼は呪い付きの巨大な化け物……戦闘力は尋常では無さそうだ。
よって、呪いを落として弱くなったトコロをどうにかしようと考えたワケなのだが、
問題の"妖怪"が何処に居るかが分からないので、とりあえずランスはシィルを殴る(酷ッ)。
そうなれば頼みの綱は黒姫の知識なのだが……
彼女は何かを思い出したようで、織田に行けば"判るかもしれない"と言った。
その言葉を聞いた直後、シィルは即地図を取り出してランスの前に開き、
尾張を指差し、殴られた直後だと言うのに何とも健気な娘である。
「ふ~ん、織田に……ねぇ。」
「えっと……ここが尾張という場所、ですね。」
「結構遠いな~。」
「そうですね……"なにわ"と"大和"を越えなければなりません。」
「良し、それなら忍者を使おう。」
≪すくっ≫ ←立ち上がった。
「忍者? ランス様、何処にそんな人が……」
「馬鹿者、そこに"凄腕"が居るではないか。」
≪ガラッ≫ ←襖を開いた音。
「……っ……」
ランスが"くいくい"っと親指で指した先には襖(ふすま)があり、
それを開くと猿轡(さるぐつわ)をされた"吉川きく"が、柱に縛られてこちらを睨んでいた。
昨日の夜からずっとこのままなので、すこぶる機嫌が悪そうだ。
それをスルーしながら、ランスは彼女に近寄ると、腰を落として猿轡に手を掛ける。
それと同時にシィルと黒姫も襖を潜り、きくを見下ろしている。
≪ぐいっ≫
「よぉ、きくちゃん。 気分はどうだ?」
「……最悪だね。」
「それはこっちの台詞だ、昨日は喧しくてセックスする気にもならならんかったわ。」
「馬鹿言ってんな! それより、さっさと解きやがれッ!」
「何を言うか。 俺様が勝者、君は敗者。
犯されて拷問されて殺されるよりは、遥かに寛大な扱いではないか。」
「ぐッ……あ、あたしをどうするつもりなんだ?」
「とりあえず、犯そうか?」
「なっ!?」
「あの……ランス様、私に振られても困ります……」
「おっ? 何だか顔が赤いな、ひょっとして処女かぁ?」
「わ、悪ぃか!? だったら何だってんだよッ!」
「(ほぉ、苗字が違うのに処女だとは……そりゃ結構、結構。)
ま~~冗談はさて置いて、本題に移ろう。 きくちゃん。」
「な……何だよ? (び、びっくりさせやがって~……)」
「縄を解いてやるから、俺様の部下になれ。」
「……っ!?」
「嫌なのか?」
「当たり前じゃね~か! "ハイそうですか"って言えた事かよっ!」
「それなら、俺様にも考えが有る。」
「殺す気なのか? だったら、さっさと――――」
「シィ~ル、カメラ。」
「はい、ランス様。」
≪ぽすっ≫ ←シィルからポラロイド式カメラを受け取った音。
「……(きくちゃんは処女みたいだからな……"この方法"が効果的かもしれん。」
「なっ、何だよ……何持ってんだ、それ……」
「シィルさん、ランスさんに何を渡したのですか?」
「えっと、カメラと言って写真を……」
「がははははは!! ヌード撮影会だぁ~ッ!!」
≪がばあぁっ!!≫
「う、うわああああぁぁぁぁ~~ーーっ!!」
……
…………
「こらっ! ジタバタするな!」
「や、やめろっ! 放せーッ!」
「良し、まずは手堅く下着の撮影からいこう。」
「止めろっつってんだろ! ……って言うか、何なんだよ"それ"!?」
「"魔法ビジョン"って言葉くらいは知ってんだろ? 似たようなモンだ。」
「……と言うわけで、あれで"写真"という紙を作る事が出来るんです。」
「なるほど……生憎、大陸の知識に関しては疎いもので……」
≪――――カシャッ≫
「さ、触るなっ、触んじゃねぇーっ!」
「ブラ剥いでおっぱい御開帳~。 うお、デカ乳!」
「ほ、ほっとけ畜生~っ!」
「これもレンズに収めなければならんな、さ~てこの角度で……」
≪――――パシャッ≫
「こ、これ以上どうするってんだ! いい加減にしやがれ~っ!」
「まだ暴れやがってッ。 黒姫ちゃん、しっかりとそっちを押さえておくんだぞ。」
「は、はい……ですが、何故このような事を……」
「これは大陸の尋問では常識的な事なのだ。 無論、俺様とシィルとて例外では無い。」
「(ありません……そんな常識、ありません……)」
≪するっ≫
「黒レース頂き! これで素っ裸だな、がははははは。」
「い、い、何時までこんな事すんだよッ! さっさと終わりに――――」
「ダメだ、これは素直に俺様に従わなかった、きくちゃんへのお仕置きなのだ。」
「くっ……こ、これならまだ、殺されてた方がマシだッ……」
「おいシィル、しっかり全身を撮れよ。 だが、俺様と黒姫ちゃんの顔は入れるな。」
「うぅ……流石に可愛そうになってきました……」
≪――――カシャッ≫
「さ~て、最後は大事な割れ目の中まで撮ってやらんとな。」
「うっ、うぅっ……ひっく。」
≪びろ~≫
「おぉ、やっぱり処女なんだな。 あんまり開かんわ。」
「……わ、わかった……が……ぅ……から……」
「では膣と顔をこのアングルで撮影……んっ? シィル、どけ。
そこに居ると影になって、奥の方がしっかりと撮れん。」
「あ、あの……ランス様、きくさんが何か……」
「いや、俺様は何も聞こえんな。 最近耳が遠くてな。」
「従う……従うっから、もうやめろっつってんだろーーッ!!」
「っ? がはははは、そうかそうか。 一番良いトコだったんだが、仕方ないなぁ~。」
「ほっ……」
「シィル~、何だその溜息は。」
「ぷるぷるぷる……な、なんでもありません。」
――――吉川きくのヌード撮影会。
撮影会と言っても、無理矢理服を脱がしながら写真を撮るだけである。
それに最初は暴れていたきくだったが、脱がされてゆく度に体の力が弱まる。
そして……全裸にされて秘部の中までランスの持つカメラに収められようとした時は、
既に顔を真っ赤にしながら顔を手で隠し、恥かしさのあまり泣きが入ってしまっていた。
よって彼女は半ば強引に、自分からランスの部下になる事を選択せざる得なかった。
普段は物凄く強気なきくだが、この方面に関しては物凄く疎かったようである。
その為か、ひとまず介抱されたきくは、メイド服を抱いてベソを掻いしまっている。
「ぐすっ……うぅッ、畜生~……」
「(きくさん……不憫です……)」
「成る程、ランスさんは初めからこうやって彼女を仲間にする気で……」
『いや彼、ただスケベな事しか考えてませんよ?』
……
…………
……数分後。
弱点を突かれ、仲間に"させられた"吉川きくは、立ち直りはそれなりに早いのか、
しぶしぶメイド服を着用すると、早速ランスに最初の命令を受けていた。
その内容は――――
"織田の城に行って、毛利元就に呪いを掛けた妖怪が、何処に居るか聞いて来い"
――――と言う非常に面倒な事。
つまり……きくに実の父である元就に、親不孝をさせなくてはいけないので、
当然彼女は良い顔をせず、直ぐには首を縦に振らなかった。
「いきなり、そんなめんどそ~な事言いやがって……」
「断るのか?」
「いや、そうじゃねぇけどよ……親父の呪いを落としてど~するつもりなんだ?」
「俺様はきくちゃんの姉と妹にしか興味は無いんだが、
デカいのが邪魔そうだったから、呪い落として殺そうと思ってな。」
「わかんねぇ……ホントは何が狙いなんだ、あんた?」
「それは、きくちゃんがちゃんと働いてくれたら話してやろう。」
「……っ……」
「ほれ、返事はどうした? 従わんと写真バラ撒くぞ。」
≪ぴらぴら≫ ←きくの目の前で泣き顔の写真を振る。
「~~……っ!? わ、わかったよ! 行きゃ~良いんだろ、行きゃ~!」
「そう言う事だ。 それじゃ~待ってるから、さっさと行って帰って来い。」
「だッ、だから……それは絶対バラ撒いたりすんじゃね~ぞ!
そしたら、そしたら絶対にブッ殺すからなぁーーッ!?」
「がはははは、安心しておけ。 これは個人で楽しむ。」
「くっ……屈辱だ~ッ……!」
≪だだだだだっ!!≫
きくは再び恥かしくなったか、顔を真っ赤にしながら部屋を出て行った。
対してランスは立ち上がり、部屋の窓から下を見ると、
尾張の方向へと颯爽と走ってゆく、きくの後ろ姿を確認できた。
……どうやら、しっかりと命令に従う気になったようである。(殆ど脅しだが)
よって……口元を歪ませながらランスが外の景色を見ていると、
後ろからゆっくりと黒姫が近付き、ランスの横までやってきた。
「魔人の事は、言わなくて宜しかったのですか?」
「な~に、残りの二人を仲間に出来たら、セットで話してやるぜ。」
「それにしても……まさか、あの毛利3姉妹の一人をこんなにも早く……
ランスさんの話されていた事は、本当だったのだと実感します。」
「そうだろう、そうだろう。 あのバカ兄弟はちっとも信じて無かったけどな。」
「……申し訳ない限りです。」
「おあぁッ!?」
「ど、どうなされましたかっ?」
「そういや~、俺様とした事が……すっかり忘れてたぜ。」
「え……(ゴクリ)」
「きくちゃんの処女、頂いてなかった……」
≪ガタンッ≫ ←布団を運んでいたシィルが転ぶ音。
……こうして、吉川きくに遣いを頼んだ(正しくは命令)ランスは、
そのまま数日間、明石領の宿屋で過ごす事にした。
きくが帰って来れば、元就に呪いを掛けた妖怪を倒しに行き、
その後の事は、また状況を見てからでも考えれば良いのだ。
だが数日後、島津家が毛利領の"戦艦長門"を落とした事が一行の耳に入るのだった。
――――続く――――
ランスLv42/99 シィルLv32/80 黒姫Lv28/99
吉川きくLv32/42
●あとがき●
まだ書く予定は無かったんですが、予想以上に感想をいただけたので続編です。
描写がかなり少なくて恐縮ですが、物語の展開はこの位早くしようと思っております。
細かく書いていては1年経っても終わらない気がしますのでスイマセンorz
元就についてはタグが面倒なので特攻の拓みたいになってしまいました。
ちなみに、ランスは今回勢力を持ちません。 題してRPG版黒姫ルート?