≪ひゅうぅう~~……≫
「只今参上って……ずっと尾行してたんだろ?」
「うッ、いきなりそうくるでござるか。」
キメポーズをとって名乗った鈴女に、ランスはいきなり手痛いツッコミを入れた。
くのいち らしく、ランス好みの際どい姿をした女ではあるが、
尾行していたのなら今のところ味方とは言い難いし、本来ならば警戒が必要だ。
それもその筈……ランスから見ても"それなり"の腕と認めてやっても良い、
"吉川きく"が気配に気付かなかった程の"忍び"でもあるからだ。
しかし先程、鈴女が"だいだーら"との戦いで援護をしてくれた事で警戒心が相殺され、
ランスは決して、悪気があったツッコミをした訳では無かった。
むしろ、可能であれば仲間に引き入れ……セックスしようと言う考えまでにも到達した。
――――たった、鈴女が登場して十数秒の間での思考時間だけで。
「それはまぁいい、伊賀家の"くのいち"とか言ったな? 名前は……」
「鈴女でござる。」
「……島津の くのいち では無いのですよね?」
「違うでござるよ。 言っての通り、鈴女は生まれも育ちも伊賀でござる。」
「じゃ~、アタシら毛利のモンでも無ぇって事だな?」
「以下同文でござる。」
「ならなんで、伊賀の"くのいち"が俺達を尾行してたんだ? 何が目的だ~?」
「それはこっちが聞きたいでござる。」
「なぬっ?」
「そっちの"黒い人"は、島津4兄弟がぞっこんの客将"黒姫"でござるね。」
「……ッ! どうして私を……?」
「こっちの中華鍋の人は毛利家の次女。 忍者としての腕は、伊賀にまで届いているでござる。
(鈴女も載ってるでござるが) 毎週読んでる伊賀の瓦版に、何度か名前も出てたでござる。
その有名は二人が、何で"こんな所"で異人と一緒に居るのかが、気になるのでござるよ。」
「おっ、マジで? ……ってか、アンタって島津のモンだったのかよ。」
「は……はい。」
「ほほぉ、良く知ってたな。」
「当然でござる。 情報収集力で、伊賀に勝る国なんて無いでござるよ。」
「それなら、俺様もさぞかし有名なんだろうなぁ~?」
「んにゃ、あんたの事は知らないでござる。」
≪――――ガシャンッ!!≫ ←ずっこけたランス。
ランスⅦ
~魔人の娘 黒姫 其の4~
きっぱりとランスの事を"知らない"と言った鈴女に、盛大にズッコけるランス。
立った状態から真後ろに倒れたので、仰向けになったランスはシィルに慌てて起こされる。
そんな"よっこらせ"と立ち上がったランスの表情は……すこぶる機嫌が悪そうだ。
「ら、ランス様! しっかり~!」
≪むくっ≫
「何が"勝る国なんて無い"だ~! 英雄の俺様の事さえ知らんと言うのに!!」
「全くだ、ガッカリさせやがって。 あたしだってこの野郎の事、
教えて欲しかったのによ。 何考えて……"こんな事"してんのか分かんね~し……」
「仕方ないでござるよ、範囲は"JAPAN限定"なのでござる。」
「ふんっ、まぁ……この際細かい話は抜きだ。 鈴女とか言ったな?」
「にん。」
「お前、なかなか腕が立ちそうだな。 それに良い女だ、俺様の仲間になれ。」
「!? ……そうきたでござるか。」
「嫌か?」
「鈴女、あんたの命を狙ってるかもしれないでござるよ?」
「ほぅ。 だったらチャンスは何時でもあったハズだ。 ずっと尾行してたんなら、
ど~せ俺様と黒姫ちゃんがセックスしてる時も、覗いてたんだろ?(かなみ みたいにな)」
「むむ、お見通しでござったか。 あれは中々"えろす"でござった。」
「えっ……覗、え? え……っ!?」
ランスは自分の経験から、忍びである鈴女の行動を予測できていた。
その予測は当たっており……鈴女がランス・シィル・黒姫・きくの誰かを殺したければ、
寝込みやセックスの時を狙えば、殺す機会はあったのである。
きくは忍者としてのスキルに優れているので、並の忍者が相手であれば、
寝ている間でも気配を察して目が覚めているのだが、相手が鈴女だったので気付かず仕舞い。
だが、鈴女は偵察の任務を受けていたので殺害する気持ちはこれっぽちも無かった。
殺すのであれば、偵察した情報を犬飼に話し、彼の判断を仰いだ後のハズだった。
……かと言って……ランス達の"仲間"になる事に関しては話は別だ。
鈴女は今の所ランスの敵では無いのだが、味方と言う訳でも無い。
よって黒姫が真っ赤になってランスと鈴女を交互に見る中、二人の会話は続く。
「まぁ、それはどうでも良いのだ。」
「にん。」
「(どっ、どうでも良くないです……っ!)」 ←黒姫・魂の叫び。
「それじゃ~、何でさっき援護しやがったんだ?
今迄尾行してたんなら、俺様の実力も判ってた筈だろう?
何もせんでも俺達は"だいだーら"を倒せて、そのまま尾行を続けれたってな。」
「……っ……」
――――ランスの言う事は正しかった。
鈴女の尾行スキルと、ランス一行の実力を元に考えれば、
このまま変わらず尾行は行われていた筈……少なくとも魔人の話題が出てくるまで。
なのに鈴女はランス達を援護してしまい、こうして一行と向かい合っている。
それは鈴女自身も理由がハッキリと判らず、彼女は俯いて黙り込んでしまった。
その影響で、猫耳のような鈴女の髪の毛が、しゅんっと下がっているようにも見て取れた。
「それはつまり! お前は俺様の仲間になりたかったと言う事なのだッ!」
「……!(鈴女が……この異人の仲間になりたかったのでござるか……?)」
「いや、俺様に惚れたと言った方が正しいかもしれんな! がははははは!!」
「その自信過剰は、どっから来んだよ……」
「決まってるだろう、此処からだ!!」 ←股間を指差す。
「ばかたれ……」
「……(確かに、面白そうでござる……もうイーッて、なりたくないでござるし……)」
「と言うわけで、仲間になれ。 嫌なら一発犯らしてくれれば、逃がしてやる。」
「わかったでござる。 仲間になるでござるよ。」
「むっ、本当か!?」
「おいおい、本気かよ! お前、伊賀の"くのいち"なんだろッ?」
「そうでござるが、ど~したでござる?」
「あたしらの仲間になるって事は、"抜け忍"になるって事だろ?
そう簡単に決めちまっても良いのかよっ?」
「きくちゃん。 何か悪い事でもあるのか?」
「ああ。 抜け忍になれば……そいつを殺す為、絶えず刺客が何人も襲って来るハズだ。
四六時中……寝る暇さえ無いくらいにね。」
「う~む、それはそれで面倒そうだなぁ。 シィルに一晩中見張りをさせるのも悪くないが。」
「あうぅ……さ、流石にそれは無理ですぅ~。」
鈴女は強く、忍びの中でも屈指の実力を持っている。
抜け忍となったとしても、一人で刺客を撃退し続けれる実力を持っているのだ。
かと言って……ランス達の立場からすれば、巻き添えを食らうのは頂けない。
裏切り者の鈴女の仲間とみなされ、寝る暇が無くなってしまえば困るどころではない。
何処かの国主であるのならまだしも、ランス達の位置付けただの冒険者。
忍者達に狙われていては、ザビエルを殺す旅どころでは無くなってしまうだろう。
よって言いだしっぺにも関わらず、渋り出すランスだったが……鈴女は良い案を思い浮かんだ。
「……"抜け忍"には、ならないでござるよ。」
「なぬっ?」
「ぶっちゃけてしまうでござるが、鈴女は島津が全国に宣戦布告をした真意を知りたくて、
今迄……あんたたちを尾行していたのでござる。」
「真意だと?」
「うい。 その真意の鍵を黒姫殿と"駆け落ち"した異人が、
握っているとの事でござるが……今のところまでは、何も判らなかったでござる。」
「だろうな。 判って無いって事は、尾行され始めてからは喋って無かったんだろうし。」
「(ら、ランスさんと駆け落ちだなんて……そんなっ……)」
「へっ? 島津がウチら(毛利)を攻めやがったのは、"お前ら"の所為だったのか!?」
「そうかもしれんが……実際にゃあ、アイツらのやってる事は意味の無い事だ。
それよりも俺様は、もっと大事な目的があって動いてるんだぞ。 なぁ、黒姫ちゃん?」
「はい、その通りです。 JAPAN全てに関わる事と言っても、過言では……」
「そりゃなんなんだよ……ホント、ワケ判んねぇ……」
「成る程でござる、"駆け落ち"とは違う理由があったみたいでござるね。」
「そう言う訳だ。 まぁ~、もうちょっと経ったら、纏めて話してやるぞ。」
「ならランス……これから宜しく頼むでござるよ?」
「あぁ、宜しくしてやるが……抜け忍とか言うのは、ならんのだな?」
「鈴女はランス達の仲間になるでござるし、伊賀を裏切るつもりも無いでござる。
伊賀の国主……犬飼様には"異人"について調べろ~と命令されてるのでござるが、
建前を"異人について知る為に一時的に仲間になったでござる~"と言う事にすれば、
疑わずに"仲間"になれるでござるから、問題無いでござるよ~。」
「犬飼とか言う奴は信用できるのか?」
「口煩い人でござるが、悪い人では無いでござるよ。」
「そうか……まぁ、面倒な事にさえならんのなら、良しとしてやろう。」
「うい。 それじゃ~、張り切って行くでござるよ! ににんにんっ!」
「あ~、気になる! あたしにもちゃんと話せよな~ッ?」
「がははははは。 真意を聞いて、驚きのあまりに腰抜かすなよ?」
「(その為には……信頼を得る必要があるでござる。 鈴女の事は話したでござるが、
まだこっちは何も教えて貰って無いでござるからねぇ……)」
『嗚呼……なんかすっごい喋りたい、もう喉まで出掛かってる……』
「言ったら、そこで転がってる"だいだーら"のケツにお前を刺すぞ。」
『いやんっ。 それは勘弁して……』
「おぉ、喋る剣! 近くで見ると、面白いでござる~。」
こうして、天才くのいち"鈴女"が仲間になった。
彼女だけでなく吉川きくも、この旅の本当の意味を知らないが、
それは時が解決してくれるであろう。
そんな訳でシィルが再び"帰り木"を取り出すと、5人の体は光に包まれ、消えた。
……
…………
――――出雲にある、毛利家の本城。
「そうか、きくの奴はまだ見つからんのか。」
「へ、へい。」
「続けて探索しろ……他国に悟られぬ範囲で構わぬ。」
「わかりやした~ッ!」
≪だだだだだっ≫ ←広間を出てゆく部下。
「きくおねーたま……大丈夫なのかな~。」
「明石の手の者に、殺られるような奴ではあるまい。」
「うむ。 儂より先に死ぬような、親不孝者でも無かろう。」
上座に座る"毛利元就"と、左右に立っている"毛利てる"と"小早川ちぬ"。
今現在は、行方不明の"吉川きく"の探索についての報告を受けたところだ。
だが……聞いての通り見つかってはおらず、今は異人と共に行動している最中だ。
それが判るはずも無く、広間に自分達三人だけが残ると……
毛利てるは膝を折り、元就の表情を確認するかのように、彼を覗き込んだ。
「……元就。 体は何とも無いのか?」
「なぁに、心配するでない。 ただ、誰かが"だいだーら"を倒しやがって、
元の体に戻っちまったただけじゃあ~。」
「そうか。」
「それよりも、島津をどうにかせにゃあならん。
全く……きくの事と言い、儂の体の事と言い、妙な事ばかり起きよるわ。」
「厄日~……うぅん、厄月ってヤツかもしれないね~☆」
「馬鹿を申すな、ちぬ! いずれきくは我らの元に戻り、島津も叩き潰す!
そして元就はJAPAN最強の武人……それは、何が起ころうと変わらんッ!」
「く……クカカッ、そうじゃな! それに、例え毛利が押されようと、
儂らは戦いに始まり、戦いにより終わる家系! それも一緒じゃあ~!」
「……うむ。 それではちぬ、戦の指示を出して来るが良い。
我はこれから きく に変わり、島津に斥候を出さねばならん。」
「はあ~い。」
「島津が きく を狙った可能性も考えられるな……どちらにしろ、叩き潰してくれるッ。」
「……(できれば娘達には生きて貰いたいものだが……売られた喧嘩は買わにゃ~なるめぇ。)」
今までは元就を"見上げて"いたモノだが、彼はランス達により、
呪いを掛けた妖怪を倒され、今は小さな老人の姿に戻ってしまった。
小さい老人……と言っても毛利家最強なのは変わらないが、
強大化していた時よりは格段に弱体化してしまったのは紛れも無い事実。
そのタイミングで島津が宣戦布告し、未だに"きく"が見つからない等、
毛利にとってどんどんと悪い方向にへと進んで行ってしまているが、
こうなったら徹底的に戦おうと、元就達は気分を切り替えた。
そんな中……元就は"娘達を巻き込みたくない"と言う気持ちを僅かに感じたが、
根っからの猪突猛進な性格が、この年になって改められる筈も無かった。
……
…………
――――出雲の宿。
ランス・シィル・黒姫・吉川きく・鈴女のメンバーは、宿の一室に集まっていた。
ランスときくは胡坐をかき、シィルと黒姫は正座し、鈴女は体育座りをしている。
そろそろ宿一室だけでは狭くなって来たかもしれず、
快適なセックスを楽しむ為には今後部屋を分ける方が良いかもしれないが、
それは今の段階では、置いておく事にしよう。
「……と言うわけで、これであのジジィが弱くなったって事だ。」
「"だいだーら"をやっつけましたからね~。」
「では、これからどうするのですか?」
「そりゃ~勿論、ジジィを殺して、瓢箪と残りの姉妹も頂くのだ!」
「へんっ、簡単に言ってくれるねぇ……」
「毛利は2万の大部隊を抱えてるでござるよ? 一応言っておくでござるが、
いくら鈴女でも、毛利元就を暗殺して・姉妹を攫って・宝物を盗むのは無理でござる。」
「忍者にそれができりゃ~、毛利も島津もとっくの昔に滅びとるわッ。」
「それもそ~でござるね。」
「きくちゃんは、何か良いアイデアは無いか? ジジィの事は、良く知ってんだろ?」
「う~ん……親父もあたしらも、楽しけりゃ~何でも良かったから……そうだな~。」
「何か案があるのか?」
ランスに話を振られたきくは、"まだ言ってんのかよ"と、彼の事をバカにしていた。
元就の呪い付きを落としてしまったのは、確かに行動力があるが、
だからと言ってたった5人で国主である元就を殺す事など、非現実的すぎる。
それに、彼を殺す事に直接関わるのは、元就の娘としてはゴメンだ。
よって頭の後ろで腕を組みながら、ランスを馬鹿にするような仕草で答えてやったが……
その答えに……ランスは信じられない反応を示す事になる。
「あぁ。 大方あたしを人質にでもして、一対一で勝負しろ~ッ!
……とか言えば、喜んで受けてくれんじゃねえの? 親父、強いヤツと戦うの好きだし。」
「成る程な。 じゃあ、それで行こう。」
「へっ!?」
「明日には毛利の城に出発するぞ。 シィル、準備しておけ。」
「は、はいっ。」
「……先ずは一つ目の瓢箪ですね。」
「あやや……本気で行くのでござるか? (それに、瓢箪って何でござろう)」
「当たり前だ、俺様を誰だと思っている。」
「お……おい、やっぱホントだったのかッ? 本気で親父の事……」
「きくさん、鈴女さん。 ランス様って、こういう人なんです~……」
「それなら、勝手にしなッ! お前なんか、親父に殺されちまえってんだ!」
「そいつは御免だな。 俺様は勝って、きくちゃんの処女を頂くのだ。」
「ぐっ……(な、なんなんだよコイツ……何であたしの事、怖くないんだ……?)」
……
…………
――――同日深夜、ランスと鈴女以外は夢の中。
「まさか明日から、いきなり正念場になるとは思わなかったでござる。」
「怖気づいたか?」
「うんにゃ。 面白そうで結構でござる。」
「そんな事はさて置いて……鈴女。 お前は実にエロい格好をしているな。」
「そうでござるか?」
「うむ、だからセックスしよう。」
「良いでござるが……"覚悟"はあるでござるか?」
「覚悟?」
「鈴女は くのいち でござるから、えっちして相手を殺す時の為に、
体に毒や仕掛けを施しているでござる。 下手したらあの世逝きでござるよ?」
「む……それは困るな、何とかしろ。」
「うい。 それじゃ~、一日だけ待って欲しいでござる。
それまでに毒や仕掛けを抜いておくでござるよ。」
「うぅむ、待たねばならんのか……溜まっていると言うのに。」
「なら、口で御奉仕するでござる。」
「大丈夫なのか?」
「口の中には下手な仕掛けをするよりも、喉元やイチモツを噛み切る方が効率的でござる。
鈴女の体に無闇に触れたりしなければ平気でござるよ。」
「う~む……それはそれで、我慢せにゃならんのか。」
「止めるでござるか?」
「いや、やってくれ。」
「うい。 (本当に、変わった男でござるな~)」
……
…………
――――翌日、出雲城。
「(い……何時までこんな屈辱的な格好のままで居りゃ良いんだよ~ッ。)」
「(もう暫くの辛抱でござる。)」
「(うぅっ、くっそ~……キツく縛りやがって……)」
「(鈴女もこんな事、していたくないでござるよ。)」
毛利家の軍勢が出雲の西へ集まって行く中、突然姿を現した"吉川きく"。
体も五体満足であり、これで毛利軍の士気も元通りになると思われた。
……だが、彼女は上半身だけを"亀甲縛り"のようにされており、
鎖付きの首輪を付けられ、謎の"異人"に引っ張られながらの帰還だった。
それが恥かしいのか、きくは泣きそうな顔をしながら異人(ランス)に引っ張られ、
城門を潜り、三人の女性(シィル・黒姫・鈴女)も彼の後を追って行った。
そして今現在、元就・てる・ちぬは、十数名も部下達に囲まれ、きく含む5名と向かい合っていた。
そんな、、きくを捕まえたと思われる、偉そうな男……彼は元就を見るなり、こう言った。
「弱そうだな。」
「貴様ッ、元就を侮辱するか!?」
「待てい、てる。 ふむ……ランスとか言ったか? 異人が、儂に何の用じゃあ?」
「細かい話は抜きだ。 きくちゃんを返して欲しけりゃ~、俺様と勝負しろ。」
「なんと!?」
「俺様が負けた場合は、俺達の命でも何でも好きにしやがれ。
だが、俺様が勝った場合は……残りの姉妹と、"瓢箪"を頂くぞ。」
「ほう~。 つまり、毛利の国主の座が狙いと言う事か?」
「そんなのはいらんわ、欲しいのは姉妹。 瓢箪は"ついで"だ。」
「カハハハッ……面白い事を言いよる! 良いだろう、受けて立つぞッ!」
「本気か元就っ!?」
「おとたまぁ~。」
「安心せい、てる・ちぬ。 元に戻った体を解すには、丁度良い相手じゃ!」
「がはははは、それなら話は早ぇな。 ……カオス、殺るぞ。」
いきなりの侮辱的な発言に、てるは立ち上がるが、元就が止める。
この時元就は……目の前の異人に、かなりの興味が湧いていた。
大事な娘である"きく"が鈴女によって、先程からず~っとクナイを首筋に這わせられているが、
数百と言う多くの部下に囲まれながらもここまでやって来ると言う、
こうも堂々と自分に勝負を挑んできた人間は、100年生きた中で一人も居なかった。
自分の経験でも、自分が尼子や大内の武将を一騎打ちで倒そうにも、
応じられずに数で撃退された事が何度もあり、昔の自分と照らし合わせてしまったのだ。
(当たり前だがシィルと黒姫は、何も喋れ無い程緊張している)
それにより元就は立ち上がり、これは戦いに応じるという合図と言っても良かった。
対して……ランスは元就の姿に、完全に油断してしまっていた。
たった5人での出雲城への入城……この一連の行動は、元々ランスの……
"魔人(カミーラ)に捕らえられながらも、目の前で自分から全裸になる"
……という、超絶に図太い神経からくる賜物なのだが、"油断"の理由は別にある。
身長1メートル弱の老人……こう見えても元就はかなり強いのだが、
巨大化していた時のインパクトが強過ぎ、早い話"ナメて"しまっているのだ。
よってランスも立ち上がり、今まさに"死合い"が始まるところだったのだが……
『……ランス。』
「なんだ、どうした?」
『どっかに"使途"が居る、やたら近い。』
「なぬっ?」
――――魔剣カオスが、何処かで使途の気配を感じた。
――――続く――――
ランスLv44/無限 シィルLv34/80 黒姫Lv30/99
吉川きくLv33/42 鈴女Lv39/49
毛利元就Lv50/51 毛利てるLv33/47 小早川ちぬLv31/50
●あとがき●
次回で毛利編が終わると思います、その次は明石編ですね。
ランスよりも元就の方が現時点では強いのですが、その辺は待て次回。
明石編後は足利or伊賀に進むワケなのですが、スルーしてしまうキャラも居るかと。
しかし、話が進むと登場する"可能性"もあるので、その辺はご勘弁を。
それ以前に誰とは言いませんが、名前すら出る事が無かったり、
何の活躍もできないまま死んでしまうキャラも出ると思いますので@w@;