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No.2299の一覧
[0] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫~[Shinji](2007/01/23 23:38)
[1] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の2~[Shinji](2007/01/26 13:21)
[2] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の3~[Shinji](2007/02/04 16:34)
[3] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の4~[Shinji](2007/02/09 17:32)
[4] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の5~[Shinji](2007/02/15 00:19)
[5] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の6~[Shinji](2007/02/25 00:59)
[6] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の7~[Shinji](2007/03/03 10:29)
[7] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の8~[Shinji](2008/07/31 07:28)
[8] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の9~[Shinji](2008/08/03 06:37)
[9] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の10~[Shinji](2008/08/07 11:07)
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[2299] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の5~
Name: Shinji 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/02/15 00:19
もし魔人ザビエルが復活したのであれば、黒姫は恐らくそれに気付く筈。

はっきりとした根拠は無いのだが、復活の兆しを既に感じている事を考えると、
いざ復活した時も"何となく"気付いてくれる、と言うのが予測できる。

……だが、やはり根拠が無いので、結局は実際に復活されてみないと判らない。


「どうした、若造! 怖気づいたかッ?」

「ちょっと待て。 ……おいカオス、"使徒"が居るってのはどう言う事だッ?」

『言葉の通り。 でも、"居る"とはちょっと違うかもしれん。』

「違う?」

『そうだな……しいて言えば、入ってる。』

「……入ってる?」


一方、カオスはザビエルの復活の"瞬間"や"兆し"を察する事はできないが、
使徒や魔人の気配を敏感に察する事ができる数少ない存在だ。

例えとして、カオスと人間の(魔人等を)察する能力を比較してみると、
犬と人間の嗅覚程の差(3000:1)があると言えるのだ。

よって……元就達と対面した時から、何か妙な雰囲気を感じていたカオスだったが、
その"何か"が間違いでない事を察しただけでなく、"その者"をも特定してしまうと、
ランスと元就が立ち上がった間の、僅かなタイミングを見てランスに指摘した。


―――――この近くに"使徒"が居る……という事をだ。


その言葉を受け、ランスは元就を無視して周囲を見渡したが、
戦士……いや、人間としての洞察力は、特に使徒と思われる気配を察する事はできなかった。

カオスは逆に、黒姫も"兆し"は判っても"気配"は判らないのか、
使徒という言葉に少し顔を青くし・腰を浮かせて、辺りを見回している。

だが見当たらない……使徒は"居る"のでは無く、カオスの言うよう"入って"いるのだから。


「なんじゃ若造ッ、さっさと構えんかぃ!」

「だから待てと言ってんだろうが! 使徒が居んだぞッ?」

「貴様、我らを舐めておるのか……? 使徒? そんな者が何処におると言うのだッ。」

「(使徒~? なんでござるか、それは?)」

「(あたしが知るワケね~だろ……)」

「黒姫さん、どうしたんですか? そんなに慌てて……」

「あ、慌てますッ。 使徒が既に"出て"しまっているのなら、
 既にザビエルは復活している事になりますから……!」

『それは大丈夫かもしれん。 "入って"いるようだからな~。』

「えぇい、入ってるのは分かったから、何処に入ってんのかを、さっさと言えッ!」


異人と剣が喋っている意味が全く分からない、きく・鈴女・元就・てる・その他毛利の部下。

魔人や使徒については知っている為、半分程度は理解しているシィル。

意味がほぼ分かっているランス・カオス・黒姫。

そんな中……カオスは滅多に出さない"オーラ"の手を"ニュッ"と一本伸ばすと――――


≪――――ピッ≫

『……その娘。 そこの嬢ちゃんの体の中に、使徒が入ってる。』

「なんだとォ~?」

「えっ、ちぬの……中にぃ?」


……カオスの"オーラ"の手は、"小早川ちぬ"を指した。

対してキョトンとした表情の ちぬ は……いや、黒姫以外の全員の者達は。

彼女の体の内に潜む、醜い僧侶の姿を知る筈も無かった。


                  ランスⅦ
            ~魔人の娘 黒姫 其の5~


「へっ? 使徒って……その娘がか?」

『間違いない。 まだ"入ってる"段階だけどな。』

「その、"入ってる"ってのは、どう言う事なんだ?」

『主人の魔人が"復活"したら、そのうち出てくる。 使徒がその嬢ちゃんの中から。』

「出てくる……?」

『まぁ、言葉の通りだ。』


今のランスとカオスの会話は、元就達にも聞こえている。

よってカオスは気を使ってか、それ以上は言わなかった。

詳しく言うと……体の中の使徒が、意思に反して飛び出してくると言う事なのだが……

それでは間違い無く"その人間"は残酷な死に方をするので、本人の前で言うのを避けたのだろう。

さておき……この時、"入っている段階"と言う言葉で少しだけ安心したような素振りを見せた黒姫。

また、魔人や使徒という言葉を聞いた者達は、疑問を隠せなかった。

魔人・使徒と言う単語自体を知らないと言う訳では無いが、
いきなり"居るハズも無い使徒"の存在を、ランス(異人)に聞かされたのだから。


「魔人と使徒……それにランスは関わっているのでござるか?」

「ちぬに使徒が"入ってる"? ど~言う事だよ、そりゃあ!?」

「異人、貴様……そのような事で、元就との戦いを避けれるとでも言うのかッ?」

「へぇー、使徒かー。」

「ちぬ! この者の戯言に耳を貸すでないッ。」

「うぅん……てるおねーたま。 それ、ほんとーかもー。」

「何だと!?」

「時々するのー。 中に何か居るなぁって感じ?」

『なら、間違い無いかもな。』

「やっぱりその魔人にも、使徒ってのは居るのかよ。」

「ランス~、どういう事なのでござるか~?」

「丁度良いじゃね~か、いい加減話せよなッ!」


"魔人と使徒"の話を最も信用していなかったのは、毛利てる。

よって ちぬ が悪い影響を受けないように声を掛けたが、
ちぬ は自分の内の"使徒の存在"を肯定するような返事をしてしまう。

一方、鈴女は きく の首筋へのクナイはそのままだが、魔人の話に興味津々。

そしてきくは、ちぬ に対する姉としての気遣いか、縛られていながらも声を荒げた。

それらのやり取りを見て、立ち上がっていた元就は、大剣を静かに降ろした。


「う~む、これでは"死合い"どころでは無くなってしまったのう。」

「後回しにするか~?」

「良かろう。」

「元就ッ!?」

「落ち着けい、てる。 ……ちぬ、茶を入れい。」

「はぁ~い☆」

「くっ……我らはこんな事をしている場合ではあるまいに……」

「それじゃあ、黒姫ちゃん。 話してやれ。」

「……宜しいのですか?」

「少し順番がズレちまったがな……使徒の事もあるし、まぁ良いだろ。」

「そうですね……わかりました。」


元就がドカりと元の位置に腰を降ろすと、ランスもその場に腰を降ろした。

納得のいかない様子の てる は元就が宥め、ちぬはお茶の用意を始めた。

対してランスは、自分は説明するのが面倒なのか、黒姫に説明を任せた。

すると黒姫は、緊張を隠しながら前に出て正座すると、彼女は元就に軽く会釈して言った。


「私は元……島津家・客将の"黒姫"と申します。
 島津の宣戦布告……そして、復活が近い魔人について説明させて頂きます。」


……


…………


黒姫が(元)島津の者と知って、周囲の部下の中には思わず抜刀する者も居た。

しかし、元就に"喝"を食らって押し止められると、数人の腹心以外は退去を命じられた。

いわゆる人払いも済んだ事により、黒姫の"魔人ザビエル"についての説明が始まった。

順を追って……まずは島津に仕えていた黒姫の元に、ランスとシィルが訪れた事から始まり……


――――島津を飛び出したのは、異人(ランス)と魔人を倒す旅に出る為だったと言う事。


――――島津の宣戦布告は、自分を慕う4兄弟の意思によるモノと言う事。


――――吉川きくを捕らえたのは、毛利の"瓢箪"を手に入れる為だと言う事(半分は嘘だが)。


――――自分は魔人の娘であり、8つ瓢箪には父(魔人)が封印されていると言う事。


――――いずれ別の場所で復活した"ザビエル"を倒す仲間として、毛利3姉妹の力を借りたいと言う事。


500年以上に渡って生まれ変わりを繰り返した結果として、
ちぬの体に使徒が入っていたと言うのは予想外だったが、黒姫は元就達に以上の事を話した。

その話は元就達だけでなく、鈴女やきくも、予想以上の内容に驚きを隠せなかった。

戦国時代の真っ只中、まさかJAPAN全土を滅ぼす力を持つ、
"魔人ザビエル"の復活が近付いて来てしまっていたとは……


「……何と、まさかお前らが"魔人"を倒す為に、儂らの元に訪れていたとはのう。」

「そう言う事だ。」

「ねぇ、ちぬ って死んじゃうのー?」

『それは判らん。 だが……嬢ちゃんが儂らと来る事で、その"確率"が下がるかもしれん。』

「へーっ。」

「だからジジィ、てるさんと ちぬ を寄越せ。 セックス……じゃなかった。
 "魔人"を殺す戦力として、必要になる娘達なのだ。」

「…………」

「おいこら、ジジィ。 返事はどうした?」

「(う~む。 良くこの状況で、ああも挑発できるでござるな。)」

「(あたしゃ~親父があそこまでナメられて、怒り出さないのが意外なんだけど……)」

「……なかなか面白い話だったのう。 本当ならば、乗ってみるのも悪くはあるめぇ。」

「"本当ならば"だと? まだ信用して無いとでも、言うつもりかぁ?」

「そりゃ~、"お前ら次第"じゃあ。 良いな? てる・ちぬッ!」

「くくくっ……良かろう。」

「まー、しょーがないねー☆」


黒姫の話は、元就・てる にとって、とても興味深い話だった。

戦う事を生き甲斐にする二人にとって、魔人との"死合い"など願っても無い事だ。

戦った結果……例え、抗えずに殺されようとも。

かと言って、元就達は"毛利家"を背負っており、話だけで全てを認めるワケにはいかない。

よって元就は再び立ち上がると、それに てる と ちぬ も続く。

ちぬ はやる気が無さそうな、のんびりとした立ち上がりだったが、
元就と てる には、常人を震え上がらせる様な闘気を感じた。


――――――――やる気だ。


「"儂ら"と勝負せい、異人! お前らが勝ちゃあ、話を信じてやろう!
 それに当然、娘でも何でもくれてやるわぁー!!」

「我ら3人と死合うが良い……貴様らも3人だ……丁度良かろう?」

「お手柔らかにねぇー?」

「へっ、やっぱそ~なるか。 ……って、3人だとォ?」

「鈴女は動けないでござるね。 ファイト~頑張れ~、でござるっ!」

「あたしも御免だ、ホント~なら勝ってみやがれッ。」

「チッ、仕方無ぇな~。 シィル、黒姫ちゃん! 行くぞ~ーッ!!」

「わかりました、ランス様ッ!」

「はいっ! (足手纏いには、ならない……)」


……


…………


――――織田城、謁見の間。


「はぁ……」


現在は評定の真っ最中で、上座には"織田信長"の姿。

そして、彼の傍に控えるように、香姫と3Gが座っていた。

今現在は……集まった諸武将たちの、意見の交わし合いが続いている。

しかし信長は会話に混ざる事もなく、欠伸(あくび)のような溜息を漏らしており、
流石にそれはどうかと思ったか、香姫は彼に小声で呼び掛ける。


「兄上、兄上。 評定の最中に怠けないでくださいッ。」

「あぁ、ごめんごめん。 昨日、本を遅くまで読んでてね……」

「もう、夜更かしはしないでくださいとあれ程――――」

『……と言うわけで、信長様。』

「んっ、何?」

『今後の方針の。』

『ご決断を。』

『お願い致します。』×3


こんな場であれど、香姫の小言が始まろうとしていたが……

諸武将達の会話は長引きそうだったので、3Gが信長の判断を煽る事にしたようだ。

それによって信長に視線が集中し……彼はボリボリと頭を掻くと、こう告げた。


「田畑を増やしたり町を発展させたり……色々と案が出てたと思うけど……
 どんな方法にせよ、民や香達が幸せに暮らせれば、それで良いよ。
 もう領地は一つしか残って無いけど、各々が良いと思う方法で、尾張を豊かにして行こうね。」

「はっ!」

「畏まりました! その一環として是非、寺子屋を……!」


興味が無さそうに評定の様子を眺めていた信長だったが、
話の内容はしっかりと頭の中に入っていたようだ。

だが……具体的な事は告げず、諸武将達に任せるような事を言っただけだ。

かと言って信頼は厚いようであり……乱丸と勝家を中心に、武将達は威勢良く応えた。

それに信長が、にこりと顔を歪めた時――――


≪だだだだだッ!!≫

「評定中、失礼致します!!」

『なんじゃ"えっぢ"、どうした?』

「大変です、"足利"が織田に宣戦布告してきましたッ!」

『な、何じゃと!?』×3

「それと同時に、4つの部隊が織田領に接近中との事です!!」

「へぇ……数はどれくらい?」

「合計、約1000名規模になります!」

「そうか……」

『信長様、如何なさいますか?』

「仕方無いね……勝家、お乱。 頼むよ?」

「わかり申したッ! 行くぞ、お乱~!」

「ああ。」

「光秀ぃ! 拙者はだから言ったのだ、足利など信用できんとッ!」

「くっ……」


突然耳に飛び込んできた、足利の宣戦布告及び、領地への侵攻。

それにより直ぐ様、迎撃準備が必要であり、勝家の大声で武将達は、
自分達の役割を果たす為、慌(あわただ)しくその場を離れて行った。

本来ならば既に評定が終わり、信長はのんびりできる筈だったのだが、
領地が侵されそうになるからには、そうも思ってられない。


「3G。 ハチスカ殿と滝川殿に、力を貸してくれるよう交渉を。」

『ははっ、お任せくだされ! ……ゆくぞ、えっぢ。』

「はい!」

≪どたどたどた……≫

「はぁ……久保田達の離反が、片付いたばかりだって言うのにね。」

「兄上……」

「はははは、大丈夫だよ。 香は必ず皆が守ってくれるよ。」

「……はい。」

「そう言えば……あの娘、無事に"呪い付き"を落とせたのかな?」

「どうでしょうか……?」

「まぁ……今はそんな事を考えてる場合じゃ無かったね。」

「そうですよ、これから戦が始まりますっ。」

「(やれやれ、これからまた戦場か。 ……保つかなあ……)」


――――こんな状況であれど、直後また何時ものように、信長は香の頭を優しく撫でた。


……


…………


ランス・シィル・黒姫vs元就・てる・ちぬ。

初めはランスと元就との一騎打ちの筈だったが、元就は3対3を選んだ。

元就側としては、この戦いでランスら3名のいずれかの命を奪う事は当然として、
一騎打ちで無ければ、逆に自分の娘が死傷する可能性もある。

だが、それでも戦わせるという事は、この異人との戦いで死ぬようであらば、
決して"魔人"との戦いで生き残る事ができないだろう……と言う、
彼なりの厳しい方法で、娘たちの実力・覚悟を試すつもりのようだ。

……勿論、ここで異人達が自分らに劣るようであれば、
ランスを殺してカオスを自分の物にし、魔人と戦ってみるのも悪くない。


≪がきいいぃぃんっ!!≫

「ぐぉッ!? このジジィッ!!」

「ふはははっ!!」

≪――――ガヒュッ!≫

「あだーっ!?」


そんな元就と、てるの気合は……物凄かった。

小さい体ながらも大剣を振り回し、ランスをよろめかせる程のパワーを持つ元就。

同じく小柄ながら、硬直を狙って鉄製のハタキを薙ぎ払い、ランスの肉を削ぐ てる。

その激しい連続攻撃の合間に、シィルと黒姫が援護しようにも、
後方で舞って前衛二人の傷を癒す ちぬ の存在で、ランスは防戦一方だった。


「どぉりゃああぁぁッ!!」

「おわっ!」

≪――――フオォンッ!!≫ ←元就の大剣を回避するランス。

「カハハハッ! どうしたぁ異人、逃げてばかりではないか!!」

「その程度か……? 貴様の実力は……」

「ぜぇぜぇっ。 ……アホ言うな! い、今のはまだ準備運動だぞ~ッ。」

「ひぃ、ふぅ…… (元就さんて、呪い付きじゃなくても凄い強いじゃないですか~っ。)」

「さ、流石……毛利元就……」


勝負開始の刹那、勢い良く元就に突撃したランスだったが、割り込んできた てる によって、
若干勢いが下がってしまった剣撃が、彼女の父譲りの怪力によって止められる。

その直後に薙ぎ払われた元就の斬撃を受け止め、大きくランスがよろめくと、
そのまま数分……ひたすら彼は防戦を強いられていた。

完全な回避が難しい てる のハタキによる攻撃は、シィルがその都度で癒しているが、
疲労だけはどうにもならず、肩で息をしているランス。

それはシィルも同じであり、黒姫の与えるダメージも、ちぬの回復範囲内。


『ランス、ひょっとしてマズくないか?』

「……そうかもしれん。」

『う~む、毛利元就か。 まさかこうまで強いとは、こりゃ驚いた。』

「他人事みたいに言うなッ!」

『とにかく、このままじゃいかんぞ? どうする?』

「少しでもジジィが攻撃できる隙がありゃ~良いんだけどな……
 もう片方を斬るワケにもいかんし、ど~したもんか。」

「ん~……何だかヤバそうでござるな。 毛利元就、強さは噂通りでござる。」

「な、なんだよ……負けちまうのかッ?」

「ランスが勝つほうが、い~のでござるか?」

「そ……そんなんじゃね~けどよ……あたしの立場自体、微妙だし……」

「……(このままじゃいけないっ……なら……!)」


早い話……今のランスはピンチと言う事だ。

前話の通り呪い付きを落とした事で油断し、元就"そのもの"の強さを考えなかったのが悪い。

彼がここまで強くなければ、最初の てる との交差の直後に彼女の武器を弾き、
さっさと元就を討ってしまえば良かったのだが……

元就はそれをさせてくれず、てるとのコンビネーションは抜群で、何もできないまま今に至る。

もう一日か二日……経験値を稼いでいれば違っただろうが、今更考えても遅い。


「どうやら見込み違いのようじゃなぁ! 決めるぞ、てるッ!」

「うむ。」

≪――――ダッ!!≫

「チッ……"二人"にゃ期待でき無ぇし、こうなったら鈴女を使うか。」

『万が一でしか使わないのでは無かったのか?』

「姉妹か俺様が死ぬよか~マシだ。」

『それもそうだな。』

「不本意だけどな……鈴――――っ!」


そうなれば、卑怯な手を使うしかない。

自分が負けそうになる事など考えていなかったのだが、その時の為に鈴女がおり、
事前の夜に、ランスは鈴女と二人だけで"作戦"の打ち合わせをしていた。

彼女の腕であれば最良な援護ができるし、これが原因で三姉妹が仲間にならずとも、
自分と三姉妹、及び仲間が此処で死なず……元就を倒し、瓢箪を奪えればそれで良い。
(鈴女が何時でも援護できるよう、クナイをずっときくに這わしているのはこの為)

正直不甲斐無いが、元々たった数人で"あの"毛利から瓢箪を奪う事自体、無理な話なのだから。

よって……ランスが突撃してくる二人に構えながら、鈴女の名を呼ぼうとした瞬間――――


≪――――ガシュッ!!≫


「ぬぅっ……!?」

「な、何ッ!?」


……止める力が無いのであれば……体ごと割って入ってしまえば良い。

鈴女のクナイが放たれる前に、ランスと親子の間に、黒姫が割り込んだのだ!

だが、今の彼女には元就が振り下ろした太刀を無傷で止める力は無い。

ランスが一人で二人の攻撃を防いでいたのも、黒姫とシィルが深手を負わないようにする為だった。

よって……黒姫から見て左から突っ込んで来た てる のハタキは、
両手で構えている脇差で、しっかりと止めらてはいるが……


――――元就の大剣は、黒姫の右胸を肩から両断していた。


≪ギチっ……≫


「……う、ぐっ……」

「んな……ッ!?」


それなりに"レベル"があるので、完全に真っ二つにはなっていないが……

臍(へそ)の位置辺りまで大剣は食い込み、大量の血が湧き出てくる。

いくら強かろうと、人間であれば致命傷であるそのダメージに、
黒姫は歯を食いしばりながらも両手に力を入れ――――


「はあああぁぁぁッ!!」

≪ガキ……ッ!!≫

「が……っ!?」

≪――――どっ≫


予想外の行動で動きが止まっていた一瞬の"隙"を見逃さず、
黒姫は てる に"みね討ち"を叩き込み、彼女を気絶させると、がくりとその場に膝を付いた。

それと同時に脇差が地面に転がり、無理に腕を動かした為か、
両断された右肩から先が、右腕の重さで右に傾こうとしていた。

それによって傷の根元が更に開こうとしており、黒姫は左手で右肩を掴むと、
あまり意味が無い事だとしても、傷口と傷口をくっ付け、更なる激痛で顔を歪めた。

一方、ランスも信じられない黒姫の行動に動きが止まっており、それは元就も一緒だったが……


「ら、ランス……さんッ!」

『チャンスだぞ!』

「うっ……うおおおぉぉぉ~~ーーッ!!」

≪ギャリイイィィーーーーンッ!!!!≫

「ぐわぁっ!?」

「このクソジジィがぁ! 何てことしやがる……ッ!?」

「ぐぬっ……! (いかん、今ので腰を……)」


ランスは吐血をしながらの黒姫の言葉に、我に返る。

直後怒り心頭で、血だらけになった元就の大剣を気合諸共に弾き飛ばす。

その衝撃で元就は地面に尻餅を付き、年相応の事態が彼を襲った。

よってすぐには起き上がれずにいる元就に、ランスはゆらりと近付いた。


――――本気で怒っている。


「許さん、死ね!!」

「……儂の負けか……」

「まぁ喜べ、一発で終わらしてくれるわ! ランスアタッ……!!」

「やめてーっ。」

≪がばっ!≫

「!? ちぬ、よさんかっ!」

「勝負はついてるのー、おとたまを殺さないでー。」

「うるさい、どけ。 お前ごと殺すぞ。」

『ランス……落ち着け。』

「十二分に落ちついとるわッ。 そういや使徒だったな、いっその事――――」

『嬢ちゃん"そのもの"が使徒と言う訳では無いんだぞッ?』

「黙れ。」

≪ゆらり……≫


ダメージは無いが、腰を痛めて動けない元就にカオスを振り下ろそうとしたランス。

しかし、ちぬが元就を庇うように覆い被さり、ランスの腕がピタリと止まった。

だが……彼の怒りを鎮めたワケでは無く、再びカオスを振りかぶった時――――


「ランスさんッ……ま、待って下さい!」

≪ごほっ……≫ ←吐血が続く黒姫。

「……黒姫ちゃん?」

「わ、私なら……大丈夫ですから……」

「大丈夫? だって、あの傷じゃ~幾らなんでも……」

「ランス様! 本当に大丈夫だと思いますッ。 気休めになれば……と思ってましたけど、
 私のヒーリングで、黒姫さんの傷がどんどん回復していってくれてます!」

「何だとォ……?」

「私には……魔人の血が、混ざっていますから……か、簡単には……
 死なない体なのです……この程度の傷では……し、死にませんので……
 ゴホッ! お二人を、殺さないで……あげてください。」

「ダメですよ、黒姫さん。 重傷には変わらないんですから、喋らないで……」

『成る程な。 だから、あんな無茶をしおったのか。』

「…………」

『ランス、今回は黒姫の顔を立ててやったらどうだ?』

「なら、ならー。 おとたまを殺さないー?」

「……うぬぬぬっ……まぁ、良いだろう。 有り難く思う事だな。」


≪すたすたすた≫ ←元就とちぬの前を離れる。


「おとたま、大丈夫ー?」

「安心せい、何とも無いわぁ~。」

「良かったあー。」

「しかし……無念じゃ……儂らの完敗のようじゃのう。」

「あは☆ そーだねー。」

「儂は てるを起こす。 ちぬは治療を手伝ってやれい。」

「わかったー。」

「カハハ……まさか島津の客将が、あれ程だとはのォ。」


……あの致命傷では黒姫は助からない。

そう思い込んでいたランスだったが、黒姫は"死に難い体"を利用して、
身を挺してランスを庇い、彼に攻撃する隙を与えたのだ。

もしも心臓がある左胸に食らっていれば、幾らなんでも死んでいたかもしれないが、
黒姫はそれも計算のうちに入れて攻撃を受けたのだ。

その結果、ランス達は勝利し……元就達の信用を得る事ができたのだった。

ランスは黒姫が傷付けられた事に少し納得のいかない様子だったが、
言葉を選んで でのカオスの言葉に納得したか、無言で鈴女に近寄ると――――


≪ゴチンッ≫ ←軽くげんこつ。

「あててっ。 ……なにするでござるか~。」

「もう良いぞ、きくちゃんを解いてやれ。」

「了解でござる。」

≪――――しゅぴぴっ≫ ←あっと言う間に きく を縛っていた縄を切る。

「ふぃ~……やっと自由の身かよ。」

「うむ、そんな訳だ。 きくちゃん、毛利に戻りたいなんて言うなよ?」

「わ、わかったよ……」

「そんでもって、きくちゃんの処女も俺様のモノだ。 がははははっ!」

「うぐッ……」

「とにかく、これで謎が解けたでござるよ。」

「怖気づいたか?」

「いやいや、面白さアップで文句無しござるよ~。
 ……昨日の夜に、同じ質問をされた気がするでござるが。」

「気のせいだ。」

「ところでござるが、ランス。」

「なんだ?」

「ど~して鈴女、殴られたでござるか?」

「ん~……何となく。」

「うにゃ……」


……


…………


――――翌日、毛利家で一泊したランス達。(昨夜は鈴女とエッチしている)

その出雲城の一室に、ランス・シィル・黒姫・鈴女・元就の姿がある。

彼らは"既に腰が治った元就"が取り出した、"何か"を5人で囲んでいた。


「これが約束の、瓢箪じゃあ。」

「ほぉ~、こんなのがか。」

「確かに父の……ザビエルの力を感じます。 これに間違い無いようですね。」

「それを後7つ集めないとダメなんですかぁ~。」

「いえ……8つ全て集める前に、必ずいずれかの瓢箪が割れてしまうでしょう。
 私達がしている事は、あくまで魔人が復活した場所の特定をし易くするだけです。」

「まぁ~、とにかく。 もう毛利領には用無しって事だな。」

「元就さんは、これからどうなされるんですか?」

「儂はこれから毛利を率いて、島津の野郎どもを蹴散らすつもりじゃ。
 ランス殿に敗れて瓢箪と娘達を持って行かれはぁしたが、
 毛利の国主の座までも奪われちまったワケじゃァ無えからのう。」

「おう、いっその事滅ぼしちまえ。 4兄弟ごとな。」

「グハハハハ! それも良いかもしれんなッ、ついでに良い女も頂きじゃあ!」

「……っ……」

「黒姫殿、仕方ないでござるよ。 それが戦争なのでござるから。」

「そう……ですね。 (島津が毛利を滅ぼしてしまう事も考えられるのだから……)」


現在の黒姫の傷は、あれ程酷かったにも関わらず、
シィルと ちぬ の献身的な治療により、完全に塞がってしまっている。

鎧は壊されてしまったので新しいのを買わねばならないが、着物は毛利の物を借りていた。

そんな彼女は……ザビエルに島津4兄弟が襲われない事ばかり考えていたが、
全国に宣戦布告をした時点で、戦(いくさ)で戦死する事も十分に考えられると言う事を、
間も無く島津と正面から衝突しようとしている、毛利家の真っ只中に居る事で痛感した。

可能であれば戦っては欲しくは無いが、いくら魔人を倒す必要があるとは言え、
自分達の所為で島津が戦争を起こした事は事実なので、口を挟むだけ野暮と言うモノだ。

もし黒姫が島津に戻り、ランスに全てを託せば戦争は止められるかもしれないが……

黒姫も重傷を躊躇い無く負ってまで勝利に貢献すると言うまでの、"覚悟"を持っており、
進んできた道を引き返すというような中途半端な気持ちでは無いのだ。


「……元就。」

「準備できたぜ~。」

「わーい、冒険ー☆」

「おう! 三人とも来よったか。」

「できれば、我も残りたいところだが……勝負に負けた以上、武人として抗う事はできぬ……」

「ま~、乗り掛かった船だしな。 魔人討伐っての、手伝ってやるよ。
(こうは言ってるけど、姉貴もそれなりに乗り気だしな)」

「ちぬもー、頑張って死なないようにするー。」

「がはははは。 三人とも可愛がってやるから、仲良くするんだぞ~。」

「よろしくでござるよー。」

「良いかぁ~? てる・きく・ちぬ。 毛利の名に、恥じぬ戦いをして来るんじゃぞぉ!」

「うむ。」
「応ッ!!」
「はーい。」

「言い方は見当違いだが、タイミングは同じだったな。」

「元就殿の娘さん達らしいでござる。」


……こうして毛利3姉妹は、正式にランス達の仲間となった。

三女である、ちぬの体には使徒が居るようではあるが、
今では助ける術(すべ)は無いようなので、それも考慮して旅を続ける必要がある。

3姉妹は元就の元を……毛利を離れるのには、やはり負い目がありそうだが、
約束は約束であるし、同じ女性として、黒姫の覚悟に何か惹かれるモノを感じていた。

特に てる は武人として、黒姫の戦い身を挺した振りを、かなり評価したようだった。


……


…………


……同日の夜中、毛利領の宿。

何となくいつもより、モンスターと戦った回数が多かった気がするが、
一日を通して歩き続けたランス達は、明石領の一歩手前までやって来ていた。

その中で、ランスは黒姫の受けた大きな傷がまだ気になっており、
何気なく何回か聞いたりしていたが、どうやら本当に今は何の痛みも無い様だ。

しかも、"あの位の傷であれば……"とまで言っていたのだが、
それは決して強がりでは無く、過去に虐待で受けた傷と比べれば、大差なかった。

よって数多く受けた虐待の傷痕が、今は何も残っていないと言うのに、
先日の傷が残る事など無く、それ程までの回復力を黒姫は持っているのである。

さておき、旅の人数はこれで7名となったので、部屋は2つ借りているのだが……

片方の部屋の明かりは完全に消えている一方、もう片方の部屋にはランスときくの姿があった。


「ちぬは、シィルと何だか仲が良さそうだったな。」

「姉貴はど~してか、黒姫に懐いてた気がするぜ?」

「うむ。 黒姫ちゃんは、ああ見えても500歳以上だからな。」

「らしいな。」

「となると……忍者同士の鈴女ときくちゃんで、3本の百合の出来上がりだな。」

「何で"百合"なんだよ?」

「そんな事も知らんのか……これから待ちに待ったセックスだと言うのに。」

「は、はっきり言うなよッ!」

「ぐふふふふっ、こりゃ~しっかりと"教育"してやる必要があるなぁ!」

「えっ? ちょっ……まっ!」


≪がばあぁっ!!≫ ←襲い掛かる音。


……


…………


「さぁ、舐めろ。 こことか、こことかも。」

「んっ……ちゅっ……」

「そこじゃないぞ、まぁ~だ俺様が気持ち良くなる場所が判らんのか~?」

「うぅぅ……そんなの判んねぇよ、ちきしょー! ちきしょ~っ!」


……けど今回は、パイズリだけで済んだようだ。


――――続く――――


ランスLv45/無限 シィルLv35/80
黒 姫Lv32/99 鈴 女Lv39/49
毛利てるLv34/47 吉川きくLv33/42 小早川ちぬLv32/50


●あとがき●
黒姫が頑張る話を書きたかったのですが、違和感ありまくりですね……
ここでスキル妄想、みね討ち(HPに反比例した確率で相手を気絶さる)とか。
さておき、これでランス含めて7名になったワケですが、彼らがメインキャラです。
正直に言ってしまえば、これ以上主要キャラを増やす執筆力が私には無くて@w@;

PS:
基本的に誤字修正版は本家掲載時にUPするのですが、今回は誤字が多すぎたので、
早めに修正する事にしました。 お詫びのしようもありませんorz
ご指摘くださったabacbaさん、Willさん、ありがとうございます。


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