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No.2299の一覧
[0] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫~[Shinji](2007/01/23 23:38)
[1] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の2~[Shinji](2007/01/26 13:21)
[2] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の3~[Shinji](2007/02/04 16:34)
[3] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の4~[Shinji](2007/02/09 17:32)
[4] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の5~[Shinji](2007/02/15 00:19)
[5] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の6~[Shinji](2007/02/25 00:59)
[6] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の7~[Shinji](2007/03/03 10:29)
[7] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の8~[Shinji](2008/07/31 07:28)
[8] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の9~[Shinji](2008/08/03 06:37)
[9] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の10~[Shinji](2008/08/07 11:07)
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[2299] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の7~
Name: Shinji 前を表示する / 次を表示する
Date: 2007/03/03 10:29
――――上杉家。


多くの女性武将が集まっている、一言で述べれば正義の国。

基本的に女性の地位が高く、主要武家の多く(約七割)も女性家長。

場所は佐渡に位置し、金山がある為に豊富な資金力を持っている。

故に東JAPANの治安を乱そうとする勢力は許さず、野心ある国とは常に敵対している。


「どうやら、間に合ったようだ。」

「そうですね。」

「やはり、愛の予想は当たったな。」

「今の足利の勢力と織田の状態を考えると、この程度の洞察は安易です。」

「そんな事は無い、流石は愛だ。」

「はいはい、どうもどうも。 でも、それよりも大変だったのは、この遠征の準備ですよ。」

「準備……?」


その上杉軍が今回 守ろうとしているのが衰退の一路を辿ろうとしている織田家であり、
今回 成敗しようとしているのは、弱者を滅ぼし勢力を拡大してきている足利家・そして原家。

今迄は一国にも満たない領地が、武田家に滅ぼされるのを止める事が多かったのだが……

こうも尾張のような大きな国の助けに入るのは、初めての事であった。

それに、此処まで遠くの距離を行軍させて来たのも初めて であり、
上杉家の参謀である"直江 愛"は裏で随分と手を尽くしていた。

逆にJAPAN最強の剣士である"上杉 謙信"は"何で?"とでも言いたそうな目で愛を見る。


「部隊の編成そのものには時間は掛かりませんでしたけどね。
 暫く上杉を留守にする事から、武田に妨害工作をさせておいたり、
 巫女機関を通る為に"うし車"を手配させたり、足利に察され無いように工作したり……
 とにかく色々と手を尽くした事から、此処まで来れているんです。」

「そうだったのか……すまない。」

「はぁ……貴女にJAPANの状況を把握して貰うのも大事ですから、
 織田が危なそうな事を告げた だけだったのに……
 "良し、助けに行こう"と言い出した時は、開いた口が塞がりませんでしたけどね。」

「だが、織田は"妖怪大戦争"でJAPANを救い、大きな功績を残した国だ。
 そう易々と滅んでゆくのを見ている訳には ゆかぬ。」

「それは否定しませんけど。」


……といった会話を交わしながら、丘の上から前方に広がる様子を見る二人。

数で大きく劣ろうが、尾張を守ろうと軍を展開させている織田軍。

そして倒すべき 原軍は、突然現れた上杉軍の"毘"の旗に動揺している様子だ。

織田側は事前に"えっぢ"等が彼女たちの接近に気付き、
部隊は既に報告を受けているので、特に気にしている様子は見られない。


「どちらの軍も見るのは初めてだな。」

「織田の兵の訓練は、思った以上に行き届いているようですね。」

「うむ。」

「では、そろそろ始めなければなりませんが。」

「愛、この状況はどう見る?」

「そうですね……数で勝っている事ですし、下手な小細工は無用。
 貴女の一番"得意"な方法で良いと思いますよ?」

「……そうか。」

≪つつつ……≫ ←謙信に近付く愛。

「それにしても、今日のあんたはヤケに慎重ね。」 ←この時点で幼馴染口調にチェンジ。

「当然だ。」

「なんで?」

「あの信長殿の危機とあらば、少しは慎重になると言うモノだ。」

「えっ? まさか……(恋!?)」

「何せあの方ほど美味な"団子"を作れる者は居ないと言うからな。」

「はぁ~? ……ってあんた、それなの? もしかして、それが目的だったの!?」

「そんな訳は無いだろう。」


この時点で愛は、いっつも直ぐ様 敵陣に突っ込んでいくハズの謙信を変に思った。

……何時も とは違って"慎重"であり、愛に作戦があるなら聞こうと 確認したからだ。

本当なら謙信が突っ込んで行く事を前提で"手"を考えている愛なのだが、
彼女が作戦を聞いて来た事を妙に感じ、謙信に近付くと口調が急に変わった。

この二人は小さな頃からの付き合いであり、これが本当の会話の交わし方なのだ。


「でも、どうして私も知らない事をアンタは……」

「私用で尾張に赴いていた、勝子と虎子が言っていたのだ。
 何故か彼(信長)が茶店で作っていた、団子の味は素晴らしく……
 最後の一本をめぐって、斬り合いになる程のモノだったらしい……」

「……仲の悪さもそこまでいくと、笑うしかないわね。」

「その噂の団子……私も是非、食べてみたい。」

「ふ~ん……って、あんたがいきなり変な事 言うもんだから、目的を忘れ欠けたわ。」

「変な事を言ったつもりは無いが。」

「いいから! そろそろ合図を出して!」

「わかった。」


≪ザッ……≫


大食漢である謙信が、信長の作った団子が気になる……と言っても。

彼女は慎重になるだけで、織田を助けに行くと言う結果は同じだっただろう。

さておき、愛が団子的な空気を元に戻すと、謙信も気持ちを切り替える。

だが今までの会話は他の者には聞こえていない為、戦場そのもの の雰囲気は変わっていない。

よって謙信がカタナを抜き 前に歩み出ると、整列していた女武士達も戦いに備え 身構えた。


「――――いざ突進!! 毘沙門天の加護ぞある!!」


直後 謙信はそう叫ぶと、一直線に原の軍勢にへと突進してゆく。

その素早さ……及び気迫は、まさに軍神。

JAPAN最強と呼ばれている剣士の姿が、其処にあった。


                    ランスⅦ
              ~魔人の娘 黒姫 其の7~


……一方、その頃。

てる の提案で明石と交渉する事となったランス達は、姫路城へと赴いた。

謁見をするのはランス・シィル・黒姫・毛利三姉妹であり、鈴女はこの場に含まれていない。

よって6名での入城となったワケなのだが……


「城自体は立派だな~。」

「そうですね、綺麗です。」

「別名"白鷺"……JAPANのお城では1・2を争う美しさですから。」

「今の兵達はいささか、美に欠けるようではあるがな。」

「へへっ、ブッ潰したのは あたしらだけどな~。」

「あはは、それ聞こえたら刺されちゃうよー☆」

「……って言うか、毛利の兵隊だってチンピラばっかじゃね~か。」

「それにしても、凄い警戒ですね……ランス様。」

「そうだなぁ。」

「それだけ、私達を警戒しているのでしょう。」


ランス達は、かなりの老兵達に囲まれながら歩いていた。

数は約4~50名……中には鉄砲を持った者もおり、それだけ毛利を危険に思っているのだろう。

毛利3姉妹は明石の兵を大勢 殺しているので憎まれるのも仕方ないが、
ランス・シィル・黒姫は明石とは何も関係は無いので、何だか腑に落ちない。

……かと言っても、毛利の城の中を案内されていた時よりは、プレッシャーは劣っている。

よってシィルと黒姫は そんなにビクビクしておらず、順応とは恐ろしいモノだ。

それをどう勘違いしてか、明石の兵達は女性であってもビビらない様子に内心肝を冷やしていた。


……


…………


「貴殿が、明石風丸か?」

「はい。 出雲からの赴き……ご苦労様でした。」

「労いの言葉、感謝しよう。」

「では早速、本題に入りますが……」


そして数分後、ランス達は少年国主"明石風丸"と対面していた。

彼の傍には"安部 平三"と"朝比奈 百方"を初め、数人の直属の年老いた家臣。

また生き残った20名ほどの屈指の若い武士がランス達を挟んでいた。

しかし一番前に出ている てる は雰囲気に押される事も無く、早速会話を始めていた。

立場上 必要は無いハズだが跪いており、この交渉は必ず成功させたいのだろう。

ランスに至ってはその場で胡坐をかいているが、"異人"という まれな者である事から、
敵として見なして良いのか判らず 扱いに困り、特に何も言われていない。

だが、それも妥当……警戒するべきは毛利三姉妹であり、彼女達こそ明石の敵なのだから。


「……うむ。 我等 毛利と、明石の不可侵条約についてだ。」

「やはり、この書状に間違いありませんでしたか。」

「こちらが出す条件も、記された通りだ。」

「では確認しますが……不可侵を結ぶと言う代わりに、
 "中っ国"を明石の領として頂けるという内容に、相違はありませんか?」

≪ざわっ……≫

「二言は無い。」

「こんな状況で言うのも何ですが、少し条件が……」

「良過ぎると言う事か?」

「はい。」

「……だが、貴殿も知っていよう? 隣接する"死国"で起こっている状態を。」

「"タクガ"と名乗る勢力が……動き始めたという事ですか?」

「そうだ。 不穏な動きを見せているが、生憎 我等は島津との戦(いくさ)で、
 様子を詳しく調べる事や、余計な兵を送る事はできぬ。
 だが"タクガ"が"中っ国"を手に入れたならば、明石にも危害が及ぶだろう。」

「……確かに。」

「とは言え……貴殿らは我等と停戦すれば、調べを出す程度はできよう。
 場合によっては交渉し タクガと結ばらば、勢力の拡大も可能となろう?」

「その結果、明石が毛利を轟かす勢力となろうとも……?」

「ふっ……それは貴殿の腕次第だろう。 再び死合うのも、望むところではあるがな。」

「…………」

「それでは問おう、停戦の程は如何に?」


――――不可侵条約を毛利と結べば、明石に"中っ国"を与える。


その言葉を聞いたとき、明石の者達の間で どよめき が聞こえた。

先日 てる が言っていた"この上無く良い条件"とは、この事だったのだ。

しかし……会話の中で出て来たのが死国の新勢力、タクガ。

てる は死国で彼等が動いている事に気付いていたのだが、今の毛利は あのような状況。

よって、明石に厄介事を押し付けるような意味で領土を差し出すことにしたのだ。

そうならば島津との戦いの最中、タクガ・明石 両国の邪魔立ての可能性はゼロになるからだ。

これは ある意味、策略……てるは あのチンピラ集団を纏めている三姉妹の長女であり、
コソコソと動いているタクガの動きに気付いていない訳では無かったのだ。

対して明石側だが……もし、此処で停戦を断ったとすれば、
後に毛利(場合によっては島津)と"中っ国"を占領したタクガと同時に戦う羽目になるかもしれない。

逆に中っ国を手に入れる事ができれば、風丸の言う様 勢力の拡大を図る事が可能だ。

だが最悪、タクガに滅ぼされてしまう事も考えられるが……

"死国門"がある時点で今の戦力でも格段に有利であり、旨く交渉をすれば手を組めるかもしれない。

つまり、明石を立て直す事ができる可能性が見えてくるのだ。

……それらの事を、書状に"中っ国を譲る"と記してあった事から、
風丸は死国の情報を参謀(平三・百方)に調べさせていたので、分かっていたのだ。

そうなれば……明石の国主として、答えは一つダケである。

今でもかなり無理をしているのだが、部下達が見守る中、
風丸は国主としての威厳を保つ為、数度目の踏ん張りを 心の中で利かせる。


「わかりました、毛利との停戦を受け入れましょう。」

「有り難い。 中っ国の兵は既に引かせておる、後は好きにするが良い。」

「はい……じゃあ、平三。 例の物を出して。」

「はっ、風丸様。」

「……(明石の家宝ではあるが……仕方あるまいな。)」

≪コトンッ≫

「これが、約束の瓢箪です。」


……かくして、てる の明石との交渉は終了した。


……


…………


姫路城 謁見の間。

交渉が終わった其処には人の姿は少なく、風丸・百万の姿だけがある。

政務に慣れていない風丸にとっては、"毛利 てる"と向かい合っていたダケでも厳しいのに、
謁見"そのもの"でもかなりの神経を使ったようで、今は溜息を漏らしていた。

そんな立派といえる彼を、"朝比奈 百万"はしっかりと気遣う。


「風丸様、お疲れ様でした。」

「ふぅ……ありがとう。 ところで、平三は?」

「若い者達を集め、中っ国へ向かう準備をしておるようです。
 年甲斐も無く張り切っておるようですな。」

「頑張ってるなぁ……それにしても、毛利か……」

「色々と警戒しておりましたが、特に怪しい行動は皆無でしたな……
 尾行している者からの情報によると、何故か東の方へ向かっている様なのですが……
 あやつら一体、何を考えておるのでしょうな。」

「今度は種子島とでも交渉をしに行くのかな……良くわからないね。」

「はい。 連れの中には"異人"もおりましたし……意図が全く読めませぬ。」

「だけど、今は明石を立て直す事の方が大事だよね。
 "タクガ"の事もあるし……これから もっと忙しくなりそうだ。」

「そうですな、風丸様。 くれぐれも無理はなさらぬ様。」

「うん、百万達もね。 ……あぁ、尾行は見つかったら厄介だし、深追いは止めるようにして。」

「ははっ。」


……


…………


――――伊勢、原の城・天守閣。


足利の誘いを受けて仕方なく織田を攻めた原家。

かと言って織田を倒せば一部の領地を貰えるとの事だったので、それなりに意気込んではいたが……

突如現れた"上杉軍"の増援により、原の軍勢は大きな打撃を受けてしまった。

それにより骨折り損となってしまった事となり、"原 昌示"は頭を痛めていた。

そんな彼の近くに現れた"亜樹姫"は、怪訝そうな表情で昌示を見て言う。


「負けたそうですね。」

「う……うむ。」

「不甲斐ない……全く、あれだけ追い詰めておきながら……」

「だ、だが仕方無いだろうッ? あの"上杉謙信"が現れたのだぞ!?」

「…………」

「そもそも阿樹、お前が兵を出せと申したから――――」

「言い訳は聞きたくありません。」

「……っ……」


亜樹姫、世間知らずな浪費家。

異常な美的感覚を持った兄の超神に、昌示が"美男子"と言うだけで嫁に出された姫。

ある意味、不幸ではあるが……原家では好き放題しているので、そうでも無いかも知れない。

夫に対しては……超神の価値観が異常なだけで、阿樹に昌示への愛は無い。

それなのに昌示は阿樹の美しさに夢中になっており、原家は衰退して行っていた。

その立て直しになると思われた今回の織田家への侵攻も失敗し、既に出奔した武将も居る。

本来ならば原の最大兵数は3000程であり、その人数を投入すれば まだ勝てたかもしれないが、
阿樹姫の浪費の所為で軍の数だけでなく、質も著しく下がっていたのだ。


……そんな原家を、"彼"が放って置いている筈は無かった。


≪――――スタッ≫


「自ら墓穴を掘ったな……原家の国主よ。」

「ッ!? ……何奴だ!?」

「きゃっ!」

「……忍者王 犬飼、推参。」

「に、忍者王だと? まさか、伊賀の……」

「いかにも。 ……"原 昌示"よ、年貢の納め時だ。
 妻に骨抜きにされた挙句、民の事を考えぬ圧政……"我々"が制裁を与えよう。」

「くそっ……曲者だ、であえぃ!!」

「無駄だ。」

≪――――ガブッ!!≫

「ぐぉ……ッ!?」


突然、二人の前に降り立った 忍者王 犬飼。

どうやら昌示を消しに来た様で、武器を構える。

それにより一歩引いて部下を呼ぶ昌示だったが、それよりも早く犬飼は、
何時の間にか現れていた"わんわん"をけしかけ 噛み付かせた。

その直後、犬飼も人間離れした素早い動きで昌示に突進し――――


≪ドスッ!!≫

「……成敗。」

「ぐふぅっ!?」

「…………」 ←無言で短刀を胸から抜く。

≪ずっ……≫

「あ、阿……樹ッ……」

≪――――どっ≫


短刀を左胸に突き刺すと、昌示は阿樹姫の名を漏らして倒れた。

もはや動かず 死んでいるようで、国主らしからぬ 呆気無い最期であった。

その亡骸を、阿樹は呆然と見下ろしていたが、直ぐ様 犬飼から距離を置いた。

だが……思いのほか、彼女はそれなりに冷静だった。


「……どうやら、原も終わりの様ですわね。」

「その通りだ。」

「――――犬飼様。」

「お前か、状況は?」

「はっ。 原の家臣の協力もあり、上層部は手中に治めております。
 伊勢が伊賀の物になるのは そう時間は掛からないかと。」

「そうか、よくやった。」

「この女は如何致します? 話によれば、この女狐めが原家 衰退の元凶と聞きまするが……」

「わ……わたくしは 足利の姫ですわよ? 忍者とて、女子供の扱いは心掛けているのでしょうね?」

「無礼な、犬飼様は一国の主で おられるぞッ!?」

「……(ここで始末するのも良いが、いずれ足利と戦う事となれば、少しは使い道があるかもしれぬな。)」

「犬飼様?」

「その女は捕虜としよう、連れて行け。 原の衰退は国主に器量が足らなかったと言う事だろう。」

「ははっ!」

「きゃ!?」

「殺しはせぬ……だが、贅沢な浪費も此処までだ。 暫くは牢で頭を冷やす事だな。」

「くっ……」

「さぁ、来いッ!」


忍者としての犬飼であらば、恐らく彼は阿樹を殺していたかもしれない。

だが彼は忍者と言えど今は立派な"国主"であり、
少しでも彼女が伊賀の為に"使える"のであれば、利用する事も必要だ。

その為、犬飼は亜樹姫を連れて行かせると、入れ違いで原家の家臣が天守閣に入って来た。

昌示が部下を呼んだ筈なのに未だに誰も現れないのも、彼等が手を回していたからだ。

……それだけ、昌示は信頼を失い、民に慕われていた国主の面影は無かったのである。


「――――犬飼殿。」

「そなたか。」

「これで、宜しかったのですかな?」

「ああ、お陰で既に片付いた。」

「そのようですな。 ではこれで……」

「うむ、このまま伊勢は伊賀忍の支配下となるが……圧政の解除と、民の安全は保障しよう。
 出奔するのであれば、無闇に止めたり等はせぬ。 何処へなりと行くが良い。」

「有難き事です。 ですが、私含め……多くの者は留まると思われます。
 我々の力であれば、犬飼殿のお役に立てて下され。」

「……感謝する。」

「それでは、私はこれから やる事があります故。」


こうして、原家は伊賀家に滅ぼされる事となった。

しかし……多くの武将は残り、心を改めて伊賀への忠誠を誓った。

全ては伊勢の民……そして、新しき国主 犬飼の為に。

そんな理想に燃える男 犬飼は、天守閣に一人だけとなると、伊勢の景色を見ながら嘆いた。


「さて、そろそろ鈴女も戻って来るだろう。」

「わん!」

「きゃん。」

「くぅ~ん。」

「島津の動きの意図……分かれば良いのだがな。」


……


…………


――――尾張、織田城。


上杉軍の活躍で原家を追い払っただけでなく、かなりの打撃をも与える事ができた。

よって反撃の機会有りか!? と思っていたのだが……数日後、直ぐ様 入って来た報告。

前途の通り"原家が伊賀に滅ぼされた"と言う事であり、その手際の良さに驚く織田家。

また……上杉の者(謙信と愛)にとっても、伊賀の動きに対し同じ心境であった。


「……やられましたね。」

「忍者王、犬飼……」

「"漁夫の利"って言うのを、持ってかれちゃったねえ。」

「ですけど兄上。 尾張を守れたんですし、此処は喜んでおくべきです。」

『そうですぞ。』

『これも上杉軍の方達のお陰。』

『いやはや。』

『謙信殿と直江殿には、感謝しても し切れませぬ。』×3


今現在は、信長・香姫・謙信・愛・3Gが謁見の間で顔を合わせていた。

他の者達は皆 忙しく駆け回っており、織田は明石のように大事な時期だった。

足利と交戦状態になった今……不本意であれど、戦力の補強をしなくてはならないからだ。

しかし、信長は相変わらず落ち着いており、それが少し妙に感じた直江 愛。


「そうだね、これで織田は暫くは安心だよ。」

「そうですか? 原が滅びたとは言え、伊賀の勢力が拡大した事になりますが。」

「そ~なんだけどね、何となく 伊賀が織田に手を出してくる様子が感じられないんだよ。」

「何故ですか?」

「頻繁に忍びを放って来ては いるようなんだけどね……
 犬飼も、まだ迷ってるんだと思う。 代々仕えていた織田を、本当に裏切っても良いのかって。
 本気で織田を潰したいんだったら、原と同じタイミングで織田に攻めて来れば良かったんだからさ。」

「確かに、そうですね。」

「ところで、直江さん。 早く佐渡に戻らなければ危ないのでは無いですか?」

「……それに関しては大丈夫らしい。 愛が色々と手を尽くして くれている。」

「はい、それはもう沢山と。」

「よって……もう暫く上杉は織田に世話になろうと思う。」

「今のうちに、少し足利を叩いておくのも良いですしね。」

『おぉ~。』

『それは有難い!』

『軍神である上杉謙信が居られる間は。』

『足利の軍勢など、恐れるに足りませぬぞ!』×3

「ははははは。 織田も上杉に負けないようにしないとね。」

「と……ところで、信長殿……」 ←急に もぢもぢ としながら。

「なんだい、謙信殿?」

「貴方は、団子を作るのがとても……」

「――――信長殿!」 ←明らかに声のボリュームが高い。

「んっ? 直江殿?」

「失礼ながら最近、病に伏せがちとお聞きしましたが……今 御身体の程はどうなのですか?」

「あちゃ~、俺の病気の事は他国にまで知られていたのか……恥かしいなあ。」

「団子……」

「――――そんな事はありません!」 ←明らかに声のボリュームが高い。

「ひゃっ。」 ←声に驚く香姫。

「知っていたのは、偶然ですから。」

『おお。』

『直江殿ッ。』

『信長様のお気遣い迄をもして頂けるとは。』

『重ねて有難い限りですな。』×3

「全くだね。 こうなったら、おちおち臥せってもいられないな。」

「だん……」

「――――香姫殿!」 ←明らか声のボリュームが高い。

「は、はい?」

「まだ元服していないと言うのに、織田を纏めてゆくのは、お辛くはありませんか?」

「そ……そんな事はありません、全ては尾張の方達の為ですから……」

『お……』

『おぉ~。』

『香様ッ。』

『立派で御座いますぞ!』×3

「私も肖りたいですね、謙信様には色々と苦労を掛けられていますから。」

「…………」 ←恨めしそうなつもりで愛を見る謙信。


……この調子で謙信の言葉は愛に意図的にスルーされ続けたが、
数時間後・信長は快く謙信の為に、串団子をたっぷりと作ってくれた。

そんな彼の串団子を、謙信は50本食べた。

その時の彼女は すこぶる幸せそうだったが……愛の無体は、今だ根に持っていた。

二人に貸し与えられた部屋の中、無表情で愛を見つめる謙信。

何も考えていないような視線だが、チクチクとした感情は伝わってくる。


「……愛は酷い奴だ。」

「酷いのは あんたよ。 病を患ってる信長殿に、あんなに団子を作らせるなんて。」

「うっ……」

「それに、さっきのは団子の為ダケに織田を助けに来たって、
 思われないようにした だけよ。 その代わりに、私は随分と失礼な事を言ってしまったけれど。」

「…………」

「それなのに、あんたが あんなに食べるもんだから、意味無かったじゃないの。」

「…………」 ←恨めしそうなつもりで愛を見る謙信・その2。

「はいはい、そんな目で見ない。 私の分、取っておいたから。」

「!? やっぱり、愛は良い奴だ!」

「あんたは……"幸せ"なヤツよね……」


……


…………


明石領……姫路の右端。

瓢箪を手に入れたランス達は、明石を離れるべく東へ向かっていた。

足利と伊賀、まだどちらへ行くか決めていないが、それは今夜にでも決めれば良い。

毛利3姉妹にとっては当分、毛利に戻れなくなってしまうが、それも仕方無いだろう。


「これで2つになりましたね、ランス様。」

「うむ。 それにしても、てるさん……最初から"瓢箪寄越せ"って書いてたんじゃ無いのか?」

「ふっ……人数は多い事に越した事は無かった だけの事だ。」

「なんか納得いかん……普通に話も進んでたし。
 こんなんだったら、明石の未亡人でもレイプしてる方が良かったな~。」

「じゃあー、ちぬ が後でさせてあげよっかー?」

「おっ、良いのか?」

「うん☆ ちぬ エッチするの好きだしー、レイプでも何でもして良いよー。」

「がははははは、そうかそうか。 だったら明石の件はチャラにしてやるとするかな!」

「お~い、ランス。」

「ん? どうした、きくちゃん。」

「"どうした"じゃね~だろ? 消えたぜ、気配。」

「あぁ。 それじゃ~居なくなったって事か。」

「おうよ、ヘタクソな"忍び方"だったけどな。」

「んじゃ~……"ニイヌマ ケンジ"は。」

「鳩が好き~でござる!」

≪したんっ≫ ←着地音。

「うわっ? やっぱ居たのかよッ!」

「あはは、不思議ー☆」


歩みを進める中、きくは ようやく"気配"が消えた事をランスに伝えた。

何故なら、ずっと明石の"忍び"と思われる者が一行を監視していたからであり、
それだと大事な話は交わせなかったので、居なくなるまで警戒する必要があった。

明石の"忍び"達は気付かれていないつもりなのだろうが、
一流の忍者である きくには、気配を察するのは容易だったのだ。

それだけでなく、全ての忍びを始末する事も可能だったが……

そんな事をしてしまえば、停戦がパァになってしまうので、止むを得ず放置させておいた。

よってようやく監視が終わると、ランスは変な暗号を言い、同時に何処からか現れる鈴女。

流石にその気配には きくは気付けず、少し悔しそうな様子である。


「おう、生きてたか。」

「勝手に殺さないで欲しいでござるよ。」

「で……何か目欲しい物はあったか?」

「それなのでござるが……お金や装備も、大した物は無かったござるよ。
 進入自体はランス達が引き付けてくれたから、簡単だったでござるけどね~。」

「なんだ、つまらん。」

「ランス様、やっぱり"盗み"は良くありませんよ~。」

≪ぽかっ!≫

「やかましいっ。」

「うぅ、やっぱり……」

「けど、"こんな物"を発見したでござるよ。」

≪ごそごそ≫

「んっ? なんだ~、こりゃあ?」

「姫路城にあった"掛け軸の裏"に隠してあったんでござるが、
 "面白そうな事"が書いてあったので、持って来たのでござるよ。
 もう少し早く見せたかったでござるが、忍者が見張ってたので無理だったでござる。」

「ふむ……"ぬへ"だと?」

「聞いた事ね~なぁ。」

「ちぬ も知らなーい☆」

「うぅ……良く見えません……」

「まさか、これは……」

「知ってんのか? 黒姫ちゃん。」


それは、"秘密生体兵器・ぬへ"の隠し場所が書かれた文書だった。

長い時を生きている黒姫は何か知っている様子だったが、他の者がそれを知る筈は無い。

よって6名全員が、鈴女の広げた文書を覗き込んでいた。

それに興味が湧いたランスであったが……隠されている場所は"姫路城の近く"との事。

つまり"ぬへ"を見る為には、今迄 来た道を引き返さなくてはならず、
ランスはそれが"面倒だ"と言う理由で、ひとまず置いておく事にしてしまった。

しかし"ぬへ"とは(女性型)戦闘兵器……ならば、いずれ役に立つ事があろうと考え、
"隠し場所"を鈴女に覚えさせておき、ランス達は更に東へと進んで行ったのだった。


……


…………


その頃、織田では――――


「おっしゃぁ! 傾奇御免状貰ったぁ!!」

『おぉ、利家……』

『いや、前田 慶次殿!』

『遂にやりましたな!』

『これで、織田も安泰に一歩 近付いたじゃろう!』×3


……前田利家が歌舞いて、少しだけ戦力がアップしていた。


――――続く――――


ランスLv46/無限 シィルLv36/80
黒 姫Lv34/99 鈴 女Lv40/49
毛利てるLv36/47 吉川きくLv35/42 小早川ちぬLv34/50


島津 15000名
毛利 19500名
明石 2000名
タクガ 不明
織田 1400名(-400)*1
足利 7200名(-800)
原  滅亡
伊賀 2000名(+500)
上杉 4900名*2

*1 カッコ内の数値は前話比。
*2 内900名は織田家に存在。


●あとがき●
今更ですが、原作では黒姫はランスに"黒ちゃん"と言われておりますが、
何となく響きが例の芸人みたいで違和感があるので、"黒姫ちゃん"と呼ばせています。
謙信については、いい台詞がちっとも浮かんでこなくて一週間何も書けませんでした@w@
原家は犬飼様にあっさりと滅ぼされましたが、この様な感じでJAPANはガスガス動きます。
原さんは嫌いでは無いのですが、亜樹姫はまた出てくるので勘弁してやってくださいorz


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