対峙するのは二人の少女。一人は白く、一人は黒い。
「それじゃあ、始めようか」
「――うん。始めよう」
そして……!
温泉に行った日の翌日の事である。
その日もなのはは学校の帰り道で迎えに来たユーノと合流し、話しながら歩いていた。
「なのは、今日もお疲れ様」
「にゃはは、ありがとうユーノ君」
ただの道でもユーノと一緒にいると何だか違って見えるから不思議である。
「今日はどうだったのユーノ君?」
「うん。昼間に一個見つけたよ。これで十二個目だ」
「ええー!?もう!?」
昔とはえらい違いである。間違いなく昔より早い。環境やらなんやらが全然違うから仕方が無いといえば仕方が無いが。
「うん。僕も回復してきたから、ある程度は魔法が使えるしね」
「う……。ユーノ君が回復したら私が本格的にいらない子になってしまうような……」
さもあらん。今まで自分が必須だったといえるのは封印時とレイジングハートに格納する時のみ。
戦闘時は別に自分でなくても父兄姉が存分にその腕を振るっている。
このままユーノが回復したら、封印等は別にユーノがやればいい訳で、自分は正直必要が無い。
「……割り切って、得意なことを伸ばすように今まで魔法の特訓をしていたんだけど、苦手なこともやるべきだった」
反省する。戦闘に関することだけでは、戦う必要が無い限り役立たずだ。
「ユーノ君、今度そういった魔法のコツみたいなのを教えて欲しいな。良く考えれば、これから必要になることも多々ありそうだから」
「うん。……なんだか昔を思い出すね」
それは、なのはにとっては二十年近く、ユーノにとっては実に九十年以上前の出来事。
「……そうだね」
目を瞑ればあの頃の事が思い浮かんでくる。
夜、助けをを求める声に向かって行って、喋るフェレットと会った事。
初めてレイジングハートを握った事。
初めて空を飛んだ事。
巨大な樹と戦い、街を守る決意をした事。
初めて、敵対する黒い魔導師の少女と戦い、敗北した事。
その少女に初めて勝った事。
色褪せてはしまったけれども、今でも思い出せる、大切な思い出。
そしてその思い出は、全て共にユーノがいた。
「……懐かしいね」
「……そうだね」
そうして二人で思い出に浸っていたら
「!ユーノ君!」
「うん!」
ジュエルシードの反応があった。そしてこれだけはっきりしているということは無論、暴走中だろう。
「行くよ!」
そして、そのまま結界を纏うように展開し、レイジングハートをセットアップ。さらに飛行魔法を展開する。
「あっちだね!行こう!ユーノ君!」
「うん!」
そして、二人は文字通り現場に飛んで行った。
そして、二人はそこに辿りついた。
「結界だ……」
「結界だね……」
そこにあったのは結界だ。つまり……
「フェイトちゃん、だよね」
「十中八九、そうだろうね」
フェイトがいるのだろう。
「ユーノ君」
「うん。基本的には手出しをしないよ」
「……ありがとう」
なのははそれを確認する。
「それじゃ、入るよ」
「うん」
そして、結界に侵入した。
そこで見たものは予想通り、フェイトとアルフ。そしてこれまた予想通り、戦闘中である。
対峙するシードモンスターの素体は恐らく、亀。何故恐らくなのかと言うと……
「おっきい……」
「大きいね……」
恐ろしく巨体なのであった。
「と、言うかガ○ラ?なんだか火でも吐きそうだね」
「なんで亀なのにあんなに動き回っているんだろう……」
そう、なのはの言っている通り、某怪獣映画に出てくるあれに似ている。
フェイトたちはそれと戦っている。攻撃は簡単に当たり、相手の一撃を躱すのも楽なようだが相手はそれをものともしていない。
「とりあえず、加勢しよう!」
「そうしようか」
そう言いあい、フェイト達のもとへ加勢しに行く。
「!えっと、なのは?」
「加勢するよ、フェイトちゃん」
驚いたようなフェイト。なのははそれに答える。
「後で、ジュエルシードをかけて戦おう。だから、今は協力するよ」
「……分かった」
少し間があったが、そう返事をするフェイト。
「フェイト、そいつら信用できるのかい?」
「多分できるよ。それにこのままじゃ何時倒せるか分からないし」
「……フェイトがそう言うのならいいさ。あたしは従うよ」
アルフも一応であるが納得したようだった。
「来るよ!」
ユーノがそう言うと同時に咢が開かれる。そして……
「やっぱり火を吐いたよ!!!」
「っ!回避!」
火炎が吐き出された。
なのははシールドにより防御、フェイトとアルフはそれを回避。
「こっちからも反撃するよ!ディバインバスター!」
砲撃を放つ。それは容易く命中したが、相手はぴんぴんしている。
「効いていない!?」
割とショックだった。ダメージくらいは与えられると思っていたのに。
「うん。私達も結構攻撃しているけど、全然聞いた様子が無いんだ」
フェイトはその威力に少し驚いたようだったがそう言う。
「そうなんだ……。ねえ、ユーノ君、どうしたらいいと思う?」
敵の爪を回避しながらユーノに相談する。
「うん。さっきから解析しているけど、体の周りに強力な防御魔法のようなものが張ってあるみたい」
なのはの魔法が効かない位強力なんて、出鱈目だよね、すごいよジュエルシード、などと言っているユーノ。
「つまり……それごと吹き飛ばせる威力でやればいいのかな?」
なのはは相手の体当たりを回避しながら聞く。カートリッジは無いが、スターライトブレーカーならばいける、はず。
「いや。そうでもないんだ」
ユーノはそれを否定する。
「じゃあどうすれば?」
「うん。さっきも言ったけど、あくまで体の周りなんだ。……火を吹く時、口を開けたでしょう?そこには無かった」
なのはは理解する。
「つまり……」
「うん。火を吹く時に同時に叩き込めばいい事。防御魔法は僕がやるから、なのはは攻撃に専念して!」
「うん!フェイトちゃん!」
フェイトの名前を呼ぶ。
「何!?」
離れていたため、大声で返事をするフェイト。
「弱点は、火を吐いているときの口!そこを攻撃して!」
「分かった!」
そうして四人はタイミングを待つ。しばらく回避し、防御をしていたら、それが来た。
「!来た」
「アルフ!防御をお願い!」
「はいよ!」
身構えるなのはとユーノ。止まってしまうため、使い魔に防御を任せるフェイト。
そして、その咢から火炎が吐かれた瞬間。
「ディバインバスター!」
「プラズマランサー!」
魔法が放たれる。
その二重の魔法により、貫かれたシードモンスターは倒れ、核であったであろう亀の姿に戻って行った。
そして、話は冒頭に戻る。
対峙するの二人の魔導師の少女。一方は白く、一方は黒い。
シードモンスターを倒した後、封印し、どちらが所有するかを巡って戦わんとする、高町なのはとフェイト=テスタロッサである。
「それじゃあ、始めようか」
「――うん。始めよう」
そして、戦闘が始まった。
フェイトがフォトンランサーを放つ。なのははそれを回避せずに防御。
回避する様子が全く無かったのに少々動揺したのか、一瞬手が止まるフェイト。そこになのははディバインシューター。だがフェイトは回避、距離を詰めてくる。
バルディッシュの魔力刃による斬撃。なのははやはり防御。攻撃が全く通らない。動揺するフェイト。
そこでなのははアクセルフィン。距離を取る。追いかけようとするフェイトだったが、そこにアクセルシューターが飛んできた。
フェイトは回避。だが回避した先にも別のシューター。さらに回避。そこにもシューター。やはり回避。やはりシューター。
回避。シューター。回避。シューター。回避。シューター。回避。
大分体勢が崩れている。気が付けば、フェイトはなのはの大分前に来ていた。
そしてなのはからディバインバスターが放たれる。距離の短い、回避することができない状態での一撃。
しかし、そこに……
「スト……」
少年が割り込んできた。
だが、その少年になのはのディバインバスターが直撃。
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
そのまま少年は撃墜。慌ててフローターを少年にかけるユーノ。
こうして、なのはとフェイトの初戦闘は終わったのだった。