壊れ、ハーレム注意
「なのは!」
「ユーノ君!」
互いを抱きしめる。彼は、彼女と再会した。
彼の名前はユーノ=スクライア。つい先ほど未来の記憶を取り戻した逆行者である。恐らく、目の前の彼女も。
二人の指には同じデザインの指輪。多分これが原因なのだろうロストロギアだ。
まあそれは別に良い。そして彼はその人生を思い出していた。
(なのはとの結婚式でなのはの代わりに死んで、フェイトと添い遂げて、はやてと一緒の墓に入ったんだ……あれ?)
酷い違和感を感じる。いや、別に三つだけではない。もっと、それこそ十以上の記憶がある。
「ユーノ君、ユーノ君!会いたかった……」
必死に抱き着いている彼女を見て安堵を感じると同時に冷や汗を流す。
……そして感じる魔力反応。これは……
「ねえゆーのなんでなのはとだきあっているのかないまきがついたけどゆーのもゆびわをしているよねわたしもしているんだよそのゆびわをしているっていうことはわたしのゆーのだよねもちろんわたしもゆーののものだけどもういちどきくけどなんでわたしのゆーのなのになのはとだきあっているのかなねえゆーのこたえておはなししようちょっとあたまぴかちゅーしようか……」
目からハイライトを無くしている、フェイトのものだった。
「……っ!フェイトちゃん!」
あははーと笑いながらバルディッシュで斬りつけてくるフェイト。避けるためにいったんユーノと離れる。なおも斬りつけてくる。
「ふむ……この程度か」
しかしそこで間に入ったのは烈火の将。その攻撃をあっさり防いでいた。
「シグナム!?なんでもう出ているの!?」
目から光が戻ったフェイトが叫ぶ。しかしそれを無視してシグナムはユーノに話しかけていた。
「久しいな、ユノユノ。会いたかったぞ」
その左手には指輪があった。
「ええっと、久しぶり、シグシグ」
ユーノも答える。つい、そんな呼称が口をついて出ていた。
「おお!私の事を覚えているか!……いや、或いは、私の事も、かな」
シグナムがそんなことを言う。
「どういうこと……?」
「教えてくれる、シグナム?」
二人が疑問をはさむ。が、
「いや、そこからは私が説明するで」
そこに現れたのは夜天の王と残りのヴォルケンリッター、さらに……
「「リインフォース(さん)!?」」
夜天の書の管制人格、リインフォース。そしてザフィーラも含めて当然のように左手に指輪をしていた。
「説明してくれるんだよね、はやてちゃん」
「もちろんや。簡単に言うとな、みんなユーノ君と一緒になった未来の記憶を持っているんやよ。……ザフィーラとリインフォースは違うけどな」
はやては続ける。
「あの日、記憶を取り戻した私はその知識を利用して夜天の書を修復した。そして皆と再会した。その時、気が付いた。皆同じ指輪をしている、と」
なのはとフェイトは息をのむ。つまり……
「全員が、ライバル……」
「そういうことか」
そういうことだ。
「まあ、重要なことが一つだけあるけどな。……なあユーノ君。ユーノ君は誰と一緒の記憶があるん?」
緊張した空気が漂う。それを破ったのはなのはだった。
「私だよ!ユーノ君、私を抱きしめてくれたもん!」
「だが私の事も覚えていたぞ」
シグナムの言葉に、うぐ、と沈黙するなのは。
「で、ユーノ君、誰のなん?」
「……いん」
「は?」
ぼそぼそと小さく呟く声が聞こえなかったのか、はやては問い直す。
「全員分だよ!異なった記憶がいくつも!!!」
ユーノが絶叫する。それを聞いたはやては指示を出す。
「そうか……。大丈夫やでユーノ君!私らは既に管理局に所属しとるから、ちゃんと養ってあげるでー。皆、プランBや。ユーノ君を八神家のものに!」
「了解しました!」
「了解!」
「了解です!」
「……了解」
「……了解です」
まあザフィーラとリインフォースはあまり気合が入っていなかったが。それを見たなのはとフェイトが焦る。
「拙いの……。フェイトちゃん!私たちも共同戦線を!」
「うん。私も言い出そうと思っていた」
そして、フェイトの攻撃でユーノから離れていた赤い球を拾う。
「いくよ……『我、使命を……』」
『まどろっこしい。Stand by Ready, Set up.』
過程を省略されて一気に戦闘態勢に入ることができた。まさか……
「レイジングハート!?まさかレイジングハートもなの!?」
『はい。そう通りです。勝利の暁には私にも』
レイジングハートもだった。仕方ない、背に腹は代えられない。
「私も忘れないでおくれよ!……思い出したのはついさっきだけど」
「アルフも!?」
――そして、激突が始まるであろう瞬間だった。地面から、それが迫る。
「よし!ユーノさんゲット!」
「「「「「「「『セイン!?』」」」」」」」
そして大量のガジェットと共に現れる彼女ら。すなわち……
「ナンバーズ!?」
「ええい、新たな勢力か!?」
ナンバーズ。ただし時期が悪かったのか、出現したのはドゥーエ、トーレ、クアットロ、チンク。セインも含め、当然のように指輪をしている。
「セインちゃん、よくやりましたわー」
「うむ、ここは姉たちに任せておけ!!!」
「ありがとー。あとでラボで!」
それになのはたちも反応する。
「ふん、ガラクタめ、なの。AMFもリミッターもなければ貴女たちなんて一撃なの!!!」
流石に言い過ぎだが、似たようなことは誰もが思っていた。だがそれを聞いたクアットロが馬鹿にしたように言う。
「あららー。お馬鹿さんねー。……知ってるかしらー、魔導技術より私たちの技術のほうが簡単に強くなれるんですよー。ましてや私たちの生みの親はあのドクター。
……さて、それに私たちの未来知識が組み合わさったらどうなるかしらー?」
その言葉に反応してガジェットをよく見れば、今まで見たことが無いタイプだ。
そして全員が理解する。彼女らを侮っていてはやられるのはこちらだ、と。
そして……第一回ユーノ争奪戦争の幕が上がった―――――
おまけ1 その頃のナカジマ家
「なんだか出遅れた気がする……」
「どうしたの?スバル?」
「ギン姉?いや、別に……あれ?ギン姉、左手のそれ……?」
「ん……ああ、気にしないで」
「え、あ、まさかギン姉も……?」
「ギン姉“も”ってスバル!それ!まさかあなたも……?」
おまけ2 その頃のランスター家
「ティアナ、最近はなんだか熱心に勉強しているが何かあったのか?」
「兄さん?べ、別になんでもないよ!(そろそろユーノさんが無限書庫に勤めるはず!私も早く勤められるレベルにならないと!)」
おまけ3 その頃のドクターSのラボ
「……なあウーノ」
「何でしょうドクター?」
「……他の皆はどこに行ったんだい?」
「私も詳しくは。ただ、運命の相手を奪ってくるとしか」
「……」
「……」
「働かせすぎたかな?確かにクアットロなんかは中々よいアイデアを出してくれているからなあ」
「……もう少し、休みを増やしましょうか」
「……そうしよう」
ちなみに描写はありませんが、あとノーヴェ、ウェンディ、ヴィヴィオ、アインハルトに手を出しています。