前回の超あらすじ
・惚気合戦開始
・チンクさんマジヒロイン
「はてさて次は……ティアナ!」
「わ、私ですか……」
ティアナが少し驚く。
「うん。よろしく」
「は、はい。ええっと……」
切っ掛けは……その、私の一目惚れでした。
「一目惚れ!?あのティアが!?」
うっさい!私だって実際体験してみなかったら信じないわよ!
「あー……。ゴメンね」
……まあ分かればいいのよ。それで出会いは私がフェイトさんの補佐官をしていた頃。フェイトさんが無限書庫に用があるからと連れて来られてでした。
「私も同じようにティアナに紹介したなあ。執務官になった後もユーノとコネがあると便利なこともあるだろうって思って」
ありがとうございます。多分、こちらでもフェイトさんは同じように考えて紹介して下さったのだと思います。けれども……私はそれどころではありませんでした。
「まあさっきの話から行くとね……」
ええ。その男性を見た時、何というか、その……全身に電流が走ったと言いますか……。恋に落ちました。
今まで、一目惚れなんてあるわけ無いと馬鹿にしていたのに……。
「フォーリンラブやな」
はい。それで挙動不審になってしまってフェイトさんに心配をかけました。
フェイトさんに申し訳ないと思うと同時にユーノさんに変な子と思われていないか心配になりました。
「うわー……ティア可愛い」
うっさい。それで仕事は……まあ頭を切り替えられたから問題無かったのですが……、その、勉強に手が付かなくなってしまって……。
「何となくわかる気がするなあ」
ええ。ユーノさんのことが気になって手に付かなくて……偶にフェイトさんに勉強を見てもらっていたのですが、心配をかけました。
そんなある日。見かねたフェイトさんが、私じゃなくてユーノに教わったら、と勧めてくれたんです。自分もユーノに教わったからきっとティアナも十分合格できるレベルになるよ、と。
……フェイトさん、自分の教え方が下手だと勘違いしたみたいだったんですよね。多分、フェイトさん少しへこんでいたと思います。本当に申し訳ないです。
「いや、私に謝られても」
それはそうですけど、なんとなく。それで本当に慌てましたよ。でもフェイトさんはそんな私をよそにユーノさんに連絡を取って了承を取り付けてしまいまして。
それで私は慌てて、でも嬉しくて、でもどうしたらいいかわからなくて、でも嬉しくて、でもどうしたらいいかわからなくて……、と分かり易く混乱しました。
「ふむふむ」
それでユーノさんと二人きりでの勉強会が始まりました。最初の方は本当にいろいろ大変でした。主に私の精神的に。
私はどうしたらよいのか分からなくてひたすら混乱したり、赤くなったり。ユーノさんはそんな私を調子が悪いのかと心配してくれたり……。
「はは……」
……まあ、けれども人間は慣れるもので、ユーノさんに勉強を教わることにもだんだん慣れていきました。少なくとも、普通に勉強を教わる事が出来るくらいには。
最も、ユーノさんと接していくにつれて私は更にユーノさんに惹かれていきましたけど。
「それで?」
はい。それで私は見事一発で合格することが出来ました。ついでにユーノさんから攻撃用以外の魔法もそれなりバリエーションを教わり、戦闘非戦闘問わず幅が広がりました。
戦争時、私の戦闘方法を性格が悪いとおっしゃられた方もいますけど、私にとってそれは褒め言葉です。
「単純な魔法のバリエーションならリイン、はやての方が多いんだけど……お前はそれを応用する力が凄いからな……」
ええ。時に不意を打ち先手を取り、時に幻術で惑わし、時に罠に嵌め、時に味方と連携し強化や火力支援を、時に遣り合わずに追うことができるくらいに撤退・孤立させ各個撃破、そして時に正面から打ち砕く。
もう一度言いますが、私にとって性格が悪いとか、卑怯だとかは褒め言葉ですよ。
「そ、そうか……」
はい。っと横道にそれましたね。それで執務官試験に合格した報告をユーノさんにしに行った時……告白しました。
「おおー」
とは言っても、ユーノさん、その時点で私からはそういった感情を向けられていることに気が付いていなくて、考えたことも無かったから、少なくともすぐに付き合うことはできない、と断られました。
「まあユーノ君はそういうやろうな……。それでどうしたんや?」
はい。まあ一回宣言した以上は怖いものは無い、と開き直ってユーノさんに攻め入りました。休暇のたびにユーノさんの元に行く私。
執務官となり、忙しくなりましたが別に構いません。ユーノさんと共に過ごせるときが私の最高の休暇ですから。日頃の世話から、デート等色々やりました。
――そして足かけ三年、見事陥落に成功しました。
「以上です。私の場合はこんな感じでしたね」
「それにしてもティアが一目惚れか……。なんか場面場面を想像してみたらティアが凄くかわいい」
「うっさい」
スバルの言葉に反応するティアナ。とは言っても本気で嫌がっている素振りは無いが。周りも感想を言っている。
「はー……。一目惚れか。そんなこともあるんやね。次は……フェイトちゃん!
「私?」
はやての言葉に少し驚いたように声を上げるフェイト。
「うん。ほら」
くじを見せるはやて。
「あ、本当だ。それじゃあ、えっと……」
私とユーノの出会いは、私が母さんの命令でジュエルシードを集めていた、いわゆるPT事件の最中。
白い魔導師の少女―なのは―と初めて出会ったのと同じ時だった。
「私の所と一緒だね」
そっか。それで、紆余曲折の末、PT事件は終わった。私とアルフはクロノ達に捕まって母さんはアリシアと共に虚数空間に消えた。
「資料と一緒ですわね」
うん。そして……なのはと親友になった。
「そうストレートに言われるとちょっと照れるよ」
うん、私も。それでその後は暫くビデオレターでやり取りをしていたんだけど、なのはの話にちょくちょくユーノっていう男の子の話が出てくるんだよね。
多分、あの元フェレットの男の子の事だとは思ったけど、興味を持ったんだ。
「へー……」
それで裁判の時、証言してもらうためにユーノが来た。まともに話すのはそれが初めてだった。
結構、いろんな話をしたんだよ。なのはの事やら魔法の事やらから始まって、私が全く知らないような文明の話とか。私はこれまで母さんの事と魔法の事しか考えてこなかったからユーノの話は新鮮だった。
「ふむふむ」
そしてその後もいい友人だった。クロノが義兄になったから、間違いなく最も親しい異性の友人だった。
少しそれが変わったのは、執務官試験の勉強に付き合ってもらった後からかな。
「どう変わったの?」
うん。その後からユーノの事を意識し始めたんだ。とは言っても恋愛的な意味では無かったけど。
「……どういう意味ですか?」
結構、執務官試験で一緒に過ごした時間が長かったから、今まで良く見えなかったユーノの欠点が見えてきたんだ。
具体的には――私生活。
「……ああ、成程」
多分、みんな分かっていると思うけど、ユーノ、私生活はあまり頓着しないというか、顧みないというか……だらしないでしょ?
「ええ。そうですよね」
だから、偶にユーノの家の掃除をしに行くようになったんだ。気が付いたら洗濯をやるようになって、御飯を作ったりするのが普通になったけど。
「はは……」
まあそんなこんなで年月が経った。気が付けばユーノの部屋の私の私物もだいぶ増えた。マグやら、歯ブラシやら化粧品なんかはもとより、普通に、ベッドこそないけど私の布団とか、下着まであったからね。
「同棲?」
してないよ。一応、なのはとルームシェアしていた。
そしてJS事件が終わって、なのはとヴィヴィオは親子となった。一緒に暮らさないかと誘われたけど……偶に遊びに行くのならともかく、親子水入らずを邪魔するのも、と思って断ったんだ。
それで適当な場所を探そうと思ったんだけど……忙しくて。
「……ああ。それで……」
うん。それで半ばユーノの所に転がり込むような形になっちゃったんだ。まあ、長い任務の後にある程度のまとまった休暇という形が普通だから、それほど気にはならなかったよ。
「周りの反応はどうだったの?」
私もユーノも気が付いていなかった、というより気にしていなかった、というのが正しいね。
後ではやてに聞いたところ、すでに何年か前からの状態が状態だったから誰も気にしていなかったらしいけど。
「はは……」
それからさらに何年か経って、ある日、家計簿をつけていた時にね、気が付いたんだよ。
「何を?」
結婚していたほうが税金やら保険やらが安いんだよ!
だから「ユーノー。結婚しようか。税金とか安くなるし」「そうなの?じゃあ結婚しようか」「うん。じゃ、明日役場に行こうよ」「分かった」って……。
「私の場合はこんな感じ。恋愛の、恋の部分をすっ飛ばしたんだよね。愛はあったと思うけど」
「……三秒ルートかい」
話を聞いたはやてがぼやく。周りも感想を言っている。
「ちなみに結婚したことはアルフ以外には一年くらい気が付かれなかったよ」
「そんなにですか!?」
ティアナがつっこむ。
「うん。だって結婚しても変わったのはせいぜい肉体関係が増えたくらいだったし。アルフは初体験後の私からの繋がりで分かったらしいけど。最中は切ってたんだけどね。
姓も、仕事の時と、役場に出している正式なのは別でも大丈夫だったし」
皆微妙な反応。基本的に苦笑い。
「知られた後は、え、そんなに最近なの!?、という反応と、ちゃんと報告しろ、という反応の二種類だったなあ……。
それでクロノに結婚式位挙げろ、って言われて……その時にこの指輪を貰ったんだよね。その頃から恋愛の恋の部分が芽生えたんだ」
そんなことを言っているフェイト。
「ま、まあそれはそれとして、次に行こう。次は……」
そして続いていく。さて、次は――――?
おまけ1 その頃のクラナガン市内、とある居酒屋
二人の女性が向かい合って飲んでいる。テーブルにはビールの大ジョッキが二つとつきだし。
「それにしても、こうやって女二人で飲むのも久しぶりねー」
「そうね」
片方の女性の名はクイント=ナカジマ。そしてもう片方の女性の名は……
「やっぱあんたが再婚したからかな。まさか隊長と再婚するとは思ってもみなかったけど」
「あらそうかしら?」
メガーヌ=A=グランガイツといった。
「そうよ。部隊にいるころはそんなことは全然匂わせなかったのに」
「あら。割とその頃から好意は持っていたわよ。最も、交際して再婚を望むほどではなかったけれど」
そう言うメガーヌ。クイントは訊く。
「じゃあどうして?」
「ルーテシアがね、あの人に凄くなついてね……。それにあの人もまんざらでないみたいだったし、やっぱり父親が必要なのかなって思って。勿論、そこから一緒に過ごす時間も増えて、惹かれていったのは間違いないけど」
「へー……」
微妙に納得したような顔のクイント。
「まあ今日はそこら辺を肴に飲みましょうか」
「あら。惚気るけど良いの?」
「良いわよ。こっちも旦那とのことを惚気させてもらうから」
そんな話していると注文した物も来る。そうして女二人の飲み会は続いて行った。
おまけ2 男だらけの温泉旅行 場面1
将棋盤をはさんで二人の男が向かい合っている。一人は無限書庫司書長ユーノ=スクライア。もう一人は元次元犯罪者、現時空管理局技術部所属ジェイル=スカリエッティ。
パチリ、と駒を打つ音が聞こえる。
「む……」
ユーノが打ったその一手。ジェイルは考え――
「詰みだ。私の負けのようだね」
「はい。僕の勝ちですね」
敗北を宣言した。同時に勝利を宣言するユーノ。
そしてそれを傍で見ていた二人。
「なあエリオの坊主」
「なんですか、ゲンヤさん」
「お前、将棋のルール分かったよな。……何であそこから投了宣言するか分かるか?」
「全く分かりません」
「だよな……。何手先を読んでいるんだよ、あの二人は……」
そんなことを言っている。
「はっはっは!これでチェス、碁と続いて三種目目は私の負けか。これで一勝二敗。いや、今までこういったゲームは興味が無かったが、対等な対戦相手がいると楽しいものだね!」
負けたのにも拘わらず上機嫌なジェイル。次の物を取り出す。
「次はこれだ。ふむ、軍人将棋?」
「なんでそんなのがあるんだ、この旅館?」
思わずユーノがぼやく。
「おや?知っているのかね?」
「ええ」
「ふむ。私は知らないのでルールを一回把握させてもらうよ。今度は私が勝たせてもらうからね」
「いいえ。今度も僕が勝たせてもらいますよ」
「はっはっは!そうかそうか!」
やはり上機嫌なジェイルとなんだかんだで楽しそうなユーノであった。
おまけ3 男だらけの温泉旅行 場面2 (壊れ注意)
「いいや、ノーヴェはうちの娘だ!」
「何を言っているのかね!ノーヴェはうちの娘だよ!」
夜の露天風呂。ゲンヤとジェイルが言い争っている。
「だがあの娘はクイントのクローンなんだろう!?ならばうちの娘だ!」
「私があの子を生み出した!だからうちの娘だ!」
きっかけはささいなこと。旅行に行く少し前、ノーヴェが思わずゲンヤを父さん、と呼んだ。
ゲンヤはノーヴェがギンガとスバル同様、妻クイントのクローンだと話に聞いていたし、素直でないながらも自分を慕ってくれているのは何となくわかっていたのでいっそうちの子にならないかと言った。
それを聞いて黙っていなかったのはジェイル。何故ならば彼は今となっては――立派な親馬鹿になっていたからだ。
「だがあの子は俺を“父さん”と呼んだ!」
「ただの言い間違いだ!ノーヴェもそう言っただろう!」
念の為言っておくが、普段二人は仲が悪いわけではない。むしろ良い。特にゲンヤは最初こそ不信感があったが、今ではいざと言う時にギンガやスバルを診てもらえる相手として信頼している。
「大体、そっちはそう呼ばれたことがあるのか!」
「くっ……!」
言葉に詰まるジェイル。それは実は今のジェイルの最大の目標だったりする。
「はっはっは!どうやら俺の勝ちのようだな!!!」
「くぅっ!」
高らかに勝利を宣言するゲンヤ。項垂れるジェイル。
そしてそれを見ていた他の人間。
「だが一番はあの子の意志だと思うが」
「あの二人以外は皆分かっているよ、クロノ」
「それもそうだな」
そんなことを言っている。
「はーはっはっはっはっは!!!」
「くっ!我が娘たちよ、何時か父と呼ばせてみせるぞー!」
そんなジェイルの叫びが夜空に響き渡った。
続いたけれどまた続くとは限らない。
後どうでもいいことだけど軍将の審判やったのはエリオ。