10歳編
元旦。海鳴市。八束神社。人が初詣でごった返す中、高町家+八神家+ユーノ、アリサ、すずか、忍、それにお呼ばれしたフェイト+アルフがやはり初詣に来ていた。
「こうも人が人が多いと嫌になるねえ」
「凄いね」
人の多さに辟易しているアルフと人の多さに感心しているフェイト。
「おっしゃ!初詣や!パーカー広げて小銭を取らんと!」
「主、落ち着いてください」
「だいたいそれは犯罪よ、はやてちゃん」
はしゃいでいるはやてとそれを諌めているヴォルケンリッター。
そして賽銭箱の近くにやってきた。財布から金を取り出そうとしている美由希がふと隣を見ると財布から万札を取り出している妹の姿。
「なのはなのは!それ一万円!」
「?そうだよ?」
間違えたんだと思って声をかける。しかし妹から返ってきたのはそんなのは知っていると言わんばかりの返事。
「多過ぎだよ!」
「そう?これくらいでユーノ君と今年も一年健やかに過ごせるんだったら、むしろ少な過ぎると思うけど」
ツッコむと何を言っているんだ、と言わんばかりの返事。当然真顔。
「これは自分で稼いだお金だしね。それにほら」
と、隣のユーノを見るように促す。するとやはり万札を取り出しているユーノの姿。
「ユーノも多過ぎだってば!」
「そうですか?これくらいでなのはと今年も一年健やかに過ごせるのだったら、むしろ少な過ぎだと思いますけど」
なのはと全く同じ答えが返ってくる。やっぱり真顔。
「それにしたってそれは多過ぎ!」
「そうですか?……ふむ、そうかもしれませんね。それほどお金がかかる生活はしていないから別にいいかと思ったのですが」
ツッコむと、割と素直にお金をしまい、小銭を出すユーノ。
「じゃあこれはなのはとの結婚資金に充てます」
「あ。じゃあ私もそうしよう」
それを見てなのはもお金をしまい、小銭を出す。
そんな二人の姿を見てなんだか微妙に頭が痛くなる美由希だった。
「あー……。やっぱ餅はええなあ……」
「雑煮うめー」
「わ。凄い伸びる」
高町家。リビング。初詣から帰ってきた高町家(恭也を除く)+八神家+ユーノ、アリサ、すずか、フェイト、アルフがくつろいでいる。(ちなみに恭也と忍はそのままデートに行った)
「美味しい……」
「流石よね」
「ありがとう」
雑煮やおせちに舌鼓を打つ面々。士郎にシグナム、ザフィーラ、それにヴィータは酒も飲んでいる。
そしてテーブルの端。魔法も使っていないのに、結界を展開しているバカップル。
「はい、あーんユーノ君」
「うん、あーん」
「えへへ、美味しい?」
「うん、美味しいよ。なのはは何が食べたい?」
「数の子!」
「ん。はい、あーん」
「あーん」
そしてそれを見ている四人。
「正月でもいつも通りね……」
「そうだね……」
「まあむしろ変わったらそっちの方が驚きやけど」
「確かにね」
慣れたものである。
「それにしても……さっきからなのはが食べているのは……」
「数の子、里芋、くわい、わかさぎのローテーションだね」
「えっと……子孫繁栄、子宝祈願、子孫繁栄、子宝祈願」
「へえ……。意味があるんだ」
微妙な表情で顔を合わせる。ただフェイトだけは感心したような顔。
「気ぃ早過ぎとちゃうん?」
「まあなのはだから……」
「そうだね、なのはちゃんだしね……」
「それもそっか。なのはちゃんやしな……」
そんなことを言い合っている。
「くるみ(家庭円満)とかはいいのかな?」
「訊いてみるの?あれから?」
「……無理だよ」
「それになのはちゃんのことやから『別にそんなのに頼らないでも何時だって私とユーノ君はラブラブなの!』とか言いそうやしな」
「確かに。あ、ユーノが海老を食べさせた。海老はどういう意味?」
「長寿祈願ね」
観察している。
「まあ今年もあの二人は問題無さそうやな」
「そうね」
「そうだね」
「そうだね」
四人はそれきり気にしないことにした。
「どうかな?黒豆は私が煮てみたんだけど」
「うん。丁度いい甘味で美味しいよ」
「良かった。どんどん食べてねユーノ君。はい、あーん」
「あーん」
16歳編
「いいや!雑煮は味噌に決まっている!」
「何を言っているんですか!雑煮はすましが最高ですよ!」
ミッドチルダ。クラナガン。高町家。本日はミッドの暦で元日に当たる日。ナカジマ家の人間も来て皆で料理に舌鼓を打っている。
そんな中、ゲンヤとユーノは雑煮の味で揉めていた。
「あの味噌の食欲をそそる香りが分からんのか!?」
「さっぱりしているすましの良さが何故分からないんですか!?」
一方他の面々。
「おー。すましもおいしいね」
「味噌のお雑煮もなかなかおいしいね」
「わ。このおもちっていうの、凄い伸びる」
「喉に詰まらせないよう気を付けてね、キャロ」
順にルーテシア、エリオ、キャロ。
「おお。この黒豆美味しいです、なのはさん」
「ありがとう、ギンガ。今回は色々バタバタしていたからそれしか作れなかったけど」
「おせちって手間がかかるもんね。だからうちは新年は一日目が天ぷら、後はカレーだけは作って適当よ」
「あたしは天ぷら好きだから問題無し!子持ち昆布美味しいなー」
順にギンガ、なのは、クイント、スバル。
「いいか?味噌味のお雑煮はこってりしてるのに素材の味をさらに活かしてくれるから最高なんだよ!!!」
「すまし仕立てのお雑煮はさっぱりしてて、素材そのものの味が楽しめて最高なんです!!!」
未だに言い合っている二人。だが議論の内容が内容なので誰も気に留めていない。
「ところで一臣君と優奈ちゃんはいいんですか?」
「大丈夫だよ。丁度皆が来る少し前に寝付いたんだ」
「あ、そうなんですか。まだ会ったことが無いから、後で会わせてもらっていいですか?」
「勿論いいよ」
和やかである。
「へえ。お雑煮以外のお餅の食べ方もあるんだ?」
「そうだよ。キャロも食べる?」
「ありがとう、ルーちゃん。じゃあそっちの黄粉の奴を少し分けて欲しいな」
「いいよ。はい」
「わーい。ありがとう」
「僕は磯部が好きだけどね。磯部の美味しさの六割は海苔の美味しさで決まると思う」
ちびっこ達も和やかである。
「……いいぜ。なら拳のみで決着を付けようじゃねえか」
「……そちらがその気なら構いませんよ」
一方野郎二人は殺伐としている。
「はっ!現役執務官だからって舐めるなよ!魔法抜きならギンガだろうがスバルだろうがクイントだろうが俺は負けねえぞ!」
「元より僕は魔法抜きでも十分戦えますよ?」
「君達は新年早々何を争っているんだ……」
「あけましておめでとー」
そして二人が一触即発の空気となった時、クロノとエイミィがカレルとリエラを連れて新年の挨拶にやってきた。
「丁度いいところに来た!クロノ、雑煮はすましだよな!?」
「何を言っているんだ!当然、味噌に決まっているよなあ!?」
そしてそれに絡む二人。一方のクロノ。
「?雑煮とは何だ?」
そもそも雑煮を知らなかったようだ。それにキョトンとして顔を合わせる二人。
「よし。じゃあクロノ、食べてみなよ」
「まあ遠慮すんな」
「待て。ついて行くから引き摺るな」
自分を引き摺っていく二人に抗議の声を上げるクロノ。まあ当然である。
「ほら。これが最高のすましの雑煮だよ」
「ほら。これが至高の味噌の雑煮だ」
「何で僕は新年早々こんな目に合っているんだろうな……」
突きつけられた二杯の雑煮を前にそうクロノはぼやくのであった。
なお雑煮に関しては女房に勧められて渋々食べたところ、
「なんでぇ。すましも悪くないな」
「味噌もなかなかいけますね」
「……餅にお汁粉以外の食べ方があるんだな」
となったので結果オーライである。