視点:デグレチャフ寡兵でもって、大軍団を破るにはどうすればよいだろうか?シンプルな解決策は、質的優位を確保することと、核戦力でもって対抗する事である。ところがだ。私は、この空域においてNBC戦を敢行することができない。なんなれば。この素晴らしい世界は、機甲師団や魔導師といった変なところで近代的でありながらNBC戦は未発達。故に、碌に有効な干渉式の術式すらないのだ。では、何故NBC戦は未発達なのか?答えは、単純に無力化されているからだ。笑うほかにないが、魔導師は、自身への干渉を可能な限り排除しようという意志を持つ。意志は、それが魔力を有することによって、顕現し、結果毒ガス程度ならば有る程度まで耐えられる。信じられないかもしれないが、魔導師とはとにかく健康な連中なのだ。さすがに、季節外れの流行病に疲労困憊している時は罹患するらしいが。ともかく戦場で暴れ回るような連中は、馬鹿は風邪をひかないという古典的な概念の実証例だ。故に、これまで研究するだけ無駄と割り切ってきた。割り切ってきたのだが、追い詰められると、一発逆転の可能なものが欲しくなるから、人間というのは不思議なものだ。さて、現実逃避を諦めて状況を確認しよう。私の現状は、関ヶ原でSHIMADZUなる変な連中の進路にうっかり陣を置いていた徳川さんちの兵隊さん。つまり、言いたいことは、こっちにくんな。あっちいけ、あっちに。なにしろ、全戦線で帝国軍が圧倒的に優勢。部分的に越境してきた協商連合軍をドードーと同じく絶滅危惧種にした揚句に、追撃戦だ。先遣隊に至っては、協商の首都を爆撃すべく驀進中。これにて、めでたく協商連合軍は壊滅という寸前のところ。ここに、何を狂ったのかは不明だが、少数精鋭の連中が友軍の撤退支援で飛び込んできた。おかげで、私はちっともやりたくない局所的敵戦力優越空域での遅延防御という虐待を受けている。これが、楽しい楽しい現状である。児童相談所でもないものか。曲がりなりにも、私は子供なのだが。少年兵は、子供の権利条約で禁止されているはずなのだが。・・・まさかとは思うが、私は国際法上兵士足る資格が認められないがために、捕虜になれないということはないよな?そこに関しては、帰還後、法務士官を問い詰めなくてはならない。最優先事項に入れておくことにしよう。さて、遅延防御だ。こういった情勢下において。敵の足止めをするにはどうすればいいだろうか。私の装備は軽い防弾効果のある魔道師用の軍装に、観測用機器一式。後は、一般量産型の演算宝珠に、人並み程度には優秀な頭脳だけ。本来は、干渉式を封入し、射出するライフルは現在なし。元より、搦め手でしか戦えないのはわかるが、さすがにこれはきつくはないだろうか。無論、ただで死んでやるつもりは、微塵もないので、最悪は自爆でも何でもしてやるつもりだ。しかし、できれば生き残りたい。むしろ、できるかぎり最優先で生き残りたい。つまり、逃げ出したい。こちとら、観測用に軽装備。観測機器を投棄すれば、文字通り軽装備。敵中襲撃なんて考えるクレイジーな連中が重装備である以上、距離は稼げる。本来であれば、躊躇の余地なく逃げ出したい。しかし、ここは帝国軍。敵前逃亡は言うまでもなく銃殺刑。私自身が、結構な頻度で名目として活用していただけにわかる。敵前逃亡なんてやってのけた日には、憲兵隊と壮絶無比な鬼ごっこを永遠に楽しむ羽目になる。だから、戦うしかない。僚機どころか、そもそも孤立無援であるにも関わらずだが。ああ、やってられない。なんだって、こんな戦勝確定の戦場で、死を覚悟して戦争せねばならん。ちくしょう、この思考は危険だ。無理やりだが、思考を切り替え。ガンホー・ガンホー・ガンホー。覚悟を決めるしかない。どのみち、敵の目的は私の排除ではなく友軍砲兵隊を叩くことによる撤退支援。つまり、まとわりつく蝿を排除する程度の感覚で私を落とそうとしているだけ。屈辱極まりない。私を、敵兵ごときがそのように見たことを一生後悔させてやる。見下すのは、私であって、私が見下されてよいはずがない。腐れ眼鏡に倣ってアドレナリンやら、脳内麻薬やらドバドバだして、戦意高揚。後の事なんぞ、考えずに、干渉式でドーピングを連発。反応速度向上、瞬発力増大。魔力回路をこじ開けるひきつった痛みを脳が受け取る前に、脳内麻薬で緩和。ああ、テンションが上がり、体が昂ぶってくる。「何たる光栄。楽しいぞ。最高に愉快だ。ああ、楽しくて楽しくて、どうしようもない」「ピクシー04?」独り言だが、CPには聞こえているようで安堵。一応、戦意旺盛で、奮戦する意志があったということを万が一の際には証言してもらわねば困るのだ。ここで計画倒産ならぬ、計画墜落しているということを露見させるわけにはいかない。テンションは最高にご機嫌だし、世界がぐるぐる愉快な感じとなっても、魔導師の頭脳とは実に優れモノだ。こういった、理性分野の思考を狂気や薬物の汚染からは実に的確に防御できている。これだから魔導師は止められない。できれば、帝国軍所属は速攻で止めたいのだが。「戦勝確定の戦場。つまらぬ仕事かと思えば、一人で一軍を相手取り、戦場の主役だ。」つまり、こんなところで死ぬわけには断じていかない。世の中は公平ではないし、フェアから程遠いけれども、それは市場の失敗でしかない。究極的には、コストの問題でしかないのだから、自分自身のコストを如何に高くするかだ。それには、マーケティング戦略が不可欠。だから、売り込みはきっちりと。アピールは最適な機会を逃すことなくガンガンと。要するに、だ。“世の中を、甘く、見る事”これが、できれば、人生はなかなか愉快になるということだ。「敵味方共に、有象無象に紛れての戦争かと思えば、こんなひのき舞台」ちっとも嬉しくないし、この空域にいるのは私だけ。こっそりと逃げ出すことすらできないという最悪な状況。これほどまでに選択肢が乏しい戦況。実は、謀殺がたくらまれているのではないかとすら疑いたくなる状況だ。「感無量とはこのこと。It's a good day to die.」観測用装備を投棄。さて、重装備でのろまな対地攻撃装備の敵魔導師と踊ってやろう。連中はかなり素早いし、火力も絶大だが、単純に有る理由で私には絶対に勝てない。すごく、嫌だし、気乗りしないし、最悪の中の最善でしかないが、それでも、この際構うものか。重要なのは、私が飛行不能になり、落ちれば私の戦略目標は達成できるということだ。しっかり飛んで行って、無茶でも砲兵隊を叩かねばならない連中とはそもそも条件が異なる。敵前逃亡ではなく、奮闘及ばず継戦不能になり、可能な限り友軍付近に不時着。それさえ出来れば、私は少なくとも敵前逃亡の咎めを受けることはない。ついでに、協商連合の蛆虫のような連中にとって、貴重極まりない時間を分捕り、友軍も苦労させられる。つまり、連中は私に遭遇した時点で戦略目標においてはすでに失敗しているということだ。なにしろ、奇襲の予定が、強襲に変更され、あまつさえ増援まで呼ばれたのだ。あとは、私の保身をいかにして達成するかという次元の問題。必然的に、この戦闘に勝者なぞ存在させないし、よしんばいたとしてもそれは私だ。痛いのはすごく好みでないし、泥を付けられるのは全くもって不本意だが、汚泥を啜ってでも生き延びねば。視点移動:一般『フォン・リヒテン・ヴァルター魔導士官学校校長殿御無沙汰しておりました。ターニャ・デグレチャフ准尉であります。本日は、出撃前に身辺整理と遺書を用意する時間を頂きましたのでこれを記しております。さて、遺書、というものでありますが小官は、孤児であり身寄り、というものがございません。故に、誰に何を書いたものかと思い悩んだ挙句の御礼状という形式になっております。むろん、言うまでもなく本来は死後に送付されるとのことです。ですが、小官のそれは大凡遺書というにもおこがましい代物であり、依頼したところ、お届けいただける運びとなりました。可能であれば、御世話になった教官殿達にお礼のお手紙を記したいところでありました。ですが、北方が情報封鎖環境におかれていたために、このようにぶしつけな形となっております。どうぞ、ご海容いただければと思う次第です。短い間ではありましたが、最良の御指導を頂けたことには感謝の念に堪えません。何よりも、帝国軍人として先陣を賜るという最高の栄誉。この機会を得ることができたのはひとえに、魔導士官学校より推薦を頂くことができればであります。機会があれば、ご期待に添えるような確固たる戦果をあげたい、そう自負する次第であります。とはいえ、私の所属ではそうそう戦果を上げる機会には恵まれ得ないでありましょう。無論、一個人の願望よりも職責と義務を全うするという意志を欠くものではありません。機会があれば、と思う一方で職責を全うせねば、との思いにもかられるという次第であります。個人として、軍人としての義務を全うし、名誉に恥じぬ戦いを為せることをどうぞ、ご覧ください。ターニャ・デグレチャフ』粋がるなよ小娘が。手紙を読み終えた彼は、そう呟きかけるも、やや躊躇した。そう。呟きたいが、実績が思わず躊躇させるのだ。本来は、単独で砲兵隊の観測支援に当たるはずが、強襲してきた敵部隊と遭遇戦に陥る。当然、装備に至っては観測支援用に軽装備にきまっているだろう。基本的なライフルどころか、僚機すら存在していない。普通ならば、鎧袖一触とならざるを得ない状況だ。だれが、どのように考えたところで、碌に時間稼ぎもできない。せめて、増援が到着するまでの一秒二秒でも、稼いでほしいという無茶な願望だ。ところが協商連合の一個魔道中隊を単独の遅延防御で、増援到着まで実質的に拘束?戦果は、撃墜2 撃破1 継続戦闘能力喪失1実質一個小隊を叩き潰してのけている。散々暴れ回り、複数からの射撃と干渉式の併用で仕留められるも、増援到着まで持ちこたえた。当人も、結局付近を捜索した友軍歩兵部隊に回収され、辛うじて一命を取り留めている。その戦闘の有様も、まるでかくあるべしと教本が推奨するような敢闘だ。四肢に広範な被弾があり、演算宝珠を歯で銜えた形跡あり?早い話が、バイタルパートを死守、可能な限り抵抗し、時間を稼がんとする冷静な戦術判断あってのことだ。おかげで、四肢が残っているのが不思議としか言えないようなありさまらしい。軍医曰く、文字通り見事なまでに壊れている。よくぞ、生きているものだ、と。今後の経過は不明だが、すでに北方方面軍の知人からは、叙勲が決定したと知らされている。曰く、銀翼突撃章だ。おそらく、戦争初期における最功だろうと、軍は評価したのだ。それに見合う戦功をあげ、戦績があるのだ。ストーリーとしては完璧極まりない。だから、戦意高揚のために英雄ではないにせよ、信賞必罰が行われた。救援を受ける形となった砲兵隊の親元。つまりは、陸軍が、研修の繰り上げ合格として少尉任官を上申。寛大な上層部がそれを即時採決し、彼女は今や、押しも押されぬ帝国軍魔導少尉となったわけである。だが、怖い話だ。まだ、10にもならない少女が、戦場で一人前の顔をして飛んでいるという事実はうすら寒いものすら感じる。自分の学校で仕込んでおいて、何とも情けないが。魔導少尉を育て上げたというよりも、殺人人形の訓練に付き合ったような疑念が付きまとってやまない。彼女の資質に疑念を抱き、無理やり北辺の研修に送り出したことに対して、真摯に感謝されては困惑が尽きない。なにしろ、普通の人間ならば、口で言っている事とやっていることが全く違う。だが、彼女は言動一致の典型例だ。無能は間引くと宣言し、良い意気込みだと笑っていた教官連中が青ざめるほど過激だった。確かに、確かに命令違反をした候補生には厳罰が必要だ。しかし、頭蓋骨を切り裂き、直接命令を叩きこんでやるといわんばかりの行動は、さすがに限度を超えすぎている。前線では、優秀極まりない士官として働けるであろう。だが、絶対にまともな感性ではない。どこか、人間として一本ねじがずれて完成をしているのだ。それは、帝国軍にとっては理想的な資質であるのかもしれない。実際、そうとしか言いようがないのだろう。戦争に適した人間は、そう先天的には多くは無い。だから、彼女は逸材だ。素晴らしいまでに、軍が欲してやまない魔導師だろう。どこか、人間として壊れている人格が、今後の戦争には求められるということなのか。まして、単独で敵を食い止め、あまつさえ損害すら与えてのけた魔導師は有能極まりない。そうとしか表現しようがないのだ。たとえ、ぎりぎり禁忌一歩手前の干渉式を濫用し、自爆まがいの戦術だとしてもだ。はっきりと言えば、劇物だ。部隊が求める均質な戦力という意味合いからは大きく逸脱。個人の裁量で行動を任せるには、あまりにも危険すぎる思考。本物の戦争狂だ。敵も味方も構うことなく、巻き込んで手段を選ぶことなく戦争に邁進しそうな狂人だ。多くの生徒を見てきたが、あれほど異質な人間は随分と珍しい。はっきり言えば最初の事例だろう。なにしろ、兵器として完成した子供などそら恐ろしいだけだ。せめて、その機能が敵に向かい十全に機能するように仕向けるくらいしか使い道がない。英雄と持ちあげてやろう。可能な限り、その戦功を尊重してやろう。叶う限りの自由裁量を認めてやろう。できうるすべての支援を行って、戦えるように手はずを整えてやろう。そうしてやる。だから、お願いだから、前線で戦ってくれ。貴様らが愛してやまない戦争に、これ以上一般の兵を巻き込まないでほしい。戦争は、戦争を愛している連中だけで好きなだけ狂気に浸りながらやってほしい。誰もそこに混ざりたいとは思わない。教え子に対してあまりにも冷淡であることは望ましくはない。自覚してはいるが、思考が理解できないのだ。認めよう。はっきりといって、恐ろしい。あまりにも、常識を外れすぎていて、私には理解も及ばない。そのすべてが、あまりに、あまりにも異質なのだ。最初は、行き過ぎた帝国の人材収集機構に、適合しすぎたからかと勘ぐった。よほど狂った愛国教育でも施されたのかと、彼女の出身孤児院を情報部の知人経由で調べたほどだ。だが、結果はシロ。孤児院の経営は、まあ、他のそれと比較しても、異常なし。強いてあげるならば、多少寄付等によって経営に余裕があり、栄養状態が平均並みにあること程度。つまりは、飢餓からの脱走でも、虐待からの経験でもない。確かに、幼年学校での訓練は不可避だろうが、しかし、あれは魔導師としての才能がある子供を発掘するための仕組み。なぜ、士官学校に志願した?入校試験の際に、彼女は、少女の皮をかぶった化け物は言っている。“他に道はない”と。溢れんばかりの国家への献身と、忠誠。見事だというほかにない理想的な軍人の資質。たゆまぬ訓練と自己鍛錬の意志。全て賞賛されてしかるべきものだ。これらが単独であれば、教官として喜ぶことができた。それらを兼ねそろえてあれば、我々は歓喜することができた。ところが、今それの体現者を前にして、我々は自らが欲したものに応じた化け物に直面している。戦意旺盛は理想的な軍人だ。戦術的な判断を有効にできるというのは、士官として理想的な状況だ。命令に絶対服従し、最善を尽くすという規範も完璧だ。なのに、どうしても怖いのだ。“他に道はない”という言葉に何が含まれているのかが分からない。奴が、溢れんばかりの殺人嗜好を合理的に昇華しようとしたのではないか?本質的な戦争狂で、自らの嗜好に合わせるには、軍以外には道が無かったからではないと誰に断言できるのだ?滴る血を見て、喜び殺戮の旅に飛び出しかねない危険人物だと誰が保証できる?行動の一つ一つが、狂っているか、狂人だ。もちろん、平静に戦争ができるものではないということは、理解できる。酔わずに戦争ができる奴は本物の、狂人か、壊れてしまったということくらいは経験則として理解できる。だが、ひょっとして、それを楽しんで戦争をしているとすればどうか。理論も実践も殺戮者にとってみれば、一つの美学に過ぎないと、過去に耳にした。其の時は、随分と突飛な見解だと一笑に付したが、今ならば、其の意味合いをよく理解できる。嫌々ながらも、理解してしまったのだ。よく言っても、彼女は異質であり、我々とは異なるのだ。あれが、英雄というやつなのかもしれない。つまり、常人とはどこかずれている。英雄を賛美するのは結構だ。だが、断じて英雄に続けとは教えない。教えるわけにはいかないのだ。士官学校とは、人材育成機関であって狂人を産む何かではない。視点回帰:デグレチャフ無意味やたらに気分をハイにした挙句に、暴れ回った経験は有りますか?私は、つい先ほど初めて体験しました。実に、碌でもない理由と必然性がそれを欲したからでありますが。率直に言って、必要が無ければ二度とやりたくない代物です。何故、世間一般でこういう愚行が平然と行われているのかなど、理解の範疇外にすっ飛んでいるものとしか。なにしろ、周囲との人間関係に深刻な悪影響を及ぼします。まずもって、戦争が大好きで大好きでたまらない変人という碌でもないレッテルが張られてしまい困惑どころではありません。確かに、脳内麻薬等々で多少トリップし発言が危なくなったのは覚えていることです。敵兵と空中で交戦しているうちに、好戦的な発言があったのもレコーダーに残っているので事実でしょう。ですが、発言とは必ずしも額面道理に受け取るべきではない。そういうこともわからないのかと言いたいところです。ですが、誠に遺憾ながら映像で見た限り薬物でハイテンションになっていると思しき私自身の姿を見る限り、誤解を解くのは至難の業。幸い、最低限の目標であった敵前逃亡に準じる戦意放棄を誤魔化すことには成功。ついでに、奮戦も評価されるにはされています。ここまでは、計画通り。で、ここからは全く計画と異なる大きな問題。まずもって、空中戦で自分から墜ちようとできるだけ防御重視したのが失敗。うん、手に持っていると落としそうで不安だったから演算宝珠をがっちり歯で噛んだのがまずかった。魔導師って頑丈だった。想像以上に。やられた振りをして降下しようとすれば、偽装⇒反転強襲には引っ掛からないと敵が誤解。なし崩しに、近接戦に持ち込まれて、しぶしぶ格闘戦を二度もする羽目になった。演算宝珠を歯に加えていなければ、間違いなくやられていたよ。で、ここでうかつに頑張ったのが大失敗の根底だった。敵がわーっと殺到してくるものだから、煙幕でも張って逃げようとしても、其れすら叶わない。このボディー、実に数十発のライフル弾に、数度の爆裂干渉式を受ける羽目になって、防御に使った四肢がずたぼろ。これ以上壊せないのじゃないかというくらいぼろぼろ。敵が同士撃ちで多少うごきを鈍らせていなければ、地面に落ちる前にきっと挽肉になっているところだった。一応、友軍勢力圏に降下することはできたために、何とか、回収されたけどね。無理やり、反応速度やらなんやらをドーピングした付けが来て、全く動けずにしばらく痛みと仲良く付き合って行く羽目に。命あってのこととはいえ、二度とやりたくはない。この負傷をこれ幸いと後方に回れるのではとの淡い期待も軍医殿が実に親切だったために敢え無くついえる。うん、魔導医療なめたらいけないね。一定水準以上は自然回復に任せる方がいいとか言うらしいけど、自然回復に任せられる程度には治せるんだ。生きてれば、なんとでもなるんだね。おかげで、回復次第前線に復帰可能という有りがたくもなんともない診察結果。これも、どうやら、戦意旺盛と上層部がこちらの予想通りの評価をしてくれたのが原因。厳密に言うならば、私は戦意がきちんとありますよとアピールしたつもりが、何故か戦争ジャンキーと誤解されていた。いや、もちろん、戦意過小疑惑よりはまだ良い。でも、戦争ジャンキーって何だ。戦争に行きたくて行きたくて仕方がない奴みたいじゃないかと思わず、激昂したくなる。ともかく、そういう誤解のせいで酷い目に遭う未来がほぼ確定しているのだ。その証明が私の制服できらきらと光っている銀の物体である。たぶん、地獄への旅券に違いない。もしくは、煉獄への入国ビザ。群を抜いた敢闘精神。見事なまでの自己犠牲の精神。帝国軍魔導士官の模範そのものである。貴官の武勲を讃え、これを授与する。なんて、言われて銀翼突撃章まで、司令部の連中、送ってよこした。突撃章って、ようするに、敵陣に突っ込む突撃大好きな戦争狂。私のような自由人かつ知性の信奉者とは程遠い人種が授与されてしかるべき勲章ではないか。誤解もはなはだしい。もらえるものはもらっておく精神ではあるが、さすがにこれは辞退したかった。できることならば。・・・意識が無いうちに授与が決定されて、軍情報誌で公布されていると知るまでは。実に愉快な事だが、人に人事部がなにがしかの好意を示し其れに応じない時の評価は怖いことになる。それこそ、可愛さ余って憎さ百倍だ。メンツの問題もあるし、何より組織において決まったことをひっくり返すなぞ、論外極まりない行為。だから、私としては本意じゃないと叫びたいにもかかわらず神妙な表情で、授与された銀翼突撃章を制服に付けねばならない。何か深刻な悪意ある嫌がらせではないのかと切実に、切実に叫びたいところである。まるで、何か悪魔が呪ったような変な具合に、戦争好きだという自分のイメージが軍で形成されている。おかげで、このままでは、最前線送りが確定だ。いや、すでにもう確定したか?すでに、陸軍から昇進の推薦があり、認められて、晴れて魔導少尉に私は任官だ。辞令は目が覚めたらベッドの隣においてあった。昇進そのものは喜ぶべきだが。これが、出向前に箔をつけるだけの昇進とどう違うのか微妙に怖くて分からない。或いは。生前贈与という可能性かもしれないのだ。二階級特進を見越して、候補生から、少尉にしてやって、さっさと死んでこいという。そこまで、突き放した意図で無いにしても、戦争好きなら戦死しやすい戦場に行く。だから、早めに少尉に任官させてやろうとか言う微妙にピントのずれた好意の線も捨てきれない。好意ならば甘んじて受けるとでも思っているのだろうか?できれば、安全かつまともな待遇の部署で働かせてくれることを切望してやまないのだが。そんな、ささやかな願いすら叶わぬとは。常に職責に忠実であったというのにこの報い。世の中は実に不公平だ。追加で解除された実績・銀翼突撃章・戦争中毒(軽度)・前線送りフラグ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~あとがきというなにか。状況は、グルジアに殴られて、本気で殴り返すロシアみたいな構造。協商連合:グルジア帝国:ロシアつまり、これ幸いとフルぼっこにするところです。で、あとは、グルジアがたまたま、ベネルクス三国みたいな地理的条件にあれば?帝国:ドイツ???:フランスさあ、帰結は大戦争だ。ちっとも、夢も希望もない、大戦争だ。ということに。※作者の更新ステータス:1940年5月くらいのドイツ国防軍ZAPしました。ZAP