金は偉大だ。少なくとも、通貨が信頼される限りにおいて。信用とは、かけがえのないものだ。なにしろ、信用によって通貨に価値が付加される。そうでなければ、紙切れに誰が財産を託すというのだろうか。信用とは、全てだ。信用できない取引相手とは、取引しない。信用できない債務者には、金を貸さない。誰だって合理的に考えれば、そういう結論に至る。では、仮に。合理的な前提がひっくり返されればどうなるだろうか?「冗談ではない。・・・協商、共和国、そして今度はイルドアだ!」「焦げ付いた貸し付けだけで、どれほどになることか・・・。」中世において、貴族や王族は徳政令を乱発した。もちろん目的は借金の棒引きだ。国王にその権限があることを明記した国家すらあった。現在の世界において、そのような蛮習は一掃され金融取引はより健全なモノとなっている。なっていた。だが、合州国債権者一同にとっては不幸なことだが帝国との戦争が全てを狂わせてしまった。フィラデルフィアの会員だけが集まるクラブ。その一室に集う男達の表情は一様に重い。「イルドア債権がストップ安。関連企業株も連動して暴落しています。」信用とは空気の様なもの。空気が汚染されてしまえば、それは逃げ場がないという事だ。「・・・ようやく合州国の経済が立ち直りつつあるというのに!」汚染された信用は、毒ガスの様に合州国の経済を蝕む。なにより致命的なことに、彼らは帝国に債権を有さずその敵国に債権を有していた。つまり、彼らにしてみれば債務者が蛮族に襲撃されているようなものである。「まして、安全保障上の問題もあります。」加えて状況を難しくしているのは、安全保障上列強のバランス崩壊が付きまとうこと。彼らが、旧大陸で殺し合うのならばまだ看過しえるが超大国の誕生は別の議論になる。旧大陸を制する国家の誕生は、合州国にとって大きすぎるリスクだ。現状ですら、帝国の脅威は安全保障を担当する人間にとっては大きすぎた。もちろん、だからといって手をこまねいているわけではない。取りあえず、借金漬けにしつつ帝国を抑制するために旧宗主国を活用してみた。大量の武器をリースし、一部では戦略資源の融通も民間を通じてながら行っている。だが、実際のところ抑制が期待できるどころではない。融通した貸付のその回収すらおぼつかないのが現状だった。損切りということも、考えないではない。なにしろ、これ以上の赤字阻止というのは一つの見解だ。だが、損切りの結果として帝国を放置する?それは、さすがに彼らにしても高くつき過ぎるように思えてならない。連合王国が崩れれば、帝国と連邦の一騎打ちだ。それで共倒れになってくれれば結構だが、そうもいかないだろう。あまりにも、あまりにも希望的観測に過ぎない。「だから、介入するとでも?君らは馬鹿かね?」しかしながら、同時にだからと言って即断するほど選良とは愚かではない。少なくとも、彼らは自らの発想が合理的であればあるほど危うさも学ぶのだ。「しかし、放置しておくことは…」「御説は結構。で、どうやって介入されると?まさか、債権のために戦場に行けと告げるおつもりかな?」天下国家を語るのは、所詮誰にでも許される児戯。問題は、天下国家を如何に為すかにあるのだ。「世論は、ある程度熱しつつありますがやはり足りない。」理屈だけで、世界は動かない。簡単に言ってしまえば、介入するためには大義が必要なのだ。人々を酔わせて、戦争に介入させられるだけの名分が。そして、難しいことに帝国は合州国に対して確固たる敵意を表していない。さんざん水面下で反帝国運動を支援しているにもかかわらず、だ。おそらく、臓は煮えくりかえるほどに激昂しているのだろう。だが、表面上はいとも紳士然とした面で帝国はこちらに微笑んで見せている。「機会を伺うしかありますまい。」こんな状況で開戦できるわけがなかった。次の大統領選挙を考えれば、フィラデルフィアとて二の足を踏む。近侍する幾人かにとっては、大統領の腹はわからないでもないが。そうでなくとも、上院は孤立主義に制されているのだ。少なくとも、上院で仕事をしているメンバーにはそれが理解できてしまう。財界の人間にとっても、国内の雰囲気ならばよく理解できる。誰ともなしに、溜息をつかざるを得ない状況。「・・・介入の手筈だけは整えておく必要がありますな。」「言うまでもなく。」あと一押し。それが、足りない。誰もが、誰もが決定打を欠くことに切歯扼腕していたその時。「失礼、ジェントルマンの皆様、お仲間に加えていただけませんかな?」招待状を渡されてもいない客が、にこやかな微笑みと共に来室する。なにしろ、会員制のクラブにも関わらず、彼は此処の会員ではない。いや、そもそも会員である資格すらないだろう。・・・愛国者であること、という条件を異邦人の彼は満たせないのだから。彼ら全員がある程度の面識を有していたのは、彼の職業上の理由によるものでしかない。表向きは、連合王国フィラデルフィア大使館付き一等書記官ジョンソン・ドゥ。本職はきな臭い仕事だとここに集った男達は知っている。「Mr.ジョンソン?いくら、貴殿とはいえいささか無粋ですな。」アポも無しの訪問。いささか、心証を害したという表情で一同を代表して最年長の男が口を開く。最も、その眼には無礼を咎めるよりも何用かという警戒が強い。だが、今日ばかりは彼らもジョンソンの来訪を喜ぶことになる。「御無礼はお詫びいたしましょう。こちらを。」差し出されたのは、薄い便箋。主として、外交電報が挟まれる公的なモノ。そして諜報部員が他国の有力者に渡すものだ。渡された側が訝しみながらも、封を開けた時彼らは驚愕することになる。「・・・ほう、これは!」アルトゥール帝国外務卿の発した電報。宛先は、隣国メヒカーノス。どうやって、入手したかは問わない。問題は、内容なのだ。『対合州国宣戦布告要請』帝国の外務卿によるメヒカーノスへの公式要請。秘密電報だろうと、結局のところ漏洩してしまえば同じだ。メヒカーノスが飲もうと蹴ろうと、意味はない。実際、国力差を勘案すればメヒカーノスは一蹴するだろう。だが要請があったという事実は揺るがないのだ。十分だった。国民を。世論を。議会を。全てを動かし得る最高の鬼札。「どうやら、お気にめしていただけたようですな。」「ええ。素晴らしい。」アルトゥール電報事件と、歴史はそれを語る。13才の誕生日。少しも身長が伸びないばかりか、ストレスと過労で体重が減りつつある今日この頃。ごきげんよう。小官は、帝国軍イルドアヌス戦闘団長、ターニャ・デグレチャフ魔導中佐。未だ、硝煙の臭いが濃厚に立ち込めるイルドア戦線より皆様に御挨拶申し上げます。想定されるお仕事は、いとたやすき代物。なにしろ、パスタとピッツァのお国で行進するだけ。適度にエスプレッソを楽しみつつ、優雅な半島旅行の予定。素晴らしいことに、イルドア半島には良質な珈琲豆が大量に輸入されていた。これだけあれば、当分配給される信じがたい悪質な代用珈琲を啜らずに済むところ。まさに、人間性の回復できる素晴らしいイルドア滞在計画。おまけに快適な気候と、風光明媚な町並みが整えられているである。完璧な半島滞在予定をターニャは立案。・・・だがそれは、しょせん予定だった。ハッピーバースデー。合州国が一言、メッセージを言うためにわざわざ南方大陸まで足を運んでくれたそうです。海をわざわざ越えて、御苦労な事に。まあ、こんな体になった誕生日など祝うものでもないと考えていたのが13年前。祝う事を考えていたのは、失敗だったなぁと見通しの甘さを反省するのが今日この頃。油断があったのかもしれないと自分の甘さを苦々しく思いつつ即応。高度2000、最大戦速を維持しつつ南方大陸へ急行中。洋上航法は手慣れたものだった。おかげで、頭の片隅で敵の思惑について考える余裕もある。『戦闘団長より戦闘団各位へ。』敵情は完全に不明なれども、軍団規模の合州国軍上陸との報が飛び込んできたのがつい先刻。それと同時に、合州国による宣戦布告の報も飛び込んでくる。これで、奴らは嫌でもコミー対策に関わらざるを得ない第一歩を踏み出したかとようやく安堵。『新しいお客さんだ。』要するに、これは自分の知るところの『トーチ作戦』に類似するものだろう。遅かれ早かれ、介入はあるモノと想定はしていた。歴史からも、政治経済からも、この介入は必然だと。だから、早々とイルドアに逃げ込むという計画を立案。合州国の介入後は、適当に終戦まで安全なイルドアで果報を寝て待つ計画だった。が、少々イルドア戦線で失敗を犯し過ぎた。よりにも寄って、主力艦を取り逃がしてしまったのだ。タチの悪いことに損耗率もかなり高い数字。懲罰的に東部戦線に送られる危険性すら感じられてくる状況。少々焦りを覚えていた時に合州国が重い腰を上げてやってくるというではないか。そして、旧知のロメール閣下が増援要請を本国に送っているという。幸い、イルドア駐留中の自分の戦闘団は航続圏内。まさに、最高の好機だった。即座に救援へ赴くことを志願。一当てして、ご覧にいれましょうと請け負ってくる。イルドア方面の情勢が安定しつつあることもあり、出撃許可が下りるまでさほどの時間も要していない。いつも、これほど仕事が早ければ良いのだが。まあ、今回ばかりは確率論的に恵まれていたとターニャは判断している。『まあ、要するに狩りの獲物が増えたと思う事にしよう。』なにしろ、この時期の合州国軍は素人も良いところだ。歴史上、奴らはいつも介入してくる当初は弱兵。後半からは物量で圧殺してくるものの、今は素人集団だ。大量の重砲兵やら火力やらは持ち合わせていても、使い方は未熟。だから、遊んでやるくらいは可能だろう。リスクを慎重に見極めたうえでの行動だ。奇襲し軽く撹乱することで、自分の失態を相殺するには最適な機会だった。碧眼を細めながら、ターニャは皮肉な誕生日プレゼントだと笑いたくなるのを堪える。『諸君、そろそろ昇進したくはないかね?喜べ。わざわざ合州国の皆様が協力してくださるそうだぞ。』『それは、素晴らしいですな中佐殿。』洋上航法中の戦闘団。にもかかわらず、そこには全く緊張感というものが無い。合理的に考えれば、自然体で最高の実力を発揮し得る状態と評すべきだろう。全く、部下が戦闘狂だという事実にはいつも戸惑わされる。自己投資してきた人的資源を損なうリスクにどいつもこいつも無頓着すぎる。合理的近代人として、合理的アクターとして、嘆かわしい限り。まあ、軍人というものはそういうモノを装わなければならない以上自分も真似するしかないのだろう。せいぜい、度胸があるというようにニヤリと嗤って見せる。『まったくだ。わざわざ海を越えて御苦労なことだ。』まあ、実際鴨がネギをしょって大海原を渡海してくれるのだ。自分から出向くよりも、ずっと距離的に楽であるのは間違いない。長時間、潜水艦に詰め込まれて通商破壊作戦にでも従事させられたら大変だっただろう。いくら身長が伸びないためそこらの子供よりも背が低いとはいえ、狭い空間は狭い空間だ。『ロメール閣下を破産させる最高の好機だ。』旧知の合理的な将軍閣下からの要請でもある。ビジネスを一緒にできる人間に対して、良好な関係を維持しておくに越したこともない。『戦果をあげて、せいぜい美味なイルドア料理でも楽しむことにしよう。』『ロメール閣下の御馳走ですか。それは素晴らしい!』部下らの戦意は旺盛。仕事をする分には支障が無いだろうと、まずは安堵する。状況は決してコントロール出来ないものではない。少なくとも、今回は可能だとターニャはほくそ笑む。予想は完璧だった。しかし。しかしながら。ターニャの思惑は思わぬ事情によって急速に修正を余儀なくされるに至る。それは、ターニャにとって想定すら為し得ないようなお粗末な原因。だが、それは確実に誤算として計算式を狂わす。カセリーナ峠。歴史に名を残すのは、帝国軍と合州国軍による初の大規模会戦が行われた地としてだ。だが、後世の合州国軍事専門家向けの戦史にはこう記載されている。『カセリーナの屈辱』と。高度8000。FACとのリンク正常。戦闘隊形の形成完了。空域における友軍航空艦隊との距離正常。各部隊との通信リンク確立に問題なし。前線各部隊との通信すら、望めば正常に繋がる状態だ。何と言えばいいのだろうか。はっきり言えば『正常』すぎた。軍の演習並みにマニュアル通り事が進み過ぎている。FACとの通信にノイズ一つないという事態は戸惑うしかない。最低でも、高出力の通信機で敵の妨害電波を押しのける程度は覚悟していたのだ。なにしろ相手は合州国軍。物量と機械の国家である以上、なんとか技量と知恵で対抗するしかないと覚悟している。それが、蓋を開けてみればこのあり様だ。悪質な詐欺に嵌められつつあるかのような違和感が隠せない。『イルドアヌス01よりホテル3、感度良好。ノイズすら当方では感知できず。』『ホテル3了解。感度良好。敵によるECMは感知されていない。』相手は、合州国軍だ。その装備の質を勘案すれば、電波妨害程度どの部隊でもできるに違いない。連合王国に供与されている装備の質から考えて、能力は十分にある。それだけに、想定外も良いところだった。ECMを一切発しない?それは、敵の通信妨害を一切行わないという事に他ならないのだ。『間違いないのか?散々ブリキどもが使っているのだぞ?』『間違いない。空軍の先行偵察部隊とすら繋がる。』だが、いくら首を捻ろうともそれはゆるぎない事実。ターニャにとってみれば、理解できない何かだった。まさか、傍受してその場で解読しているという事だろうか?いくら彼の国といえどもそこまで行えるとも思いたくはない。最悪を想定するならば、それも考慮せざるを得ないが。希望的観測を排しての判断は絶対だ。しかし、それ以外にメリットがあるだろうか?一番考えられるとすれば、こちらの所在を確実に把握できるという事か。なにしろ、妨害されていないのだからこちらの電波は垂れ流しだ。高度8000で通信電波を撒き散らしている魔導師など超長距離から捕捉できるだろう。だとすれば、考えられる結論は一つだ。『敵航空部隊並びに魔導師の所在を送られたし。伏撃に警戒したい。』練度がそれなりの部隊であれば、こちらが所在を露骨に表わし上空をのうのうと飛んでいるところを襲撃可能だ。この状況で考えられるのは、つまるところこちらをおびき寄せての伏撃というのが正解だろう。『残念ながら、こちらでは確認されていない。現在、第9航空艦隊が索敵中。』『了解。敵伏撃部隊排除を留意する。作戦命令に変更はないな?』まったく、良くわからないことばかりだ。こんな手探りでリスクを取るというのは、本来推奨されないやり方だろう。リスクヘッジの観点から、見直しが必要かもしれない。これほどまでに戦い方が違うという事には、正直戸惑ってしまう。だが、相手は物量の国なのだ。躊躇し判断を誤るよりは、速度で図体のでかいやつらをかき回すのを優先するべきだろう。『司令部伝達、敵情把握を優先する。命令に変更はない。オーバー。』『イルドアヌス01了解。当初目的通り威力偵察を敢行する。オーバー。』命令に変更が無い以上、敵情偵察が主任務となる。すでに、いくばくかの航空優勢を確立した第9航空艦隊が先行済み。魔導師の任務は、より低空から侵入して敵を誘引ないし突いてみることだ。威力偵察という気乗りしない任務だが、まあ突くだけなら危険も乏しいだろう。伏撃に警戒する必要があることを考慮し部隊毎に散開させて侵入隊列を形成。『戦闘団長より各位へ。索敵撃滅戦である。』サーチ&デストロイの発令。要するに、戦闘団がいつもやってきた任務に違いない。慎重さが求められる仕事であるが、同時に憶病であっては絶対にいけない仕事。まあ、ターニャにしてみれば危険であまりやりたくないという点で気に入らない仕事だ。なにしろ相手は合州国軍だ。ハリネズミの様な対空砲火が手ぐすね引いて待ちかまえていることを思えばなおさらである。VT信管が出てくる頃には、接近すらおぼつかないに違いない。『小癪にも、伏撃の懸念があるものの相手は素人だ。』だが、あるまじきことに連中はまるで我々の様な戦術を採用している。引き込んで伏撃という発想は、正直彼らにはなじまないものかと思っていたが。・・・いや、先入観というのはいけない。それは判断力を鈍らせる上に状況を誤解させてしまう。なにしろ、海兵隊が太平洋戦線で大規模な夜襲を敢行したこともあるのだ。そんな筈はないという先入観ほど有害なものはないだろう。慎重に、潰していくに限る。『合州国からのお客様に、丁重な入国審査をしてやろうではないか。』適度に注意を促しつつも、あとは怯えていないという勇敢な指揮官のアピール。気乗りしないが、職務規定で将校とは模範たるべしと規定されている以上いた仕方ない。契約に同意して将校として従軍しているのだ。不敵な微笑みで素敵に嗤ってやる。『素晴らしい。パスポートとビザの検査ですな。不法入国者はいかがしますか?』『それはもう、教育してやろうではないか。』軽口を叩きながらも、高度を下げつつ敵第一警戒線に突入。迎撃を覚悟するものの、鉄のシャワーどころか散発的な銃撃と微弱な対空砲火のみ。下手な鉄砲をやたらめったら撃たれると覚悟していたターニャにとっては予想外も良いところ。一瞬、敵警戒線の位置を見誤ったかと勘繰り否定。少なくとも、部隊の接敵報告と航空艦隊の報告を総合する限りでは誤りが無い。やはり、誘引して伏撃してくるつもりなのだろう。そうでなければ、状況に説明が付けられない。「・・・っ、火力主義かと思っていたが存外違うのか?」想定と状況が違い過ぎた。自分の前提知識と全く違う挙動には、疑念がわき上がらざるを得ない。確かめる必要があるのは、事実。『敵魔導師ないし航空部隊は?』念には念を入れ、各部隊には索敵に留意させている。にも関わらず、発見の報どころか友軍が接敵したという報告すらない。実際、ターニャ自身起動している索敵術式は空域がクリアであるという事を表すばかりだ。『・・・確認されておりません。』実際のところ、部下も戸惑っているのだろう。通信障害による報告未達の可能性も、この通信状況では考えにくい。つまり、判断しにくいことに敵が未発見。いるべきところに、敵がいないというのはそれはそれで違和感がありすぎる。The Firmが存在しないコンサル会社並みだ。ありえな過ぎて、逆に警戒心を呼び起こしてやまない。『索敵を継続。対地警戒も怠るな。』『『『了解』』』「奇妙すぎる。・・・どこに隠れている?」そう思った瞬間に、岩陰に人影を視認。規模複数。最低でも、4~50人?咄嗟に、視認できた人影を部隊もほぼ同時刻に発見。『塹壕線を確認。・・・いえ、偽装壕です!』敵だ。『潰せ!伏撃部隊だ!ブレイク!ブレイク!』本格的な陣地構築ではなく、偽装程度の壕。こんな最前列で、岩陰に潜んでいる連中が浅い壕を掘るはずもない。対空術式を警戒し、即座に散開。小隊毎に回避軌道を描きつつ、敵部隊に襲撃の機会を与えないように増速。行き掛けの駄賃とばかりに、対地爆裂術式を起動。『各小隊!最大戦速にて突入!』各小隊長の判断に個別の戦術判断を委ねつつ突入。この時、デグレチャフは知らなかった。あまりにも浅かったために偽装壕と判断された壕。それは、経験不足の合州国軍兵士が掘った壕だという事を。ECMが無いことは、伏撃のためではなく単純にミスだという事を。対空砲火が濃密でないのは、そもそも対空戦闘の経験がないために理解されていなかったという事を。航空優勢・魔導師による空域制圧が容易であったのは、相手の無理解が原因だと。連合王国とは違い、相手はそもそも大規模総力戦の素人だという事を。要するに、ハードはともかくソフト面で合州国軍はこの時点では素人も良いところだという事を。だが、さすがに個別の戦闘事例まで記憶していない以上ターニャにとってイメージは強大だった。それ故に、ターニャの行動は敵が『世界最大の軍隊』であるということを前提とする。質・量で圧倒している敵軍との戦闘を想定しての苛烈な突撃戦。かくして。合州国軍の第一陣は到着早々強烈な洗礼を受ける羽目となる。あとがきorz誤字が、誤字がぁああああ...ZAPにとりかかりますのでご容赦ください。追記誤字ZAPを敢行しました。現在、Computerがクローンの増産を検討中です。後、ちょっと余裕が出てきたのですがまだまだ厳しいので更新は不定期になることをご容赦ください。後、コメントに感謝を。>牛歩さま疑似神経は、疑似ですから。痛覚のカットくらいは(`・ω・´)>D4さまぶっちゃけると、マーシャルプランのために介入してほしいだけです。デグレチャフ的思考によれば、旧大陸を買収しようとするコミーを抑え込むホワイトナイトが必要なのですね。あと、主人公の人気に安堵しました(´・ω・`)。こんなタイトルですから、主人公が愛されないと覚悟していましたが。ともあれ、勇気、友情、努力の末に、強敵に打ち勝つ合州国のヒストリー開幕です。次回、『敗北を踏み越えて』合州国の苦闘と、栄光にご期待を。追伸フリーデンタール中将更迭後、入れ替わりにアノ将軍来るぅー?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン とのお問い合わせを頂きました。良くわかりませんが、英雄願望で自称ハンニバルの生まれ変わりの突撃愛好者なら本国から搬送されているところです。ZAPしています。ZAP