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No.24734の一覧
[0] 【正式採用決定】(末期戦モノ)幼女戦記Tuez-les tous, Dieu reconnaitra les siens[カルロ・ゼン](2013/08/04 06:42)
[1] プロローグ・ベータ版[カルロ・ゼン](2012/03/30 23:57)
[2] 第一話 学校生活[カルロ・ゼン](2012/04/22 18:35)
[3] 第二話 良い一日。[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:29)
[4] 第三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:30)
[5] 第四話[カルロ・ゼン](2012/05/31 00:08)
[6] 第五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:33)
[7] 第六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:35)
[8] 第七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:36)
[9] 第八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:38)
[10] 第九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:40)
[11] 第十話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:42)
[12] 第十一話[カルロ・ゼン](2012/04/22 18:36)
[13] 第一二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:55)
[14] 第一三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:56)
[15] 第一四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:59)
[16] 第一五話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:26)
[17] 第一六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:17)
[18] 第一七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:18)
[19] 第一八話[カルロ・ゼン](2012/04/22 18:37)
[20] 第一九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:21)
[21] 第二〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:23)
[22] 第二一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:24)
[23] 第二二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:27)
[24] 第二三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:30)
[25] 第二四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:33)
[26] 第二五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:48)
[27] 第二六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:50)
[28] 第二七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:52)
[29] 第二八話(外伝①)[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:54)
[30] 第二九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:56)
[31] 第三〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:58)
[32] 第三十一話(外伝②)[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:15)
[33] 第三十二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:17)
[34] 第三十三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:18)
[35] 第三十四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:20)
[36] 第三十五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:20)
[37] 第三十六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:12)
[38] 第三十七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:12)
[39] 第三十八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:11)
[40] 第三十九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:09)
[41] 第四〇話(外伝追加)[カルロ・ゼン](2011/11/13 23:03)
[42] 第四一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:07)
[43] 第四二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:06)
[44] 第四三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:06)
[45] 第四四話[カルロ・ゼン](2012/03/08 22:55)
[46] 第四五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:06)
[47] 第四六話(外伝3)[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:05)
[48] 第四七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:04)
[49] 第四八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:04)
[50] 第四九話[カルロ・ゼン](2011/11/25 02:02)
[51] 第五〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:03)
[52] 第五一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:01)
[53] 第五二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:00)
[54] 第五三話(時系列的には第五二話前の外伝)[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:46)
[55] 第五四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:44)
[56] 第五五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:43)
[57] 第五六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:42)
[58] 第五七話(外伝追加)[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:41)
[59] 第五八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:41)
[60] 第五九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:39)
[61] 第六〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:38)
[62] 第六一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:37)
[63] 第六二話[カルロ・ゼン](2012/01/15 05:00)
[64] 第六三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:35)
[65] 第六四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:34)
[66] 第六五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:13)
[67] 第六六話[カルロ・ゼン](2012/03/17 23:56)
[68] 第六七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:12)
[69] 第六八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:12)
[70] 第六九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:11)
[71] 第七〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:10)
[72] 第七一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:10)
[73] 第七二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:09)
[74] 第七三話[カルロ・ゼン](2012/03/16 22:14)
[75] 第七四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:09)
[76] 第七五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:08)
[77] 第七六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:07)
[78] 第七七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:07)
[79] 第七八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:06)
[80] 第七九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:05)
[81] 第八〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:04)
[82] 第八一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:03)
[83] 第八二話[カルロ・ゼン](2012/04/18 01:19)
[84] 第八三話[カルロ・ゼン](2012/04/18 01:20)
[85] 第八四話[カルロ・ゼン](2012/04/22 20:41)
[86] 第八五話[カルロ・ゼン](2012/05/11 02:16)
[87] 第八六話[カルロ・ゼン](2012/05/13 18:13)
[88] 第八七話[カルロ・ゼン](2012/05/18 00:55)
[89] 第八八話[カルロ・ゼン](2012/05/31 00:33)
[90] 第八九話[カルロ・ゼン](2012/05/31 00:03)
[91] 第九〇話[カルロ・ゼン](2012/07/02 04:25)
[92] 第九一話[カルロ・ゼン](2013/06/06 20:38)
[93] 第九二話[カルロ・ゼン](2013/06/06 20:32)
[94] 第九三話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:29)
[95] 第九四話[カルロ・ゼン](2013/06/06 20:36)
[96] 第九五話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:28)
[97] 第九六話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:27)
[98] 第九七話[カルロ・ゼン](2012/09/02 12:59)
[99] 第九八話[カルロ・ゼン](2012/09/02 16:01)
[100] 第九九話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:26)
[101] 第一〇〇話[カルロ・ゼン](2012/09/22 01:53)
[102] 番外編的な何か。 という名の、泣き言的な何か。[カルロ・ゼン](2012/09/23 20:17)
[103] 番外編1 『ライヒの守護者』[カルロ・ゼン](2012/09/28 05:02)
[104] 番外編2 『ラインの食卓』[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:25)
[105] 番外編3 『203は何処にありや?』[カルロ・ゼン](2012/10/25 22:20)
[106] 番外編4 『ルナティック・ルナリアン』[カルロ・ゼン](2012/11/07 09:34)
[107] 番外編5 『毒麦のたとえ』[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:24)
[108] あとがき(+ちょっとした戯言)[カルロ・ゼン](2012/12/17 01:20)
[109] The Day Before Great War 1:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2012/12/24 11:11)
[110] The Day Before Great War 2:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2012/12/24 11:11)
[111] The Day Before Great War 3:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2013/01/29 01:14)
[112] The Day Before Great War 4:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2013/01/28 22:00)
[113] The Day Before Great War 5:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2013/08/04 08:53)
[114] The Day Before Great War 6: 秋津島戦役[カルロ・ゼン](2013/06/06 20:30)
[115] The Day Before Great War 7: 秋津島戦役[カルロ・ゼン](2013/06/06 21:33)
[116] The Day Before Great War 8: 秋津島戦役[カルロ・ゼン](2013/08/04 06:45)
[117] 『おしらせ』[カルロ・ゼン](2013/01/28 22:19)
[118] 番外編6 『とある戦場伝説』[カルロ・ゼン](2013/09/25 01:57)
[119] 番外編7 『ラインの…オムツ』[カルロ・ゼン](2013/09/25 02:13)
[120] 番外編8 『喰らうた肉』[カルロ・ゼン](2013/09/25 01:55)
[121] 番外編9 『総力戦問題1』:農務省、人手を求める[カルロ・ゼン](2014/03/10 21:47)
[122] The Day Before Great War 9: 秋津島戦役[カルロ・ゼン](2013/10/07 16:12)
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[24734] 第七五話
Name: カルロ・ゼン◆ae1c9415 ID:ed47b356 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/12 01:08
酸素がなくなり、肺が空っぽになる感覚。
自分の意志では抑えられない痙攣。
いや、もはや立っているのか横たわっているのかもはっきりとせず全身が苦しい。

何が起きているのかすら、理解できない苦しみ。



戦争なんて糞ったれだと思っていた。
何が悲しくて、生まれ持った才能を使い捨てねばならないのだろう、と。

魔導師としての技量は、中の上。
このご時世だ。
帝国軍の中でも決して悪くはない水準である。

身も蓋もなく言うならば、特権的な待遇を謳歌できる立場。
特別配給される食糧は、今となっては他では口にできないものだろう。
アルコールの類も戦前とほとんど変わらない質なのだ。

こんな待遇を受けられるのも、自分が数少ない優秀な魔導師だから。

はっきり言えば、新兵と老兵しかいないような本土防衛軍では一番の主戦力として扱われていた。

『そう、扱われていた。』

天狗になったと言われれば、それまでだろう。
だが、貴重な戦力として俺達の行動は大目に見られていた。
多少の乱痴気騒ぎや、形だけの上官に対する軽蔑。

いくらなんでも、マズイと思う事もあった。
だけれども、戦力不足の軍はそれでも自分達に依存しなければ戦えない筈。
どこか、そう甘い考えがあった。

だから、新しい上官が赴任したと耳にした時に特に注意しなかった。
どうせ戦時緊急錬成で促成栽培された新米士官に違いないと思いこんでしまっていたのだ。
アラートがならない限り、酒をかっくらって寝転がっていようとも誰にも文句を言わせるつもりはない。

文句を言うならば、出撃しないと脅してやれば誰もが口をつぐんだのだ。
今回もそうだろうと思いこんでいた。

軽く揉んでやればママの下に逃げ帰るに決まっていると、ツレの連中と嗤っていた。

ああ、つい先ほどまでは確かに自分達の天下だったというのに!


「上官への不服従、無許可離隊、即応待機中の飲酒、ああ、民間家屋の不法占拠に公金の横領疑惑か。」

良い気分で飲んでいたところに、餓鬼が紛れ込んできて囀っている?
馬鹿馬鹿しい話だ。一体、誰に守ってもらっているつもりだろうか?

基地近くの馴染みの店の扉を文字通り蹴り飛ばし、能面で淡々と口を開く餓鬼。
身の程知らずにも程があるので、少しばかり『教育』してやるべく仲間たちと立ち上がる。
みれば、ぴかぴかの糊が効いた軍服を着こんで然も偉そうに突っ立っていらっしゃる。

大方、戦時中の事だ。
コネで成り上がったボンボンか貴族の御子弟様という奴に違いないと判断。

綺麗に手入れされた金髪に、かわいらしいお口だ。
まったく身の程を知らない餓鬼だが、使えないこともないだろうと苦笑いする。
お口と下の口は、まあナリだけなら悪くはないのだ。

こんなところにノコノコやってくる方が悪い。

「あああぁっ?一体、誰にモノを言っていらっしゃるのかな?」

まったく、口のきき方がなっちゃいない。
誰がここをしきっているか教育してやらねば。

まったく、帝国軍の魔導師というのは仕事が多くて大変だ。
そう笑いながら、餓鬼を逃がさないように数人で取り囲む。

「・・・口のきき方も忘れたのかね?」

ビビって泣きださないどころか、虚勢を張っている姿は見ていて面白い。
大体、士官という奴らは自分が偉いと無条件で信じ込んでいるのだ。
それを砕く瞬間というのは実に面白い。

それまで威張り腐っていた奴らがペコペコして許しを請うのは味をしめない方が無理というモノ。

「いや、無能な蛮族が言葉をしゃべることを期待したほうが無理という話か。」

「なぁんだと貴様ぁあああ!?」

現実を教えてやろうじゃないか。
そう考え、腕を振り上げる。
叩きのめして、序列と上下関係を叩きこんでやる。

そう考え、腕をふりおろそうとして違和感に気が付く。

振り下ろした筈の腕。
嫌に肩が軽く、そして熱かった。


「やれやれ、着任早々処刑を執行する羽目になるとは。オーバーワークにも程があるとは思わないかね諸君。」

態度が悪い程度ならば、使える限り許容してやろうと思ったが。
まさか、魔導師として最低限度の基本である防殻の即応展開も出来ない下の下しかいないとは。
反抗的すぎる馬鹿を教育しようとしたが、まさか此処まで技量劣悪とは想定していなかった。

アルコール漬けの馬鹿どもを教育する手間を考え、再教育は断念。
なにしろ、酒に逃げた挙句技量劣悪ととてもじゃないが盾になるとも思えないのだ。

ターニャとしては、正直お荷物を抱える気はなかった。
自己保身的観点からみても、こんな連中を部下に持つインセンティブは欠落している。
なにしろ、部下の統制も取れないと判断されれば左遷されている身がさらに不味い立場に置かれるのだ。

堪ったものじゃない。

だから。

本当は、気乗りしないのだが。

「現行犯だ。戦時中につき、小官に付与された権限により即決処刑を実行する。」

魔導師として、基本すら出来ないアホども。
所有する潜在力や魔力展開可能量はあるのだろう。
だが、馬鹿げたことに奴らは術式の組み方すら碌にできていない。

ごちゃごちゃ騒いでいるので、我慢の限界だった。
そもそも、ここまで出向いてきたのも憲兵隊を送り込んで銃殺させる前に使い物になるかだけでも調べてやろうという温情なのだ。
それが、こんなに無駄足だとわかりすぎるほど単純な反応をされれば誰でも溜息の一つ付きたくなる。

民間人がいないのは確認済み。

故に、無駄足を踏まされた鬱憤を原因へぶつけることに躊躇する必要はない。

即座に鎮圧用のソマンガスを展開。
こんな閉鎖空間である。
ターニャ的には億劫極まりないので馬鹿どもが馬鹿である可能性に期待しガスを展開。
通常ならば、高機動戦ではよほど高濃度で広範囲に散布しなければならない。

だがここは閉鎖空間で、しかも防御膜による対ガス防御も怠っているアホどもだ。
無色無臭のガスに対する警戒心というのが退化している連中は、馬鹿みたいに鼻息が荒い。

結構なことだとターニャは嗤う。

無能な口だけの連中はみるみる顔色が変化し、痙攣を開始。
地面に崩れ落ち、ぴくぴくと引き攣り喉をかきむしる連中は体中の穴という穴から体液を漏らしてやまない。

まあ、自分は優しいのだ。
少なくとも、どんな蛮族だろうとも法的権利はすべからく尊重している。
故に、きちんと法的手続きを怠ることなく執行することにかけては手を抜かない。

故に。

仮に処刑するとしても、規定通り銃殺しなければとターニャは判断。
ルールに従う事を求める以上、自分もルールを遵守するのは当然なのだ。
有機リン系の解毒剤であるオキシム剤を緊急精製、静脈に叩きこんでやる。

これで、中毒症状が緩和され銃殺刑の執行まではまあ持つだろうとターニャは分析。
ソマンは残留しにくいために、この家屋の持ち主に対してさほども迷惑をかけずに済むだろうと判断。
魔導師戦ではガスなど利かないという常識から、対ガス防御を怠るのは危険だなと教訓を導く。

戦時国際法で敵国への使用が厳禁されているためこんな時しか使えないので、使ってみただけだが。

「・・・こんな初歩的な手にやられるアホが部下だと思うと泣きたくなるな。」

左遷先だ。
さほど、有能な人間がいないことは覚悟していた。
だが、まさか無能どころか有害な連中が跋扈しているとは。

泣きたくなってしまうではないか。
まさか、こんな涙もろく自分がなっているとは驚きである。
肉体に精神が屈服しようというのだろうか。

いや、断じて阻止しなければ。
泣くのを堪え、強靭な自己を保持するのだ。
今日を懸命に生きることこそ、生の喜びなのだから。

今日も一日、神の糧に感謝し生きなければ…?

ん?





夜間浸透襲撃を試みてきた敵歩兵をシャベルとナイフで排除。
血だまりに敵の死体を蹴り飛ばし、念のために銃剣で一突き。
反応が今回は無いので、特に問題無しと判断して将兵らは適当に囮に使うも狙撃兵は釣れず。

舌打ちしつつ、使えるモノをはぎ取って廃棄。
まあ、連邦兵の所持品にあまり期待するのは新兵くらいだ。
運が良ければ、合州国製の精密機器も手に入るが政治将校が前線に出てくることは稀なので誰も期待していない。

手際良く各員が行動しているとはいえ、容易に排除が完了。
これは嫌がらせ程度の攻勢と判断し、防衛線の再編成を戦闘団司令部は決定。
冷めたレーションながらも食事が配給され、擾乱射撃下ながらも吶喊工事を再開。
再びシャベルを手に警戒しつつ、穴を掘り、壕を整備。

幸い、連続襲撃はないために警戒を解除し当直要員を残し就寝許可が出されたのが0205。

早朝早々の朝駆け対策として敷設しておいた地雷原からの炸裂音を聴音手が感知したのが0652。
仮設壕で横になっていた将兵が、炸裂音に叩き起こされ即応配置。
なんとも人騒がせなことに、強行偵察隊程度の浸透と判明。

ぶつぶつ言いつつ、将兵らは再び二度寝に入る。

敵魔導師による襲撃ないし、重対要塞砲による効力射は皆無。
敵歩兵による浸透襲撃もたったの一度のみ。

その日は、実のところ東部戦線では平和な一日だ。
戦闘団司令部に至っては、代用珈琲を啜りながらなんと世間話まで可能だった。

「お聞きになりましたか、ヴァイス少佐殿。」

いつもならば、伏撃か機動防御に追われて席を温める暇すらない将校らによる歓談。
グランツ中尉にしてみれば、随分と久々に席に座って食事が取れるだけで御の字だった。
夜間大規模浸透を排除する際には、野戦レーションを齧りながら演算宝珠とシャベルを振るう羽目になっていた。

消化不良を気にする方でないとはいえ、さすがに走りながら食べるのは不味かったと今では後悔している。
デグレチャフ中佐指揮下で狂った長距離行軍を行う時でも、5分とはいえランチタイムは取られていたのだ。

ともあれ、束の間の平和を謳歌しつつも話題はどうしても軍の動向になってしまう。

「ああ、大規模増援という話か。眉唾ものだが、実際ところはどうなのだ?」

代用珈琲の不味い味に顔をしかめつつ、ヴァイス少佐は野戦慣れした将校特有の懐疑主義も露わに首をかしげて見せる。
大規模な増援、確実な補給、即座の支援、進発した増援部隊。
少しでも、世間慣れした将校ならば手元に届くまでそんなものは信じたりしない。

東部においては、手元に届いてもしばらくは疑ってよいほどだ。
補給が届いたかと思えば、大規模侵攻に直面するということもままあるのだから、上の意図に誰もが敏感になってしまう。

だから、話の腰を折られようともグランツ中尉は特に気分を害することなくソースを公開する。

「どうやら本当の様です。・・・兵站関係者から聞きだした話では、3個軍団規模の増援だとか。」

先日、輸送部隊護衛中に兵站司令部付きの連中から聞きだした情報。
それによれば、近々大規模な兵站のテコ入れがあるという。
全体像は誰も把握できていないようであったが、少なくとも大陸軍相当の規模であるというのは間違いないらしい。

各地にデポが形成されているというのは、兵站部の連中の口からも明らか。
少なくとも、物が異常な規模で動いているというのは事実だろうとグランツ中尉も確信できるほどに兵站が活発だった。
グランツとてベテランである以上話半分に聞いた上での判断だ。

「大陸軍相当?俄かには、正直信じがたい。」

「自分もであります。…ですが、事実ならば或いは。」

東部での大規模攻勢による戦線整理。
それが達成できれば、歪に入り乱れてしまった前線は随分と楽になる。
食事の手を止め、ふと戦力図を思い浮かべる。

状態は拮抗しているのだ。
確かに、一撃強打すれば状況が動かせるだろう。
難しい情勢とはいえ、大陸軍規模の槌で敵を叩けば。

期待できるのではないか。
だが、そう言いたげなグランツに対しヴァイス少佐は肩をすくめて見せる。

「・・・それは、どうだろうな。難しいと思うが。」

「はっ?」

「歴戦のサラマンダーですら編成当初の定数割れだ。補充は追いつかず、補充の質は劣化が著しい。」

最前線で直近の悩みは、定数割れと不安定な補給だ。
だが、戦闘団司令部クラスの悩みとなる補充要員が顕著な質的劣化を見せていることの方が大きくなる。
錯乱した若手を撫でて寝かせる余裕すらなくなると、今いる兵士の負担が劇的に跳ねあがってしまう。
だから、技量未熟者は補充要員とせずに他部隊に譲っているだけにヴァイス少佐の危惧は強い。

なるほど、人数だけ見れば大陸軍規模だ。
或いは、装備・兵站状況も改善されるのかもしれない。
だが、外が硬くても中は脆くないと誰が言い得るだろうか?

「つまり、額面戦力通りではないと?」

「間違いなくそうだろうな。そして、性質の悪いことに上が理解しているか怪しい。」

そこまで考えた時に、ヴァイス少佐は不安を覚えざるを得なかった。
現在のお偉方は平時に昇進し、将軍になって戦争に直面した面々ばかり。
言い換えれば、現場で戦った経験がほとんど乏しいのだ。

操典の上では、古参兵と新兵の区別くらいできるかもしれないが。
結局のところで前線壕に入ったことのないお偉方という奴なのだ。
書類とテーブルマナーはお上手でも、戦争がお上手かどうかはやってみないとわからない。

だが、自分達のデグレチャフ中佐殿のようなお偉方のほうが少数派なのは言うまでもないだろう。

「何故、そうおっしゃれるのですか?」

「さてね、古参兵の勘だよ。」

中佐殿のお供をして何度も見ているのだ。
勘というよりは、経験知だがそれは言っても仕方のないこと。
過去には、不幸な事故にも立ち会ったことがある。

…必要に迫られてではあったのだが。

「さぞかし、的中しそうなのですが。」

一方で、グランツ中尉はこちらの答えで盛大に眉をひそめて憂慮の意を表す。

なにしろ、古参兵の勘というやつはそれなりに前線では信頼される。
生き残っている人間の知恵という奴は、言葉では説明できない経験知に依拠しているのだ。
これを軽視することの不味さは理解できないと、長生きできない。

「するんだな、これが不味いことに。」

そこまで呟くと誰ともなしに立ち上がり敬礼し別れる。
今日も、戦争に戻らなければならないのだ。

面倒だが、仕事の時間である。



機動戦の第一人者でありながら、消耗抑制ドクトリンを支持した将校というのは居場所が無いらしい。
病気療養から全快して復帰したロメールが直面したのは、決戦主義派から疎まれているという現実だった。
元々、持病が悪化し南方大陸軍から本国に帰還したのは一次的な休暇のつもりだったが状況が変化。

気が付けば、無任所で飼殺しにされていた。
なんとか知己を頼って復帰を試みたものの、帰ってくる反応は芳しくないものばかり。
いよいよ焦燥感が増すが、こればかりはロメールをもってしてもどうにも手が出せない。

愛する家族と暮らすのは悪くはないが、逆に言えば本国でやることが与えられずに放置されるのも癪なモノ。
結局、閑職だと誰もが理解できるポジションがいくつか提示されるものの取ってつけたものばかり。
散々またされた挙句に、これかと歎きたくなったが是を蹴れば次が無い可能性も理解できる。

それだけに、散々癪ではあったもののロメールは選択せざるを得なかった。
やむを得ずと言った感じではあるが、与えられた物の中ではまだマシなモノを。
こうして、ロメールは消去法でノルマルディア方面の担当を選択した。

彼にしてみれば、本土防空任務に携わる辛うじて矜持を維持できる程度の職。

だが、その対岸のロンディニウムでは彼とデグレチャフの配置が静かながらも強い動揺を一部にもたらしていた。

「・・・よりにも寄って、ラインの悪魔が。」

知らせを耳にした時、驚愕のあまり紳士らしからぬ振る舞いを幾人かはしてしまった。
ハーバーグラム中将など、驚愕のあまりティーカップを地面に落してしまったことに気が付かなかったほどだ。
だが連合王国の知性を代表する誰ひとりとて、それを指摘する精神的余裕は持ち合わせていなかった。

ほとんど手玉に取られ続けていた連合王国にとっての天敵。
よりにも寄って、一番来てほしくないところに、一番来てほしくない奴が陣取っていた。
戦争の基本が、相手の嫌がることをやれというならば、間違いなく基本に忠実な配置である。

「偶然では?」

新任の事態を理解できていない間抜け。
彼は希望的観測を口にするが、周囲からの咎める目線に気が付き赤面して口を閉じる。
此処まで来るならば、もはや必然と思わざるを得ない。

何度、何度あの『ラインの悪魔』に『偶然』大損害を負わされたことか!

「砂漠のキツネまで回されています。聞くところによれば、わざわざ南方大陸方面から配置転換と。」

そして、機動戦の第一人者であり卓越した戦術家であるロメールが配置転換された理由。
平地が多く、機動戦に最適なノルマンディア方面にこの時期になぜ?と考える必要があった。
大部隊が与えられていれば、場合によっては連合王国方面への大規模上陸作戦の可能性もわずかとはいえ考慮できる。

だが、与えられている部隊は基本的には二線級ないし損耗した部隊だ。
これで攻勢を検討するのは、原則的に不可能。
そうなれば、これらの戦力をロメール将軍が有しているという意味は簡単だ。

手持ちの戦力で防衛線を有効に構築することが期待されているという事になる。

「…東部で大規模攻勢をかけるならば、本来は東部に行くべき連中だろう。」

「偶然という可能性は切り捨てよう。奴を相手にする時は、必然だと思え。」

赤面している若造に言い含めつつ、誰もが新しい難題に頭を悩ませ始める。
素人ですら、あの『ラインの悪魔』と『砂漠のキツネ』を組ませるなら激戦地でやらせる筈だろう。
合州国軍が上陸した南方大陸からわざわざ卓越した指揮官と将校を引き抜く必要性は無い。

大規模な方針転換が行われたことから、派閥人事の可能性も検討されてはいる。
だが、しかし仮に派閥人事を強行するとしても偶然で起こりえることではない。

「読まれていたのでしょうか?欺瞞情報で混乱させられていると情報部は分析していたのですが。」

「しかし、こちらの動きを読んでいれば本土を空ける筈がありません。」

相手のブラフなのか、罠なのか。
仮に、帝国が対連邦攻勢を企画し大規模な部隊移動を行わせているならば本国は空っぽだろう。
D-DAYに際しては、さしたる抵抗を受けることなく上陸できると予期できた。

だが、同時に過去にイルドアで煮え湯を飲まされた経験は連合王国をして酷く慎重にさせている。

「イルドアの事例がある。・・・慎重に行くべきだ。」

ウルトラ情報を逆手に取った大規模戦略欺瞞にしてやられたのだ。
この本国を空にするという情報も、うかうかするとこちらの主力を釣りだし撃滅する方策やもしれなかった。
そうでない可能性があれば、好機を逸することになるやもしれない。

だが、かつて戦争を終わらせるという誘惑に屈して払った代価は誰もが覚えている。
そんなリスクは2度と取るわけにはいかなかった。
あのときは、賭けていたのがイルドア王国という他国だったが今回は連合王国そのものが乗っているのだ。

勝てる戦いでもない限り、リスクを選択することはできない相談でしかない。
いや、仮に勝てるとしても、リスクを極力回避する必要があるだろう。
煙草を燻らせる程度の時間があれば誰でも同じ結論に至る。

「最低でも、ロンディニウムの防衛体制を見直す必要があります。」

「完全に同意する。アレに蹂躙されるのだけは、阻止せねば。」

そして、同時にリスク計算を即座に再検証。

"ある程度の自信がある防空網だが、そんな程度でアレを止められるだろうか?"

結論は、できれば苦労はしないというモノ。
その程度で阻止できればそもそも『ラインの悪魔』などという名前が湧いてくるはずもない。
恐るべき戦略兵器級の影響力を有する化け物、奴はそういう規格外の存在なのだ。

あのラインの重防御陣地をやすやすと突破した実績があるのだ。
ハリネズミじみた防空陣地程度では気休めにしかなりそうにない。

「やり直しだ。防衛線にテコ入れを行う。」

「時間をかけ過ぎると、連邦が根を上げ始めてしまいますが?」

駐在武官や観戦武官らを通じて要請されている第二戦線の形成。
一応、気乗りしないが要請そのものは必要なものなので受諾されていた。
戦略上、二正面作戦を帝国に強いる有効性は広範に指示されている。

最も、戦略上の必要性と政治上の必要性というのはえてして一致しないもの。
本来ならば、スケジュールに合わせて行動を開始しなければ間に合わない頃合い。
しかし、連合王国や合州国にしてみれば莫大な犠牲が予期される事態は御免蒙りたかった。

だが、はっきり言えば前提条件は全ての敵主力を連邦が引き付けているから第二戦線を構成しろという事だ。
逆にこちらに奴らが来ているのならば、すでにそれは敵戦力を一定程度拘束しているとして評価されても良い。
そう自己弁護できる余地があれば、行動を躊躇するには十二分すぎる。

「知ったことか。それよりも、合州国に通報だ。最悪、計画を見直さねば。」

なにより、連合王国は常に自国の国益を他の何よりも最優先に考えるのだ。
そこに一切の躊躇が介在する余地はない。




おまけ


(´・ω・)
やあ、すまない。

(´・ω)
うん、わかってはいるんだ。


こんなことをしている暇があったら、さっさと本編を書けと言われることは。
本当は、こんなことをしている時間にノルマルディア上陸作戦を書くつもりだったんだ。
クルスクやバグラチオンで泥沼の末期戦をZAPZAPするつもりだったんだ。

信じてほしい。
わざとじゃなんだ。

(´・ω・`) ホントダヨ?

でも、最近妙にarcadiaへの投稿が多いことに気が付いたのだ。
良くわからないけど活性化するのは良いことだと思っていたら、なんか『なろう』からの移住だとか。
理想郷となろうの比較は、まああれだけど。

『チュレンヌ税制改正物語』とか『理想のヒモ生活』は良かったなぁ…。

とか思いながらスレを開いたら

クリークだったんです。
一心不乱のクリークだったんです。




理想郷歴2012年3月15日午後9時

"Hello, this is NIJIFUN Radio, latest news programme."

『秋の日の ヴィオロンの ためいきの…』

午後9時15分、いつもならばそこで終わる筈の放送。
だが、Arcadia方面軍、デグレチャフ戦闘団は次の瞬間に叩き起こされる事となる。

『身にしみて ひたぶるに うら悲し』


国防軍情報部より、事前に指定されていた符牒を確認。
事前情報通り、公開放送による作戦開始符牒の送信だった。
当直室に詰めていた参謀らが一斉に動き出し、防衛線は蜂の巣をつついたような狂騒状態に陥る。


『オペレーション・オーバーロード』の発令。

だが、悲しいことにArcadia方面軍全ての即応は叶わない。
事態の勃発はあまりにも急激だったのだ。

事前情報は半信半疑で受け止められ、結果的に初動が遅れてしまう。
結果、本隊上陸に先立ち先遣部隊の空挺降下の有効な阻止に失敗。

近隣の部隊が迎撃を敢行し、歓迎の意も露わに突進するも徐々に戦線維持は困難に直面する。
だが、迎撃部隊と降下部隊の激闘はほんの始まりに過ぎなかった。

『なろう』本隊、約1万隻からなる強襲上陸船団。

百戦錬磨のArcadia方面軍をして、最大の苦戦を予期させるに十分すぎる戦力。

故に、塹壕戦の友であるシャベルを手に古参兵らは敵の上陸に備える。
ある者は、錆びついた自らの腕を自嘲しながら見やった。
また、ある者は手持ちの残弾に溜息をつきながら長期戦を覚悟する。

誰もが、覚悟を決めていた。

彼らは知っている。
自らの敵が、チートであり、神様に力を与えられた軍勢であり、そしてチーレムの主たちだと。
Arcadia大陸で揉まれた古参兵らは、久々の香りに意気揚々とシャベルを掲げた。

そろそろ、時間だ。
お客様の第一陣が御到着するころ合いだろう。


歓迎しよう。
ここは、オハマビーチ。
Arcadiaへの関門である。


攻め入るは、圧倒的物量による蹂躙を試みる『なろう』。
守るは、覚悟完了済みの古参兵らによる『Arcadia』。
仁義なき戦いが、いま幕を開ける。


続く?


|ω・`) ショボーン
別に排外主義とか『なろう』帰れとかじゃなくて一緒に仲良くやればいいじゃない。

うちだって指摘されたけど
神様転生、TS、チートと
いろいろ良い具合に入っているし。


(・ω・´)ヨシッ! 相互理解に貢献しよう!

思い立ったが吉日、さっそく何やろうと考えていたのがつい先ほど。

名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/03/15(木) 23:20:42.45 ID:1QHP+/zcO
ノルマンディー上陸作戦ならぬ、アルカディア上陸作戦開戦だな

・・・m9っ`・ω・´)ソレダ!

ちょうどD-DAYやろうと思っていたんだ。
とか言う感じで遊ぶのは駄目ですかね(´・ω・`)

ノリで笑い飛ばすくらいが精神衛生上良いじゃない。


不味かったら、削除しますが。


あとがき

J`・ω・)キャプテン○ローだって、やればできる子。
三日連続更新なんて
How hard can it be?

ZAPZAPZAP

J`・ω・)Oh Cock!

明日は更新できるだろうか?
How hard can it be?

ZAP


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