ウラン・プルトニウム等の核物質は、平和的利用・軍事的利用の如何を問わず厳密に管理されねばなりません。核による平和的利用の成果は、否定されるべきではありませんが同時に細心の注意が払わねばならないのです。そして、核の拡散は、絶対に阻止されねばなりません。この命題に背いて、破綻国家やテロ支援国家が核武装を行うのは許容しがたいほどに世界を危険に至らしめるものです。その結果、核兵器が流出し、世界に対する重大な危機を誘発せしめん可能性は想像するだけで恐ろしい。我々、常任理事国は、断じて核の流出という脅威を甘受することができないことを明言いたします。核の傘の下での平和という言葉によって、世界の軍事的な緊張は常に危うい状況に置かれてきました。それらの状況を緩和し、同時に破滅的な破局を回避するために国際的な核軍縮の動きに我々常任理事国は努めていくものです。同時に、我々は安全な世界のために徹底した『核管理』を提唱し、要求するものでもあります。我々は、また同様に民生用原子力発電所の保安強化を強く供給するものです。警備体制・使用済み燃料棒等についても軍事施設に準じた防御体制と管理機構を整えていない原子力関連施設は、その一切が巨大過ぎるリスクであります。我々人類は、その進歩によって大きな知恵の実を貪っているという事実に謙虚であるべきでしょう。同時に、我々常任理事国はアライアンス形成の前提条件であった紛争における諸条件の遵守を国際社会に対し強く履行するように求めるものでもあります。アライアンスが形成された際、我々は世界に誓いました。二度と、子供達が戦争に駆り出されることのない世界を造ろうと。現在、再び繰り返さぬと我々が誓った悲劇が世界各地の紛争地帯で勃発してやみません。アライアンスの知りえた衝撃的な結果は、5歳の少年兵が紛争地帯で銃を振り回しているのです。地域内の少年少女、ほぼ全てが民兵と化した恐ろしい事例すらも、報告されていました。このような、事態がどのような危機を誘発しているかを理解すべきです。事態は既に悪化の一途をたどっており、紛争は最早制御不能な事態を招きつつあります。国際社会は、少年兵の問題に対して真剣に取り組むべき十二分な理由があると言えましょう。我々は、先の大戦において少年兵という悲劇的な事例を回避すると誓ったのです。このように、国際社会と既存の秩序に対する著しい破壊的状況を改善する必要があるのは自明の理でありましょう。我々は、既に多くの子供達に戦争の洗礼を浴びせた挙句、核という火を管理できるかどうかの鼎が問われているのです。世界各国の、そして常任理事国の意志を代表し、此処に集った合州国・及び連邦代表は宣言します。『子供の権利条約』の厳格な履行を強く促すこと。そして、『核管理』の国際的な管理委員会を創設すべく強く提言します。これらは、より安全で、より平和な世界のために必要であるとアライアンス常任理事国は確信するものです。『少年兵と核管理に対する創設期の常任事理国による提言』 アライアンスの求めた良心による世界の改良とはなにか? 第三章 笑い声が、止まぬ笑い声がバレンシアに響き渡る。壊れた蓄音器の様に、彼らは誰もが音律の外れた哄笑を垂れ流す。形容しがたい激情のままに、彼らは嘲笑う。奔流のごとき感情を轟々と放ち、そこに立つ姿は羅刹ですら逃げ出すほど。握りしめた拳は、今や高らかに突きだされ、振り下ろされんとす。その矛先は自明だ。幾重にも彼らに取り囲まれ、審判を突きつけられんとする合州国の連絡士官ら。人が体現しうる暴力の極限が凝縮された矛先を向けられては、生きた心地も無いだろう。取り囲まれた相手は、悉くが剣林弾雨に遊び、硝煙弾雨が日常と化した極限の生き残り。よもや、御せると思う筈もない。否、刺激すら避けるべき相手なのだ。本来ならば。断じて。絶対に。その程度の事、連絡士官程度ですら理解し得る。糞ったれの上層部が、何を考えているのかは知らない。しかし、そんなことも知らないのかと取り囲まれた士官らは叫びたかった。だが、彼らがその激情のままに暴発することはありえない。「…静まりたまえ、大隊戦友諸君。」たった一言。怒声を響き渡らせるでもなく。万言を尽くし、道理を説くでもなく。ただ、一言でもって彼らは鎮まる。それを為したのは、まだティーンになるかならないかの餓鬼。初めてそれを見た時は、思わず隣にいる同僚と顔を見合わせて本物かと疑った程幼い指揮官。だが、言葉ではなく存在が全てをこの場において物語っていた。碧眼を細め、端麗な面差しをわずかに歪めるだけで彼女は場を支配する。「してやられた、というべきだろう。」淡々と吐き出される言葉は、そこに何の感情もこめられない平坦な言葉。だが、言葉の調子とは裏腹に、肩をすくめ自嘲する顔は皮肉気に歪んでいる。一発触発。他には、その感情を形容しがたい。「信用だ。大隊戦友諸君、遺憾ながら我々は信用されていないらしい。」天を仰ぎ、憎たらし気に吐き捨てられる言葉。その意を、思わず合州国の士官らは掴みかねる。信用?いったい、何の信用だ、と。だが次の瞬間、彼らの疑問は最悪の形で氷解する。「私は、悲しいのだ。大隊戦友諸君。」大げさに歎く姿は、本来ならば喜劇的だろう。だが、それは喜劇的というよりは激怒を取り繕うかのような素振りだ。いや、狂気だろう。「我々は、撃たれても撃ち返すことすら叶わない無能と見なされた。」紡がれる言葉は、どこまでも平坦な声色。淡々と紡ぐありさまは、どこか現実離れした呟きだ。「我々は、敬意を払うに値する敵と認められなかった。」歎き、歎き、歎く。自らに価値が無いと。そのように定義された自らを嘲笑うかのように奴は慨嘆する。だからこそ、だからこそ恐ろしいのだ。「笑いたまえ、合州国軍人諸君。諸君と取引したつもりで、相手にもされていなかったこの間抜けを。」悲しみの表情を携え歩み寄ってくる化け物を前に、幾重にも包囲された合州国士官らは自らの不運を天に呪う。物分かりの良い投降兵、取引が成立した以上脅威たりえる筈もない連中だと誰が口にしたのだろうか。…こんな狂気の塊と、悪意が狂い咲きした連中を見誤った上に災いあれ!「遠慮はいらない。さあ、笑いたまえ。…それとも、笑えないのかね?」そして、合州国士官らの引き攣った表情を眼にした化物はソレに興味を失う。もはやソレは、論ずるに値しないに過ぎないのだ、と言わんばかりに。「結構、大変結構。」ニヤニヤと。悪意と害意の塊のような皮肉気な笑み。それを浮かべる化物は、楽し気に全てを嘲笑い飛ばさんとする。「さて、我が大隊戦友諸君。私は、帝国を代表して行動する義務がある。古の法で以て奴らにルールを教育してやろうではないか。」愉快気に。楽し気に。無邪気なまでに。カラカラと笑い始める姿は、おおよそ正気の沙汰ではない。「私に付き従うバルバロッサの亡霊諸君、報復だ。」「「「眼には、眼を!歯には、歯を!」」」だが、もはや今となっては止めようがないのだ。災厄は解き放たれる。パンドラの箱は、開けられてしまった。信用とは、空気のようなもの。空気が汚染されてしまえば、逃げ場が無いのと同じく。信用が汚染されてしまえば、市場原理は機能し得ません。これは、近代資本主義の絶対的前提条件である信用の問題といえましょう。言い換えれば、信用の回復は市場原理を有効に機能させる必要最低限度の義務。つまり、こちらの信用が不当に貶められるのであれば自力救済を図らねばなりません。信用がいかに大切かという事は、幾多もの先行研究が物語る通り。取引に際して、信用を担保するのが名誉でなく現実の権力乃至パワーであるというのならば実にシンプル。我々も、信用を得るための力を手にする必要があるのは自明でありましょう。申し遅れました。小官は、バルバロッサ作戦司令部直轄大隊指揮官、ターニャ・デグレチャフ魔導中佐であります。正式には、帝国軍ザラマンダー戦闘団前戦闘団長デグレチャフ准将(二階級特進済み)でもあります。軍籍抹消された人間なので基本的に正規の指揮系統からは束縛されない自由を満喫しているところでもあります。ああ、自由!束縛なき、自由!何と素晴らしいことか。これで、仕事が無ければ完璧ではありますがままならないのが人の世の常。ええ、私とてある程度人生の経験上、希望的観測に基づく未来願望などに依拠して行動するのはナンセンスだと理解出来ますとも。そんな私の仕事は、ちょっとした信用の回復。要するに、自分達にお仕事ができるという事と取引相手としての信頼性を回復するための簡単なミッションです。バルバロッサ作戦の実働部隊として、我々は独自の報復行動を実行するべく策動を開始いたしました。すでにオレンジと太陽に別れを告げ、峻厳な山岳地帯を越えて本国の司令部と連絡を回復しております。といっても、普通に帝国・共和国・イルドアの中間に位置する誓約同盟領内で駐在武官と接触しただけですが。魔導師らしく、全力飛行で近くまで飛んでいくだけの簡単なお仕事。後は、正規の手続きで発行されていない以外、全て本物と同じ外交旅券で入国。かくしてターニャとその一派は連絡要員の武官らと作戦の実行に向けて備えていた。といっても、ターニャらの行動は情報が入ってくるまではさしてやることもない。魔導師らの仕事は、鉄槌でありどこに振り下ろされるかが決まるまでは、待つしかないのだ。故に、出歩くわけにもいかずやることも乏しい部隊は食事程度しか楽しみがなくなってしまう。ここまで生き残ってきた古参らである。緊張やら、待機のストレスで食えないという脆弱な胃の持ち主はヴァルハラだ。食べられるときに食べ、寝られる時に寝る。それが、良い兵士の条件なのだ。ある意味で、引きこもっていることも考えれば彼らは規則正しいニート生活を満喫していたとも言える。そして、滞在三日目にして、チーズ・フォンデュへ飽きつつあった彼らはメニューに多様性を求めて止まない。その日の夕食は、帝国風のジャガイモ料理ことレシュティを初めにメインはフォンデュ・ブルギニョン。チーズではなく、薄い肉という点とソースの旨みは大歓迎されてやまないものだ。そして、一部にとってはもっと大切なワインも素晴らしかった。なにしろ、全方向を交戦国に囲まれた中立国である。輸出できないために値崩れした安価で良質な輸出用ワインの値段は、大変お買い得である。故に、ターニャとしても誓約同盟のある意味良いところ取りの料理に舌鼓を鳴らすゆっくりとした夕食を考えていた。だが、ようやく食事にありつこうかという時に限って待ち望んでいた情報が飛び込んでくるものだ。飛び込んできた連絡武官にひっ立てられ、渋々席を立った士官連中。あまりモノは、しっかりと下士官らに美味しく頂かれることになる。「インディーナポリスを確認。間違いありません。」「…やはり、物は第八空軍にあるか。面倒だな。」回収対象は、ちょっとした工業製品。イエローケーキ関連で知り人ぞ知る専門の逸品。ええ、世界中の破綻国家が欲しがるそれ。崩壊しつつある帝国が欲して、なんら疑念なきソレ。ターニャにしてみれば、自明の理。ただ、その事実が自分は破綻国家に属しているのだという事を否応なく知らしめることが酷く不快だった。まあ、その不機嫌さに空腹感と食いそびれた食事の影響が無いとも言えないが。舌打ちしつつ、行動のために頭を切り替え最適解を模索。搬送した軍艦の寄港ルートから、ほぼ間違いなく物は合州国第八空軍が管理していると推定される。この状況下において、戦略爆撃部隊を有する同軍が保持していることには蓋然性があると言えた。だが、所在地が判明したとはいえ課題は山積してやまない。すでに、参謀将校らは地図を引き出し航法の見積もりにとりかかっていた。「内陸のバッキンカムシャーへ長躯を。」気の早い部下は、今にも飛びださんばかり。無論、航続距離という観点からみれば出撃圏内なのは間違いない。核が再度搬送されてしまう前に襲撃する必要性という事も理解できる話ではある。とはいえ臆病で無くとも、山積している課題は否応なく理解出来るに違いない。なにしろ、連合王国本土に、来援した合州国第八空軍の戦闘部隊まで展開しているのだ。部下から手渡される敵防衛部隊の配置予想図を地図と対比すれば、結局提案に対して首を横に振らざるを得ない。「論外だ。それでは、防空網にインターセプトされるのが目に見えている。」迂闊に突撃したところで、せいぜい暴れ回った挙句に落とされるのが目に見えている。それでは、無駄な犠牲も良いところであると言わざるを得ない。なにより平和主義者であり、命を大事にしたいターニャにしてみれば命をチップにする気は皆無だ。防空高射砲陣地以外にも、警戒線が複数存在していると想定されている状況下。なにより、多数の魔導部隊がスクランブル態勢にあるらしい。ごくまれに本国の偵察部隊が湾口部の強行偵察を試みているが、成功の事例は乏しいのだ。「低空侵入では?」「不確実性が高すぎる。やるならば、夜間に限るだろう。…統制が乱れかねん。」多少現実的な教科書的作戦ならば、なるほど夜間の低空侵入で警戒線を突破することも不可能ではない。だが、地形追随飛行は技術としては不完全も良いところ。実際に偵察に成功している部隊がいるといえども、簡単に模倣できることでもない。そもそも、魔導師による飛行隊列は低空飛行故に感知されにくいといえども限度がある。航空機と同列に低空飛行の威力を期待するのは危険すぎた。加えて、偵察機と戦闘編成の大隊では根本的に違う難題として指揮統制の問題もある。出来たとしても、部隊の指揮統制が維持できるとは到底想定し得なかった。そうなれば、各個撃破されるのは明白すぎる。不愉快な事実だが、それが現実だ。「ライン戦線の再現はいかがですか?また、強行突破を。」「成功の公算が乏しい。」過去の手法に拘泥するやり方では、部分的な成功しか収められないのだ。かつてのライン戦線を勘案すれば、VOBは一つの選択肢だろう。だが、アレは有名な浸透手段となりすぎた。溜息を冷めた珈琲で飲み干し、ターニャは地図から答えを求めるべくひたすら睨み続ける。敵の反応速度を上回る速度で浸透、突破。それによる敵後方の錯乱という作戦ドクトリンの有効性は未だに健在だとしよう。冷めていようと、珈琲が珈琲であるように本質は変わらないのだ。だとしても、敵本土という条件はインターセプト側の即応性が顕著であると想定せざるを得ない。さりとて、敵の処理能力を越える範疇で飽和攻撃を敢行するだけの規模は無し。ターニャとしては、数的飽和以外の方策を模索し、実現しなければ攻勢は成し遂げ得ないと理解している。本来、自分の仕事は発揮するのではなく、できる人間を採用することだった。しかしながら、今こそ自力で創造性を発揮しなければならぬ時期である。それだけに、ターニャとしてはアプローチを創造的に切り替えねばならないことを痛感して止まない。命題は、基地襲撃とニューク関連物資奪取。襲撃すべきバッキンカムシャーは、連合王国本土の内陸部。つまり、長距離侵攻は不可避のそれとなる。では、如何に長距離侵攻すべきか。「参ったな。現実的に考えれば、考えるほど袋小路か。」考え始めたターニャだが、すぐに忌々しげな表情で吐き捨てざるをえなくなる。眉間にしわを寄せ、悩んだところで問題は解決するものでも無し。「煮詰まっているな。時間も時間だ、気分を変えよう。」故に、ターニャは軽いブレイクを取るように参謀将校らへ促す。追い詰められた頭脳では、創造的な仕事が期待できないと思えばだ。だが、如何せん創造性というよりはブレイク・スルーが求められる事態である。肩をすくめ、従兵に軽食を用意させつまみながらターニャは頭脳を最大限回転させつづける。マネジメントの一環で場の雰囲気に留意したが、これでは一時的な時間稼ぎにすぎないと理解している。…いっそ、95式に頭脳をずぶずぶにされることを覚悟で全力起動してみるか?主を讃え、讃美歌を歌いながら、核へ突撃。想像するだにおぞましいソレだが、少なくとも一定程度の成算はある。まあ、一定程度であるし何より思想良心の自由が侵されるのは耐えがたい苦痛だ。他の代替策が望まれる。一番、堅実なのは潜水艦による揚陸と、その後の徒歩による浸透襲撃。だが時間がかかりすぎる上に、そもそも検問や警戒線を勘案すると現実的とは言い難い。本作戦は、時間的制約の中で疑似MAD理論を確立させねばならないのだ。速度が全てを決する。逆のアプローチは無いのか。速度戦で、問題を一刀両断に解決できるものは。この際、アイディアが頭に降ってくるならばデウス・エクス・マキナでも構わない。いや、おおよそアノ此方の認識できない上から見下すのが好きそうな存在Xの輩どもに期待しかけている自分では思いつきそうにないだろう。高みとやらから、まったく、叩き落としてやりたいところだ。…うん?高み、そう、高みだ。認識できない程の高み。高高度、叩き落とす・・・それだ、そう。たしか、そういった降下戦術があった。あれは視界外高度からダイブ、その後直前に開傘して降下だ。魔導師反応は、垂れ流す心配が皆無。「…ああ、アレならば、行けるか?」確か、宣伝省がばら撒いていたビラに報復兵器とやらがあった。アレは、本質的にはV○Bと同じ代物。というよりも、弾頭を搭載して嫌がらせ攻撃能力を高めたソレだ。弾頭の代わりに魔導師を搭載して、途中で切り離せば十分。「中佐殿?」「ヘイローでも、やってみる他になし、か。」「はっ?」そして。ターニャと彼らは、空にあった。高度32808まともな迎撃戦闘機・魔導師ではおおよそ到達し得ない高度において帝国軍の誇るV○Bはなお正常に動作。精密加工技術の粋が活用それた其れは、紛れもなき人類の英知の結晶だ。ただ、開発者らが願った月へではなく、本来の用途からは間違った惑星へ間違った用途で其れらは飛翔を続ける。作戦は、単純極まりない狂気の塊。帝都発、連合王国パーミガム行き定期報復弾道航路。その途上において、高度32808より非魔導依存静粛降下。高度、950より非魔導依存傘により減速、降着し目標拠点を襲撃。目標物資奪取成功後、速やかに全速で離脱。その後、潜水艦にて『合州国方面』へ移動するという単純な計画である。航空医学の専門家が耳にすれば、愕然とするだろう。なにしろ、人は高度30000クラスにおいて、活動できるようには出来ていない。空挺部隊の兵士が耳にすれば、耳を疑うだろう。技術的困難さ以上に、その発想は彼らにとって現実味が乏しい。だが、戦略家が最後の方策を耳にすれば顔をしかめて吐き捨てるに違いない。刺し違えるつもりか、と。それは技術的制約への驚愕ではなく、意図を理解しての言葉。そして、降着する彼らにしてみれば実に簡単な仕事だった。笑いながら降着する様など、さながらスカイダイビングを楽しみ、ハイキングに赴くかの如きあり様。ラインで塹壕の汚泥を啜り、シャベルで殺し合いの洗礼を浴びた兵士たち。全身で闘争を潜り抜けてきた、恐るべきデグレチャフの魔導師たち。地獄の劫火で錬成された彼らに対し、後方の警備要員は哀れな子羊も同然。明々と炎で照らされる空軍基地で、物言わぬ骸とかした衛兵らが死屍累々と積み上げられてゆく。そして、侵入者らの目標を理解した基地司令は絶句した。『本国』から、『搬入』された『新型の高性能500ポンド爆弾』と『カプセル』が保管されているエリアへの突撃。司令部要員の大半ですら、詳細は知らされていない区画に保管されているものの価値。それの真の意味を知っている数少ない将校らも、一瞬にして事態を理解すると同時に凍りつく。ほとんど、其れは戦慄に等しかった。そして次の瞬間、感知された魔導師反応に彼らは絶句し、その後叫んでいた。何故、此処まで侵入を許したのか、と。だが、彼らの懸命の防戦指揮と叱咤激励にもかかわらず加速度的に事態は悪化の一途をたどる。デグレチャフの魔導師にとって、障害は皆無に等しかった。そして、遂に警備にあたっていた憲兵が蹂躙され、『物』がセットで奪取されたという最悪の報告が飛び込んでくる。『馬鹿な、あの重量だぞ!魔導師程度に、搬送できる質量ではない!』認めがたい。そんな表情で報告を受けた司令官。だが、次の瞬間には全防衛部隊に対し司令部が追撃を発令。しかしながら。懸命の捜索にもかかわらず、『基地襲撃部隊』の捕捉に追撃部隊は失敗。第八空軍司令部が血相を変えて大騒動に突入する中、ターニャは悠々と潜水艦と会合。「お待ちしておりました、准将閣下。御成功、おめでとうございます。」「御苦労、艦長。だが、これでも中佐だ。生きている以上、特進は無しだからな。」笑いながら、大尉艦長と握手を交わしターニャは肩をすくめて見せる。そして、にこやかと形容するには少々以上に物騒な微笑みを浮かべて笑う。「それにまだ計画を完遂した訳でもない。封鎖線、突破を期待させてもらおう。」「お任せを。21型計画艦の静粛性にご期待ください。」だが、大尉艦長とて心得たものだった。なにより、彼は新型の21型について誰よりも知悉し確信していた。間抜けどもが、本艦を捕捉し得ることはありえない、と。あとがきorz時間が、時間が足りないorzぎぶみー、タイム。もうちょいで、お終いなのです。頑張りまする。+ZAPしました。誤字修正とも。