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No.24770の一覧
[0] 【短編集】【一発ネタシリーズ】輝きを求めて(Dies irae×ジョジョ第2部)[c.m.](2013/01/18 10:47)
[1] 【短編】【一発ネタ】死と薔薇の夜(Dies irae×HELLSING)[c.m.](2010/12/11 02:45)
[2] 【短編】【一発ネタ】英国の守護神(HELLSING)[c.m.](2010/12/11 03:33)
[3] 【短編】【一発ネタ】悲劇を越える為に(とある魔術の禁書目録×魔法少女まどか☆マギカ)[c.m.](2011/08/25 00:08)
[4] 【短編】【一発ネタ】彼がその拳を得た理由(とある魔術の禁書目録×ベン・トー)[c.m.](2012/09/10 19:44)
[6] 【短編】【一発ネタ】輝きを求めて(Dies irae×ジョジョ第2部)[c.m.](2013/01/18 23:07)
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[24770] 【短編】【一発ネタ】輝きを求めて(Dies irae×ジョジョ第2部)
Name: c.m.◆71846620 ID:b6ef5ae8 前を表示する
Date: 2013/01/18 23:07
前書きと注意事項

 ※前回うpしたものの修正版となりますが、主役は獣殿ではなくルサルカになります。
  すみません、獣殿はチートすぎたので、思い切って主役を交代しました。

本作品はDies iraeとジョジョの奇妙な冒険第2部のクロスオーバーとなります。
 本編に入る前に、皆様にこの場を借りて矛盾点の説明をさせて頂こうと思います。

 Dies本編において黒円卓初期団員が集ったのは1939年12月25日であり、ジョジョ第2部は1938年からのスタートとなる訳ですが、両作品の擦り合わせを行う為、第2部の事件を1939年12月25日以降という形にしています。

 クロスオーバーを嫌う方。上記の矛盾点を許容出来ない方には、本作品を読む事をお勧めできません。
 それでも構わないという心の広い方は、本編をお楽しみ下さい。


     ×××


 第一次世界大戦の敗北により、貧困と絶望に喘いだドイツ帝国は一人の指導者によって不死鳥の如き復活を遂げ、数年足らずで世界覇を唱えんと大帝国へ躍進した。
 ドイツ第三帝国……今や欧州はおろか、世界全土においてその国家を脆弱と軽んずる国は存在せず、畏怖と驚異の対象として見られる欧州を包む炎。
 科学のみならず、魔術、超能力といった分野にさえ手を伸ばし禁忌にさえ触れることを厭わぬ国家。
 その国家において、ある機関に所属する女性がここメキシコ秘密基地を訪れていた。

「ふーん。確かに異常よね。柱に人が埋まってるなんて、巷で流行ってる伝奇小説にもないネタだもの」

 厚さ五十センチにもなる鋼鉄版のシェルターに隔たれた向こう側へ、まるでショウウィンドウに飾られたドレスを見つめるかのように、女性は興味深げに眺めている。
 とはいえ、そんな女性を見つめる周囲の視線は奇異か、或いは落胆を含んだ物だったが。

「おい、話が違うぞ」
「私に振るな……」

 ぼそぼそと科学者や控えの兵たちが囁くのを、女性は当然聞き取ってはいたが無視する。
 というより、そんな周囲の声よりも目の前の存在の方がはるかに重要なのだ。
 とはいえ周囲……男達の落胆は致し方ないとも言える。
 ドイツ古代遺産継承局……通称、アーネンエルベ機関よりこの柱に埋まった奇怪な存在の調査の為に派遣されたという女性は、送られてきた資料とはあまりにもかけ離れていた。
 端的に言って、年齢が違う。経歴や身分証明として同封された写真と、今の彼女とではあまりにも齢が離れている。
 モノクロ写真に写る女性は、妖艶にして蠱惑。特殊な性癖でも持たぬ限り、世の九割近い男性が振り返るであろう絶世の美貌とプロポーションを持つ存在が、何を間違ったのか二次性徴さえ終えていない少女としてやってきたのだ。
 当然、将校に宛がわれた侍従以外の女性を目にする機会のない男達の落胆は凄まじく、一部に至っては目に見えて肩を落とすものまでいる始末だ。

「大体、何故あんな子供が?」
「写真は顔立ちが似ているところから言って、親か姉だろう……まあ、アーネンエルベは物好きな蒐集家の集まりのようなものだ。
 上層部が気に入って取り立てたか、貴族位出身の子が箔を付けたいがために遣したのか、いずれにせよ我々には、」
「関係ない。そうだ、関係ないとも。諸君らには諸君らの仕事と持ち場がある筈だが?」
「シュ、シュトロハイム少佐!?」

 瞬間、背筋に氷柱を突っ込まれたかのように兵たちが背筋を伸ばす。

「持ち場へ戻れ!」

 その一喝に兵がそそくさとその場を後にすると、シュトロハイムは制帽を正しつつ女性……否、少女と呼ぶにふさわしい相手へと向き直る。

「部下の非礼は詫びさせて頂く。どうか気を悪くしないで貰いたいが」
「え? ああ、気にしなくていいわよ。あいつらの落胆は、まあ狙ってたっていうのも半分あるしね」
「……ワザと写真を差し替えたとあっては問題だが、今のは聞かなかったことにしておこう。よくぞメキシコ秘密基地へ。フロイライン」
「……そう畏まられると何か調子狂っちゃうんだけど。
 まあ、悪い気はしないわ。ルサルカとでもマレウスとでも呼んで頂戴」
「歌劇か……君ほどの年であれば、ああいったものはさぞ美しく映るのだろうな」

 男子が英雄譚を好むように、と付け加えたのを聞いて無邪気な笑みを作る。
 そんな年に見えるかしら? と微かに含みを持たせて。

「ていうか、こんな場所に子供が来ることに違和感とかないの?」
「ユーゲントは何歳から入れるかね? 何よりわたしは優秀なものには敬意を表する。
 たとえ人種が違っていたとしてもだ」

 優生学を基礎とした理念だが、それはこの男の根幹たる思想でもあるのだろう。
 ある意味、最もこの時代、この国家に則した人間という意味において彼ほど優れた人間はいないのかもしれない。

「それでルサルカ嬢。君はこの男をどう見る? やはりオカルトか何かの類かね?」

 そんな少佐の発言に、内心ルサルカはため息を零す。確かに今は魔と科学の混迷期とも言えるし、国を挙げてこういったものを調べている以上、そちらの方向に持って行きたいのは分かるが。

「まさか。こいつらわね、私たちの言う魔術やオカルトなんかとはまた違ってる。言うなれば、人とはまったく違う種ね」

 新種の生物が、たまたま人としての姿を進化の過程で得ているだけ。彼らは人間とは別の存在であり、故に自分たちに当て嵌める事こそが馬鹿馬鹿しい。

「石仮面だっけ? 連中の傍から発見された人間を吸血鬼にするっていうの。あれ、明らかに実験用の物よ」

 たまたま人としての姿を進化の過程として得た……それは連中がこちらを見たときにも言えることで、だからこそ彼らにとってこちらは格好の実験対象だったのではないだろうか?

「ならばその先がある……面白い! その技術を我々が駆使すれば、」
「軍事転用? 貴方達って、ほんとに考えることが一緒なのね」

 尤も、最初から自分はその為に派遣されただけにあまり言えた立場ではないが。

「……それだけなら単純だったが、そういう訳でもない。既にこの『柱の男』のみならず他所でも三名ばかり発見されている。野放しにするには危険すぎる以上、こいつらの調査は必要不可欠なのだ。
 さて、すぐにあの『柱の男』に捕虜の生き血を吸わせろ!」

 ため息交じりに頭を振ると共に、部下へ命を下す。
 彼らは知らない。この後に起こる出来事を。柱の男などとは別の、もう一つの存在を。


     ◇


「柱に吸い取られている血液量は五人分! 『柱の男』の能力は未知数であるため、あまりエネルギーを与えるのは危険と推測されるためです!」

 部下からの報告に満足げな笑みを見せつつも、対照的にルサルカの表情は徐々に好奇から遠ざかっていく。
 この柱の男の傍にあった石仮面を身に着けた者が吸血鬼として変貌した際のデータは、跳躍力が五~八メートル。
 膂力は最大で厚さ四センチの鋼鉄版を破壊できるかといったところだが、彼女の興味はそこではない。
 吸血鬼……夜に無敵となる魔人は当然ながら多くの伝承にあるように不死性を持つ。
 彼らは本当に弱点さえ除けば朽ちないのか? 魂は壊れないのかという疑問がルサルカの中に沸いている。
 ともすれば、この『柱の男』も『永遠』なのだろうか……。

「しょ、少佐!?」

 一定以上の血液を吸収すると共に、柱の各所より血液が吹き出し、一人の男が姿を現す。
 柱と同化していた際の石のような肌は光沢と血色がつき、瑞々しい肢体を曝け出していた。
 美丈夫……と言えば確かにそうなのだろう。腰まで届くのではないかという長髪と堀の深い顔立ちは、確かにそういった種類に当てはまる。

「名前が欲しいな、『柱の男』では呼びにくい……そうだな、『メキシコに吹く熱風!』という意味の」
「『サンタナ』ね……貴方も随分と詩人なのね、シュトロハイム少佐」

 こうして軽口を叩いている間でさえ、ルサルカは対象から目を離さない。
 そんな彼女を横目に、少女は紛れもない学者なのだとシュトロハイムと呼ばれた少佐は感嘆の息を零した。
 そう。今まさにサンタナが石仮面を被り、吸血鬼と化した老人を一体化して取り込み、喰らったという事態にさえ脅えの色を見せずにいるところからして、彼女が如何に研究職の鏡であるかを伺わせる。

「しゅ、シュトロハイム」
「へぇ……この密室からでも聞こえるんだ」

 まさに怪物……人語を理解しているのか、それとも鸚鵡返しなのかは定かではないが、間違いなくこちらを認識している。
 だが、そんな存在が忽然と姿を消した……無論、シュトロハイムも部下も目など離してはいない。

「な!? おい、記録フィルムを現像しろ! 急げ!」
「どうやら……空気供給管に潜り込んだようね」

 蛸みたい、と。おどけてはいるが、シュトロハイムはふと疑念を抱く自分たちでさえとらえられなかった存在を、どうしてこの少女が捉え切れたのだろう、と。
しかし、それ以上にシュトロハイムは軍人として、指揮官として優秀だったのだろう。この非常時にあって、即座に各員に供給管内に離れるよう告げる。
 だが。

「ちい────────!?」

 あろうことか、供給管のすぐ脇に立っていたルサルカめがけ、サンタナは飛び出すと同時に体に取り込もうとし、

「え、ちょ」

 浮遊感がルサルカを襲う。自らが担がれていると知ったのは遅れてからだった。

「貴様カ……眠リカラ妨ゲタノハ」

 人語を解したこと。高い知性を持つことはこの場において重要ではない。
 ただ本能が理解した。この相手はあまりにも危険すぎる。吸血鬼を取り込んだことも然り、あのシェルターから抜け出し、ここまで辿り着いたこと然り。
 放ってはおけない。この存在を、怪物を逃がせば間違いなく祖国に、ばかりかこの腕に抱えた年端もいかぬ少女さえ危うい。
 己は祖国と身命を共にする覚悟はある。だが、彼女にそんな愛国心を求める訳には行く筈もない。

「構わんッ! 射殺を許可する! 後退しつつ撃ち続けろ!!」

 マズルフラッシュと共に絶え間なく銃声が響き続ける。足場を薬莢が埋め尽くし、各員の弾倉が空になったところで、ようやく発砲音が止まる。
 だが、効果は見られない。サンタナはその場へと立ちつくし、ゆっくりと人差し指を向ける。

「駄目ッ! 逃げなさい!」

 この状況下、部下たちが凍りついたように立ち尽くす中で腕の中の少女の叫びにいち早く対応できたのは彼の軍人としての経験則ゆえだろう。
 対応できなかった部下たちは指から飛び出した弾丸に総身を貫かれ、冷たい骸となって床へと投げ出される。

「おのれぃ……!! よくも部下を!!」
「感傷に浸ったり怒ったりなんてできないわよ! こいつの埋まってた場所の壁画を見たでしょ! こいつらが苦手なのは太陽よ!」

 ちぃ、という舌打ちと共にシュトロハイムは階段を駆け上がる。ここは地下二十メートル。石仮面を被った吸血鬼の能力を鑑みれば脱出できる可能性は低いが、この少女だけでも!

「無理ね……このままじゃ追いつかれる」
「ならば、君だけでも!」
「違うわ。わたしを置いて行きなさい」

 呟いた言葉は、ひどく真摯なものだったが故にシュトロハイムは打ちのめされる。

「このシュトロハイムに、置いて逃げろというのか!?」
「構わないわ……わたしは派遣されたばかりで基地の自爆装置なんて判らない。
 けど、貴方はこの男たちの調査の指揮権を持ってるでしょう?」

 だからおいて行けと。一人助かるか誰も助からないか。それを考えれば取るべき選択は分かるだろうと。

「わたしだって、自分の国が酷い目に遭ってほしくないの……だから」
「だまれぃぃぃッ! 部下のみならず女子供も救えずして、何がドイツ軍人かあ!」

 冷汗をかき、すぐ後ろに迫るサンタナに恐怖を抱きがらもシュトロハイムは疾走を止めない。

「太陽の光が弱点と判っていれば造作もないぃぃぃ! 奴に日光浴をさせてくれるわァ!」
「だからそれじゃあ……!」
「ああ、ならばこうするまでよ! 女性の扱いとしては落第点だがな!」

 投げた! あろうことか、小柄な少女とはいえ、まるで野球でもするかのように!

「さっさと扉を開けて出て行くがいい! そして何処へなりとも消えてしまえ!」
「貴方……」
「さっさと行かんかぁッ! お前のような小便くさい小娘の顔など見たくもないわ! 貴様如きに心配されるほど、このシュトロハイムは落ちぶれておらんのだ!」

 無論強がりだ。でなくばここまでルサルカを担いで逃げたりはしない。だが、これでルサルカは間に合う。日の光が降り注ぐこの時刻、このメキシコではサンタナは追ってこれまい。

「逃がさん……!」

 しかし、サンタナは追いついた。少女が扉を開けるより早く、シュトロハイムの足を掴み、ばかりかアメーバの如く分離した肉片がルサルカを襲いかかり、

「ぬッ!?」

 じゅぶじゅぶと、肉片が音を立てて萎んで行く。

「な!? 溶けている! あのサンタナの身体が、まるで毒か何かを浴びたように!?」

 足を掴まれ、階段に叩き付けられたシュトロハイムの顔が驚愕に歪む。
 だが、それは重要ではない。つい先ほどまで腕の中で怯えを見せていた少女、その少女が今や一切の『脅え』を見せず、ばかりかある種の『覚悟』を持って立っている。

「まったく……全滅した後でじっくり調べるつもりだったのに。当てが外れちゃったじゃない」

 赤毛を揺らし、ため息と共にサンタナを見つめる少女……いや、

「ルサルカ嬢……君は少女なのか? その仕草、その視線! まるで君はあの写真の!」
「本当はばらすつもりなんてなかったけど、貴方があんまりにも頑張っちゃったしね」

 やはりだ。この少女は何かを秘めていた。総統からでなく、ラインハルト・ハイドリヒ中将から書状を送られてきた時より只者ではないだろうと感じていたが。

「まったく、魔道っていうのは隠秘学……隠れ秘めて学ぶのが正しい在り方なのに」

 自ら正体を晒し、畏怖を集めている。これが三流でなくてなんだ? なぜ自分はこんなことをしている?
 ……まったく判らない。判らないからこそ苛立つのだ。こんな何処にでもいる一将校風情に、何の間違いで正体を晒してしまうのか。

「こうなった以上、仕方ないけどね。来なさい、サンタナ。忌々しいけど、あの詐欺師から貰った技の実験にさせてもらうわ」
「愚かな。小娘、貴様のそれを蛮勇というのだ!」

 サンタナが迫る。シュトロハイムを階下へと投げ落とし、女王の如く見下ろすルサルカの元へ。

「させると思う?」

 視線が貫く。ルサルカがサンタナに目を向ける。ただそれだけの行為でサンタナの身体が溶けて行った。

「ぬっ」

 視線から外れるようにサンタナが飛びのき、天井へと張り付くと注意深くルサルカを見据えた。

「なんだ……その力」
「へぇ……人間ならすぐ溶けて終わりなんだけど、凄い再生能力ね」
「なんだと聞いているのだ!? 小娘! 貴様のそれは『波紋』か!?」
「? ああ、太陽のエネルギーを使うっていう技術ね。東洋の気功と似たような……はっずれー。わたしのはそんな面白おかしい力じゃないわ」

 とはいえ、わたしもこの力を持て余してるんだけど、とルサルカは内心呟く。
 カール・クラフト。あの忌々しい詐欺師が与えた力は本物だ。
 エイヴィヒカイト。聖遺物と呼ばれる品と魂を同化し、殺人を重ね魂を喰らうごとに力を増す外法の業。
 それを扱う者は、力を増すごとに『活動』『形成』『創造』『流出』へと位階を上げる。
 今の彼女が用いたのは『活動』位階。威力は低いものの不可視の業として使用する、いわば初心者用のものだ。
 何より、彼女の聖遺物はその特性上、活動位階では一撃で倒すことは難しい。

「引け、ルサルカ嬢! 確かに通常の人間であれば『酸』で融かすことは可能! しかしサンタナが相手では融かすより再生の方が上!
 その男を溶かしつくすには今の業以上の火力は必須なのだ! 火炎放射器では遺体が残ってしまうように、その男を消滅させきれない!!」
「解説どーも」

 意外と余裕あるわね、とルサルカは思いつつも思案する。確かにこの相手に拷問用の『酸』では有効打を与えられるとは言い難い。
 ならば。

「────形成イェツラー

 楽しげに、まるで歌声でも響かせるような軽い声が閉塞感に満ちた階段に響き渡る。
 同時、無数の鎖がサンタナを縛り、階下へと叩き付けた。

「むぐッ!?」
「……吸収されるかどうかは賭けだったけど、その様子じゃ、無理みたいね」

 聖遺物を形成する第二の位階。雑魚を殺すならば活動の方が有効だが、この相手には通用しないと判っている以上、現状扱える最高の位階が必要となる。
 だが、この相手が実験を行った際のように、自らの身体に飲み込んだ相手を吸収するといった行為が聖遺物には出来ないということが判ったのは大きい。
 この相手は霊的な存在に対して有効打を与えられない……いや、なまじ肉体が凄まじいだけにそういったことに目を向ける必要がなかったのかもしれない。
 生まれながらに『永遠』を手にしていた、彼らには……。

「ほんと、貴方達を見ていると苛立つわ……」

 縛鎖が強まる。万力めいた力がサンタナを圧迫し、そのまま強引に体が引き千切られる。
 いや、本当にこれは引き千切られたのか?

「違う! 奴は自ら肉体のパーツを分離させたのだ!」

 シュトロハイムの叫びが響く。
 だが、その声に反応するより早く、飛び散った肉片が酸に焼かれて蒸発する。
 形成と活動の両用。出来ないなどとは一言も言っていない。

「分離なんてしない方がいいわよ。細切れなら溶かしつくせちゃうんだから」
「ならば、自ら取り込んでくれるまでよ!!」

 流石に二度までは同じ失敗は出来ないと踏んだのだろう。
 四足獣めいた跳躍で飛びかかった瞬間、ルサルカの口元が弧を描く。

「いらっしゃい、ケダモノさん。ここが檻よ」

 眼前へと出現する鉄の処女。観音開きとなったその内側は、無数の棘がずらりと並ぶ。

「GYAHHHHH──────────────────────────────!!?」

 絶叫を上げるサンタナを、蠱惑的な瞳が捉えた。嗜虐を楽しみ、耳を弄すような絶叫さえ、ルサルカは恍惚に頬を赤らめる。
 いくら肉片を分けようと、如何な再生能力を持とうとも、この檻からは逃れられない。無数の棘は身を貫き、食虫植物のように全てを飲み込み喰らうのだ。
 だが、蓋の閉まるその刹那、サンタナの指がルサルカを指し、彼女と同じように口元が弧を描く。

「取ったぞ……るさ、ルカ」
「はっ!?」

 迂闊! いつから肉片を全て戻したと錯覚していた? 既にサンタナの一部はルサルカの背後へと迫っている!

「させるかぁぁぁぁッ!」

 シュトロハイムが両者の間に割って入る。
 そればかりか、自らサンタナに吸収されようとしていた。当然ながら、彼はただの人間だ。殴られれば倒れ、撃たれれば死ぬ存在でしかない。

「ぬおおっ!? こやつ、おれの身体にぃぃぃ!?」
「馬鹿! 早く外に出なさい! 日の光を浴びるのよ!」

 分厚い鉄の扉を片手で抉じ開け、シュトロハイムに日差しを浴びさせる。
 だが……。

「体内に……入られた。こいつはまだ生きてる! 取り込まれたおれだから判る! 首から上の組織を死ぬ間際に移したんだ! 鉄の処女に取り込まれた方は録音されたフィルムに過ぎない!」

 苦しげに息を吐きながら、ずるずると外へと出る。

「何を、する気なの……?」

 言わずとも判っているはずだ。だというのに問わずにはいられない。彼の手に持つ、手榴弾を見てさえ。

「こうなった以上、助からん……だがルサルカ、おれは後悔などせん!」
「ふざけないでッ! 誰が助けなんて頼んだのよ! 誰があんたなんかに!」
「……そうだな。全てはこの身勝手な男のしたことよ。だが、おれにも意地はある!
 日の光を拝ませてやるぞ、サンタナ!
 そして知るが良い、人間の偉大さは恐怖に耐える誇り高き姿にあるということを!!」

 ジークハイル! という叫びと共に、シュトロハイムは爆発した。
 無論、サンタナが助かる筈もない。元より僅かな肉片でしかなかったのだ。日の光を浴びた今、砕け風化していくより他にない。

「だから……何だって男ってそうなのよ」

 最後まで人の話なんて聞きやしない。しかもそれがかっこいいとばかり思って、つまらない意地を張るのだ。
 そう、自分の前から消えた『彼』のように…………。

「良いわよ、なら、私も勝手にさせて貰うわ」

 全てが終わった場で、ルサルカは静かにため息を零すのだった。


     ◇


 サンタナの一件から数週間が過ぎ、メキシコから遠く離れたここヴェネツィアにてルサルカはこの一件に関わってから都合何度目になるかは判らないため息を零す。サンタナこそ排除を終えたものの、欧州各地で発見された柱の男の調査はまだ終えてはいない。
 とはいえ、奴らを研究して力を得ようという目論見は既にない。
 おそらく、彼らの魂は不滅ではない。サンタナが絶対的窮地にも拘らず、生存より闘争を優先したこと……おそらく、彼らにも自壊衝動はあるのだ。
 人の魂は永遠ではない……百年も経てば、自然と死にたがってしまう。魔術で深淵を覗いたルサルカと言えども、精々二、三百年が限度だろう。
 彼らにもそれがある以上、寿命を延ばすことが出来るという程度だ。
 当然ながら、自分は吸血鬼などと言う存在に憧れはしない。本能に負けるなど愚の骨頂だ。そういった飢えた獣は、黒円卓に居る二人だけで十分過ぎる。
 何より、彼らが人間とは異なる生物であると判った時点で、そんな発想は消えていた。
 詰まる所、時間の無駄だ。確かに連中の魂はそれ一つで数千の人間に匹敵することが取り込んだ時点で分かっているが、だとしてもリスクはある。
 それならばそこいらの戦場に出向いた方が遥かに安上がりだ。
 黒円卓の首領……ラインハルト・ハイドリヒからの委任状さえなければ手を引いていたものを。

「けどま……せいぜい今の立場を有効に使わせて貰うとしましょう」

 人を動かすということは自分の生涯であまりない。権力に興味などなかったということもあるが、これはこれで一興というものだ。
 しかし、部下からの報告を耳にするにつれ、その顔色は徐々に不機嫌なものとなる。
 柱の男達、計三名が監視に当たっていたチームを全滅させたこと。辛うじて息のある者によれば『エイジャの赤石』というものを探っているということだが……

「詰まる所、その赤石は『波紋』っていう能力の使い手である女が所持してるってこと?」
「はッ! しかし女は我々との協力に否定的であり、単身ここヴェネツィアに留まると」
「意固地な女ね……ま、ここに留まってくれるって言うならありがたいけど。それでその女は?」

 言い澱む部下に内心落胆を覚える。おそらくは撒かれたといったところだろう。
 問題は、女の最後の動向を告げずにいるという一点だ。留まっている場がヴェネツィアと判っていようと広い。部下を走らせれば多少の情報は拾えるだろうが、せめて最後に姿を見せた場所ぐらいは告げて欲しいものだ。

「そ、それが……今、准尉の」
「? ……成程ね」

 背後より放たれた貫手を躱しつつ、相手を見据える。
 黒の長髪と睫の整った顔立ち。モデルか何かのような長い手足と相まって女性の美しさをこれ以上なく引き出しているものの、鷹のような視線はまるで養豚場の豚を見るように冷ややかなものだった。

「先の者らとは違うようですね。これならば犬死はしなさそうです」
「やーねー。ヴェネツィアの女って皆出会いがしらに暴力を振るうの?
 あ、そーれーとーもー? わたしが若いから嫉妬してるとか?」
「……………………」

 僅かに顔を顰めるも、この少女がお飾りではないと判ったのだろう。少なくとも、先の行動はそこまで手加減してはいない。

「なーにー? 今度はだんまり? 協力したいから近付いたんでしょう? あんまり睨んでると小皺が増えちゃうわよ」
「………………判りました……精々足を引かぬよう、准尉殿」


     ◇


 女の話を纏めるならば、悠久の時を生きる柱の男たちは自らの弱点である日の光を克服するため石仮面を作り出し、人体実験を繰り返すことで、いつの日か自分たちがその仮面を被り、完全な生物として君臨することを望んでいる。
 そのために必要とされるのが女の持つ赤石であり、これを用いることでようやく男たちは完全な石仮面を被ることが出来る。

「なら壊せばいいじゃない……っていうのは浅はかだったかしら?」

 それが出来るならばとうの昔にやっているだろう。女は頷いた。

「……言い伝えでは、これを破壊すれば尚柱の男たちを倒せなくなると」
「それは貴方達の常識で、ということじゃないの?
 まあ、そんなに大事なら持っておきなさいな。要はそれがあれば、向こうから来てくれるんだしね」


     ◇


 観光地で知られるヴェネツィアのホテルにて、ルサルカは革張りのソファに腰かけつつ思案する。部下から訊いた話では新たに派遣された将校は一名。直属の部下が五名だという。
 彼らには女の監視を任せているが、役に立たぬのは判っている。
 力づくで宝石を奪うことも考えたが、あの女も馬鹿ではない。柱の男達を始末するのに協力を求めた以上、逃げ出すような愚行は避ける筈だ。

「しっかし、よく効く鼻ねー」

 階下より響く銃声。おそらくは部下が交戦しているということか。

「音は……二人か」

 面倒ね、と……まるで押し付けられた雑務を今すぐ片付けようとする社員か何かのように、ルサルカは重い腰を上げた。


     ◇


 既に瓦礫と化した階下。舞い踊るは部族めいた一人の男と、辛くも致命傷を受けていない、しかし満身創痍と呼ぶに相応しい軍服の男。
 その趨勢、彼我の実力は決定的でありながら、軍服の男は手を緩めない。
 進ませぬ、越えさせぬ。両者の実力差を埋めるのはその病的なまでの信念であり決意。
 その背後に……腕を組んだまま壁に背を預ける男がいた。
 猛々しい肉体を晒し、鼻輪を付けた男はこの戦いを静かに見据える……いや、既に男の中でもこの戦いの決着は見えており、であるがゆえに静観しているのだろう。
 尤も、たとえ両者の差がそのまま逆転していたとしても、男は手を出すことはしなかったろう。
 なぜなら彼らは戦士。無粋な横槍は彼らの美意識を穢すものであり、闘争にこそ誇りを求める精神に一対多数というものは相手からのものでしかないという価値観があるのだろう。
 少なくとも……いま戦っている者にとっては。

「やだやだ。暑苦しいったらないわね」

 かつん、と。軍靴の鉄鋲が軽やかな音を響かせる。
 あまりにも場違いな声音。年端の行かぬその声に、この場にいた者は例外なく眉を顰めた。

「まったく。折角救援が来るまで癒してあげたっていうのに、貴方まだこの一件に絡んでたの?」
「ルサルカ……何故」
 
 何故……ああ、何故だろう。こいつらの目的は赤石で、ならば下になど来ず一足先に逃がしたリサリサとかいう女と共に待ち伏せればそれで済むはずなのに。

「別に……ただの気まぐれよ。それより、そっちのは戦わない訳?」

 壁に寄り掛かった巨躯の男。明らかに人間と呼ぶには悍ましい存在感を迸らせる相手は、ルサルカを一瞥すると鼻白む。

「女子供……だが、おれはワムウとは違う。戦士でなかろうと、いざ戦いとなれば容赦はせんぞ」
「そ。見る目ないわね」

 虚空より鎖が伸びる。幾重もの縛鎖は男を捕え、まるで釣り師の如く男を放り、天井へと叩き付けた。

「貴様……何者」
「勝利の女神様」

 なんてね、と悪戯気に微笑んでルサルカは手招く。

「それで、前言は撤回してくれるのかしら?」

 面倒なだけの筈だ。強敵と相見える舞台を楽しむような気性ではないし、そんなことが好きなのは男の特権だと判っているのに。

「面白い……! このエシディシ、貴様の持つ未知の技法を賛美し、敬意を表して殺してやろう!」

 何故かしら……こうして笑みを作る間でさえ、どこかでこの状況を楽しんでいる。

「気を付けろ! 奴らはサンタナとは違う!」
「ええ。でしょうね」

 傷付き、満身創痍となったシュトロハイムの横へと並び、ルサルカは眼前に迫る二名を見る。
 確かに奴らは違う。その存在感も含めて、彼らが人ならぬ存在であり、サンタナを超える戦士であることも疑いようはない。
 けれど、彼らは違うと感じたのだ。それがどう違うのかを、言い表すことはできない。
 だけど、確かにそう感じるものがあったから。

「こんな美少女をエスコートする殿方は幸せ者よね」

 立ちなさいな、とルサルカは笑みを崩さず、見下ろす事もないまま片膝をつくシュトロハイムに告げた。
 ふらついた足で立ち上がる、図体だけは一端な軍人へと半身で背中を合わせながら。

「二対二。文句ないわね?」
「……良いのか。おれなどが、お前と戦っても」

 だって、そうしたい気分なんだもの。

「リードしてよねー。殿方なんでしょ?」
「く、くくく……いいだろう! 死ぬまで踊り続けてくれるわ! ルサルカ、精々その名に恥じぬ歌劇を見せてもらおうか!」

 たっく、あんたって奴はほんとに乗りやすいのね。

「なら、相手にも踊って貰わないとねっ、と!」

 先程同様、鎖で相手を拘束する。今度は全く遊びはない。
 四肢を束縛するにとどまらず、五体をそのまま引き千切る。鎖にかけられた力はトン単位であり、聖遺物によってつけられた傷は実質再生不可能である。

「ヌウウ……! 小癪なぁぁぁ……!!」

 しかしエシディシは耐える。全身から血管を浮かび上がらせ、あと一歩というところで縛鎖の重圧を凌いでいた。ばかりか。

「このエシディシをなぁめぇるぅなぁぁぁ………………………………………………!!」

 引き千切られ、霧消する縛鎖。同時、ルサルカの腕から血が飛沫く。

「ぐぅ…………!!」

 歯を喰いしばりつつ、冷汗が背筋を伝うのを感じ取る。聖遺物は術者の魂と同化する。すなわち、聖遺物の破壊はイコールで術者の死を意味するのだ。
 ルサルカは聖遺物の特性上、一つ二つ破壊されたところで直接死ぬほどではないにせよ、ダメージばかりは避けられない。
 或いは現在の位階を越え、その先へ至ることが出来れば変わるだろうが、現状『形成』位階である以上はこの弱点を受け入れるしかない。

「ルサルカ!?」
「エシディシ様をあそこまで追い込むとはな……見事だルサルカ」

 初めて傷らしい傷を受けた少女に対して動揺するシュトロハイムに、ワムウと呼ばれた男は視線さえ合わせず拳を振るう。

「ぐ、づぁ…………ッ」

 致命傷にならなかったのはすんでのところで回避が間に合ったためだろう。
 尤も、直接触れたわけではなく、拳圧で吹き飛ばされている手前、良かったとは言い難いが。

「あー、もう! カッコつけた手前、ちゃんと勝ちなさいよ!?」
「貴様は自分の心配をしたらどうだ?」
「うげ、気持悪!? なにそれ、触手!?」

 こんな状況下にあって、自らの肉体を傷つけられた怒りより、ルサルカは目の前の相手の異様さにこそ目が行った。

「うねっている! 全身の皮膚を突き破り、血管がイソギンチャクか何かのように!?
 離れろ、ルサルカ! それに触れるんじゃあない!!」

 言われずもがな、ルサルカはその場から飛び退く。エシディシの放った貫手、その爪の先から突き出た血管が、確かな高熱を以て床を溶かす。

「紹介を済ませてはいなかったな。おれは『炎』のエシディシ! 熱を操る流法モード! そしてワムウは『風』を操る流法モードを持つ!!
 ルサルカとやら、どうやら貴様は未知の術理を持つようだが、我らをどう迎え撃つ!?」

 成程、確かに厄介だ。奴らの能力が常軌を逸している以上、たとえ空爆にも耐えるこの身と言えど、無事で済む保証はどこにもない。
 自分も含め、この世には未知の法則が溢れているのだから。

「けどさぁ。さっきから気になってたんだけど、あんた達わたしだけに話してない?」

 それが、とにかく癪に障るとばかりにルサルカは眉を顰めるものの、それを当然だろうとばかりにエシディシは口元を弧に歪めた。

「そこの男は所詮雛鳥。巣立ちさえ迎えず、毛も生え変わらぬ者を歯牙にかけようなどと思うものか。挑まれれば受けはする。だが、戦士と認めるか否かは別のことよ」

 確かにそうだろう。両者の差に絶対の開きがあり、苦戦を強いられている以上否定はできない。
 それが、どうしてか無性に苛立つ。何より……。

「ねえ、なんだってあんた、ここまで虚仮にされて黙ってんのよ」
「………………すまん。ルサ、」
「言いたいことはそれ? わたしに謝って女みたいにめそめそして死ぬのが好みな訳?」

 違うはずだ。人として生き、軍人としての努めを全うし、死の恐怖にさえ打ち勝った貴方が。

「それは……」
「見せてよ。歌劇の英雄みたいに、舞台に立って踊りなさいよ」

 言葉には魔力があった。それは魔女としての呪文ではなく、英雄への道を示す祝詞のように。

「聞かせて。貴方にとって名誉って何?」

 その問い、ただ僅かな言葉を以て、ルドル・フォン・シュトロハイムは敗者の姿から息を吹き返す。
 その言葉こそ、彼にとっての魔法だったから。

「我が名誉は────」

 圧倒的な差。人知を超えた存在。だからなんだ? 相手がただ強いというだけで、それだけの事で膝を折って俯くのか?

「我が名誉は、忠誠なりィィィィィィッ……………………………………………………!!」

「貴方の望みは?」
「勝利のみィィィィィィッ……………………………………………………………………!!」

 その声は高らかと。その顔は傲岸に。されどそれがこのシュトロハイム! それが世界の敵たらんとする、ドイツ軍人にこそ相応しいのだ!!

「世話が焼けるんだから。ねえ、今でも目の前の相手が怖い?」
「否、否、否ぁぁぁぁぁ…………!!!!
 我が肉体はァァァァァァァァァ────ッ! 我らがゲルマン民族の最高知能の結晶であり! 誇りであるぅぅぅ………………!!
 つまりはルサルカ! 我が肉体は、お前という存在を除く全ての人間を越えたのだァァァァァッ……………………!!」
「………………ッ、いかんワムウ! 奴は先程までの奴ではない!
 毛さえ生え変わらぬ雛鳥が、巣立ちの時をこの瞬間に迎えようとしている!?
 ヒヨコが突如鷹として現れたのだ! このエシディシをして危険だと本能が叫ぶほどに!!」
「それでこそ……それでこそ戦士として戦う価値があるというものです、エシディシ様!!」

 ワムウの巨腕が唸る。単純な腕力でさえ脊柱を木端と砕く豪腕が、今まさに台風の如き爆発を見せようとしていた!

「秘技、『神砂あら、」
「どこ見てるの?」

 暴威として振るわれる筈だったワムウの秘技。しかしそれを横から轟音と共に遮った。
 車輪……直径五メートルにも達し、禍々しいスパイクで大理石製の床を砕いているという荒唐無稽さを度外視すれば、それは車輪という他ない。
 しかし、問題は質量ではなく速度。あらゆるものを轢き潰し、轍に変える車輪は、四足獣はおろか軍用車さえ圧倒的な差でもって置き去りにするだろう。

「SYYYAAAHHH……………………………………!」

 絶叫と共に車輪を止める。突然の方向転換に加え、眼前の存在を食い止めんとしたために必殺となる筈の秘技が僅かに威力を落としたが、それに頓着している暇はない。
 回転は、受け止めている間さえ止まっていない・・・・・・・。これはそれ自体が動力を持ち、動き続ける刑具なのだ。
 不完全な秘技では食い止めるのが限度。時間をかければ壊すことも可能だろうが、二対二という現状、この硬直は致命的なものとなる。

「おのれぇぇぇ!! ルサルカぁぁぁぁぁ!!」
「美少女を前に目を血走らせるのは分かるけど、」
「たわけめぇぇぇぇぇぇっ! おれの存在を忘れたのが運の尽きよ!
 エシディシ! 仲間の窮地に駆け付けたその気概! 称賛しよう! その力! 尊敬しよう! 故に、この幕の敵として倒れるがいい! このおれの巣立ちを見届けてなぁ!!」

 弾帯が掴まれる。ナチスドイツによる最先端の科学によって全身を機械化し、武装することで復活したシュトロハイムの腹部に備えられた重機関砲が火を噴き、エシディシの脳を的確に削り取る。

「だが、射程圏外まで逃れれば良いだけのことッ! 貴様ら如きに、」
「遅いわァァァァァァァ…………………………!!
 貴様ら古代人の知恵などッ……最先端を突き進むナチスの科学の前には亀より遅いのだァァァァァァァァァ─────!!」

 ルサルカを食い止めんがために突撃したことが仇になった。この弾雨から逃れるには、死角に回り込むか、そもそもシュトロハイムにさえ目を向けていればよかった。
 砲弾の如く、ロケットさながらに手首から外れた両拳が飛び、エシディシの足を掴む。
 
「貴様が逃げに走ろうとォッ! この手からは逃れられんッ!!
 その鳥にも劣るチンケな脳味噌! 擂り身にしてくれるわッ!」
「この、このエシディシが! 人間如きにぃぃぃぃぃっ!!」
「だから負けるのよ。人間の成長を見ておきながら、人間を軽んじ続けるから」

 憫笑を吐息に混ぜ込んで、ルサルカは言葉を紡ぐ。それこそが、違うと感じた理由。
 もし彼が真に輝ける星ならば、そんな考えを最後まで持つことなく、敬意を以て戦ったはずだから。

 銃火の轟音に断末魔をかき消されながら、エシディシは散って行った。

「どうする!? 残りは貴様だけになったなぁ!!」
「馬鹿ね。よく見なさい……ここから先、貴方の手に負える相手じゃなくなるわ」

 足止めとして出した車輪は……既にない。血が滴り筋繊維の覗く両足、ワムウの秘技を封じた代償に、彼女は二つ目の武器と両足を犠牲にした。

「エシディシ様を……成程。人間の成長、確かに侮った! しかしここで易々と勝利をくれてやるワムウではない!!」

 ワムウの全身より亀裂が走り、血飛沫を上げると共にシュトロハイムとルサルカの皮膚が切り裂かれた。
 蝋燭は最後の灯において最大級の光を見せる! 今ワムウは、己が生命を燃やして風を操っていた!

「ワムウ!! その決意、その覚悟をシュトロハイムは尊敬する! そして、」
「ちょ、まちなさい! シュトロハイム!!?」

 駆け出している。突き進んでいる。手を伸ばそうにも傷付いた自分の足ではあまりに遅くて、反面彼はどこまでも先に進んでいる。
 後ろなんて見やしない。満身創痍になりながら、それでも笑って進むのだ。
 勝利を確実なものにするために。
 死ぬかもしれないとか、負けるかもとか、そんなことも考えず。
 前へ前へ、先へ先へ。

 ああ……なんて憎らしい。

 そう諭したのは他でもない自分なのに。どうしてかそれを恨めしく感じてしまう。
 英雄を焦がれながら、英雄を止めたいと願うこの感情。この矛盾は一体何なのだろう?
 
「勝利を望むこと! そこに同意しよう! しかし負けられぬ! 自称勝利の女神とやらが見ているのでなぁ!
 紫外線照射装置作動……………………………………………………………………!!!!」

 既に腕は千切れかけ、足すらぎちぎちと金属が悲鳴を上げる。それでも、それでも進む。
 その手が届くところまで。一矢報いれるところまで。

「SYYYAAAHHH……………………………………!?」

「ナチスの科学力はァァァァ世界一ィィィィィィィィ──────────────!!
 手も足も出ずとも目はまだ出せる! 太陽の光、すなわち紫外線こそ弱点ということなど、サンタナを捕えた時点で露呈済みよ!」


     ◇


 端末魔と共に脳を焼かれ、倒れ伏すワムウ。だが、その勝利に高揚感があったかと言えば否だ。
 終わってしまえば、あまりにあっけない。大声で凱歌を歌うことも、高圧的な言葉をかける気も起きなかった。

「穏やかなものだな。敗北だぞ? あのエシディシのように叫ばんのか?」
「……貴様らを認め、戦った。エシディシ様はどうか知らんが、おれにとって貴様らとの戦いは決闘であったのだ」

 だから恨み言など残さない。彼もまた英雄なのだろう。死すべき時、己を倒す相手に看取られていくことに悔いなどないとばかりに、静かな笑みを浮かべている。

「さらばだ……お前の口から、名を訊かせてくれ」
「ルドル・フォン・シュトロハイム」

 それ以上の言葉を、シュトロハイムは漏らさない。ただ塵となって消えていく敵に、静かに右手を伸ばす。
 彼もまた英雄、そして勇気ある者こそを称賛する男だったから。

「貴様ら如きに……エシディシばかりかワムウまで……」

 しかし、勝利の余韻に浸るまでもなく、闖入者が現れる。
 傍らには倒れる女性。崩れ、崩壊した天井より睥睨する頭巾の男は、赤石の嵌め込まれた仮面越しに殺意の視線をシュトロハイムへと向けていた。

「貴様、赤石を!」

 左手に鈍く輝く宝石。リサリサの返り血を浴びてなお、その輝きは曇っていない。

「このまま目的を達成することは容易いが……貴様を捨て置いたまま、究極の生物など名乗れぬ! 今! この場にて葬ってくれるわ!!」

 男の腕より突き出した刃が、異様な光を放ちながら迫りくる。
 だが、それを遅いとばかりに、シュトロハイムは紫外線照射装置を作動させた。

「フフ……フフフフ、フハハハハハハハ………………………………………………!!」

 かかったな、と。それこそが真の目的だったということを証明するように、赤石へ紫外線は命中し石仮面は男の脳を刺激する。
 木霊する哄笑。裡より迸る力に対する歓喜。男の両腕が鷹の如き翼へと変成し、天井を突き破って日の光を総身に浴びる。絶対の宿敵さえ克服したという充実感。
 今まさにあらゆるものを超越したのだという歓喜が男を満たす。

「だが足りぬ……このカーズの敵は、真の宿敵はあの美しい光ではない!!」

 獰猛な瞳が、シュトロハイムを射抜く。
 貴様だ。貴様こそ宿敵たる光、その内なる英雄の輝きこそがこのカーズが打倒すべき光!

「ワムウ達を葬った貴様の存在を消さずして、このカーズは覇者たれんのだ!!」

 既にこの身は究極の物。あらゆる生物の能力を備え、全ての生命を兼ねるモノ。
 故に、

「この身が新生した祝福として、貴様の命を散らせぃ!!」
「舐めるな古代人がぁ!! このシュトロハイムが、ドイツ軍人たるおれが祖国の敵である貴様を逃すと思うかぁ!!」

 翼より伸びる鉤爪。この世のいかなる生物よりも速く、そして獰猛に迫りくるカーズと、それを物怖じすることもなく迎え撃たんとするシュトロハイム。
 両雄の対決に、しかし取り残された少女はきつく奥歯を噛み締めた。

「なによ……どいつもこいつも」

 いつもいつも、わたしの事なんて置き去りにして…………。

「貴方達は、良いでしょうよ!!」

 誰よりも高く飛べるから。翼を生まれながらに持っているから。
 だからそうやって駆け上がれる。このヴェネツィアで、倒壊した舞台で、神話か何かのように己こそ世界の中心だと信じて疑わない。
 死地への恐懼など、墜落への焦燥など欠片もなく、ただただ上を向いている。

「だけど、何でよ……なんであんたまで、そんなに足が速いのよ」

 いいや、けれどそれは判っていたのだ。ルドル・フォン・シュトロハイム……彼が英雄としての輝きを秘めていることぐらい。
 だから助けた。他に見られるようなありきたりな存在でも、そこから先を見せたなら…………

「馬鹿みたい……そんな筈、ないのに」

 自分もまた、連れて行ってくれるのではないかと。高みへと導いてくれるのではないかと思いを抱いて。

「だって、わたしは────」

 声には出さない。けれどその真実は理解している。だから。

「飛ばせない……先へなんて、高みへなんて! 行かせない!!」

 自分の中にある渇望ねがい────確かな祈りを自覚したとき、自然と祝詞を紡いでいた。

「In der Nacht, wo alles schläft
(ものみな眠るさ夜中に)」

 意識は深く、まるで昏き水底へ沈むように。

「Wie schön, den Meeresboden zu verlassen.
(水底を離るることぞうれしけれ)」

 けれど心は世界の外へ。この覇道を以て、全てを犯せと希う。

「Ich hebe den Kopf über das Wasser,
(水のおもてを頭もて、)
Welch Freude, das Spiel der Wasserwellen
(波立て遊ぶぞたのしけれ)」

 ルサルカ……ああ、思えばなんて似合いの銘。
 わたしはこういうものなのだと、それは知っていたけれど。自覚すればするほどに、輝く世界が疎ましい。

「Durch die nun zerbrochene Stille, Rufen wir unsere Namen
(澄める大気をふるわせて、互に高く呼びかわし)」

 だからこの渇望ねがいで満たすのだ。
 翼を広げ、自分という存在を覆い隠す黄金の神鳥グリンカムビを、この深海へと誘うため。

「Pechschwarzes Haar wirbelt im Wind
(緑なす濡れ髪うちふるい)
 Welch Freude, sie trocknen zu sehen.
(乾かし遊ぶぞたのしけれ!)」

 この身は地星――――空へと輝けぬ存在なれば。

「Briah────
(創造)」

 翼持つ者たちよ! 全てを引き摺り、飲み込もう!!

「Csejte Ungarn Nachatzehrer
(拷問城の食人影)」

 言葉は紡がれ、世界が犯されると同時、両雄は完全に動きを止めた。
 何が起こった? 何をされた!? 突如現れた陰に触れたその瞬間に、彼らは指一つ動かせずにいた。
 そこまでの事態に陥って、ようやく彼らは事態の原因を、この問題の根源を知った。

「NUAHHHHHH……………………!! き、貴様ァァァァァ!!
 この俺を……究極の生命体たるこのカーズに何をッ!?」

 完全な静止。あらゆるものを止める未知の縛鎖に、カーズは階下より影を伸ばす少女に叫ぶ。
 そこに居たのは俯く少女……赤毛の髪を震わせて、地に目を向けたまま彼女は叫ぶ。

「皆、皆止まってしまえばいい!」

 いつの日か、自分が追いつけるように。手を伸ばせば、届くように。

「そう思って、だから足を引くのよ!!」

 その叫び、その渇望を耳にし、瞠目したのはカーズではなく。

「ル、サルカ……」 

 シュトロハイムこそ、信じられないというように下へと目を向けた。
 声をだし、疑問を口にする猶予などない。あのカーズでさえ容易に喋ることは出来たのだ。
 むしろ、この縛鎖は敵であるカーズではなくシュトロハイムこそを…………。

「怖かったのよ! 置いていかれるのが! 嫌なのよ! 抜かされるのが!」

 誰もかれも、自分を置き去る。振り向くことも止まることもなく、刹那の閃光として駆けていく。

「判ってるわよ、時間が違うっていう事ぐらい……!」

 生きる時間が違うから……どこまで歩んでも、駆けていく彼らには敵わない。
 短い時間を、刹那を燃やして生きる存在に、ただただ歩むだけの自分では。

 ────かつて去って行った、彼がそうであったように。

「お、れは……」

 縛鎖が強まる。高みへ昇る者を引き摺り下ろすことが本領なればこそ、巣立つ若鳥を捕まえようとするのは当然の帰結。だが、

「……感謝、している……お前に」

 微かに紡がれた言葉に、ルサルカは顔を上げた。
 暗い水底から、遥か高みを見上げるように。天に輝く星の光に微かな期待を抱いて。

「お前が居なければ……おれは死していただろう……巣立ちを迎えることも、高みへ挑むこともなく」

 彼女こそ自分を飛び立たせた。たとえそれが断崖からの飛翔であっても、自分はこうして迷いなく飛び立つことが出来たから。

「この翼は借り物よ……イカロスのように、蝋でできた偽りの物。
 だから、手を借りねば飛び立てなかった」

 言葉は、徐々に流暢なものへとなっていた。地へ縛る影の呪いが、飛び立つことへの願いに流されていく。

「今でこそ、自らの羽のようになっているがな……だからこそ」

 ここへ来い、とシュトロハイムは動けぬ筈の中で手を伸ばす。

「勝利の女神なのだろう……ルサルカ・シュヴェーゲリン!」

 言葉と共に、影は消えた。渇望は信仰こそが要となる。新たな位階に入ったばかりということもあるが、その信仰が揺らいだが故の世界の霧消だった。

「貴方は英雄よ……イカロスなんかじゃない」

 戦場に輝く星……紛れもない歌劇の主演。
 ああ、だからこそ。

「観客を待たせてないで、先に進みなさいよ。見てなさい、すぐに追いつくんだから」

 わたしは勝利の女神だから。いつか追い越して導くのだとここに誓う。

「きさまらぁぁぁぁぁ!! よくも、よくもこの俺を地に縛ってくれたなァァァァァァァァァァァァァァァァァ…………………………………!!!!」

 縛鎖より抜けたのはシュトロハイムだけではない。あの渇望は英雄を縛ろうとするものであり、輝く者を止めたいという願い。
 ならばこそ、シュトロハイムよりさきにカーズが解き放たれるのは当然だ。

「吠えるなよカーズゥゥゥゥゥゥゥ!! 女神さえおらぬ貴様に、この舞台の主役が張れるかぁぁァァァァァァァァァ……………………!!!!!」

 銃弾がカーズを捕える。しかし、それに飽いては怯みもしない。それがどうしたと言わんばかりに、カーズはシュトロハイムの身を斬り裂かんと腕を奔らせ、

「女神の加護はここにあり! ジィィクハイル・ヴィクトォォォリアァァァ…………!!」

 奔らせた貫手が、肘より先が消失する。シュトロハイムの中心。機械と化した彼の裡は空洞であり、その外周には無数の棘が顎の如く生えていた。
 鉄の処女……かつてサンタナを破った決定打となった物が、いまシュトロハイムの裡にある。

「BAAHHHOHHHHHHHHHHHHHHHH─────────────────!!?」

 片腕が食い千切られたことによる絶叫。再生することも可能だが、時間がかかる。
 究極の生物となった。あらゆるものを越えたと確信した! だというのに、

「この身が、このカーズが! 機械と小娘如きにぃぃぃっ!!」
「油断大敵ってね」
「ああ……加えて!」

 じゃらり、と宙に舞う鎖を引っ張り上げる。階下に居る少女、勝利の女神を自称した彼女を導くため────

「ナイス! 少佐!」

 ────そして、更なる高みへ立たせるために。
 誰しもが翼を持っているのだと信じさせるために、シュトロハイムは自分より先、遥か高みへ少女を放る。

「全て陰で覆ってしまえ! ルサルカ、お前こそが黄金の神鳥グリンカムビだ!!」

 日の光を背にする形。見下ろす先は遥か下。この位置こそ最良、ルサルカの持つ創造を最大限の速度で発揮する!!

「Csejte Ungarn Nachatzehrer!
(拷問城の食人影!)」

 位置の関係もあっただろう。日の位置と高低差、影の伸びる配置を考えれば、頭上を抑えるのは当然だ。
 だがそれ以上に、彼女は昂っていた。ほんの一瞬。けれど確実に、自分は今確かに高みへ立っている。
 この舞台の主演として。自分の力ではなく、他社を借りたものであったとしても確かにこの場所へ立てたから。
 だから、散るべき敵には退場願おう。
 自分はルサルカ・シュヴェーゲリン。空へと飛びかう者を落とす、水底の魔性。捕えるだけでは済まさない。
 影より響くのは……血の凍るほどの呻き声。黒円卓の法理より外れた魔女としての業。

「おのれ……おのれおのれおのれおのれおのれぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 影に飲まれる。食人影ナハツェーラ の銘に相応しく、影の海へとカーズは溺れ沈んでいく。

「Gute nacht(おやすみなさい)」

「RRRRRRRRYYYEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE……………………………!!!!」

 あまりにも優しく、故に恐ろしい響きを持った離別の言葉を最後に、カーズは魂さえ泥の中へと取り込まれた。
 呼吸さえ許さず、ただ深く、深く、果てのない深海へと手を伸ばしながらもそこは決して見えはしない。
 この汚泥に底などないと知ったとき……カーズは身を任せ、考えることを止めた。


     ◆


 そうして、わたしと少佐との奇妙な冒険は幕を閉じる。
 あれから、わたしと彼は二度と出会うことはなかった。
 あの少佐は、生き永らえたいがために機械となったのではない。
 祖国のために戦い、祖国の為に眠る事こそが目的であり、望みであった。
 そんなことは分かっていた……けれど、それを認めたくなんかなくて。
 もう一度、あの一瞬だけでなく、ちゃんと追いつきたいと手を伸ばしたくて。

 けど……わたしはそれをしなかった。

 彼は閃光だ。何処まで行っても、永遠には決してなれない。
 機械になっても、きっと、わたしと同じ存在になっても彼は彼としての在り方を変えないし、変えてはくれない。
 だから、静かに見送った……肩書だけでしかなかったけど、静かに右手を掲げて、ちょっとでも軍人らしく見えるように。
 笑顔になっていたかは、怪しいけれど。それでも振り返ってくれた彼は傲慢ちきな顔じゃなく、晴れ晴れとした笑顔だったのは覚えている。

「ルドル・フォン・シュトロハイム……一九四三年、スターリングラード戦線にて戦死」

 呟いたのは彼の死を認める為か、それともただ悼んでの物かは判らない。
 ただ、時々は思い返そう。自分の中で、確かな刹那としてあの軍人を残して行こう。
 いつの日かまた、彼のいる場所まで辿り着いたとき。自分の足で、越えたとき。
 胸を張って、自分は飛べたと笑えるように。












     ×××

あとがき

 お久しぶりです。修正にどれだけ時間をかけるのかという体たらくぶりですが……。
 色々と試してみましたが……やっぱり獣殿は無理でした。
 負ける姿……というか、苦戦する図がどうしても想像できなかったので、感想返信でも書いた、ルサルカを主役に、という形を取らせていただきました。
 次からはパワーバランスに気を付けます……今でも結構開いてますが。








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