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No.24886の一覧
[0] 「とある金髪と危険な仲間達」【とある魔術の禁書目録 TS 憑依?】[カニカマ](2012/01/31 15:53)
[1] 第零話「プロローグ」[カニカマ](2011/04/28 14:54)
[2] 第一話「私こと藤田 真はまだ元気です」[カニカマ](2011/04/28 14:56)
[3] 第二話「ファーストコンタクト」[カニカマ](2011/09/08 00:08)
[4] 幕間1「フレンダという名」[カニカマ](2011/09/08 00:09)
[5] 第三話「Nice Communication」[カニカマ](2010/12/12 07:46)
[6] 第四話「とある奴隷の日常生活」[カニカマ](2011/04/28 14:59)
[7] 第五話「今日も元気に奉仕日和」[カニカマ](2011/04/28 14:59)
[8] 第六話「ルート確定余裕でした」[カニカマ](2011/04/28 15:00)
[9] 第七話「  闇  」[カニカマ](2011/04/28 15:00)
[10] 幕間2「私の所有物」[カニカマ](2011/04/28 15:01)
[11] 幕間3「『道具(アイテム)』は闇へ……」[カニカマ](2011/04/28 15:01)
[12] 第八話「この台詞二回目ですね!」[カニカマ](2011/04/28 15:02)
[13] 第九話「暗部の常識? 知らぬぅ!」[カニカマ](2011/09/08 00:16)
[14] 第十話「『俺』の生き方は『私』が決める」[カニカマ](2011/09/08 00:18)
[15] 幕間4「知らぬ所で交錯するっていう話」[カニカマ](2011/04/28 15:04)
[16] 第十一話「原作キャラ可愛すぎです」[カニカマ](2011/04/28 15:05)
[17] 第十二話「友達が増えたよ!」[カニカマ](2011/04/28 15:06)
[18] 第十三話「来てしまった今日」[カニカマ](2011/04/28 15:07)
[19] 第十四話「とある金髪の戦闘行動(バトルアクション)」[カニカマ](2011/04/28 15:07)
[20] 第十五話「幻想御手と無能力者」[カニカマ](2011/04/28 15:08)
[21] 第十六話「話をしよう」[カニカマ](2011/04/28 15:08)
[22] 第十七話「電磁崩し」 幻想御手編 完結[カニカマ](2011/04/28 15:10)
[23] 予告編『絶対能力進化計画』[カニカマ](2011/02/10 17:36)
[24] 第十八話「とあるお国のお姫様」[カニカマ](2011/04/28 15:10)
[25] 第十九話「とあるお国のお友達」[カニカマ](2011/04/28 15:11)
[26] 第二十話「予想外」[カニカマ](2011/04/28 15:12)
[27] 第二十一話「やるしかない事」[カニカマ](2011/04/28 15:12)
[28] 幕間5「認めたくない過去、認められない未来」[カニカマ](2011/04/28 15:13)
[29] 第二十二話「フレンダですが、部屋内の空気が最悪です」[カニカマ](2011/04/28 15:14)
[30] 第二十三話「偽善」[カニカマ](2011/04/28 15:14)
[31] 第二十四話「覚悟完了」[カニカマ](2011/04/28 15:15)
[32] 第二十五話「最高の危機」[カニカマ](2011/04/28 15:15)
[33] 幕間6「それぞれの戦い・前篇」[カニカマ](2011/04/28 15:16)
[34] 幕間7「それぞれの戦い・後篇」[カニカマ](2011/04/28 15:25)
[35] 第二十六話「戦いの終わりに」『絶対能力進化計画』編 完結[カニカマ](2011/04/29 09:21)
[36] 第二十七話「お見舞い×お見舞い」[カニカマ](2011/05/23 01:07)
[37] 予告編『最終信号』編[カニカマ](2011/05/23 01:10)
[38] 第二十八話「復活ッッッ!」[カニカマ](2011/06/05 12:46)
[39] 第二十九話「俺、故郷に帰ったら結婚するんだ……」[カニカマ](2011/06/29 20:01)
[40] 第三十話「白と毛布とイレギュラー」[カニカマ](2011/07/16 15:41)
[41] 第三十一話「(話の)流れに身を任せ同化する」[カニカマ](2011/07/17 23:48)
[42] 第三十二話「朝一番」[カニカマ](2011/11/24 02:37)
[43] 第三十三話「ミサカネットワーク」[カニカマ](2012/01/31 15:49)
[44] 第三十四話「逃げたいけれど」[カニカマ](2012/01/31 15:52)
[45] *「簡単なキャラクター紹介」*キャラ追加&文追加[カニカマ](2011/11/24 02:37)
[46] 番外1「とある首輪と風紀委員」[カニカマ](2011/04/28 15:18)
[47] 番外2「転属願い届け出中」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[48] 番外3「二人のお馬鹿さんと一人の才女」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[49] 番外4「とある部隊の不幸体験」[カニカマ](2011/04/28 15:19)
[50] 番外5「宝物」[カニカマ](2011/04/28 15:20)
[51] 番外6「寝顔シリーズ」<『妹達』、佐天さん追加>[カニカマ](2011/06/25 16:11)
[52] 番外シリーズ1「『学園都市』の平和な一日・朝」[カニカマ](2011/04/28 15:21)
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[24886] 第六話「ルート確定余裕でした」
Name: カニカマ◆b465aa7c ID:500ae757 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/28 15:00
「ルート確定余裕でした」



「ゆ~きやこんこ、あられやこんこ、降っては降ってはズンズン積もるっ♪」
 口ずさみながら卵をかきまぜ、黄身と白身がいい具合に混ぜ合わさったら塩と砂糖で下味をつける。それを油のしいた卵焼き用フライパンに流し、弱火でじっくりと火を通して行く。くるくると回して丸め、その作業を何度か繰り返すと……

「卵焼きかんせーい。今日のお弁当はこんなモンかな?」

 シャケフレークをまぶしたおにぎり、卵焼きといつも通りのメニュー以外にハンバーグ(豆腐入り)、ポテトサラダにデザートはイチゴといった物。何度も思ってる事なんだけど、俺が作ったこんな弁当よりも、一回麦のんに見せてもらった研究所で支給される一折三千五百円の高級幕の内弁当の方が絶対美味しいと思うんだよね。中身も色々高級食材使ってたし、食べてみたかったわ。
 そう考えながら窓の方を見ると、外ではチラチラと白い物体が降っている。
 
 そう、学園都市はもう既に冬です。催眠術とか(ry

 麦のんに弁当作りを指示されてから、既に半年近く経ってます。俺としてはまだ大した時間が経ってない様に感じてたんだけど、思うほか料理とか雑用が楽しくて時間が過ぎるのが早く感じちゃったみたい。
 まぁ、楽しい理由としてはまだ他にもあるんだけど……っとと、来たな。

「フレンダおねえちゃーん」
「今日は何作ったの?」
「卵焼き、ハンバーグ、ポテトサラダにおにぎりですYO」
「「美味しそう!」」

 この子達は同じ施設にいる幼稚園児なんですけど、俺が料理を始めてしばらくしてからこの施設に入ってきた子達です。まぁ言うまでもなく『置き去り』で、来た当初は物凄いネガティブ状態になってた子達。まぁ普通に考えたら、親に捨てられて嬉しい子供なんていない訳だし当然ですが。
 まぁ、田辺さんがいつも見ている訳にはいかないし、食堂とかロビーの隅っこで俯いてる姿を見てたら飯作るときに何か嫌な感じになってしまうので、俺が面倒見る事が多くなっちゃったんですよね。というか、他の子供達は学校とか幼稚園行ってるから、必然的にいつも施設内にいて麦のんの為に働いている時以外暇な俺が相手してあげてただけなんです。そしたら懐かれちゃった☆

「ねぇ、フレンダおねえちゃん……」
「食べていい?」
「い~よ、そこに分けてある奴食べてねー」
「「うん!!」」

 嬉しそうに皿に分けてあるハンバーグとポテトサラダを食べる光景は、マジで微笑ましいわぁ。何かアレ、ホラ、雛に餌付けする親鳥の気分になってる。ていうか俺も小学生なんですけどね……
 あ、ちなみに俺の正確な年齢が判明しました。五、六歳とか好き勝手言ってたけど、スマン、ありゃあ嘘だ……正確にはあと少しで九歳。
 そう、今八歳なんですよね。見た目かなりロリだから、相当幼女と勘違いこいてた……ちなみに麦のんは俺の三つ上、つまり十一歳です。この歳なら我儘ボディなのも理解出来ますね。フレンダの歳から考えてたから八、九歳じゃないかなーと勘違いしてたわ。まぁ許してくれ麦のん、年上に見なかっただけでも良いよね。と、俺が一人問答してたらガチャリと開くドア。そこから現れたのは眠そうな顔をした我らが女帝、麦のんです。フラフラと幽鬼の様にいつもの席まで歩いていくと、ボーっとしたままそこに座った。

「レイちゃん、陸君がお弁当に手を出さない様にちょっとだけ見張ってて」
「はーい」
「おれはそんなことしないよ!?」

 レイちゃんが女の子の方、陸君がもう一人の男の子です。ていうかレイちゃん素で返すとかマジドS……まぁ、陸君前科あるから当然か。ハハッ、ワロス。
 まぁお弁当の安全はレイちゃんに任せるとして、俺はブラシを持って麦のんの元へ向かう。座ってる麦のんの後ろに立ち、その髪に手を伸ばす。

「麦野さーん? 髪とかすよー」
「……んぅー? やって」

 寝ぼけたまま麦のんがそう言ったので、お許しが出た俺は髪にブラシを通していく。
 これも増えた仕事の一つ。いつもギリギリにならないと布団から起きてこない低血圧全開の麦のんなんだけど、俺が弁当の為に早起きするようになってしばらくして、弁当を作り終える頃に起きてくるようになったんだよね。最初はただ偶然目を覚ましただけだと思ってたからスルーしてたんだけど、それが三日くらい続いたら頭叩かれました。理不尽です。
 それから俺の仕事にブラッシングという仕事が入った訳なのであります。というか仕事増えすぎなので、一日は結構忙しい。掃除しながらレイちゃんや陸君の相手をするのは大変じゃないの? っていう心配はしなくてもおk。何故なら最近になってレイちゃん陸君共に幼稚園に通い始めたからね。本当来た時と比べて別人のように明るくなってて個人的には嬉しいです。

「はい、終わりっ」
「御苦労様」

 そして髪をとかし終えるのと同時に、麦のんもしっかり目を覚ます。これもいつもの光景。

「麦野ねえちゃんおはよう!」
「おはよーおねえちゃん」
「ん、おはよ」

 レイちゃんと陸君にそう返し、麦のんはマイバッグから化粧品を取り出して身支度を始めた。この間に俺は麦のんの朝御飯を用意し、ついでにレイちゃん達の分も用意する。
 え? さっきレイちゃんと陸君食べてたじゃんって? 小さい子の食欲舐めたらイカンよ、アレはせいぜいつまみ食い程度にしかなってないので、ちゃんと施設が用意した朝御飯も食べてもらうのですよ。朝しっかり御飯食べないと体の目が覚めないとも言うしね。だから皆もきちんと御飯食べてね!
 棚から御飯出して、おかずをレンジに入れてスイッチオン。その間に「チーン」……くそっ、毎度思うがこのレンジ早すぎるだろ。その間に用意する手段が取れねぇ……こうして見てるとレンジが「どやっ?」、っと言っている気がして腹が立つので、とりあえず三人分御飯と味噌汁よそい、お盆に乗せてテーブルへと運ぶ。
 ちなみにその間、レイちゃんはテーブル拭き、陸君は箸やコップを出し、麦のんはお化粧してました。こ、この御方大物すぎる……いつものことでした。

「はい、じゃあ皆テーブルについてー」
「はーい」
「はい」
「ん」

 麦のんも化粧を終えたらしく、バッグに物しまって姿勢を正す。全員が座ったところを確認し、俺は両手を合わせた。それに合わせて他の三人もしっかり(約一名渋々)と両手を合わせる。

「「「「いただきます(……)!!!」」」」

 もう、麦のんは相変わらずノリが悪いわ。他の二人は元気よくやってるのに、麦のんはいつも通り仕方なくやってる感じだね。前に比べたらこれでもかなりマシになったんだけど、前は全くやってくれなかったし。

「野菜も残さずにね」
「はーい」
「う……はい」
「麦野さん、どさくさに紛れてピーマンよけないで下さいよ」
「やらないわよ!」
 
 いや、前科アリだから言ったんだけどね。ピーマン嫌いで涙目になる麦のん、超可愛かったです。脳内フォルダに保存してあります。
 まあ、俺の一日は大体こんな感じで始まります。そして麦のん出かけたら玄関まで見送り、レイちゃん達二人の用意を手伝い、迎えに来る幼稚園バスに乗せて終了する。後は帰ってくるまで掃除やら、麦のんの指示により晩御飯に私が作った物を何か一品用意しなきゃいけないので、それの用意。帰ってくるまでお風呂を準備しておくなど地味に忙しい。ていうかこれ主婦じゃね?
 まぁ、今日も一日頑張りましょうかねー。





 さーて、麦のんは研究所行ったし、レイちゃん陸君も幼稚園バスに乗せた。後は適当に休憩しつつ、自分の仕事もこなしていくだけなのですよ。さーてまずは……

「あ、いたいた。フレンダちゃん、ちょっといい?」

 おや、田辺さんが俺に用事があるようで、小走りで近寄ってきたでござる。

「何かあったんですか?」

 建前上聞くけど、田辺さんの表情が切羽詰まってない時はそんなに急ぐ用事でもないのは知ってるので、のんびりと尋ねる。ちなみに田辺さんが切羽詰まってた時は、レイちゃん陸君の様子を見てほしいと言った時かな。アレは本当に辛そうな顔してて、こっちが申し訳ない気分になっちゃったからね。
 そんな俺に、田辺さんはニコッと笑いながら口を開く。

「もうすぐクリスマスだから、フレンダちゃんにもパーティで何をやりたいのか聞こうと思ってね」
「……あ、そういえばそうですね」

 そう、もう十二月も半ばを超えてそろそろクリスマスの時期がやってきていました。東北生まれの俺としてはもっと雪が積もってないと十二月って感じがしないから、本気で気づいてなかったわ。
 というかパーティやるんだ。まぁ数少ない行事の一つだし、ケーキの一つでも買ってお祝いするんでしょう。ケーキ、ケーキねぇ……

「ん~、私は特にないので、参加して楽しめればそれでいいです」
「うん……もっと我儘言っても大丈夫なんだけど、本当に良いの?」
「のーぷろぶれむですよ」

 大人の俺が我儘とか言って田辺さん、他従業員の方々を困らせる訳にはいかんしね。あ、ちなみに他に働いてる人達との関係は良好ですよ。
 それにしてもクリスマスパーティかぁ。俺の家だとケン○ッキー買ってきたり、ピザ食ったりしてたけど、本来はキリスト教の祭日みたいなもんだったっけ? まぁ、こういう文化も柔軟に取り入れるのが日本の良いとこではあるんだけど。

「フレンダちゃん、麦野ちゃんにもこの事伝えておいてくれる?」
「おけおけ、任せておいて下さい~」

 そう言って田辺さんは仕事に戻って行った。さて、俺も自分の仕事やっておかないとな。





「無理」
「え、何で?」

 帰ってきた麦のんにいつも通り御飯の準備(俺の一品はきんぴらごぼうです)をし、それを食べている姿を見ながらクリスマスパーティの事を言ったら、麦のん無理とか言ってる。これはまさしくどういうことなの……?

「パーティは何時から?」
「ん、多分四時くらいかな? ……あ」
「気付いたみたいね。私が帰ってくる時間考えたら間に合わないでしょ」

 麦のんそういえば最近どんどん帰ってくる時間遅くなってるんだよね。前は六時くらいには帰ってきてたのに、今は八時過ぎるのが当たり前なくらいだ。どうやっても施設が行うパーティに間に合うとは思えない。まさか麦のんの為に時間遅らせて欲しいなんて言えないしなぁ。
 そして麦のん、飯食い始めた時は普通だったのに、どんどん不機嫌になっていっています。これは不味いね、久しぶりに見たよこんな麦のん。最近は安定してたのに、どうしたの~麦のん、落ち着いてくれい。

「落ち着いてるわ」

 ……やっぱり怒ってるな。んんー参加出来なくてイライラするなら分かるんだけど、何故怒るし? さっぱり分からん。

「あの、麦野さん……?」
「煩いわね、参加したければすればいいじゃないの」
「え?」
「いちいち私に許可取る必要はないわ。勝手に参加して楽しんでくればいいじゃない」

 うわあああ、怖いよおおお。不機嫌になるの久しぶりとか言いましたけど、これは今までで一番機嫌が悪いのかも知れない。え、何なの? そんなに参加出来ないのが嫌だったの? 麦のん見た目に合わず子供っぽい駄々をこねちゃあかんよ……

「でも、麦野さん……」
「しつこい!」

 うぉ!? 麦のんキレたか、やばい!

「あぁぁぁぁ、煩い! 勝手にしろって言ってんだろうが! しつけぇんだよ!」
「え、えっと……?」
「寝る! しばらく手前ェの顔見たくねぇ。部屋に入ってくるんじゃねぇぞ」
「お風呂は……?」
「しばらく顔も見たくないって言っただろうが……殺されたいの?」

 そう言い捨てて麦のんは食堂を出て行ってしまった。
 うひぃ、怖かったぁ……あんなにキレた麦のん見るの、初めて会った時くらいじゃないかなぁ。今にも『原子崩し』発射しそうな位の気迫だったし、何がそんなに気に入らなかったのかなぁ? アレか、自分が参加出来ないのに「奴隷」風情が参加して楽しむのが許せなかったんか。
 冷静に考えてみれば、麦のんもまだギリギリ小学生なんだよねぇ。それが自分が除けものにされるみたいに参加出来なかったら、それは不機嫌にもなるかなぁ。俺がもし小さい時に参加出来なくて、他の奴らだけ参加していたら……うわ、それは拗ねるわ。
 麦のんったら子供っぽいとこもあるのね。そしてこのまま麦のんとの関係が悪化していくのは避けたい。ここで縁切りしちゃえば『アイテム』に参加フラグは消えるかもしれんけど、後味が悪すぎるしね。
 では、ドッキリビックリさせる人日でもしようか。さぁ『原子崩し』、武器(?)の貯蔵は充分か? クリスマスまで残り五日間、麦のんを喜ばせてやるぜい。





 五日後――
 P:M 10:30

 既に施設内の電気は殆ど消えており、子供達は就寝しているこの時間。俺は電気の消えた食堂で息を潜めて待機しております。外はしんしんと降る雪のせいで結構積もってきていて、いい感じにホワイトクリスマスムード全開です。リア充爆発しろ。
 ていうか麦のん遅いなぁ。いつもなら流石に十時くらいまでには帰宅するのに、今日は特に忙しいんかな。ぶっちゃけお腹空いたので早く帰ってきてほしいです。
 ちなみにあの日以降、麦のんは飯の時は出てこないし、帰ってきても俺をお風呂に同伴させてすらくれてません。流石にちょっとした会話はするんだけど、気軽に話しかけてもいないので息が詰まります。あと部屋から追い出されているので、俺は職員さん達が使う仮眠室で寝泊まりしてました。職員の方々本当にすみませんでした、とここで詫びておこう。
 ……いや、本当に遅いわ。寒いし、お腹空いたしで俺の心はボロボロです。麦のん早く来てー。
 とか考えてたら、自動ドアが開く気配! 説明しよう、フレンダは奴隷生活が身に染みてしまているので、麦のんが近付いてくると本能的にそれを察知することが出来るのだ! 泣いてないですよ。
 ガチャリという音と共に、食堂のドアが開かれる。暗くて様子が見えないが、麦のんの足取り重ッ。疲れた上に寒くてだるいんだろうか? うむむ、こんなテンションだと喜んでもらえるか異様に不安だわ。
 ……えぇい、もうここまで来たら腹括るしかない。というか準備に結構かかったんだし、これ以上はダメだ! 俺は電気を点けるぞ。
 バチンッ、という音と共に蛍光灯の灯りが部屋を照らす。その瞬間、俺の手のクラッカーがパァンッ! と音を鳴らして色とりどりの紙が麦のんに放たれた。それを茫然とした様子で受ける麦のん。かわいいぜ……

「メリークリスマス、麦野さん!」
「え、あ……?」

 ふふふ、驚いてる驚いている。そのまま動かない麦のんの手をとっていつもの席に座らせ、俺は準備を始める。田辺さんに協力してもらい作った鳥のから揚げや、グラタン等を温めてテーブルの上に出していく。事情を話しただけで協力してくれた田辺さんは良い人すぎると思う。なんせ今日のパーティでも忙しそうだったからね。
 そして最後に、冷蔵庫からケーキを出してテーブルに置く。これにて今日のメニューは完成、「フレンダ・オブ・クリスマス」の完成です! ネーミングセンスないとか言うな。
 さて、ここまでやっても麦のんは無反応。何か不安になつてきたけど、ここまで来てやめる訳にはいかないでしょ。男は度胸、何でも試してみるものさ。すいません女です。

「あ、あのさ……」
「ん、はい?」

 麦のんが反応してくれたでござる。震えてるけど寒いんかな? よく見ると体に少し雪積もってるし。というか車から玄関までそんなに距離あったかなぁ?

「これは、何?」
「何って……クリスマスパーティですよ」
「いや、そうじゃなくて……」
「ん?」
「何でクリスマスパーティしてんの?」

 え、何を言ってるの麦のん。

「そりゃあ、麦野さんと一緒にやるためですけど?」
「な、何で?」

 何でって、何で? 特に理由はないんだけど。強いて言えば麦のんを驚かせたかったのと、喜んでもらいたかったからなんだ。もう一つはアレだね、拗ねる麦のん想像したら可愛かったからです。不謹慎でしたすみません。

「わ、私はアンタにあんな事言ったのよ……」
「麦野さんストップです」

 そこまでよ! と言いたげな顔で俺は麦のんの言葉を遮り、口を開く。

「私がやりたかったからです、それじゃいけませんか?」
「……」

 ぶっちゃけ、ケーキ作ったりパーティ用の料理作ってみたかったんだよね。勿論前述の理由が大きいけど、これはあくまで自分の為にやったことなんですたい。だら麦のんが気を使う必要はないのよ、と言いたいのですよ、私は。

「迷惑、でした?」

 まぁ、それも麦のんの機嫌が直ってくれないと水泡に帰すんだけどね……だって本来なら俺の顔も見たくないって言ってたくらいだし、こんなことで機嫌直ってくれるだろうか……? 治らなかったら俺、終了。

「そ、そんなことない!」
「おぉう」
「あ、ち、違う! ま、前の事は許してあげてもいいわ。私の為だけにクリスマスを祝おうだなんて、殊勝な心がけじゃないの」
「いえ、別に」
「前の事は水に流してあげる。だからこれからはもっと私に尽くしなさい」

 おぉ、麦のんの機嫌がみるみる回復していく。どうやらこれは当たりだったらしいね。いやぁ、よかったよかった。

「さて、お腹空いたわ。早く食べるわよ」
「はいはい」
「はい、は一回でしょ。全くもう……」
「あ、麦野さん。その前に渡す物があるんですけど」

 そう言って俺はテーブルの下に置いておいたカラフルな紙袋を持って麦のんに渡す。大きさは麦のんの顔くらいかな? 田辺さんに買い物へ連れて行ってもらい、出世払い扱いにしてもらって買ってもらったのです。麦のんは最初は驚いてたみたいだけど、今は目を輝かせてます。やはりこの歳の子はプレゼントには弱いね!

「あ、開けていい?」
「どぞどぞ~」

 そう言って袋を開ける麦のん。出てきたのはうさぎのぬいぐるみで、安物と言える物なのであんまり可愛くないです。最初ゲコ太にしたかったんだけど、ゲコ太シリーズ結構高くて諦めました。妥協してごめんね麦のん。

「安物だけど、喜んでくれたら嬉しいなぁって」
「あ、ありがとう……大切にするわ」

 ぎこちない動きでうさぎを抱きしめる麦のん。どうやらぬいぐるみが好きという設定は残ってたみたいね。好きっていうか寝るときに抱きしめてるんだったか? 今までそんなことしてるの見た事ないんだけどなぁ。まぁ喜んでくれたら幸い。

「じゃあ、食事にしませう。今日のケーキは自信作なんてすよ~」
「あ、あの……」
「ん、何?」
「わ、私からもプレゼントあるんだけど……」
「……新しい仕事とか?」
「違ぇよ!」

 このパーティ報せてなかったのにプレゼント用意してきたとな? 警戒して先手取ってみたら怒られた。どうやら本当にプレゼントを用意してきたらしい。まぁクリスマスという街中歩き、空気に飲まれて買っちゃったのかもしれん。それに地味に嬉しい。麦のんからの贈り物なんて珍しいし。

「いやっほぅ、何くれるんですか!」
「ちょ、ちょっと待って……目ぇ瞑ってて」
「え~」
「いいから早く!」

 もう、照れ屋だなぁ麦のんは。とか本人に聞かれたら『原子崩し』確定の言葉を心の中で呟いて目を閉じる。
 目の前で麦のんが動く気配。何か鞄をゴソゴソやってるみたい。
 ゴソゴソゴソゴソゴソゴソゴソ…………長いよ!

「あの、麦野さん?」
「だ、ダメ! 今出したから目を開けるな!」

 うーむ、これは焦らしプレイって奴なの? ぶつちゃけ俺にはそっちの趣味はないから早くしてほしいんだけど……まぁ、これだけ焦らすのならさぞ凄い物[ガチャリ]……何今の音? そして自分の首に何か着いている感触。
嫌な予感を感じて目を開ける。

「に、似合ってるじゃないの! 流石は奴隷ね!」

 顔真っ赤にした麦のんの顔……その視線の先にある「首輪」。
 え、何コレ? 本当に何コレ?

「アンタは私の奴隷なんだから、そういうアクセサリーが似合うと思って買ってきたのよ! よ、よく似合ってるじゃない!」
「うわぉ……」
「これでアンタは一生私の奴隷よ! 肝に命じておきなさい!」

 そう言って高笑いする麦のんを、俺は茫然と見ることしか出来なかった。

 拝啓、父さん、母さん、妹よ。兄ちゃんは上司の為にクリスマスパーティを開いたら、何故か首輪をつけられて奴隷宣告され、奴隷ルート突入余裕でした。
 本当に世の中は理不尽です……



おまけ

「あっはは、奴隷よ奴隷。アンタは奴隷なのよー!」
「やっちゃった……やっちゃったよ私」
「本当は帽子渡すつもりだったのに……首輪なんてどうすんのよ」
「……はぁぁぁ~」



<オリジナル用語・設定>
『首輪(フレンダ仕様)』
 麦野がクリスマスの帰りに買ってしまったファッション用の首輪。銀細工と上質な皮で作られている為、かなり高い。ぶっちゃけ帽子より高い。
 鍵付きの為、麦野以外では外す事は出来ない。


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