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No.2521の一覧
[0] THE FOOL(聖なるかな)【完結】[PINO](2008/06/11 17:44)
[1] THE FOOL 2話[PINO](2008/01/13 19:13)
[2] THE FOOL 3話[PINO](2008/01/14 19:09)
[3] THE FOOL 4話[PINO](2008/01/15 20:00)
[4] THE FOOL 5話[PINO](2008/01/16 20:33)
[5] THE FOOL 6話[PINO](2008/01/17 21:25)
[6] THE FOOL 7話[PINO](2008/01/19 20:42)
[7] THE FOOL 8話[PINO](2008/01/22 07:32)
[8] THE FOOL 9話[PINO](2008/01/25 20:00)
[9] THE FOOL 10話[PINO](2008/01/29 06:59)
[10] THE FOOL 11話[PINO](2008/02/01 07:15)
[11] THE FOOL 12話[PINO](2008/02/03 10:01)
[12] THE FOOL 13話[PINO](2008/02/08 07:34)
[13] THE FOOL 14話[PINO](2008/02/11 19:16)
[14] THE FOOL 15話[PINO](2008/02/11 22:33)
[15] THE FOOL 16話[PINO](2008/02/14 21:34)
[16] THE FOOL 17話[PINO](2008/02/19 21:07)
[17] THE FOOL 18話[PINO](2008/02/22 08:05)
[18] THE FOOL 19話[PINO](2008/02/25 07:11)
[19] THE FOOL 20話[PINO](2008/03/02 21:27)
[20] THE FOOL 21話[PINO](2008/03/03 07:13)
[21] THE FOOL 22話[PINO](2008/03/04 20:01)
[22] THE FOOL 23話[PINO](2008/03/08 21:11)
[23] THE FOOL 24話[PINO](2008/03/11 07:13)
[24] THE FOOL 25話[PINO](2008/03/14 06:52)
[25] THE FOOL 26話[PINO](2008/03/17 07:07)
[26] THE FOOL 27話[PINO](2008/03/22 07:36)
[27] THE FOOL 28話[PINO](2008/03/26 07:27)
[28] THE FOOL 29話[PINO](2008/03/23 19:55)
[29] THE FOOL 30話[PINO](2008/03/26 07:18)
[30] THE FOOL 31話[PINO](2008/03/31 19:28)
[31] THE FOOL 32話[PINO](2008/03/31 19:26)
[32] THE FOOL 33話[PINO](2008/04/04 07:35)
[33] THE FOOL 34話[PINO](2008/04/04 07:34)
[34] THE FOOL 35話[PINO](2008/04/05 17:25)
[35] THE FOOL 36話[PINO](2008/04/07 18:44)
[36] THE FOOL 37話[PINO](2008/04/07 19:16)
[37] THE FOOL 38話[PINO](2008/04/08 18:25)
[38] THE FOOL 39話[PINO](2008/04/10 19:25)
[39] THE FOOL 40話[PINO](2008/04/10 19:10)
[40] THE FOOL 41話[PINO](2008/04/12 17:16)
[41] THE FOOL 42話[PINO](2008/04/14 17:51)
[42] THE FOOL 43話[PINO](2008/04/18 08:48)
[43] THE FOOL 44話[PINO](2008/04/25 08:12)
[44] THE FOOL 45話[PINO](2008/05/17 08:31)
[45] THE FOOL 46話[PINO](2008/04/25 08:10)
[46] THE FOOL 47話[PINO](2008/04/29 06:26)
[47] THE FOOL 48話[PINO](2008/04/29 06:35)
[48] THE FOOL 49話[PINO](2008/05/08 07:16)
[49] THE FOOL 50話[PINO](2008/05/03 20:16)
[50] THE FOOL 51話[PINO](2008/05/04 19:19)
[51] THE FOOL 52話[PINO](2008/05/10 07:06)
[52] THE FOOL 53話[PINO](2008/05/11 19:10)
[53] THE FOOL 54話[PINO](2008/05/11 19:11)
[54] THE FOOL 55話[PINO](2008/05/14 07:06)
[55] THE FOOL 56話[PINO](2008/05/16 19:52)
[56] THE FOOL 57話[PINO](2008/05/23 18:15)
[57] THE FOOL 58話[PINO](2008/05/23 18:13)
[58] THE FOOL 59話[PINO](2008/05/23 20:53)
[59] THE FOOL 60話[PINO](2008/05/25 09:33)
[60] THE FOOL 61話[PINO](2008/06/02 18:53)
[61] THE FOOL 62話[PINO](2008/06/07 09:36)
[62] THE FOOL 63話[PINO](2008/06/05 20:12)
[63] THE FOOL 64話[PINO](2008/06/11 17:41)
[64] THE FOOL 最終話[PINO](2008/06/11 17:42)
[65] あとがき[PINO](2008/06/11 17:42)
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[2521] THE FOOL 23話
Name: PINO◆c7dcf746 ID:1e634ac3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/03/08 21:11






ルプトナを加えた物部学園の一行は、レチェレや『精霊の世界』と別れをつげると、
希美の神獣ものべーの力を借りて、再び時空を旅する旅人となった。
それから6日かけて辿り着いたのは旅団本部のある世界。

「……はぁ……まさか、これ程とはなぁ……」

通称『魔法の世界』に辿り着いたとき、浩二が洩らした言葉はソレであった。

「うわぁ……凄いね。望ちゃん……」
「あ、ああ……」

周りでは、旅団のメンバーを除く全員が驚いた表情を浮かべている。
それは、物部学園の一般生徒達も同じだったようで、
教室や廊下の窓にびっしりと張り付いて魔法の世界を見つめていた。

「……なんつーか、アレだよな。
例えるなら、青い猫型ロボットがやって来た未来都市?」

『ナハハ。もしかしたらおるかもしれへんなぁ』

浩二の呟きに『最弱』は、笑いながら答える。

「沙月先輩。ものべーはあそこに着陸させればいいんですか?」
「ええ。あそこがドッグになってるから」
「解りました」

希美がものべーを宇宙船ドッグのような場所に着陸させる。

「サレス様!」

すると、タリアが気色を浮かべながら教室から出て行った。
ソルラスカは、そんな彼女の後姿を面白くないというような顔で見ている。
浩二は、そんなソルラスカの肩をポンと叩くと、俺達も行こうぜと促すのだった。






**************







一般学生達にはしばらく街の公園で待ってもらい、
旅団本部にやって来た永遠神剣のマスター達。
彼等を最初に出迎えたのは、謎の猫耳少女であった。

「待っておったぞ! のぞむ!」

沙月に案内されて、ホールのような部屋にやってくると、
突然走って来た少女が、腕を広げて飛びついて来る。

「―――なっ!」
「え!?」
「あーーーーーっ!!!」

抱きつかれたのは世刻望。
息を呑んだのは希美を始めとする、彼の事を憎からず思ってる少女達。

「俺さ……世刻については、もう多少の事では驚かないつもりだったけど……」

浩二は、そんな光景を見てボソリとこう呟くのであった。

「……剣の世界ではカティマさん。精霊の世界ではルプトナと、
順調に一人ずつ女をおとしてきているのは知ってたが……
今度は、この世界にやってくるなり速攻かよ……
ここまでくると、もう魅力のパラメーターを改造でMAXにしてあるとしか思えねぇ……」

その呟きが聞こえたのか、少女達は望をキッと睨みつける。
浩二はその瞬間、望達から離れた場所へと距離をとった。
この後の展開は安易に想像がつくからだ。
そして、その想像はドンピシャに的中し、望を中心にいつもの騒ぎになるのだった。


「……やれやれ。やっと話しができるようになったか……」


その後、世刻望@少女達のドタバタコメディーが終わると、
今まで黙って彼等のやり取りを見ていた長髪の男性が、呆れたように呟いた。

「ナーヤ! こっちに来い! 何をやってるんだオマエは!」
「あははは……ちと、調子に乗りすぎたようじゃのう……」

望に抱きついた猫耳少女は、同じく猫耳をした男性に首根っこを掴まれている。
その顔は、少しやりすぎたかと反省しているようであった。

「さて、それでは……はじめまして。私の名はサレス=クゥオークス。
君達も、もう名前ぐらいは聞いているだろうが『旅団』の長をしている者だ」

「あ、えっと……俺、世刻望って言います」
「永峰希美です」
「カティマ・アイギアスと申します」
「ボクはルプトナだよ!」
「……斉藤浩二です」

サレスと名乗った長髪の男が温和な顔で名前を名乗ると、望達もそれぞれに自分の名前を名乗る。
そんな望達の姿を一人ずつ確認するように見ていくサレスだが、最後の一人の所でピタリと止まる。

「っ!」

自分を見る時だけ、目が鋭くなったのを浩二は見逃さなかった。

「……それでは、ここに居る他の方々もご紹介しよう。
こちらの彼が、ニーヤァ=トトカ・ヴェラー。この街、ザルツヴァイの代表だ」

「―――フン。ナーヤがどうしてもと言うので、顔ぐらいは見せてやったが……
客人とやらが、まさか人間だったとはな……」

サレスが紹介すると、ニーヤァと呼ばれた獣人のような青年は、吐き捨てるようにそう呟く。
初対面にもかかわらず、その傲慢な物言いに全員の眉がピクリと動くが、
サレスは苦笑しながら次の紹介に移った。

「そして、こちらの―――キミに突然抱きついたのが……」
「ナーヤ! ナーヤ=トトカ・ナナフィじゃ」

サレスの言葉を遮って名乗る少女。

「わらわも一応、この街の代表だ……
まぁ、兄上と違って、こっちは名前だけの代表だがな」

ナーヤの言葉に、そのとおりだと言わんばかりにふんぞり返った態度のニーヤァ。

「なので、わらわはともかく、兄上にはくれぐれも粗相の無いように願いたい」

浩二は内心で笑いながらニーヤァを見つめていた。
このようなヤツは何処にでも居る。
自尊心が強く、尊大な態度の小人物。典型的な権力者の姿だ。

(……おい、最弱……アレ。どう思うよ?)
『只の阿呆やな。どーせなら、アイツがサレスやったら良かったのに……』
(同感だ……)

アレが『旅団』のトップなら、浩二はどうとでも上手く扱う自信がある。
すなわち旅団も、大した組織では無いと安心できるのだ。

『妹の方は……まぁ、兄よりは随分マシやと思うけど……』
(……アレも、それほど手強くは無いな……けど―――)
『そやな。ツラの皮の厚さは相棒のが上やねん。けど―――』

浩二と『最弱』が、心の中で会話をしている間も、サレスの紹介は続いている。

「そして、ナーヤの側に控えているのが、彼女の世話役のフィロメーラだ」

「初めまして。フィロメーラと申します。
ナーヤ様のお付をさせて頂いております。以後、お見知りおきを……」

そっとスカートをつまんで頭を下げるメイドさん。
その堂に入った挙措に、望や希美は感嘆の声をあげていた。

「望ちゃん。本物のメイドさんだよ。メイドさん」
「お、おお……」

メイド喫茶にいるようなパチモンではないメイドさんに、興奮気味の希美。
望も、こくこくと頷きながらフィロメーラに見とれていた。

(……あの、サレスは手強そうだな―――)

『あのメイドはん……ダイナマイトなオッパイやなぁ……
服の上からでも見事なモンやで……』

(―――って、そっちかよ!)

お互いに違う人物に注目していた事に、浩二が思わずツッコミをいれる。
すると『最弱』は、猛然とした勢いでがなりたててきた。

『何を言うてまんのや! 相棒の方こそ、少しは反応せんかい!
美形! メイドさん! 巨乳の三連コンボやで? これにハァハァ言わずして何が男や!
ホンマ、相棒は性欲が無さ過ぎやで! マジでイ○ポなんとちゃうか?』

「―――ぶっ殺すぞ、コノヤロウ!」

とんでもない事を言われてキレた浩二は、
心の中ではなく、口に出してその言葉を言ってしまう。


「「「 え!? 」」」

「―――あ!」


すると、全員の目が浩二に集まった。
浩二は、やばいと思って口を押さえるが、もう後の祭りだ。

「……あ、あの……私、気に触るような事を言ったでしょうか!?」

フィロメーラは、自己紹介の後にいきなりブッ殺すぞと言われた事に戸惑っている。

「い、いえ! 違うんです! 今のは、その……
俺の世界では『素晴らしいですね』と言う意味の言葉なんです!」

「……斉藤……それは……ちょっと、無理がありすぎるぞ……」
「な、何を言ってるんだ世刻! ほ、本当の事だろ? な? な?」

浩二は、縋るような目で望に言うが、望は無言で首を振る。

「な、な……なっ! 何だこの無礼者はーーーーっ!」
「あ、兄上!?」
「人間風情が、下手に出てやればつけあがりおって!」

怒り狂うニーヤァ。そんな彼をみる皆の目は、オマエ……
あれで下手に出ていたのかよと言っている。浩二はその瞬間ハラを決めた。

―――もうダメだ。

この状況では、下手な言い訳など通じない。
それならばいっその事、この状況を利用してしまおう。
今が最悪な状況なのだから、これから何をしたところで、これ以上悪くはなるまいと……
この場の全員が思ってはいても、やれない事をやる事にした。


「それで下手にでてんのかよ!
おまえは、普段は我と書いてオレと呼ぶぐらいの王様かってーの!」


―――スパーン!


「おぶっ!」


響く快音。浩二はニーヤァの頭にハリセンでツッコミをいれる。
すると、周りからドッと笑い声が沸いた。

「ちょ、斉藤くん……ブッ―――」
「あははははは!」
「ダーハッハッハ! 死ぬ、死ぬ―――笑い死ぬ!」

やはり皆も、先程から態度の悪いニーヤァには腹を立てていたようだ。
それがハリセンで頭を叩かれて、愉快な悲鳴と共に前のめりに倒れたのだから痛快である。
ソルラスカなんかは、よっぽどウケたのか腹を押さえて地面をドンドン叩いている。


「つ…つ……つ……摘み出せーーーーーっ!
誰か! その無礼者を、ここから摘み出せーーーー!!!」


顔を真っ赤ににして叫ぶニーヤァ。
彼の声に気づいたのか、衛兵らしき黒服の男達が走ってやってくると、
浩二はガシッと手を掴まれて引きずられて行くのだった―――





「……攫われる宇宙人……タ・ス・ケ・テー……」





―――最後にもう一つだけ爆弾を投下して。





「「「 ―――ブッ! アッハッハッハハハハハハハ!!! 」」」





その後もしばらくは笑いが続き……
皆がまともに話し合いを再開できたのは十五分ぐらい後になるのだった。





*************





「………おまえのおかげで、エライ目にあったぞ……」



旅団本部から叩き出された浩二は、
叩き出される時に蹴られたケツをさすりながら道を歩いていた。

『ナハハ。まぁ、ええがな。そんなに怒らんでも……
これでしばらくフリーの時間ができたんや。この機会に色々と探索しまひょ』

「……はぁ」

まったく悪びれた様子の無い『最弱』に、浩二は溜息を吐く。

「そうだな……言われてみればその通りだ……
どーせ、しばらくはココにいる事になるんだろうから、地理を調べておくのは悪くねーな」

『それに、何と言うても魔法の世界や。
市街地に行けば、何かおもろいモンがあるかもしれへんでー!』

「つーか、オマエ。少しは反省しろ……」

浩二が市街地の方へと脚を運ぶと、そこは様々な露店が他立ち並んでおり、
いたる所で物部学園の学生達の姿が見えた。

一人の男子生徒を捕まえて話を聞いてみると、
街の公園で沙月達をじっと待っているのでは退屈だろうと、
メイドさんが街を案内してくれる事になったのだそうだ。

そして、今は自由行動の時間。話しが終わったら、沙月達もこちらにやってくるとの事なので、
この露店が多く立ち並ぶ場所で、自由見学となったとの事だった。

「サンキュ。事情は解ったよ」

「ああ。それにしても斉藤……何で、オマエはここに居るんだ?
オマエや沙月先輩達は、しばらくこの街の偉い人と会談だって聞いてたけど?」

「その偉い人が、あまりにも偉そうにしてくるんで、
思わずこのハリセンでツッコミをいれてしまったら、黒服に摘み出された」

浩二は簡単に事情を説明してやると、その男子生徒は笑い出す。
男子生徒は、別れ際にナイスガッツと浩二の肩を叩くと、笑いながら立ち去っていった。

『ほな、ここで待っとれば、みんな後から来るっちゅー事やねんな?』
「そうみたいだな」

『ほな、ウインドーショッピングと洒落込もうやおまへんか。
この世界の通貨はもっとらんから、何も買えへんけど』

「ま、それでもいいじゃねーか。見るだけでも十分に楽しそうだし」

そう言って、浩二は辺りを見回す。
魔法の世界とは言っても、かなり科学が発達しているようであり、
周りの建物はどれも近代的な外観であった。

『むう……魔法の世界っちゅーか、どちらかと言うと近未来的な都市やなぁ……』
「科学だって、考えようによっては魔法みたいなものだろ?」
『……そう言わて見れば、そうかもしれへんけど……』
「お、見てみろよ『最弱』! テレビみたいなモンが売ってるぜ?」
『ホンマや。これ、何の機械でっしゃろ?』

浩二は顔を近づけてマジマジと眺める。
すると、それを見ていた店員が、商品の説明をしてくれた。
唯の冷やかしなので、丁寧に説明されると恐縮だったが、
浩二は持ち前の話術で商品や店員を褒めながら、魔法の世界を堪能するのであった。





*************





夕方。浩二は繁華街で合流した沙月達と共に、物部学園と戻ってきていた。
勿論その時に、面談の時にやらかした騒ぎを怒られたのは言うまでも無い。
ニーヤァは、その後もかなり怒っていたようだが、
ナーヤとサレスが取り成してくれたのでお咎めは無いそうだ。

「だけど、斉藤……何であの時、いきなりぶっ殺すぞなんて言ったんだ?」

夕食の席で対面に座った望が、ふと思い出したようにこんな事を聞いてくる。

「確かに、あのニーヤァってヤツは……その、無礼だったけど……」
「世刻。ちょっと耳を貸せ」

そう言って浩二は望の耳元に顔を寄せて、事のあらましを教えてやる。
すると望は、ハハハと笑いながら何度も頷いた。

「なるほど、納得……」
「で、あの後……俺が叩き出された後は、どうなったんだ?」

「ん? 特に何も無かったぞ。ニーヤァはあの後すぐに部屋を出て行ったから、
その後はナーヤの部屋でお喋りをしただけだ」

「そうか……」

自分抜きで、今後の事を話した訳では無いと知って浩二はホッと一安心する。
その時であった。食堂の入り口の方からフィロメーラと名乗ったメイドがやって来たのは。

「こちらに、世刻様と斉藤様はいらっしゃいませんか?」
「ん? あれは確か……フィロメーラさん……だったっけ?」
「ああ。何だか俺達を探してるみたいだな」

望が手を振りながらここに居ますよと叫ぶと、
フィロメーラはパッと顔を輝かせて歩いてきた。

「お二人とも、こちらにお出ででしたか」
「……えーと、何か俺達に用ですか?」

「はい。世刻様にはナーヤ様。
斉藤様にはサレス様がお話しがあるとの事なので、お呼びに参りました。
お二人は今、お時間の方はよろしいでしょうか?」

「え? 斉藤に用があるってのなら解りますけど……俺は何も悪い事してませんよ?」

自分が呼び出しを受けるなど心外だと言わんばかりの望。
浩二は、そんな望を見ながらコノヤロウと呟いている。
フィロメーラは、そんな二人の姿を見て、その件ではありませんと苦笑した。

「個人的にお話ししたい事があるそうです。
そんなにお時間はとらせませんので、ご同行願いませんでしょうか?」

「う~~ん……」

どうする斉藤? と言わんばかりの顔で望は浩二を見る。

「いいですよ。行きますよ」
「おい、斉藤!」

「……別に、とって食われるワケじゃねーんだ。
話も、そんなに長い訳じゃねーらしいし、帰りは一緒に帰ろうぜ?」

そう言って、帰りにお互いが聞いたことを情報交換しようぜと耳打ちする浩二。
望は、なるほどと心の中で相槌を打って、フィロメーラにわかりましたと返事をした。

「……けど、俺達に話って何だろうな?」

学食を後にし、昼間にナーヤ達と会見した『支えの塔』と呼ばれる建物に向かう途中、
望が隣を歩いている浩二に話しかける。

「さぁな。俺の方はともかく……おまえの方は逢引の誘いとかじゃねーの?」
「ば、そんな訳ないだろ! 何で俺が今日あったばかりのナーヤと―――」
「だって、ほら……」

浩二は顎で道の先を指す。
すると、そこには待ちきれないと言わんばかりに、途中まで迎えに来ていたナーヤの姿があった。

「のぞむー!」

ブンブンと手を振っている。

「ナーヤ? 何でここに……」
「そんなもの。おぬしに早く会いたかったからに決まっておろう」

そう言って望の手を取ると、さっと腕を組むナーヤ。
フィロメーラは、こんな所までやって来た主人に戸惑っていたが、
ここから先は、望の事は自分が案内するので、
おぬしは斉藤をサレスの所に連れて行ってやれと言われて恐縮した。

「それじゃ、世刻……話しが終わったらココで待ち合わせしよう。時計は持ってるよな?
今は俺達の世界の時間で19時だから……一応、21時を目安に待ち合わせって事で。
それより遅れるようなら、待ってる方は先に帰る事にしよう」

「あ、ああ。了解……」
「ほれ、行くぞ! のぞむ」
「ちょ、ちょっと、そんなに引っ張るなって!」

望はナーヤに腕を引かれて建物の中に入っていく。
取り残される形になった浩二とフィロメーラは、お互いに顔を見合わせると苦笑した。





「それでは斉藤様。ご案内します」
「はい。よろしくお願いします」





*************





斉藤浩二は、世刻望と別れた後、フィロメーラに案内されて、
支えの塔内になるサレスの私室らしき部屋の前へとやって来ていた。

「サレス様。斉藤様をお連れしました」

ノックの後にフィロメーラがそう声をあげると、中から翠色の長髪の青年が扉を開けて現れる。

「ご苦労だったね、フィロメーラ。
ここからは私が持て成すから、キミはもう下がってくれ」

「わかりました。それでは斉藤様……私はこれで……」
「あ、はい。案内ありがとうございました」

深々と頭を下げて去っていくフィロメーラを見送る浩二。
すると、サレスが何も無いところだが入ってくれと言ったので、
浩二は頷いて部屋の中に入るのだった。

「……ん、呼び出して悪かったな。斉藤浩二くん……
今、何か飲み物でもと探しているんだが……む、何も無いな……」

「飲み物も、食べ物も結構です。持参してますから」

そう言って、浩二は机の上に水筒を置く。彼はこの場所を安全であるとは思っていない。
確率は極めて低いだろうが、出された食べ物や飲み物に何か入れられてる可能性だってあるのだ。
だから、何か飲み物や食べ物を出されても全て断るつもりだった。

「用意が良い事だ。よければ私も頂いていいかな?」
「いいですよ。コップは二つありますので」

浩二の要した水筒は、上下がコップになってる魔法瓶だ。
物部学園のサッカー部の部室に転がっていたので頂戴した物である。

「……フム。美味いな」
「レモネードもどきです」
「キミの世界の飲み物か……」

「いいえ。ここに来る前の世界で頂いた、
俺の世界の果物と調味料に似ているモノで再現した偽物です」

「酸味と甘味は、疲れた頭にもいい。気に入ったな。私は」

にこりと温和な笑みを見せるサレス。

「それ、毒が入ってますよ?」

「そうか。だが……私は毒ぐらいでは死なないぞ?
ちょっとや、そっとの毒では、背負った業が深すぎて死ねないのだよ」

「ははっ―――」
「フフッ」

浩二とサレスは、お互いの顔を見合わせニヤリと笑いあう。
儀式的な、初対面の会話はこれで終了した。
お互いに計りあうような会話はもう不要だろう。

「食えないヤツだな。反永遠神剣のマスター」
「それはお互い様だろ。怪しげな組織の団長」
「昼間のアレはわざとか?」
「さぁな」

お互いに姿勢を崩して話す。
浩二はソファーに両手をかけてもたれかかり、サレスは長椅子に座ったまま脚を組む。

「どちらにしろ良いものを見せて貰った。
あのニーヤァが吼えヅラをかく姿は、中々に愉快な見世物だったぞ」

「やっぱり、アンタもムカついてたのか? アレに」

「腹を立ててないワケがないだろう?
無能で無知。それでいてプライドだけは人の三倍。
アレが曲がりなりにも街の代表をやっていられるのは、ナーヤが居るからだ」

「ハハッ。いいのかい? そんなにぶっちゃけてしまって」

「構わんよ。人間である私は、種族差別の激しいニーヤァにはもう嫌われている。
それに、この事が外に漏れたところで、どうとでも言い繕う事はできるからな」

口元を押さえながら、ククッと笑うサレス。
先程までの温和な笑みなどとは真逆の嘲笑だ。

浩二は、どちらが彼の本性なのだろうと一瞬考えたが、すぐにその考えは辞める事にした。
たぶん、どちらも本当のサレスである。
自分が人によって態度を変えているように、彼も話す相手が望む自分を演じているのだろう。

「……それで、本題は何なんだ?
一応見当はついているんだが、アンタの口から聞きたい」

「わかった。それでは言おう―――斉藤浩二。
キミには、我々の同士になってもらいたい」

「それは……世刻や永峰……それに、カティマさんやルプトナを含めてか?」
「いや、彼等は必要無い。キミだけを誘っているのだ」
「ほう。一番弱い俺だけを……か?」
「そうだ」
「……何故?」
「それは、言わずとも解るだろう?」


―――反永遠神剣。


運命や神と言う『絶対』の力に押し潰されて死んでいった人々の、
想いや願いから生まれた『この世の全ての不条理』を否定するヒトのツルギ。
それは、神の剣・永遠神剣の起こす奇跡を霧散させる力を持つ。

「てゆーか、聞いていいか?」
「何だ?」
「アンタ。俺の神剣の事……どれだけ知ってるんだ?」

それは、一番の疑問であった。
全ての日常が変わったあの夜が訪れるまで、マスターの浩二でさえ知らなかった『最弱』の力を、
サレスは最初から知っているかのように話している。

「知ったのはつい最近だよ。
始めは、キミが神剣のマスターである事さえ知らなかったのだからな」

「じゃあ、何で―――」
「簡単な事だ。調べたのだよ」

そう言って、サレスは隣に一本の枝を出現させる。

「これは、私の永遠神剣『慧眼』の神獣の一部……名は『賢明なる巨人』と言う。
彼の力を借りて『慧眼』に記された世界の記録からキミの神剣を検索した」

「はぁ? 世界記録だって! それってアカシックレコードってヤツ!?」

「ああ。そう思ってもらってかまわない。
私の『慧眼』には世界の誕生から終焉までの歴史が記されている」

「ちょ、おま―――それってチート過ぎない!?」

過去から現在。未来に至るまでの歴史を知っているなんて、それはあまりにも強力過ぎる能力だ。
次元移動できる希美の『ものべー』でさえ、その能力と比べたら可愛いモノである。
そう考えたところで、浩二はハッと気がついた。

「なら、アンタ……俺がどう答えるかなんて、もう知ってるんじゃねーの?」
「フム。よく頭が回るじゃないか……」

「よし、歴史を知ってると言うなら答えてみろ。
俺が、この後にどんなリアクションを考えているか―――」

浩二はこの時『ケツだけ星人ブリブリー』をやってやろうと思った。
もしも、これを当てたらサレスは本当に未来を知っていると言う事になる。

だが―――

「解らないな」

サレスはあっさりと、それは解らないと降参した。

「やっぱり嘘か! そりゃそうだろう」

「……流石に、人の意思までは探れんよ。
厳密には記されているのかもしれんが、膨大な情報量の中からそれを探し当てるのは不可能に近い。
だが、キミの神剣はあまりにも特徴があるのでな。調べることがきたのだよ」

世界に唯一つの反永遠神剣。
確かに、それなら検索にも引っかかるだろう。

「……なるほど」

浩二はホッと息を吐く。

『最弱』の力が知られてしまったのは問題と言えば問題だが、
この世に『全てを知る者』なんて言う存在がいる事と比べたら何と言う事も無い。
そんなのが居たら、何をしても動きを全て読まれると言う事なのだから……

「それじゃあ、さっきの話に戻るけど……断らせてもらうよ。
旅団の活動についてはヤツィータさんから聞いたけど、俺には関係の無い話だ。
『光をもたらすもの』が俺達の世界に攻めて来たと言うなら、話は別だが……
見た事も、聞いた事もない世界まで護ってやる義理は何処にもないからな」

「ほう、あっさりと言い切ったな。
おまえは、無辜の民が何人死のうが構わないと?」

「俺は……自分自身と―――
好きだと思える人間が幸せならば、それでいい」

浩二は、ハッキリとそう言い切った。
たとえ、世界の全てを救う力があったとしても、その考えは変わらないだろう。
自分は"何処かの誰かの為"などと曖昧なモノの為には戦わない。

護るべきは友人、恋人、仲間―――

それはすなわち、斉藤浩二にとっての世界。
その世界に住む者達だけが、幸せであればいいのだ。



「力があるのにと、罵ってくれて構わない。失望するならすればいい……
けど俺は、見ず知らずの誰かと、親しい者を同一になんて見られない。


―――俺は、人間なんだよっ!


贔屓もする。差別もする……
みんなを平等に護るヒーローなんかじゃないんだ!」









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