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No.2521の一覧
[0] THE FOOL(聖なるかな)【完結】[PINO](2008/06/11 17:44)
[1] THE FOOL 2話[PINO](2008/01/13 19:13)
[2] THE FOOL 3話[PINO](2008/01/14 19:09)
[3] THE FOOL 4話[PINO](2008/01/15 20:00)
[4] THE FOOL 5話[PINO](2008/01/16 20:33)
[5] THE FOOL 6話[PINO](2008/01/17 21:25)
[6] THE FOOL 7話[PINO](2008/01/19 20:42)
[7] THE FOOL 8話[PINO](2008/01/22 07:32)
[8] THE FOOL 9話[PINO](2008/01/25 20:00)
[9] THE FOOL 10話[PINO](2008/01/29 06:59)
[10] THE FOOL 11話[PINO](2008/02/01 07:15)
[11] THE FOOL 12話[PINO](2008/02/03 10:01)
[12] THE FOOL 13話[PINO](2008/02/08 07:34)
[13] THE FOOL 14話[PINO](2008/02/11 19:16)
[14] THE FOOL 15話[PINO](2008/02/11 22:33)
[15] THE FOOL 16話[PINO](2008/02/14 21:34)
[16] THE FOOL 17話[PINO](2008/02/19 21:07)
[17] THE FOOL 18話[PINO](2008/02/22 08:05)
[18] THE FOOL 19話[PINO](2008/02/25 07:11)
[19] THE FOOL 20話[PINO](2008/03/02 21:27)
[20] THE FOOL 21話[PINO](2008/03/03 07:13)
[21] THE FOOL 22話[PINO](2008/03/04 20:01)
[22] THE FOOL 23話[PINO](2008/03/08 21:11)
[23] THE FOOL 24話[PINO](2008/03/11 07:13)
[24] THE FOOL 25話[PINO](2008/03/14 06:52)
[25] THE FOOL 26話[PINO](2008/03/17 07:07)
[26] THE FOOL 27話[PINO](2008/03/22 07:36)
[27] THE FOOL 28話[PINO](2008/03/26 07:27)
[28] THE FOOL 29話[PINO](2008/03/23 19:55)
[29] THE FOOL 30話[PINO](2008/03/26 07:18)
[30] THE FOOL 31話[PINO](2008/03/31 19:28)
[31] THE FOOL 32話[PINO](2008/03/31 19:26)
[32] THE FOOL 33話[PINO](2008/04/04 07:35)
[33] THE FOOL 34話[PINO](2008/04/04 07:34)
[34] THE FOOL 35話[PINO](2008/04/05 17:25)
[35] THE FOOL 36話[PINO](2008/04/07 18:44)
[36] THE FOOL 37話[PINO](2008/04/07 19:16)
[37] THE FOOL 38話[PINO](2008/04/08 18:25)
[38] THE FOOL 39話[PINO](2008/04/10 19:25)
[39] THE FOOL 40話[PINO](2008/04/10 19:10)
[40] THE FOOL 41話[PINO](2008/04/12 17:16)
[41] THE FOOL 42話[PINO](2008/04/14 17:51)
[42] THE FOOL 43話[PINO](2008/04/18 08:48)
[43] THE FOOL 44話[PINO](2008/04/25 08:12)
[44] THE FOOL 45話[PINO](2008/05/17 08:31)
[45] THE FOOL 46話[PINO](2008/04/25 08:10)
[46] THE FOOL 47話[PINO](2008/04/29 06:26)
[47] THE FOOL 48話[PINO](2008/04/29 06:35)
[48] THE FOOL 49話[PINO](2008/05/08 07:16)
[49] THE FOOL 50話[PINO](2008/05/03 20:16)
[50] THE FOOL 51話[PINO](2008/05/04 19:19)
[51] THE FOOL 52話[PINO](2008/05/10 07:06)
[52] THE FOOL 53話[PINO](2008/05/11 19:10)
[53] THE FOOL 54話[PINO](2008/05/11 19:11)
[54] THE FOOL 55話[PINO](2008/05/14 07:06)
[55] THE FOOL 56話[PINO](2008/05/16 19:52)
[56] THE FOOL 57話[PINO](2008/05/23 18:15)
[57] THE FOOL 58話[PINO](2008/05/23 18:13)
[58] THE FOOL 59話[PINO](2008/05/23 20:53)
[59] THE FOOL 60話[PINO](2008/05/25 09:33)
[60] THE FOOL 61話[PINO](2008/06/02 18:53)
[61] THE FOOL 62話[PINO](2008/06/07 09:36)
[62] THE FOOL 63話[PINO](2008/06/05 20:12)
[63] THE FOOL 64話[PINO](2008/06/11 17:41)
[64] THE FOOL 最終話[PINO](2008/06/11 17:42)
[65] あとがき[PINO](2008/06/11 17:42)
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[2521] THE FOOL 25話
Name: PINO◆c7dcf746 ID:6a29eb26 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/03/14 06:52







「やっぱり、このヒロインは外せないだろ?」
『いや……キャラは、確かにこれ以上無い程に立ってまんねんけど……』

「けどもクソも無い。過去から現在に至るまで……
漫画、アニメ、ゲーム、小説という媒体から、幾百千のヒロインが世に出て幾百星霜!
だが……しかし、俺の考えた『彼女』を越えるヒロインなど存在しない!」

『そ、そうでっか……』
「そうだっ!」

図書室の一角。斉藤浩二は脇に置いた『最弱』と議論しながら、
ガリガリと鉛筆を動かし、大学ノートに次々と文章を書いていた。

「うおおおっ! 考えるよりも早く鉛筆が走る!
次々と湧き出る泉のようにアイデアが押し寄せてくるぜあーーーーっ!
俺の天職は、もしかしたら作家か、脚本家なのかもしれなぃーーーーーーーッ!!!」

テンションが大変な事になってる浩二に、
物部学園の生徒達は、完全に不審者を見る目つきで、ヒソヒソと話ながら指差している。
しかし、ギアがMAXの浩二の目と耳には、そんな視線も声もまったく入らないのであった。





『……誰やねん。学園祭の出し物でやる演劇のシナリオを、
このアホウにやらせると決めた大馬鹿ヤローは……』






***************





「信助ッ! 信助はおるかーっ!」



バシィーン! と教室の扉を開けて叫ぶ浩二。

「そ、そこに……」

突然の騒がしい乱入に、昼食を食べていた美里は、思わず目を点にしながら、
隅の方でクラスメイト達と昼食を食べていた、大馬鹿ヤローこと森信助を指差す。

「ど、どうしたんだ浩二……そんな怖い顔で……」
「出来たッ!」
「は?」

目を血走らせながら、出来たと言って大学ノートを差し出してくる浩二に、
何が何だかよく解らないが、とりあえずノートを受け取る信助。

「台本」

浩二はそう言って、信助が手にしていたパンを奪い取ると、ムシャムシャとそれを食べる。
徹夜で夢中になって演劇の台本を書いていたので、
腹が先ほどから悲鳴をあげている事に、今まで気がつかなかったのだ。

「……ああ。俺が昨日頼んだヤツか……てゆーか、仕事早いな……」
「書き出したら止まらなくなった。もしかして俺は、作家に向いているのかもしれん」
「そ、そうか……」

根拠は何も無いのに、とにかく凄い自身だ。
信助は思わず身構えるような心境になって、浩二に渡された大学ノートをパラリとめくる。
話を聞いていた美里や、数人にクラスメイトも横からそれを覗き見た。



――― 物部学園・学園祭 演劇のプロット ―――


タイトル『空とぶ女子高生』


出演 ・主人公         世刻望
   ・ヒロイン        永峰希美
   ・ナレーション      獅子が大好きな森本
   ・主人公の友人A     森信助
   ・主人公の友人B     阿川美里
   ・地獄の帝王エスヌーク  江酢卓夫
   ・キング・KAZU    ブラジル留学した事のある三浦
  etc....



「……ちょっとまて」
「何だ?」

一ページ目のタイトルと配役を見ただけで、信助は頭がクラクラとした。
ツッコミどころ満載どころか、ツッコム所しか無い。

「何で女子高生が空を飛ぶんだよ!」
「ストーリーを見れば解るッ!」

「……オーケー。それは、まぁいい……
……けど、ナレーションが……獅子が大好きな森本って……」

「だって森本はレオだろう」

浩二がそう言って、教室の窓からグランドを見下ろすと、
勝手にレオにされたクラスメイトの森本君は、無邪気に友人達とバスケットに興じている。

「………オーケー。それも、百歩譲って解った……けど……
一番のツッコミどころは、このエスヌークって何だよ!
それに、キング・カズが何で出てくるんだ!」

「バカヤロウ! ちゃんと地獄の帝王って書いてあるだろうが!
それにそいつはカズって読むんじゃねぇ! キング・ケーエーゼットユーだ!」

「いや、けど……この衣装デザインなんか、そのまんまエスタ―――」
「アックスボンバー!」
「―――あくっ!」

言葉をアックスボンバーで止められた信助は、悲鳴を上げて吹っ飛ばされる。
流石に神剣の強化はかけてないが、それでも戦いによって鍛えられた浩二の腕力は中々のモノである。
信助はロッカーに激突した。

「いてて……何をするんだよ!」
「俺は、おまえが、パクリと言うのをやめるまで! 殴るのを! 止めないッ!」

「……はぁ……オーケー。わかった、わかった……
これは、おまえのオリジナルだ……ったく、このキャストでどんな物語ができるんだよ……」

これ以上論議を続けても埒があかないと思った信助は、
いててと頭をさすりながら元の位置に戻った。
そして、落としてしまった大学ノートに再び手を伸ばした瞬間―――




『あーあーあー……オホン。今から、臨時の全校集会を始めます。
生徒の皆さんは、速やかに体育館にお集まりください』




機械音の後に、校内のスピーカーから早苗の呼びかけが入り、
教室の全員が何事だと顔を見合わせる。

「臨時の全校集会?」
「いったい何?」

教室の中だけではなく、学園中がざわざわと喧騒に包まれる。
信助はノートを机に置くと、続きは戻ってきてからにしようぜと周りの皆を見渡した。

「よーし、みんなー! ここで議論をしても始まらないから、
とりあえず体育館に向かおー!」

信助の声に、今まで騒いでいたクラスメイト達は、そうだなと頷き合う。
沙月には及ばないものの、信助も中々の統率力の高さだ。
浩二はそんな事を思いながら、クラスメイトの一人に背中を押されて教室を後にするのだった。


「………何……コレ? のぞみんが読んだら……
……浩二君……ただじゃ済まないと思う……」


そう呟いたのは阿川美里。信助が置いたノートを手に取り、
パラパラとページをめくって内容を読むと、それがトンデモナイ内容だったからだ。
教室から皆が出て行った事を確認すると―――

「とりゃ!」

美里は振りかぶって大学ノートを窓から投げ捨てる。
全力で投げたノートは、学園の敷地内を越え、
ものべーの外から魔法の世界のドッグの中に落ちていった。



「……これでよし。てゆーか、ヒロインの女の子がオナラの力で空を飛ぶって何よ……
しかも最後のオチが、ヒロインのオナラに主人公がライターで火を灯して大爆発。
世界は崩壊したって……もう何が何やら……」



けれどこの「アヒャー! 私のオナラで星をブッ飛ばしてやんよーッ!」
と迫真の演技で叫ぶ、のぞみんはちょっと見たかったかなと、
美里はクスクス笑いながら教室を後にするのだった……







***********





冒頭より前日の夜。世刻望は生徒会室の前に立っていた。
中にいるだろう沙月の姿を思い浮かべると、望は自らを鼓舞するようにグッと拳を握る。

「言うだけ……言ってみよう!」

そう言って、握った拳をゆっくりと扉に近づけていく。

「やるだけやって見て、それでもダメだったなら諦めもつく。
その時は、希美と斉藤と一緒に……この世界の事は忘れて、元の世界に帰ろう……」

決意を固めた望は、夕方の出来事を思い出していた。
先日。校長室でサレスとの会見を終え、浩二と別れた後―――
あても無く校舎の中を彷徨い歩き、
カティマとルプトナに出会うと、話を聞いてもらった時の事を……

戦うと、戦わねばならぬの違いについて悩んでいる事。
皆を護りたいと想う気持ちは傲慢であると言われた事。
信念を持たぬ自分は、浩二よりも弱いと言われた事。
望は、全てをカティマとルプトナに話した。

(……なるほど、だから望は浮かない顔をしていたのですね……)
(……ああ……)
(けれど、望……私と、私の世界は……望の言う所の『傲慢』で救われたんですよ?)
(……え?)

(うん……ボクの世界もそう。望の『傲慢』があったからこそ、
『光をもたらすもの』から精霊回廊を取り戻す事ができて……
長年いがみ合ってきた精霊と人間が、和解する事が出来たんだよ?)

(そもそも、その傲慢さは、望一人の意思ではありませんよね?
始めに戦おうと思ったのは望だとしても、それに続いた皆の意思は、強制されたものじゃない。
戦おうとする望の姿が正しいと思ったら……みんなは望と一緒に戦ったんです)

(……ボクも、望や沙月達が正しいと思ったから……ついて行く事にしたんだよ!)

(……傲慢と言う言葉は、独りよがりな者に言うものです。
自分は何が何でも正しいと想い込み、他者にも自分の意思を押し付ける事を傲慢と言うのです。
望は……自分の考える事は絶対に正しい、皆は自分についてくるべきだと思ってますか?)

(そんな訳は無いだろ! 自分が絶対に正しいなんて―――)

(―――フフッ。なら、望は傲慢なんかじゃありません。
それでも納得できないなら……みんなに話してみてはいかがでしょう?
自分の考えている事、思っている事……全て、学園のみんなに聞いてもらって……
否定にしろ、肯定にしろ、みんなの考えている事を聞かせてもらえば、
こうして『自分が想像する皆の意思』という幻に悩まされる事はなくなると思いますよ?)


そう言って微笑んでくれたカティマと、元気づけようしてくれたルプトナの顔を思い出す。

「―――よしっ!」

望は力強く頷いて扉を叩く。すると、中から「はーい」と沙月の声が聞こえた。






「沙月先輩! 世刻です。先輩に頼みたい事があって来ました!」






**************






「……で、こうなった訳か……」
「本当にすまない。帰りたがってる斉藤には悪いと思う……けどっ!」
「けど?」
「……力を……おまえの力を、俺に貸してほしい……」
「……はぁ……」

物部学園の屋上。
そこには、フェンスに背を持たれかけさせた浩二と、力強い瞳で彼を見つめる望の姿があった。

「……世刻……おまえ、さ……
俺に、どれだけ酷な事を言ってるか解ってるか?」

「わかってる……」

「……解ってるのか。そうか……なぁ?
オマエの顔が、豚そっくりになるまで、殴っていい?」

「それで斉藤の気が済むのなら」
「はぁ……っ」

もう一度溜息を吐く浩二。
それから、何となしに空を見上げて、つい先程あった臨時の全校集会を思い出していた。

机を蹴飛ばし、サレスをぶん殴って終わらせたサレスとの会見の後……
世刻望は、状況をぐるりとひっくり返す事をやってきた。

もう、この魔法の世界に用は無い。後は帰るだけだと思って、
元の世界に戻るまでのレクリエーションの一環として、文化祭の準備なんかをしていたら……

望はいきなり臨時の全校集会なんかを立ち上げて、壇上の上に登ると、
皆の前で自分が今思ってる事を説明し始めたのだ。

この魔法の世界が、もうすぐ『光をもたらすもの』との戦いで戦場になると言う事。
罪の無い人達が、戦火に焼かれるのを見過したくは無いと言う事。
『旅団』が敗北すれば『光をもたらすもの』の手が自分達の世界にも及ぶかもしれないと憂いている事。

それらを、沙月のように流暢に喋るのではなく……
何度か言葉に詰まったりしたが、必死に、懸命に、
自分の想いをみんなに伝えようと喋り続ける望。


その結果―――


物部学園は魔法の世界を舞台に繰り広げられるだろう、
『旅団』と『光をもたらすもの』との戦いに参戦する事になったのだった。

望や希美。それに沙月は、永遠神剣のマスターは戦士として、
一般生徒達は、ものべーを使って避難誘導や怪我した人達を介護する衛生班として……


「体育館での演説の後……
オマエは、真っ直ぐに俺の所に来て、頭を下げてきた……
それだけは認めてやる。だから、消えてくれ。一人にしてくれ」

「斉藤……っ!」

「……なぁ、オイ。聞こえなかったのか?
俺は、オマエに、視界から消えてくれと言ったんだよ」


感情を押し殺した声と共に、浩二は望から背を向けた。
望はそんな浩二に何かを言いかけるが、
今は引き下がるべきだとそれを飲み込んで、もう一度だけ頭を下げる。

「……わかった。でも、また来る……おまえに許してもらえるまで……」
「…………」

最後にそう言い残して望は屋上から去っていった。
バタンと屋上の鉄扉が閉じられる音が聞こえると、浩二は本日三度目の溜息を吐く。
彼の神剣『最弱』は、そんなマスターの姿に苦笑をもらした。

『……豚になるまで、殴ってやれば良かったやないですか?』
「永峰やカティマさん達―――世刻軍団を敵に回す事になってもか?」

フッと笑いながら言う浩二。
その言い方に『最弱』は、口では世刻にああ言ったが、
浩二がこの件に関してはあまり怒っていないのに気がついた。

『けど、まぁ……今回は見事にやれれましたなぁ……相棒?』
「まさか、あんな逆転劇をやりやがるとは……こー言うの、なんて言うんだっけ?」
『のぞむー大勝利』

―――グシャッ!

『うげへっ!』
「おまえは時々、メタな発現をするのが珠に傷だ……」

『いてて……いや、今回は冒頭からそんなのばっかやん。
もう、メタありすぎてMETAMAX―――』

「……ライター着火」

『熱いーーーーっ! 熱いぜ! 熱いぜ!
熱くて死ぬゼーーーッ!!!!』

とりあえず、全体の五分の一が灰になった所で、
浩二は『最弱』に力を籠め、燃え移った火を消してやる。
しばらくは焦げた臭いが辺りに漂っていたが、幸いに誰も居ない屋上なので、
やがて臭いは風に吹かれて消えていった。

『……ところで、何の話をしていたんやったっけ?』

「世刻が、俺に何の断りも無く沙月先輩に直訴し、全校集会なんぞを企てて……
物部学園を『旅団』と『光をもたらすもの』との戦いに参戦させた事についてだよ」

『ああ。そうやった、そうやった……けどなぁ、相棒……
言っちゃ何やけど……世刻のヤツは何らやましい事はしてへんで?
今回の騒動は、自分の想いを通す為に、きちんと筋を通しとると思いまんねん』

「……そうだな。独りよがりではなく、きちんと皆に賛否をとり……
その結果として、この流れを作り出したんだからな……」

『フム。その事については異論は無いと?
なら、やっぱり拘ってるのはアレかいな……』

浩二はすでに『旅団』のリーダーであるサレスに、戦いには参戦しないと言い切っている。
しかも、衝動的だったとはいえ、サレスを殴ってもいるのだ。
それなのに、やっぱり自分も戦いますでは面子が立たない。
これではまったくの道化。ピエロである。

「かと言って、一般生徒達までもが衛生兵として戦いに参加するのに……
一応は神剣のマスターである俺が、日和見を決め込むのもなぁ……」

『別にええんとちゃいますか? と言うか、今までの相棒やったら、
ヘソ曲げて、問答無用で参戦拒否してたと思いまんねんけど?』

「そうか?」

首をかしげる浩二に『最弱』は内心で笑う。
彼は、自分では気づいていないのだろうが、随分と世刻望の事を気に入っている。
いや、気に入り始めていると言った方がいいだろう。
だから、サレスにこき下ろされた時は感情的になって怒ったのだ。

『……まぁ、世刻は暁はんの親友やったからな……
暁はんと似た部分もある相棒とは、波長が合うんやろなぁ……』

暁絶と斉藤浩二は、基本的に独りを好む。
だからと言って、人付き合いが悪いと言う訳では無く、
友人の為には色々と世話を焼いてやったりもする。

暁絶が、些細な事で希美と喧嘩してしまった望にたいして、
仲直りのアドバイスをすると共に、彼女の誕生日プレゼント探しに付き合ってやったりするように……

斉藤浩二も、タリアと喧嘩してしまったソルラスカの為に、
『剣の世界』では貴重品であった紙をプレゼントして機嫌をとって来いと、
自らの神剣を切断してソルラスカに渡し、アドバイスをしてやったりしているのだ。

こういう所が、あの二人は似ていると『最弱』は思う。

友人を思い遣る事はするが、自分が定めたラインを越えないように、あまり深入りする事はしない。
広く浅くの付き合いを積極的にする所と、しない所は違うのだが、根の部分は浩二も絶もよく似ていた。
だから、あの二人はウマが合ったのだろう。
それに浩二が、自らの家に招いた事のある友人は、暁絶だけだと言う事を知っている。


『……で、そんな風に浅い付き合いが信条である暁はんなのに……
唯一の例外として、親友というポジションに収まった男が、世刻望―――
根の部分が暁はんとよう似とる相棒が、同じく世刻望に惹かれるのも無理ない話か……』


そう呟く『最弱』も、暁絶の永遠神剣『暁天』の神獣であるナナシと自分が、
非常に良く似た共通点を持っている事に気がついていない。
二人とも自分のマスターに対しては、甘くて過保護であると言う事に……




『……ま、次に謝りに来たら、適当な所で許してやって、
世刻にはでっかい貸し一つと言うところが妥当な所やおまへんか?』




『最弱』がそう言うと、浩二は空を見上げる。




「そうだな……」




風が吹き『最弱』が焦げて出来た灰を空に飛ばしていった―――








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