「―――ハッ!」
気合と共にエヴォリアの右腕から光弾が放たれると、マナゴーレムの胴体を貫いていた。
後ろから迫るレーザー。しかし、それは浩二が『最弱』を盾にして防いでいる。
「よっと!」
「今度はこっちね!」
エヴォリアは、振り向き様に浩二の肩越しから光弾を放った。
頭部を吹き飛ばされたマナゴーレムが、膝をついて倒れる。
近接戦闘に切り替えたのか、別のマナゴーレムが突っ込んで来たが、
それは浩二が棒の形に変えた『最弱』でカウンターをくらわせていた。
「とどめっ!」
吹き飛ばされたマナゴーレムにも追撃の光弾が放たれると、胴体を貫かれたマナゴーレムが爆発する。
空からマナゴーレムが現れると同時に、戦闘が始まって5分弱……
エヴォリアと浩二のタッグは『緑と大地の世界』に現れたマナゴーレム5体を、残さず撃破していた。
「ハッ―――楽勝だったな」
浩二は棒の形にした『最弱』で、肩をポンポンと叩きながら鼻で笑う。
エヴォリアは、一人であったならばもっと苦戦していただろうマナゴーレムの残骸を見て、
改めて斉藤浩二なる少年の戦いにおけるセンスの良さを実感していた。
彼は、浩二は人のフォローが凄く上手い。
居て欲しいと思う場所に居てくれるし、思う通りに動いてくれる。
それはきっと、コンビを組む人間の特性をすぐに理解し、
自分がどう動けば最善であるかを考えているからだろう。
「そうね」
エヴォリアは身に纏っていたマナを収束させると、小さく笑って頷く。
ベルバルザードと共に行動をしていた時は、突撃する彼を自分がフォローするのがメインだったが、
自分の方が面倒を見てもらうというのも悪くはないと思う。
「さて、それじゃミッションが終わったから、俺は写しの世界に戻るが……
オマエはこれからどうするんだ?」
「……特には考えていないわね」
「故郷には帰らないのか?」
「……帰れると思う? いくら家族を人質にとられてやった事とは言え……
幾多もの世界を滅ぼしてきた私が、この血塗られた手で……
家族の手を取ることが許されると思う?」
何気なく言った浩二だったが、悲壮な笑みと共にそんな言葉を返される。
「すまん。軽率だった」
「謝らなくてもいいわよ。自分がしてきた事だしね」
「………なぁ」
「お断りよ。同情なんて結構だわ」
言葉は最後まで言う事無く断られる。
浩二は苦笑した。ならばしょうがないと、後は彼女の人生だろうと。
「そっか。なら、しょうがねーわな」
そう言って『最弱』を腰に挿す。
しかし、そこでじゃあなと声をかけよとした所で―――
「あら? パーティは終わったのかしら?」
―――凄まじい力の存在が、いつの間にかいる事に気がついた。
「エヴォリア!」
「―――っ!」
反射的に飛びずさる浩二とエヴォリア。
「ふふっ……」
そこに立っていたのは女だった。白いマントを背中から羽織った赤い髪の女。
何故か服は着ていない。整った顔立ちに、均整の取れた体躯。
美女であるのは間違いないが、彼女を見たときに感じたのは劣情ではなく戦慄だった。
「……なぁ、おい……『最弱』……アレ? 何だと思う?」
この世界に住む、痴女とか裸族とかだったらいいなとか思うが、
生憎とこの世界には人は一人も住んでいないというのは調査済みだ。
『……エターナルや……ついに、出会ってもうたか……』
呆然とした声で浩二の神剣―――反永遠神剣『最弱』は答える。
浩二はゴクリと唾を飲んだ。ユーフォリアとはまるで違うと。
体格と色気ではない。存在感と、身に纏うマナの量がだ。
「何で……」
エヴォリアの身体が震えている。蒼白な顔で、ガチガチと歯を鳴らしている。
彼女は怯えていた。目の前に立つ圧倒的な存在―――エターナルの前に。
「永遠神剣のマスターが二人……うふふっ。
久しぶりに、食べごたえのある美味しそうな子がいるわね……ん?」
エヴォリアを見て妖艶に笑った女は、隣に立つ浩二を見ると不思議そうな顔をする。
「……貴方……何?」
何と言われても返答に困る浩二。
しかし、だまっていると怒りそうなので、とりあえず答える事にした。
「あっははは。ただの通りすがりです。それじゃ、僕達はこれで―――」
そう言ってエヴォリアの手を取ると、この場を立ち去ろうとする浩二。
しかし、踵を返すと同時に顔を向けた先に回りこまれた。
「……何処へ行くの?」
おまえのいない所だよ! チクショウ!
そう、喉まで出かかったが、何とか抑える。
「いや、その。帰ろうかと」
「……何処へ?」
どこでもいいだろ! バカヤロウ!
ありったけの声で叫びたかったが、何とか我慢する。
「えーと、その……家?」
「そう。おうち……」
もしかして、帰してくれるのか? と一瞬だけ期待した浩二であったが、
次の瞬間にはその期待は粉々に打ち砕かれた。
「でも、帰る必要なんてないわ。貴方達の帰る場所は私なのだから……
そう、私は全てを赦す者。全ては私の中に還り一つになるの!」
「ちいいいっ!!」
バサッと翻るマント。その瞬間に、浩二は『最弱』を抜きながら前に飛んでいた。
反永遠神剣にエネルギーを流し込み、疾風の突きを放つ。
「―――っ!?」
しかし、女の体は景色に溶け込むように消えていた。
害意。肩。浩二は突き出した『最弱』を地面に突き立て、進行方向を変える。
ガキンと硬い物がぶつかりあう音が耳元で聞こえた。
走る。止まってはいけない。足を止めたら終わりだと本能が叫んでいる。
視界の端。エヴォリア。立ち尽くしている。
浩二は舌打ちした。走る方向を変えると立ち尽くしているエヴォリアを脇に挟んで駆ける。
「ちょっ、何するの? 離しなさい!」
「あークソ。てめぇ、あんな所で立ち止まってるんじゃねーよ! 死にたいのか!」
暴れるエヴォリアに怒鳴る浩二。
その言葉にいつもの冷静さを取り戻したのか、瞳に理性の色が戻った。浩二はそれを確認すると手を離す。
疾駆している途中だったが、エヴォリアは危なげなく地面に足をつけると、浩二と併走して走った。
「あれから逃げ切れると思うか?」
「……無理ね。身体能力はあっちのが上だわ」
「空間跳躍は?」
「向こうもできるみたいだから、たぶん無意味。すぐにマナの流れを読んで追ってくるわ」
「そうか……」
浩二は空を見上げる。何処までも澄み渡る青い空。ギリッと歯を鳴らす。
そして、心の中でこれぐらいの困難などいつもの事じゃないかと呟く。
「……冷静になれ。思考を止めるな。考えろ……」
敵が何者であろうと関係ない。立ち塞がる障害は叩き伏せるのみ。
それは、エターナルであろうと、神であろうとそれは同じだ。
「俺が……この俺が、この程度の困難で負けるものか……」
思い込む。自分が負ける筈がないと。信じ込む。自分が死ぬ訳がないと。
根拠はある。何故なら、自分に―――斉藤浩二に……
「ハッ―――エターナルが何だってんだ!
俺に越えられない壁なんて無いんだよ! バカヤロウッ!」
ぶつぶつと何かを言っていた浩二が、突然叫び声をあげると、くるりと反転した。
棒の形にしていた『最弱』をハリセンの形に変えると、
迫り来る敵意に向かって反永遠神の一撃を叩き込む。
何も無い空間にいれた筈なのに、手ごたえと共に快音が響いた。
「―――なに? これ……」
女は戸惑っていた。今までくらった事のないダメージが自分の身体を走ったからだ。
破壊するというような、強力なエネルギーでは無い。しかし、アレは危険だ。
何だかわからないけれど危険だ。空間ごと食らう力は、自分の神経ともリンクしているので、
あのようにカウンターで合わされたらまずい。女はそう判断して、自らの神剣による攻撃に切り替える。
「不思議な子……でも―――」
女の身体がブレた。次の瞬間には姿が消えている。
風を切る音。背後。斬撃が襲ってきている。舌打ちと共に飛び込み前転をきめる浩二。
振り向き様に棒形態にした『最弱』を薙ぎ払った。
―――ギィン!
硬い物がぶつかり合う音が響く。女が微かに笑った。血の気が引く。
浩二が防御体制をとると、腕を鑢の様なモノで削られるような鋭い痛みが走る。
「ぐっ―――」
『相棒!』
「あっ、ああああああああ!!!」
『最弱』を持ちながら、全力で後ろに飛んだ。
着地しても追撃は無い。女は先程までの場所に留まっており、ぺろりと口元を舐めている。
「あはっ、美味しいわぁ……貴方のマナ……
生命力に満ち溢れていて、蕩けてしまいそうな程に深い味わいよ……」
「はぁっ、はぁ、はぁ……」
浩二は『最弱』を薄く延ばしたモノを破って包帯代わりに腕に巻く。
痛みが走った腕は、ボロボロに傷ついていた。掌に近い部分は骨が見えている。
傷つけられたのが表側でよかったと思った。もしも裏側であったならば脈をやれていただろう。
「大丈夫……大丈夫……まだ、戦える……」
高鳴る鼓動を抑えようと、深呼吸を繰り返す。
頭に血が上れば、出血も酷くなる。落ち着けと心の中で言い聞かせる。
「最弱……」
『何やねん?』
「これが、エターナル―――俺達の、敵か……」
『……そうや』
自分の知るエターナル。ユーフォリアとは桁が違う強さだ。
与えてくるプレッシャーが尋常じゃない。ユーフォリアが弱いわけではなく、コイツが別格。
気を張っていないと、足が震えて動けなくなる。
―――強い。強すぎると言っても良いほどに強い。
今までの敵は、ベルバルザードにしても、エデガにしても強敵である事に変わりはないが……
まったく太刀打ちできない程強いとは思わなかった。
だが、アレは別次元の強さだ。段違いどころでは無く桁が二つか三つぐらい違う。
「どうすれば勝てる……」
今までで解った事は、あの女の攻撃で一番厄介なのは空間を削り取るような見えない攻撃。
それも前動作がまったく無しで、いきなりやってくる。
だが、射程範囲はそれほど長くない。精々が5メートル程だ。
後は、空間跳躍なのだが……
あれは前動作として姿が一瞬ブレるので、半呼吸ぐらいは対応の時間がある。
短刀の永遠神剣は、まだどんな力を行使するのかは解らない。
今の所、解っているのはそれだけだ。
浩二は大きく息を吸って、肺に空気を溜め込むと、ブハーッと吐き出した。
能に酸素を取り込んで、活性化しろという願掛けだが、深呼吸は心を落ち着ける効果もあった。
「カウンターしか無いな……」
自分の神剣―――反永遠神剣『最弱』は、神剣の護りを突破し、直撃を叩き込むことが出来る。
マナゴーレム並みの、凄まじい硬さの全身鎧でも着ていたならばお手上げだったが……
幸いなことにあの女は裸だ。一撃でもいいから叩き込めれば、勝機は見えてくる筈だ。
「………ベルバルザード……」
ポツリとその名を呟く浩二。
「………おまえは、本当に強かったんだな……」
弱者である自分が、あの暴威に立ち向かうのに必要なものは武術。戦術。技―――
そして、それらの技術は、力なき人間が、強者に抗うために考えたモノだ。
今までの敵の中で、それらを持ちえた敵はベルバルザードだけだった。
エデガも、あのエターナルの女も、神剣の能力と魔法の強さは凄いと思うが、
そんなモノは奴等の持ってる『永遠神剣』が凄いのであって、
奴等自身が汗水をたらし、努力して得た力ではない。
「負ける、ものか―――っ!」
そんな奴等には、絶対に負けたくないと思う。
強くなろうと努力する者を嘲笑うかのような、始めから強い理不尽な暴力に負けてたまるかと、
浩二は『最弱』のエネルギーの源である、反逆と反抗の想いを強くする。
あの女は、俺を見て嘲笑いやがった。
あの女は、きっとまだ本気なんてだしていない。
それどろか、これを戦いだとさえ思っていないのかもしれない。
遊んでいるかのような立ち振る舞いだ。
―――ギリッ
歯軋りさせる。自分を敵とさえ見なしていないだろう女を睨みつける。
上等だ。刻み付けてやる。エターナルが不滅であるのならば、
永遠に消えることの無い傷と共に、俺をアイツに刻み付けてやる。
「はあああああああっ!!!!」
ダンッと大地を踏みしめ気合を漲らせる。
腰を落とし、切っ先を敵に向け―――最大、最強、最速の一撃を叩き込む。
そんな浩二の想いに応えるかのように、反永遠神剣は波動の螺旋を周囲に放つのであった。
*************************
「なんで……」
エヴォリアは、浩二が反転してエターナルの女の所に向かっていく姿を遠くから見ていた。
戦う彼の横に立つこともできずに、ただ呆然と、その姿を見ている事しかできなかった。
「どうして、向かっていけるの……」
エヴォリアはうわ言のように呟く。理解できない。斉藤浩二なる少年が解らない。
力の差は歴然であるのに、纏うマナの大きさがそよ風と台風ほどに違うのに、
どうして彼は向かっていけるのか?
「怖くないの……死が……」
神剣を振るい、戦う背中―――
傷ついても、諦める事無く構えを取り、雄叫びと共に全身から波動を放っていた。
ギラギラと輝く瞳で敵を睨みつけている。その瞳は負ける事など考えていない。
絶望的な脅威を前にしても、勝つ事だけを考えている。
「私……は……」
負けるかもしれない戦いなど、挑んだ事は無かった。
荒れ狂う暴威の前には、吹き飛ばされないように膝を抱えてしゃがみ込み、
その風が過ぎ去るのを待つだけだった。
けれど、彼は立っている。負けるものかと叫んでいる。
自分では勝てない相手に服従か死を迫れた時。膝を屈して服従する事を選んだ。
理想幹神により、故郷と家族が手に落ちた時。抗おうと思えば抗えたにも関わらず……
今はその時ではない。
いつか、彼等を越える力を手に入れてと自分に言い訳しながら。
―――だが、そのいつかを待った結果はどうだ?
世界を滅ぼす道具として、理想幹神に利用されるだけ利用されて……
最後には砂漠に捨てられ、南天神に身体どころか心さえも奪われようとしていた。
いつか。きっと。そのうち―――
そんな、有るか無きかの都合の良い妄想に縋った結果がこのザマだ。
当然だ。あの結果は当然だったと、今ならそれが解る。
斉藤浩二やジルオルが勝ち続けているのは、運命の神なんかが味方したからなんかじゃない。
彼等はいつも全力で抗っているのだ。
目的の為。理想の為。夢の為。理由は何でもいい。
とにかく今を全力で生きている。
明日は願うものではなく、掴み取るものだと、困難に全て体当たりしているのだ。
「ギムス……」
エヴォリアはツルギを翳す。
自分と共に歩むパートナーにして、未来を掴み取る事の出来る自らのツルギを。
「私も、今から馬鹿になるわ」
危険は避け、利益には飛びつき……
必要とあらば全てを利用してでも伸し上がるのが、一般的に言う賢い生き方だ。
そして、それが今までのエヴォリアという存在のあり方だった。
けれど、それは今この場で捨てる。
自分が何者かであると思っていたなんて、そんなのは思いあがりだ。
小賢しい知恵ぐらいで、上手く立ち回れる程に自分の立つ場所は甘くない。
エターナルという圧倒的な存在の前には、少しばかりの知恵や立ち回りの上手さなど、
何の役にも立たないのだから。
世界一頭のいい虫けらがいたとしても……
逃げ回るだけでは人間の目にはただ虫けらとしか映らないだろう。
だが、たとえ虫けらだとしても、向かってくる虫けらは別だ。
上手く顔の前にでも飛び出てやれば、大の男に悲鳴の一つでもあげさせ、引っくり返す事が出来る。
引っくり返った先に石でもあったならば、殺す事もできるかもしれない。
エターナルという存在の前には、自分など虫けらだという言うのなら、飛び掛ってやろう。
倒す事ができる可能性なんて、何万分の一に過ぎぬのだとしても、戦うならば、抗うならば……
可能性はゼロなんかじゃないんだから―――
*************************
「フフッ―――」
笑い声と共に、女の体が一瞬ブレた。
―――来る。
浩二は全身全霊をかけて意識を研ぎ澄まされる。
針が落ちる音さえも聞き逃さぬように、虫が羽ばたく時に生じる風圧さえも感じ取るように……
全身を意識のアンテナへと変える。
ブッ―――と、次元が歪む音が聞こえた。
「ダッ―――!」
背後。呼吸と共に大地を踏み抜き、振り返る力さえも利用して薙ぎ払う。
インパクトの音と共に確かな手ごたえ。とった―――
「なっ!」
しかし、それは………
「残念。そっちは私の見えない……お・く・ち」
―――見えない空間を削り取る力の方であった。
「ガハッ―――」
女の顔。抱きつかれたかの様に近い。
赤。それは女の髪の色。そして、自分の……返り血。
「げほっ! おっ、ぐ……」
『相棒!? あいぼおおおおおおおおおっ!!!』
エターナルの女が突き出した神剣が、浩二の胸板を貫いていた。
胸から突き刺された短剣の切っ先は、胴体を貫いて先が飛び出している。
「こっ、の……」
それでも浩二は神剣を振り上げる。目の光は消えていない。
しかし、それを振り下ろすよりも早く―――
「ふふっ、あははははは」
―――女は抉り込むように突き刺した神剣を捻り、抜いた。
「ぐぼぉ―――っ」
「浩二ーーーーっ!!」
そこにエヴォリアが飛び込んでくる。女に光弾を放ちながら駆けて来る。
「おっと。あぶない」
「がっ………は」
女は後ろに大きく飛びずさった。それと同時に、浩二は前のめりに倒れる。
血が大地と純白の羽織を赤く染め上げ、水溜りのように広がっていった。
「浩二! 浩二っ!」
エヴォリアは浩二を抱き起こすが、浩二は何も答えない。
「あ……あ、あ……」
この傷は致命傷だ。確かめるまでもない。
死んでいた。斉藤浩二は死んでいた。
絶対を否定するツルギを持ち、運命に抗う少年は……
絶対などないと叫べども……
運命なんかに負けるものかと立ち向かえども、その力及ばず―――
エターナルという名の、絶対の強者の前に膝を折り、倒されたのだった。
「……神剣が……」
死んでも手放さなかった彼のツルギが消えていく。
マスターを追う様に、半身である筈の永遠神剣が消えていく。
「あーあ。やっちゃった……ドジね。私ったら……殺しちゃうなんて……
……でも、貴方もいけないのよ? 大人しくしてれば私と一つになって、
辛いことも。悲しいこともない、永遠に続く幸せを得られたのに……」
そう言って溜息を吐く女。その顔は、心底失敗したと言っている。
「っ!」
エヴォリアは憎しみを籠めた目で女をにらみつけた。
自分が、どうして浩二の死にコレほどの怒りを感じているのかは解らない。
だが、彼女は自分の大事なモノを、理不尽な暴力で面白半分に奪われたような気がしていた。
「貴方は……絶対に、殺すわ……」
永遠神剣第六位『雷火』に、白く輝くマナの光を灯らせる。
それと同時に、身体中からマナの波動が放たれ風となる。
赤い髪の女は、おや? というような目でエヴォリアを見た。
「あら、やっぱり貴方……美味しそうね?
フフッ……前菜は食べ損なっちゃったから、メインだけはしっかり食べないと」
「ははっ、うふふ……そう。貴方達からすれば、浩二も私も餌にしか過ぎない……か。
―――っ! なめるんじゃないわよ! この露出狂の変態っ!」
エヴォリアは思う。自分はおそらくこの相手には勝てない。
ならば、相討ち。永遠神剣の力を最大に解放して、相討ちに持ち込むと。
「はああああああっ!!!」
両腕に白い光を灯らせ、エヴォリアはエターナルの女に向かっていくのだった。