「ぬがっ!」
大木のような腕から振り下ろされる打撃を、浩二は横に転がって回避する。
陥没する地面。弾け飛ぶ岩の欠片。その攻撃は全てが一撃必殺。
―――故にその名を、激烈なる力。
「ちいっ!」
浩二は体制を立て直しながら舌打ちした。
相手が悪い。見たところ自分が相手をしている魔獣が攻撃力に特化した存在で、
ユーフォリアが戦っている方が特殊能力に特化した存在。
神剣の特性上、自分とユーフォリアがこの相手と戦うならば、相手は逆の方が良い。
何故なら浩二の反永遠神剣は、永遠神剣のいかなる能力も霧散する力を持っているのだから。
ユーフォリアは、絶対なる戒にスピードこそ負けていないが、有効な攻撃をできないでいる。
自分は、純粋な膂力だけで殴りつけてくる激烈なる力の攻撃を相殺できずにいる。
敵がこの組み合わせになるように挑んできたのは、深い考えがあってか本能か。
浩二は、何とかして相手を変えられないかと、隙を窺っていた。
「オオオオオーーーーーンンンン!!!」
凄まじい風圧と共に、巨岩のような拳が迫っていた。
重力を制御して上に飛び上がる浩二。
しかし、空中に逃れるもブオンという風圧と共に吹き飛ばされた。
「うわっち!」
再び重力を制御して空中でビタッと止まる。
薙刀を横に振り払い、真空の刃を飛ばすも魔獣の皮一枚を切り裂いただけに終わる。
見ればユーフォリアも追い込まれていた。
彼女は全力全開で戦っているのだろうが、絶対なる戒の方が明らかに格上である。
何故だと思う。彼女はエターナルという超戦士にしては弱い。
神剣の位から考えても互角でなければおかしいのに、
普通の永遠神剣マスターぐらいの力しか出せていない。
素質はあるのだと思う。秘められた力は尋常ではないと思う。
初めて彼女に会った時―――眠っている彼女を見て恐怖した感覚は今も覚えている。
絶対に勝てないと思った。だが、仲間になってから見たユーフォリアの戦闘能力は、
正直に言えば期待はずれであった。
これには『最弱』も不思議そうにしていた。
弱すぎると。エターナルというのはこんなモノではないと。
あの時は軽く聞き流したが、赦しのイャガと戦った時から、自分も時々考えるようになった。
―――本当に弱いのだ。
普通の神剣遣いであるなら十分なレベルだが、エターナルとして見ると弱すぎる。
彼女が手を抜いているとは思えない。
底に秘めているのだろう、不気味な威圧感は今も変わらない。
この矛盾は何なのか?
例えるなら、気配だけは達人なのに、実力は素人。
原因は記憶喪失からきているのだろうか?
しかし、彼女が練達の戦士では無い事は『最弱』が見抜いている。故に記憶は関係ない。
「ぜあっ!」
浩二は、翼を羽ばたかせて突撃してきていた激烈なる力に、重力波を放つ。
しかし、激烈なる力の突撃は止まらない。上から叩きつけるように拳が迫っていた。
「―――ぬがっ!」
咄嗟に『反逆』をかざして受け止めるが、純粋な力で押し切られる。
浩二はキリモミ回転しながら落下していく。
そして、激烈なる力の攻撃もまだ終わっていない。
「ガリオパルサ!」
浩二は落下しながら神獣を召喚した。
追ってくる激烈なる力の横に現れたガリオパルサが、体当たりを食らわせている。
その間に浩二は空中で体制を建て直し、ズダンッと音をたてて着地する。
地上からキッと睨みつけると、ガリオパルサが殴り飛ばされていた。
「コノヤロウ!」
跳躍する浩二。反永遠神剣『反逆』にマナを籠めて激烈なる力を斬りつける。
巨木のような右腕を叩き落した。
浩二は畳み掛けるように次の一撃を激烈なる力の肩に叩き込むが、魔獣は揺らがない。
真紅に光る獰猛な目が自分を睨みつけていた。
そして、次の瞬間に浩二は目を大きく見開く事になる。
なんと激烈なる力は、両断された自分の右腕を、左腕でキャッチすると、
その腕を武器にして殴りつけてきたのである。
「がはっ―――」
横薙ぎに払われたソレを食らって浩二は吹き飛ばされる。
重力制御も間に合わずに壁に叩き付けれた。
衝撃から頭が真っ白になりかける。しかし、なんとか踏みとどまった。
「メチャクチャだな、コイツ……」
脳震盪でクラクラする頭を、首を横に振って浩二が体制を建て直している間に、
激烈なる力は、両断された右腕を、再び切り口に当てて再生している。
苦労して切り落とした腕は、一瞬にして再生されていた。
『マスター。大丈夫ですの?』
「大丈夫に見えるか?」
『見えませんわね』
ガリオパルサが食らったダメージは、神剣のダメージとなる。
それでも、自分を心配してくる『反逆』に浩二は苦笑を浮かべた。
「俺達の能力は、複雑な力を持つ相手には滅法強いが……
あーいう、純粋な暴力で来るヤツには相変わらず相性が悪ぃな」
攻撃の速さは自分の方が早い。
重力制御による、高速に近い斬撃はイャガには通用したが、
あの魔獣にはカウンターを食らわせても押し切られる。
「なぁ、オイ……ベルバルザード……
おまえから対人戦の技はパクッた―――もとい、学んだけど……
あんな、ケダモノと戦う技は教えてもらってねーぞ」
単純な力と反射神経だけで、技も戦術も破られる。
そのくせ、罠を張れば野生のカンとか嗅覚で見破られる。
「きゃああああああああ!!!」
そんな事を考えていると、視界の端でユーフォリアが空中で撃墜されている姿が見えた。
「ユーフォリア!?」
浩二は彼女の所へと飛ぼうとする。
しかし、それを察知した激烈なる力が回り込んできた。
「邪魔を―――」
浩二は飛ぶ軌道を変えて急降下する。
そして、燃えるような瞳で睨みつけると、下から激烈なる力に向かって重力波を放つ。
「するなあああああああああっ!!!!」
咆哮と共に、凄まじいマナが身体から噴き出し、浩二は激烈なる力を上に吹き飛ばした。
そして、力なく落下していくユーフォリアを空中で受け止め、全力で距離を開ける。
「ぜっ、はっ、ぜぇ………」
ユーフォリアと合流する事が出来た。
しかし、今の重力波でかなりの力を使ってしまった。見ると彼女は気を失っている。
服は所々が破れており、致命傷は負ってないものの、傷だらけであった。
「……ユーフォリア」
きっと彼女は、もう戦えない。
ユーフォリアが一体を引き受けてくれる間に、自分はもう一体を倒せなかった……
彼女がアレを相手に勝てない事は解っていた筈なのに。
「おまえ、ここで休んでろ……な」
浩二は気絶している彼女を地面に置いて横たわらせると、一歩前に踏み出して薙刀を構える。
「エターナル二体を相手に、無事に切り抜けようとしたのが間違いだった……
後にはイャガも控えているのだと、力を温存しようとした俺が間違いだった。
もう、いい―――ヤツを倒せずとも、いい……」
自分が個人的な目的に拘りさえしなければ、彼女がやられる事も無かったのだ。
「……敵討ちできなくても………許して、くれよな……『最弱』……」
浩二の周りを風が渦巻いている。
身体は赤い輝きを放ち、神剣からは凄まじい波動が唸りをあげている。
―――全力全開。
それこそが斉藤浩二のスタンダード。
目の前の敵を屠る事だけを考え、余計な考えを取り除き……
勝つ事だけを―――ただ、目の前の敵を打倒する事のみを思考する。
頭がクリアになっていく。目に爛々と輝く強い光。
そこに在るのは絶対強者を前にして、全力抵抗で抗う挑戦者の姿。
後の事など考えていない。この刹那の時にこそ自分の全てがあると言わんばかりであった。
「―――ハハハ」
嗤う。テメェ、何を勘違いしていやがったのだと。
強くなった? だから、今の自分はエターナルとも互角に戦える?
だから、ペース配分して全てをやってのける?
―――何を寝惚けた事を考えていやがるんだ。
「未来なんてモノはなぁ……今を全力で生きる者に与えられるんだ……
強い神剣を手にして、そんな事も忘れたのか……斉藤浩二……」
思い出せ―――
どうして、自分が圧倒的に自分より強かったエデガに勝てたのか。
どうして、赦しのイャガを撃退する事が出来たのか。
「弱かった俺と『最弱』が、ただ一つだけあいつ等に勝っていたのは、戦いに対する想い。
俺は全部をかけていた! あいつ等が俺との戦いにかける想いが、チップ数枚であったのに対し……
俺は全部を―――命さえもかけて、戦いと言う名のテーブルに座っていた!」
戦った相手の中で、ベルバルザードだけが自分の心に残るのは、
彼だけが、自分との戦いに全部をかけていたからだ。
真っ直ぐに自分を見ていた。自分だけを、見ていた……
「―――行くぞ……『反逆』……俺達は王者でも神でもない……
地べたを這いずり回り、どれだけ倒れ伏しても、血反吐と共に立ち上がる人間だ。
天空に住まう神のように、空なんか飛べなくてもいい。
華麗な装飾を纏い、優雅に馬を駆けさせる王でなくともいい。
泥まみれ、埃まみれでもいい……
無様だと、不恰好だと……笑いたい奴等には笑わせればいい」
『………はい』
「だが―――最後に勝つのは俺達だッ!
どれだけの血を流そうとも、どれだけ泥塗れ、埃塗れであろうとも……
最後に立っているのは俺達だ! 文句あるかバカヤロウ!!!」
雄叫びと共に、浩二の放つマナが嵐のような風を巻き起こす。
獰猛に輝いた瞳。勝てると、負ける筈が無いと、信じきっている。
反永遠神剣『反逆』は心が奮えた。これが自分のマスター。
絶対なる永遠神剣の力を否定するツルギが主と選んだ、運命に抗う少年。
ミニオン以下の最弱から這い上がり、最強のエターナルに挑める場所まで辿り着いた男。
『わたくしの……マスター』
今なら心から信じられる。
彼と共に歩むなら、自分は全ての永遠神剣を敵にしても負けたりしない。
それどころか、全宇宙を敵に回しても勝って見せる。
「行くぞ。反逆―――」
浩二は、もう一度そう呟くと、反永遠神剣『反逆』は、力強く答えた。
『はいですわ!』
********************************
―――勝利を引き寄せるのは想いである。
斉藤浩二の放つ反永遠神剣の波動が、
倒れ伏しているユーフォリアの所に届いていた。
「……ん」
彼の力は理不尽なるモノを消し去り、自然な形へと戻す力。
その力は、彼女にかけられていた枷を外す。
浩二がユーフォリアに感じていたものは、間違いではない。
放つ気配こそ凄まじいのに、実力がそれに伴ってはいないのは……
彼女にとある封印がかけられていたからである。
その封印こそが、昨今まで外部存在から時間樹を護り続けてきた最大の理由。
創造神エト・カ・リファの戒名は、エターナルであろうとも適用する恐るべき力。
神の名は伊達ではない。
この時間樹ではエト・カ・リファこそが絶対なるルール。
故に、エト・カ・リファは外部から時間樹に侵入しようとする力の大きな者に対して、
力を奪い去るという戒律を定めたのだ。
その戒律がユーフォリアから本来の力を封印していたのである。
そして今―――彼女は反永遠神剣の波動をすぐ近くで浴び続ける事により、封印と言う名の枷を外された。
「……私……」
ユーフォリアは立ち上がって、自分の手や足、身体中を見つめる。
今まで滞っていた血液が、身体中に流れ出したかのような感覚であった。
この感覚、この力。身体が羽根のように軽い。全身に力が漲っている。
「今の私なら、きっと―――みんなの力になれる!」
ゴウッと、音をたてて彼女の周りに風が吹いた。青白いマナがユーフォリアの全身を包んでいる。
永遠神剣第三位『悠久』のマスターにして、天然自然のエターナル。
エターナルの父と、エターナルの母を持つ、最強たりえる遺伝子をもつ少女。
「ゆーくん!」
ユーフォリアは自分の神剣『悠久』を手元に呼び出した。
手に取ると『悠久』が歓喜の声をあげているかのように感じられる。
帰ってきたと、生まれた時からずっと傍にいる自分のパートナーが戻ってきたと、喜んでいる。
「行こう!」
永遠神剣『悠久』を放ると、それに飛び乗るユーフォリア。
浩二が戦っている。たった一人で魔獣と狂戦士を相手にして負けていない。
あの場所に行こう。そして、共に戦おう。
「私には、あの高みにまで飛べる翼があるのだから―――」
*****************************
目の前を蒼い閃光が駆け抜けた。
魔獣が大砲の玉でもくらったかの如く弾き飛ばされている。
ユーフォリア。先ほどとはまるで違うマナを纏っている。
『やっと、本気を出したのですわね……』
浩二が何事だと思っていると、手元の『反逆』が事も何気に呟いた。
激烈なる力を跳ね飛ばしたユーフォリアは、そのままターンを決めてこちらに向かってくる。
そして、自分の前で急ブレーキをかけるとニコリと笑った。
「私も戦います。おにーさん」
「……おまえ、本当にユーフォリア?」
「もちろんですっ!」
表情が自信に満ち溢れている。
つい先ほどまでは「はわわわ」とか言っていたのに、何があったというのだろうか?
何となくそう思った浩二は、ユーフォリアの頬っぺたを引っ張った。ムニッと伸びる。
「いひゃひゃひゃ」
「……うん。ユーフォリアだな」
この情けない顔は、自分の知るユーフォリアだ。
それを確認した浩二は手を離してやる。
開放されたユーフォリアは、涙目で浩二を睨んだ。
「……おにーさん。嫌いです」
「別に俺の事が嫌いなのは構わんが、何があったのかは説明しろ」
「つーん、だ」
そっぽを向かれる。どうやら拗ねてしまったようだ。
『兄妹喧嘩は後にしなさいな。来ますわよ!』
呆れたような『反逆』の声に、浩二とユーフォリアが同時に振り返る。
向かってきたのは絶対なる戒。この狂戦士の永遠神剣は自分自身の眼と一体化している。
その視線は、あらゆる理法を統べ、対象を管理してしまえる絶対の戒律。
「うおおおっ!! しゃああああああ!!!」
しかし、反永遠神剣はその絶対を否定するツルギ。
浩二が『反逆』に灯した反エネルギーはその戒めを消してしまう。
ユーフォリアがそれと同時に、カタパルトから射出するかのような勢いで飛んでいた。
「いっけえええええええ!!!」
蒼い弾丸が、絶対なる戒の前に迫る。
狂戦士は巨大な氷剣でその突撃を止めるが、ユーフォリアは止まらなかった。
彼女の後ろに青と白の双子竜が浮かび上がる。
二頭の竜が咆哮をあげた。それと同時にユーフォリアを押す力が増幅される。
―――パリン。
その勢いに氷の剣は砕かれた。
押し切る形になったユーフォリアが狂戦士の体を弾き飛ばす。
吹き飛ばされた巨体が原初の壁に叩きつけられると、ユーフォリアが再び浩二の元に戻ってきた。
「強いじゃねーか。ユーフォリア」
「私がおにーさんを護ってあげますね」
「ハッ―――ぬかせよ」
その言葉を合図に二人で飛ぶ。赤と青のマナの光が宙に軌跡を描く。
浩二が薙刀を絶対なる戒に叩きつけた時には、ユーフォリアが激烈なる力を翻弄している。
エターナルを相手に二人は形成を逆転させて押し返していた。
激烈なる力が口から業火を放てば、浩二が『反逆』を薙ぎ払い打ち消す。
その瞬間にはユーフォリア。蒼い流星となった彼女が突撃して弾き飛ばす。
「畳み掛けるぞ!」
「はいっ!」
二人の攻撃は止まらない。ケダモノのような反射神経で激烈なる力は体制を建て直し、
壁を蹴り砕いて戻ってくる。身体中を痺れさせるような咆哮が貫いてきた。
ビリビリと響いてくる振動。大気が震えている。
「うるっせえええええええええ!!!」
浩二は薙刀を頭上で風車のように回すと、横に構えて迎え撃つように飛び上がる。
凄まじい質量の拳が風を殺しながら振り下ろされてくる。
エターナル。激烈なる力の永遠神剣『激烈』は、激烈なる力と完全に同化したツルギである。
その能力は、唯一つだけ。
圧倒的なパワー。特殊な能力など何も無く、単純にただそれだけ。
それゆえに、そのパワーは星をも粉砕する力を持つ。
その拳を、斉藤浩二は真正面から、薙刀で打ち返した。
「うおおおおおおっ!!!!」
しかし、激烈なる力の拳は星よりも重い。
浩二がどれだけの重力を加えた一撃をぶつけようとも、粉砕しようと押し返してくる。
「―――ッ!」
浩二のコメカミには血管が浮かび上がった。それだけ踏ん張っても押される。
ギシッと、奥歯を砕かんばかりに噛み締めた。
ユーフォリアはマナを溜めている。
激烈なる力を斉藤浩二が絶対に止めてくれる筈だと信じきり、
自分は防御する必要など無いとばかりに目を閉じて、最大の一撃を放つ為に集中している。
「……けるか……負けるかッ! 負けるかよ!!!
俺に……できない事なんて、あるものかああああああああ!!!!」
激烈なる力が、そのまま浩二を地面に叩き潰さんとした時。
地に足をつけた浩二は血走った目を大きく見開きながら叫び返した。
身体を覆う赤い光が倍以上に膨れ上がる。
反永遠神剣のエネルギーは想いの強さである。
負けぬと、勝つと、その想いが力となる。
凄まじい波動が『反逆』からは放たれていた。
魔獣の瞳は、自分の攻撃を押し返さんとしている少年の背中に燈の鎧を纏う武人の姿を見た。
それは、ヒトの想いを背負ったツルギが見せた幻であったのか―――
しかし、武人が『反逆』をもつ浩二の手に、自らの無骨な手を重ねた瞬間、
自分を押し返す力が、明らかに強くなった。
「――――!!!」
その時、仲間の危機を察したのか、絶対なる戒が浩二に向かって突進してきた。
そして、激烈なる力に気を完全にとられている浩二に、右手に掴んでいる生首を翳す。
その顔に埋め込まれた両眼こそが、絶対なる戒の永遠神剣『戒め』
全てを戒める絶対なる遵守の力。
―――バサッ!
しかし、その瞳から放たれる光が浩二に届かんとする瞬間。
バサッと音をたて、大きな白い紙が現れて光を遮った。
「―――!?」
邪魔はさせぬと、手を出させぬと言わんばかりに―――
「だらああああああっ!」
やがて、激烈なる力を完全に押し返した浩二が、魔獣の腕を粉砕する。
それと同時にユーフォリアの眼が開かれる。爆音と共に蒼い弾丸が放たれた。
「つらぬけえええええええええ!!!」
彼女の背を青と白の双子竜が押している。
そして、一筋の閃光となったユーフォリアは、激烈なる力と絶対なる戒の胸元を貫いた。
胸に巨大な風穴を作られた二体のエターナルの身体がぐらりと揺れる。
浩二はそれを目に捉えると、腰を落として反永遠神剣を横に構えた。
「我がツルギに宿りし想いと―――」
そして、呟く。
『永遠神剣の暴威を前に、空しく散っていった魂が集う時―――』
そして、謳う。
刀身に灯るのは、絶対を否定するヒトの想い。
その見えない力が……完全に薙刀を包み込んだ時―――
「『 あらゆる奇跡は自然に還る! 」』
―――浩二は反永遠神剣の刃を振り払った。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
マナの粒子となって消えていく激烈なる力と、絶対なる戒。
それが完全に大気の中に溶け込むように無くなると、
浩二は反永遠神剣『反逆』をドスッと地面に突き立てた。
その視線の先には、ゆっくりと歩いてくる少女。
―――ビシッ!
親指を立てた拳を突き出し、サムズアップするのは同時であった。