「それじゃみんな。達者でな」
時間樹を巡る戦いより3年の月日が経ったある日。
魔法の世界にあるドッグに、男女合わせて数人の人影があった。
「うん。浩二くんも元気でね」
斉藤浩二の声に答えたのは、永峰希美である。
彼女は、見慣れた戦闘服に身を包んで浩二の前に立っていた。
「……浩二。ホントに来ないの?」
「ああ」
ルプトナが寂しそうな顔をしながら聞いてくると、
浩二は短く、けれどハッキリと答えて頷いた。
「ううっ……寂しくなるよぉ……」
「そんな顔をするなよルプトナ……カティマさん。スバル。皆をよろしくな」
「はい。斉藤殿が居なくとも『天の箱舟』の名は汚しません」
「浩二くんが描く世界。帰ってきた時の楽しみにしていますね」
一人一人と握手を交わしていく浩二。外宇宙に飛び出した望を追う事になったのは、
浩二を除く『天の箱船』のメンバー全員と、ナーヤにタリアとソルラスカであった。
カティマは新生アイギア王国の王位を正式にクロムウェイに譲渡したようだ。
ルプトナは精霊の世界で長老ンギやロドヴィゴ。レチェレと別れを告げてきたらしい。
タリアは、外宇宙に行くか行かぬかで最後まで迷っていたようだが……
サレスに外の世界を見て見聞を広めてきなさいと諭されて行く気になったようだ。
なにせ、永遠神剣のマスターである彼等の生は長いのだ。
エターナルのように永遠とはいかなくとも、人間とは比べ物にならない時間を生きられる。
理想幹神エトルやエデガが、幾百星霜の時を時間樹の管理神として生きてきたように。
「……暁。おまえも、望を追う事にしたんだな?」
「ああ。故郷を復興させるのは、望と共にこの時間樹に還ってきてからだ」
「そうか……ナナシと仲良くな」
浩二がそう言って絶の隣に立つ少女を見る。
ナナシは以前のように小人サイズではなく、人間と同じくらいの大きさになっていた。
何でも彼女のサイズは、元々はこの大きさなのだそうだ。
「それにしても……」
浩二は顎に手を当ててソルラスカとタリア。絶とナナシを見る。
そして、三年前より立ち位置というか、距離が近くなっているのに目聡く気づいて苦笑する。
「何があったんだろうなぁ……あいつ等」
「むしろ、マスターの方こそ……なぜ何も無いのでしょうね……」
今の彼には地位がある。名誉もある。能力もある。
話術も巧みで、顔も美形ではないが悪いという訳では無い。
故に斉藤浩二が求めれば、大概の女性であれば靡く筈なのに……
どうして彼はいつまでも一人なのだろうと『反逆』は思う。
彼女がそんな事を考えている間に、別れの時は近づいて着ていた。
原初に向かう時に傷ついたものべーも、すでに完治しており、
永遠神剣マスターのコミュニティー『天の箱舟』の拠点たる『箱舟』も、
長い航海に耐えうるようにリフォームと施設の耐久強化がなされている。
「んじゃ、ま……アレやっとくか?」
箱舟の搭乗ゲートの前までやってくると、ソルラスカが笑いながら希美に聞く。
希美はアレというのに、すぐにピンときたのかそうだねと頷いた。
皆もアレで解ったらしく、半円の形に並んだ。
掲げられる永遠神剣。決意を言葉にする少年と少女達。
天高く掲げられた永遠神剣の中で、一回り大きな存在感を纏っていたのは、
倉橋時深によって第三位の永遠神剣に匹敵するぐらいまで強化された、暁絶の『暁天』だろう。
叢雲の力である『暁天』は、ポテンシャルの全てを引き出せばそれぐらいにはなるのだ。
希美やタリアやルプトナ達の神剣も、絶の『暁天』ほどではないが、それぞれに強化されている。
三年前よりも強力なマナを放つ彼等の永遠神剣を見ながら、
浩二は以前よりも『天の箱舟』第二陣の方が強いじゃないかと苦笑する。
そして、やはりこの三年は無駄ではなかったのだと思った。
「………望」
飛び立っていくものべーを見上げながら、
浩二は遠い場所で戦っているだろう親友に呼びかける。
「おまえの翼が、今そっちに向かったぞ……」
広い神剣宇宙で、彼らと望が再び会える確率は限りなくゼロに近いだろう。
しかし、浩二は彼等が望と再び出会うだろう事を確信している。
あの戦いを共に歩んだ自分達の絆が切れる訳はないのだ。
たとえ、どれだけ離れていても、自分達は何処かで繋がっていると信じているから。
「俺に翼は必要ない。この二本の足があれば何処にだって行けるから」
「マスター……」
「なぁ、最弱……見てるか? 見てるよな。俺はここまで来たんだぞ?
剣の世界で冗談のように、俺達で国を作れるんじゃねーかとか言ってたけど……
……おまえと別れてから三年間……必死になって色んな事を勉強したんだ……」
浩二は笑顔であった。晴れやかな表情で、空をじっと見上げている。
そして、隣に立っている少女の頭に手を置いた。ポニーテールに結んだ髪が小さく揺れる。
反永遠神剣の化身である少女は、風の中で屹立している青年の横顔を見た。
「……俺は……やるぞ……絵に描いた餅を現実にしてやる!
オマエが……その存在をかけて救った事に相応しい男になってやる!
俺達も行こうぜ反逆! 俺の物語の第二章の始まりだ!」
「………はいっ!!!」
*******************
「燃やせる物を集めてきましたわ」
「ああ」
とある分枝世界。世界を司るマナが枯渇しかけており、
今にも滅んでしまいそうな世界に、焚き火を囲む青年と少女の姿があった。
「瓦礫の山……か」
その青年。斉藤浩二はポツリと呟くようにそういった。
魔法の世界で一般流通しているローブのような服を身にまとい、
乱雑に自分で切った髪を風に靡かせている。
外宇宙へと旅立った『天の箱舟』を見送ってから2年の歳月が経っていた。
「まるで、暁の世界みたいだ……もう、ここに人は誰も住んで居ないのかな?」
「仕方ありませんわ。もう滅んだ世界なのですから」
「そんな寂しい事を言うなよ。もしかしたら居るかもしれないじゃないか。
こんなクソのような世界でも、それがどうしたコノヤロウと踏ん張って、
どうしようもない今日を変えようとしているヤツが……」
「マスター」
「……ん?」
「人の気配がしますわ」
「なに?」
焚き火を消すと、反逆が指をさした方向に向かって歩き出す浩二。
すると声が聞こえてきた。子供の声だ。十人ぐらいの子供がはしゃぎ声をあげている。
崩壊した世界に、はしゃいだ子供の声という奇妙な現象に、
浩二は瓦礫の隙間から窺うように声の方を見た。
「……子供だな」
「……子供ですわね」
瓦礫の隙間から見た光景は、タライのようなモノで身体を洗っている、
三歳から十歳以下の年齢ぐらいの子供達の姿であった。
子供達がタライのような物で体を洗っている場所からすぐの所に、
ボロボロの布で作った天幕が張ってある。おそらくアレが家なのだろう。
「この世界の生き残り……か」
「おそらくそうですわね。でも、あの子供達を保護している人が誰かは知りませんけど、
きっと人格者である事には間違いありませんわ。
だって、あの子達……こんな世界でも笑っているんですもの」
反逆が優しい目をしていた。
浩二はそんな彼女をチラリと見て、そうだなと頷く。
「んじゃ、ま。挨拶ぐらいはしてくるか」
「そうですわね。もしかしたら、わたくし達で力になれる事があるかもしれませんし」
「おいおい。誰も力を貸すなんて―――言つ!?」
突然言葉に詰まる浩二。
「こらっ、貴方達! 水を無駄にしちゃダメって言ってるでしょ」
「はーい!」
「ぼくしてないよ」
「あたしもー!」
視線の先では、天幕の中から出てきた女性が子供達を叱っている。
普通はそれだけなら驚かない。しかし、浩二が固まったのは―――
「エヴォリアじゃないですの!」
現れたのが、懐かしい女性の姿であったからだ。
「誰っ!?」
叫んだ声が聞こえたのか、エヴォリアがキッと視線を強くして睨んでくる。
束の間だけ浩二はどうしようと迷ったが、隣に居た少女が笑みを浮かべて駆け出していった。
「わたくしですわ!」
「え? 貴方……反逆?」
「そうですわ」
目をぱちくりさせているエヴォリアの胸に飛び込んでいく反逆。
エヴォリアは、まだこの状況に戸惑っているらしく、瞬きをくり返している。
浩二は、はぁっと溜息をついて瓦礫の影から身を乗り出すのだった。
「……よう」
「浩二!?」
斉藤浩二とエヴォリア。
まさかの場所で4年ぶりの再開であった。
********************************
「はい。どうぞ」
「サンクス」
天幕の中に通された浩二は、薄汚いテーブルを前に胡坐をかいて座っていた。
エヴォリアが出してくれた水を一口だけ飲むと、辺りを見回してみる。
薄汚い天幕に、粗末な机。端の方にはこれまた薄汚い毛布が並べられている。
察するにエヴォリアは子供達と共にココに住んでいるのだろう。
「久しぶりね。浩二」
「ああ。あの水と緑の世界で別れたっきりだな」
「そうね……もう随分と昔の事のようだわ」
そう言って向かいに座るエヴォリアを見て、
浩二は、気になっていた事を聞いてみる事にした。
「なぁ、エヴォリア……おまえ、何でこんな世界で子供達と暮らしているんだ?」
「私がこんな世界で子供達と暮らしているのはおかしい事かしら?」
「あ、いや―――おかしいって訳じゃないが……」
「ふふっ。冗談よ……そうね……強いて言えば自己満足かしら……」
それからエヴォリアは語り始める。
水と緑の世界で浩二達と別れてから何をしていたのかを。
浩二達と別れたエヴォリアは、あの後すぐに自分も水と緑の世界から離れたのだそうだ。
それからは分枝世界を当ても無く渡り歩く旅人となり、やがて辿り着いたのがこの世界。
暫定的に『瓦礫と廃墟の世界』と名づけたこの世界であった。
ここにいる子供達は、エヴォリアが分枝世界を旅している時に拾った孤児や捨て子達である。
神々の手先として、幾多もの分枝世界を葬り去った贖罪に、
彼女は朽ちかけた世界を巡り歩き、そこで拾った子供達を育てる事にしたのだそうだ。
「たとえ自己満足でもいいじゃないか。あの子達は今、少なくとも笑っている。
偽善だとか言わせたい奴等には言わせておけ。俺はおまえを認めるよ。
理由は何であろうとも、結果的に人を助ける事に繋がるのなら……それでいいじゃないか」
「クスッ」
浩二がそう言うと、エヴォリアは口元に手を当てて笑う。
「貴方。反逆と同じ事を言うのね……偽善でも構わない。
それで救われる人がいるのなら、それでいいじゃないって」
今のエヴォリアは襤褸を纏ってはいるが、実にいい顔をしていた。
そして、元々はこんな優しい顔だったのだろうと思う。何せ彼女の前世は慈愛の神なのだ。
「こらーっ! 身体を拭かないで走り回るんじゃないですわーっ!」
「キャハハ。ねーちゃん凄いや! 怒ったときのママより速い!」
表からドタバタと喧騒が聞こえてきた。
見ると5歳ぐらいの子供が裸で走り回っているのを反逆が追いかけている。
「今日は泊っていくといいわ。子供達も喜んでいるみたいだし……
まぁ、もっとも……こんなボロ屋でよければだけどね」
「屋根があるだけで上等だよ。それじゃお世話になるとしようかな」
浩二はその晩、エヴォリアの所にお世話になった。
彼女が育てている子供達は、来客である自分と反逆が珍しいのか、
纏わりついてきてうっとおしかったが、きちんと躾けされているのか、
勝手に荷物に手を出そうとしないのだけが好感を持てた。
「ふぁ~~っ」
朝になり、一番に起きた浩二は天幕から抜けだして伸びをした。
ゴキッ、ゴキッと関節をならして体操をする。
「おはようございますですわ。マスター」
「ぬおっ!」
体操をしている所に後ろから声をかけられてぎょっとした顔をうかべる浩二。
見ると、反逆がタライのようなもので子供達の服を洗濯していた。
「洗濯石鹸を使ってしまいましたけど、いいですわよね?
あの子達の着てる服……水洗いしかしてないから、汚れが気になって気になって……」
「構わねーよ。というかオマエ、本当にガキが好きだよな」
「大人のように心が汚れてませんもの」
人の想いを力に変えるツルギの化身らしい答えに浩二は苦笑を浮かべる。
純粋で真っ直ぐな、穢れの無い想いは彼女に心地よいのだろう。
「何処であろうと寝れる訓練をしておいて良かった。
野宿には慣れたんだけど、こんな難民キャンプみたいな所で寝るのは初めてだったんでな」
「わたくしは元々、睡眠なんて必要がないので気になりませんでしたけど……
あ、そうですわ。この洗濯が終わったら、
子供達に朝食を振舞ってあげたいのですが……よろしいでしょうか?」
「いいよ。保存食も調味料も好きなだけ使え。
というか、全部使わなければ十数人分は足りんだろう。
だから全部使え。無くなったら、また何処かで賄えばいい」
「感謝ですわ」
そう言ってニコリと笑う。
「おまえ、ココが気に入ったみたいだな……」
「ええ。だってエヴォリアがいますもの。それに、彼女の子供達も……」
ここに住む子供たちは合計で13人いるのだが、みんなエヴォリアの事をママと呼んで慕っていた。
最年少が3歳児ほどの子供で、最年長の子供でさえまだ7歳ぐらい。
エヴォリアは、この大所帯をよくもまぁこれだけ取り仕切っているものだと素直に感心する。
「そうか。気に入ったか……」
浩二はそう言って青い空を見つめた。
滅びかけの世界。瓦礫と廃墟だけが残っている、マナが枯渇しかけている半死の世界。
言わば掃き溜めである。だが、そこに住まう者達は今を懸命に生きており、
荒んだ顔をしている者など誰一人としていない。
「なら、ここから始めるか……」
「え?」
浩二が始めると言ったら一つしかない。
でも、まさかと反逆は思う。彼の夢を現実のものとするには、
この世界はデメリットこそ山のようにあっても、メリットなど一つもないのだから。
「昨日。エヴォリアから聞いたんだけどよ……この世界は人為的に滅んだ世界なんだってよ。
暮らしを楽に、便利にする為に、機械でマナエネルギーを吸い上げて……
住人の自業自得で滅んだ世界なんだってよ。
それで、マナエネルギーが枯渇したと解ると、住人はさっさと別の世界に移住したんだと」
「それがマスターの夢と何の関係があるんですの?
わたくしはマスターの描く夢に、エヴォリアや子供達を加えるのは賛成ですわ。
でも、始める場所がこんな所で無くとも……もっと、良い世界が……」
「いや、俺はここに決めた。ここから俺の夢は始まるんだ……」
既に滅び去り、人々から打ち捨てられた世界―――
「確かにココは酷い場所だ。いつ滅んだっておかしくないぐらいにマナを感じない。
でも、まだ死んでいない。滅びかけているけど、倒れてはいない。
……それは小さな声かもしれない。耳を澄ましてみないと聞こえないのかもしれない」
―――でも、まだ生きている。
「でも俺には聞こえるんだ。世界の声が……
俺はまだやれる。俺はまだ死んでいない。生きるんだ。生きてやるんだって声が……」
世界から捨てられた人達が、人々から捨てられた世界へ集い、営みを成す。
ハグレ者の世界ならそれでいい。たとえマイナスからのスタートだとしても構わない。
「立ち上がろうと、滅びに抗おうとする想いさえあれば、出来ない事なんて何も無い。
最弱だって、努力すれば最強に届く可能性がある事を俺は知っている」
「……でも」
「大丈夫だ! きっと出来る! 信じろ!」
あまりにも根拠の無い、口先だけの自信であった。
……ならば、次に続く言葉は―――
「―――俺に、出来ない事など無い!」
そう言った浩二に反逆は溜息をつく。
このマスターがこの台詞をヌカシたら意地でもやるだろう。
「落ちる所まで落ちたなら、後は上がるだけだろう!
運命と言う名の理不尽がどれだけ覆いかぶさってこようとも……
俺はその全てを乗り越えて見せよう。俺はその全てを砕いて見せよう!」
浩二は太陽に手を翳す。
「我が夢の始まりし瓦礫と廃墟の世界よ! おまえの声は俺が届けてやる!
口が利けないオマエの変わりに、俺が叫んでやる!」
両手を挙げて、全身全霊で運命を受け止めると言わんばかりに。
すうっと息を吸い込んだ。
そして、ありったけの想いと共に叫び声をあげる。
「俺を捨てた馬鹿共め! ふざけんじゃねえぞおおおおおおっ!
耳があるなら聞け! 眼があるなら活目して見ろッ!
俺はまだ生きているんだ! テメェ等を必ず後悔させてやる!
もう一度立ち上がってやるんだ!
絶対なんてあるものか! 運命なんてクソ食らえだ―――
バッカヤロオオオオオオオオオオオッ!!!」
世界の声を代弁するように叫ぶと、出会った時から変わらない……
少年ような瞳を輝かせて天幕の中に入っていく浩二。
「エヴォリア! 寝てる場合じゃねーぞ。起きろ! 世界だ、世界を作るぞ!」
「………はぁ?」
「この時間樹……いいや、神剣宇宙に存在する全ての分枝世界で一番の世界を作るんだ!
わくわくしてきただろう! 手を貸さずにはいられないだろう?」
「……あの……」
「まずは緑を広げよう。魔法の世界で品種改良に成功した、
どんな不毛の土地でも短期間で育つ樹木を植えていき、大地にマナを取り戻すんだ。
そして土地を耕そう。畑を作ろう。川もゆっくりと浄化していこう」
「えーっと……浩二?」
「エヴォリア! おまえ程の才能をこのまま隠棲なんてさせるもんか。
俺と一緒に行こう。光差す場所へ……俺達で新しい『光をもたらすもの』を始めるんだ」
「……あ、貴方が何を言ってるのか解らないんだけど……」
子供のように瞳をキラキラと輝かせたまま、凄い勢いでまくし立ててくる浩二に、
エヴォリアが戸惑っているような声が聞こえてきた。
やがて朝一番からテンションが上がっている浩二の声に起こされたのか、子供達の声も聞こえてくる。
そして、浩二があまりにも世界を作るぞと連呼するものだから、
子供達も一緒になって作るぞーとか言って騒いでいた。
「………ほんと、世話のかかるマスターですわね……
でも、そんなマスターの傍に居たいと思うわたくしも、馬鹿なのでしょうね……」
少女は笑みを浮かべながら空を見上げる。
「貴方が出来るというのなら、わたくしはそれを信じましょう。
他の誰が笑おうと、反永遠神剣は貴方を肯定し、力となりましょう」
人の想いから生まれたツルギ。反永遠神剣。
その化身である少女は、微笑みながら空を見続けている。
朽ち果てた世界に吹く一陣の風。その風が希望とよべるモノなのかはまだ解らない。
しかし、一度は止まった世界の鼓動が、ゆっくりと動き始めるのを感じていた。
「おーーーーーい!」
絶対に抗おうとする想いは……
「反逆ーーーっ! 何やってるんだ? 来いよーーー!」
「ちょっと、反逆っ! この馬鹿をなんとかしなさいーーーっ!」
「はいはい、今行きますわよ」
運命だって変えられる力があるのだから―――
THE FOOL(聖なるかな)
~ FIN ~