ヴォルケンリッターが現れて、一カ月ほど時間が経過した。
当初こそ、互いにギクシャクしていたものの、今では普通に会話をしている。
と、言うのもはやてとの生活で彼らの性格が当初よりだいぶ柔らかくなったおかげだ。
最近は俺への警戒も完全に解いているようで、一々睨みつけられることもなくなった。
普通に仲良く、食事をしたり遊んだりもするようになった。
ヴィータにいたっては菓子を作れとせがんでくることすらある。特に俺の作る特製アイスクリームがお気に入りのようで、三日に一回は作ってくれという始末である。
しかも、あまりにアイスばかり食べているとはやてに怒られるから三日に一回で我慢しているだけで、本当は毎日でも食べたいらしい。お前は当初の尖がりっぷりはどこに行ったんだ?
シグナムも俺のことを徐々に信頼してくれたようで、将棋をしないかと誘われるようになった。
しかし、この将棋が曲者で、普通にやったら俺が勝ってしまうのだがシグナムは勝つまで何度も勝負を挑んでくる。かといって飛車角落ちなどのハンデを付けたり手加減をすると怒りだすのだ。
おかげで初めてやった時は帰るまで解放してくれなかった。
次からは何回戦やるかを先にを決めてやっているのだが今のところ俺の全勝でかなり悔しがっている。最近は将棋の勉強をするのが日課になっているそうだ。
そろそろ、再戦を申し込まれるかもしれん。覚悟しておこう。
シャマルには料理の指導をしている。
一度、彼女の料理を食べてみたのだがその時に意識を失いかけたので強制的に始めたのだ。
もしはやてがこの料理を食べることになったらと思うと恐ろしいからな。
だが、本人も嫌がってはいないようで熱心に俺の講義を聞いてくれる。
しかし、まだ成果はほとんど表れていない。横で見ていても砂糖と塩を間違えたり、ドジってあり得ない量の調味料を入れたり、それなのに普通に料理を続行したりするのだ。
しかも、目を離すとすぐにオリジナル料理を作ろうとしやがる。
当初こそはやても一緒に指導してくれていたのだが、すぐに匙を投げてしまった。
はやての安全のために頑張っているが俺もそろそろ心が折れそうだ。
ザフィーラとは毎朝、散歩がてら一緒にランニングをするようになった。
以前からやっていたランニングなのだが、はやてにこのことを話すとザフィーラも連れて行ってくれと言われたのだ。守護獣というだけあって獣の本能でもあるのか散歩をしないとどうも調子が出ないそうだ。
その代わりにストレッチや戦闘訓練などを手伝ってくれる。
ザフィーラは俺が本当に戦闘に関して素人なことに驚いていたが丁寧に指導してくれた。
おかげでかなり体捌きがうまくなった。ありがたい。
はやてとは今もほぼ毎日図書館に通っている。
当初はシグナム達も付いてきたのだが最近は送り迎えには来るが館内では二人っきりになってきている。
騎士たちも、俺に気を使ってくれているようだ。
このことが騎士たちと仲良くなった一番の利点といえるだろう。
今までと同じで一緒に本を読んで、たまに話をしているだけだがそれでも二人っきりの時間は楽しい。
はやても騎士たちが来たことで俺が埋めきれなかった寂しさがなくなったのか毎日が楽しそうだ。
出会った当初より、ずっと笑顔の時間が増えている。
そんなはやての姿を見るのは嬉しく、こちらまで笑顔になってしまう。
あぁ、この笑顔がずっと続けばいいなぁ。
そんなこんなで楽しく暮らしていたのだがこの日は一つ、事件が起きた。
今日は土曜日で学校が早く終わった上に図書館も休館だったため、はやてとヴィータとともに公園まで遊びに来ていたのだがそこで不審なものを目撃してしまった。
一見、ただのワンボックスカーなのだが後部座席に中が見えないようスモークフィルムが張られている。
気になって見ていると、フロントドアガラスに一瞬見覚えのある金髪が映ったような気がした。
胸騒ぎを覚えたので確認のために能力を使ってみるとなんと中にはバニングスと月村が捕まっているではないか。
どうやら、誘拐されたようだ。
お嬢様だとは思っていたがまさか誘拐なんてものが身近に起こるなんて……
最悪なことに誘拐犯どもはロリコンで、犯る気満々な様子だ。
……ただでさえレイプの被害者と加害者の心の声はひどく、聞くに堪えないものなのだ。
友人のそんな声を聞いてしまったら一生耳に残ってしまうだろう。
さすがに見逃すことはできない。
とは言え、どうしようたらいいだろう?
と、そんなことを考えているとはやてに声を掛けられた。
「どうしたん希君? なんや急に考え事なんかはじめて」
はやては当たり前のように聞いてきたが、ヴィータは疑問符を浮かべてしまう。
確かに俺は考え事をしていたがその間も普通にはやてやヴィータとお喋りをしていたのに。
やはり、はやてには敵わないな。
……うん、はやてと離れるのは辛いが、少し行くか。
「いや、ちょっと野暮用を思い出してな。ちょっとだけ席を外してもいいか?」
「なんだよ? 野暮用って」
「友人AとBの救出」
「はぁ?」
ヴィータは素っ頓狂な声を上げたがはやては真面目な顔で聞いていてくれる。
「なんか今走っている車の中にやばいものがチラッと見えてしまってな。念のため確認しようかなと思うんだ。勘違いならそれでいいんだが」
俺の簡単な説明を受けたはやては俺をまっすぐ見つめ
「わかった、行ってええよ。ただし、絶対に危ないことはせんでね。ちゃんと戻ってきてよ」
と、心配そうに言ってきた。
そう言われて無茶はできないな。
「分かった。危ないことはしない。遅くとも夕飯までには戻るから安心してくれ」
「……あたしも付いて行こうか?」
はやての様子に冗談ではないと気付いたヴィータは俺を気遣ってついてきてくれようとした。随分と丸くなったものだ。
「ありがとう。でも、お前ははやてについていてやってくれ。何、危険なことをするつもりはないから安心しろ。はやてと約束したしな」
「……わかったよ」
ヴィータも渋々引き下がってくれた。
はやてを一人きりにするわけにもいかないからな。
「じゃ、夕飯楽しみにしているから」
「うん、気をつけてな」
「怪我すんじゃねーぞ」
こうして、はやてたちと別れた俺は誘拐犯を追い始めた。
さて、追いかけるにあたってまず初めにしなくてはならないことがある。
応援の要請だ。
ヴィータに付いて来てもらってもよかったのだが、先ほど言ったようにはやてを一人にさせるわけにもいかないし、これから能力をフルに使うつもりだから見られてしまうのはまずい。
それに子どもの俺が警察に電話してもいたずらだと思われて相手にしてくれないだろう。なにせ証拠がないのだから。
そこで俺はこの話を信じて且つ戦力になりそうなところに電話をすることにした。
「もしもし、高町です」
バニングスと月村の親友、高町の携帯だ。
「高町か。俺だ、一ノ瀬だ」
「希君? どうしたの? 電話だなんて珍しいね」
こいつならきっとおれの話を信じるだろう。
それ経由で高町兄や月村姉にも話が行けばいい。
高町兄と月村姉さえ来れば問題は解決しそうだし、魔法少女のこいつなら戦力としては申し分ない。
だから俺は若干真実とは違うがストレートに現状を話すことにした。
「先ほどバニングスと月村が知らない男の車に引きずり込まれているのを見た。おそらく、誘拐だろう」
「え、えぇ!? ゆ、誘拐!! ど、どうしよう!!」
高町は予想外の事態にかなり驚いていた。電話越しでも混乱しているのがよくわかる。
しかし、全くこっちのことを疑ってこないなんて。俺としてはありがたいからいいんだが。素直な奴だ。
「落ち着け。とりあえず、今そいつらを追跡しているからお前の兄に事情を話して代わってくれ」
「う、うん。わかった。おにいちゃーん!!」
高町はまだ混乱したままのようだったがすぐさま兄に代わってくれた。
「もしもし、一ノ瀬君か。話は聞いた。今どこだ?」
良し、こちらも信じてくれたか。話が早くて助かる。
「臨海公園の辺りです」
「警察に連絡はしたのか?」
「いえ、いたずらだと思われるのでしてません。だから、信じてくれてかつ迅速に動いてくれそうなそちらに電話しました」
「そうか。わかった。すぐそちらに向かうから待っていてくれ」
そういった高町兄はすぐにでも電話を切ってこちらに向かうつもりのようだった。
しかしそれを俺は止める。
「あぁ、でもまだ向こうは移動しているので来るのならアジトらしき場所を見つけてからの方がいいんじゃないですか?」
実際、今から走ってここまで来てもらったところで間に合うはずもない。
それよりも俺が敵の拠点を見つけてからこちらに来てもらった方が効率的だ。
しかし今度は高町兄が俺を止める。
「ダメだ。君がそこまでする必要はない。後は俺たちにまかしてくれ」
きっぱりと、有無を言わせぬような迫力を込めて高町兄は言う。
俺の身を純粋に案じてくれて忠告なのだろう。
ありがたいことなので本来ならその忠告に従って帰っているところなのだが……
状況が状況だからな。
「無理です」
「何?」
俺の返事に高町兄は若干驚いているようだった。
どうやら迫力だけで黙らせることができると思っていたらしい。
普通なら思わずはいと返事をしてしまう程度にはドスの利いた声だったからな。
まぁ、そんな事よりも時間がないので手ってり早く黙らせるか。
「今見失って、また探すとなると時間がかかり過ぎる。その間二人が無事とは限らない。特に、精神的なものが」
「む……いや、しかし君まで……」
「どちらにしろ俺は行くので。今、あなたに俺を止める手段はないでしょう? なら、せっかくなので連携をとりましょうよ。目的は同じなんですから」
「……」
良し、黙ってくれた。納得はしていないようだが。
まぁ、動いてくれるのであれば問題ない。
「では、また電話します。その間に家族への連絡と対処法の相談などをお願い出来ますか?」
「……わかった。だが、無理はするな。危ないと思ったらすぐにでも逃げろ」
「もちろん、そのつもりです」
こうして俺は電話を切った。
これで戦力は大丈夫だろう。
俺は電話の最中に能力を使い、敵の隠れ家まで見つけていた。
しかし、バニングス達がいないのに本拠地を突きとめてしまったら怪しまれる。
うむ、ここは待つしかないな。
だが、万が一の時のために俺だけでも先回りをしておくことにするか。
そう思って俺は敵のアジトまで移動することにした。
さて、俺は今先回りをした奴らのアジト、山奥の廃ビルの近くまで来ている。
月村たちが連れ込まれていないのでもう少し連絡を待とうと思っていたが……
なんだ? 戦闘特化用自動人形って?
いや、月村家メイドが人間じゃなく、自動人形というロボットだとは知っていたがあいつらは普通に心があったぞ?
それなのに此処の奴らは心がないじゃないか。
完璧に命令だけを実行するただの機械なのか。
……参った、これは分が悪い。
俺の戦闘スタイルは心を読んで先読みし、カウンターを入れるものなのに。
そのカウンターだって攻撃力は決して高くない。
応用能力を使うことで初めてダメージが与えられるのだ。
しかし、心がない相手ではその応用能力が通用しない。
と、なると攻撃手段がなくなってしまう。
奴らの装甲がどれだけのものかは知らないが、少なくとも俺のような子供の攻撃で破壊できるものとは到底思えないしなぁ。
……仕方ない、少し早めに連絡を入れることにしよう。
行動が早すぎると疑われるかもしれないがそこら辺はあとでどうとでも誤魔化せばいい。
今は身を隠せて、いざという時の援護もできる場所を探すとしよう。
そう考えた俺は見つからないように気を使いながら監視場所を探した。
そして、ビルからそれほど離れていない木に登り、そこに身を隠した。
ここなら、ビルの内も少しは見ることができる。いざという時の援護がしやすいだろう。
そうこうしているうちに月村たちが近くまでやってきたので俺は再び高町へ連絡をした。
「もしもし、一ノ瀬だ」
「希君! 今どこにいるの?」
高町は俺からの連絡が遅かったからかかなり焦っていた。
「とりあえず大人と代われ」
すると高町は今度は月村姉と電話を替わった。
「一ノ瀬君ね。すずかの姉の月村忍よ」
うむ、聞いた感じ声は割と落ち着いている。努めて冷静でいようとしてくれているみたいだ。ありがたい。
「はじめまして。今奴らは郊外にある廃ビルにいます。今から道筋を説明しますので」
俺は挨拶もそこそこにここまでの最短距離を教えた。
月村姉は地図で確認しながら行き方を確認しているようだ。
「分かったわ、すぐ向かうから」
月村姉がそう言うと同時に電話越しにエンジン音が聞こえた。
何時でもいけるよう、ずっと車の中で待機してたようだ。
これならなんとか間に合いそうだ。
ついでにこちらの状況を簡潔に伝えるとするか。
「なるべく早めにお願いします。視認できるだけでも、見張りが五人はいますから。なるべく見つからないよう注意しますが、見つかったら躊躇なく逃げるんで」
連絡もしたことだし、できる範囲のことはやったからな。
ここに残っているのも、もしもの時のための予防線だし、応援が来たらすぐに逃げるつもりだ。
はやてに怪我するなと言われているし。
「えぇ、遠慮せずに逃げてちょうだい。協力ありがとう」
月村姉は俺の冷たいとも取れる発言にも何も言わず感謝して、電話を切った。
その後、しばらく待っていると月村たちを乗せた車が到着した。
月村とバニングスが車から運び出されるところを視認したが、二人とも縛られてはいるものの怪我はしていないようだった。
すでに心の声で確認済みだったとはいえ、少しホッとする。
俺だって人間だから、親しい友人が怪我しているのを見ていい気分はしない。
はやてが故意に怪我させられたらそいつにはこの世の地獄を見てもらうけど。
しかし、いくら怪我をしていないとはいえ二人の心は恐怖でメチャクチャになっていたし、誘拐犯の心は醜い欲望に支配させられていたので聞いていて愉快なものではなかった。
はっきり言って胸糞悪い。
今手を出したところで救出はできないので我慢しているが。
そうやって監視をしている中、月村とバニングスはそれぞれ別の部屋に運ばれていった。
今回の誘拐は月村家のお家騒動のようだからな。主犯は月村の方に用があるようだ。
なので、月村の方にはまだ手を出す気はないようだがバニングスが危なかった。
誘拐の実行犯と共に別室に運ばれたバニングスは今すぐにでもレイプされそうだ。
やばいな、応援が来るまであと五分はかかる。それまでは持たないだろう。
(いや! 怖い! 誰か! 誰か助けて!!)
気丈なバニングスも今回ばかりは駄目のようだ。
……さすがに友人のこんな声を聞いたら、助けないわけにもいかないだろう。
何より、不愉快だ。
そう思って俺は木を登る前にポケットに入れた石を取りだす。
幸いにも、ここから連中を狙いうつこともできる。足場は悪いが何とかなるだろう。
俺は手に持った石を連中目掛けておもいっ切り投げつけた。
(グヘヘッ、久しぶりの上玉だ。この怯えた表情が何とも。さて、早速頂くとす)
ゴンッと音を立てて、特に気分の悪くなる様な声を撒き散らしていた男の頭部に石は命中する。
そしてそのまま声は聞こえなくなった。
うまく一撃で意識を刈り取ることができたようだ。
(なっ! なんだ!?)
(石! 外からか!)
(ひっ! なに! なんなのよ!)
ゴンッ! ゴンッ! と驚いて固まっている奴と、確認のため窓から顔を出した奴にも命中する。
これで部屋の中にいる奴は全滅だ。
幸い、誰も声も上げなかったので応援が来るまでは大丈夫だろう。
バニングスは混乱しているようだが。このまま、何事もなく応援が来ればいいのだが。
しかし、そうは問屋が卸さなかった。
下方から、いきなり銃弾が俺を襲ってきたのだ。
「っく、自動人形か」
周囲に銃声が響く。
ぎりぎりで回避できたので怪我はないが、状況的には少し拙いことになった。俺ではこいつらには敵わない。できれば、近づきたくなかった。
しかし、そんな俺の気持ちとは裏腹に自動人形はそのまま銃を撃ちながらこちらに接近してくる。
幸い、応援がすぐそこまで来ていて、銃声を聞いてこちらに向かってきてくれていたのでさっさと逃げることにした。
こんなところで死んでたまるか。
俺はすぐに木から飛び降り、応援のいるの方へ駆けだした。
自動人形はこちらを発見し、追いかけてきたが、木を盾にして走って行ったのでなかなか追いつかれない。
スピードはあるが頭はよくないようでただ単に追いかけているだけだった。
ただ、装甲は厚いらしく、けん制に石を投げてみたがびくともしなかった。
天敵ってやつだ。
初めて心の読めない相手と戦ったため、勝手がわからず2発ほどかすってしまったじゃないか。
が、何とか致命傷を受ける前に応援の人たちと合流できた。
視認できた高町兄がすさまじいスピードで俺とすれ違い、自動人形に向かっていった。
危なかった。
「後は頼む!」
すれ違い様にそう言い残して俺はさっさと逃げてしまう。
ここに残ったところで、機械相手では何もできない。
それに自動人形は強かったが呼びだしたの人たちには敵わないだろうしな。
俺はお役御免だ。
走り去る背中越し、高町が何か言っていたが気にせず俺はそのままいってしまった。
俺はダッシュで町まで逃げのびた後、そのままはやての家に帰ることにした。
能力で確認をしたが、誘拐犯たちは予想外の素早い反撃と戦力にほとんど何もできずに制圧されてしまった。
その過程で、高町が魔法少女だとばれたり月村が正体を暴露されたりしていたがなんとかうまく収まったようだ。
やれやれ、面倒くさい事件だった。
俺は能力を切ってこれからのことを考える。
はやてにどうやって怪我のことを説明しよう?
夕方、俺ははやての家の前に到着した。
約束通り夕飯の前にたどりついたが何となく扉を開けれずにいる。
中からなんだか不穏なオーラを感じているからだ。
いや、後ろめたいことがあるからそう感じているだけかもしれない。
先ほどかすった銃弾は運の悪いことに頬に傷を残してしまった。
コンビニで買ったガーゼで治療したが結構深く切ってしまったので血の跡がにじんでいる。
これを見たらはやてはどう思うだろう?
せめてもっと目立たない場所ならよかったんだが……
しかし、いつまでもここで突っ立ていてもしょうがないので、覚悟してチャイムを鳴らした。
中からバタバタという音が聞こえたかと思うと、すぐに玄関の扉が開いた。
「お帰り! 遅かったやん、心配した…………え?」
中から出てきたはやてが俺の顔を見て固まる。
ついでに、一緒に来たヴィータまでも驚いている。
はぁ、やはりこうなったか。
「どうしたん!! その傷――――!!」
「シャマルーーー!! 希がーーー!!」
二人の叫び声が辺りに響き渡る。
そこまで騒ぐほど酷い怪我じゃないんだが……
見た目って大事だな。
後ヴィータ、お前は初期から比べて丸くなり過ぎだ。
この後、シャマル慌ててやってきたシャマルの治療魔法によって俺の怪我はあとかたもなく治った。
痕ぐらいは残るかと思っていたんだが。
そしてそのまますぐにシャマルの説教タイムが始まってしまった。
無茶をするなとか、もっと自分を大切にしろとか、はやてに心配をかけるなとか。途中からシグナムまで入ってきて二人掛かりで怒られた。シグナムの説教は戦術が甘いだとか飛び道具に対する対処がなっていないだとかでなんか違った気もするが。
はやてもヴィータも助けてくれないし。
結局、一時間近くされてしまった。反省が必要だな。
俺が落ち込んでいるとザフィーラが近寄ってきて、無言で肩を叩き慰めてくれた。
ありがたいができれば先ほど助けてほしかった。
「まぁ、希君はもっと自分を大切にしてもらわなあかんけど……やったこと自体は凄いし、かっこええと思うわ」
夕食時、俺が反省しておとなしくしているとはやてはこんなことを言い出した。
「ん……そうですね。我々を心配させたことは感心しないが、人としては正しいことしただろう」
「危険を冒してでもお友達を助けるなんてなかなかできることじゃないわ」
「……別にお前が間違った事をしたとは思ってねーよ。はやてを心配させたから怒っただけだし。あたしは心配してたわけじゃねーし」
「友のために戦うのは男として当然のことだが。誇ってもいいと思うぞ」
どうやら俺があまりに落ち込んでいるから励ましてくれているらしい。
騎士たちまでフォローしはじめてくれた。優しい奴らだ。
「ありがとう、でももう皆に心配はかけないようにするよ」
「うん、そんならええ」
はやてに許すてもらったおかげで俺の元気が回復し、いつも通りの和やかな空気が戻ってきた。
よかったよかった。
こうして、しばらく楽しい夕食を過ごしていると
「そう言えば、希君が助けてあげたお友達ってどんな子なのかしら?」
シャマルがこんなことを聞いてきた。
「あ~、私も気になるわ。希君の友達の話ってあんまり聞いたことないし」
あぁ、そう言えばちゃんと話したことはなかったな。
思えば、学校の話事態あまりしたことがない。
俺は簡潔に二人の特徴を話してあげることにした。
「一人はアリサ・バニングス。実業家の娘のお嬢様。勝気で頭がいい。もう一人は月村すずか。資産家の娘でこちらもお嬢様。おとなしいが運動神経がいい。もう一人、高町なのはという子とともに聖祥小美少女三人組として有名だな」
説明が終わるとピシッと、はやてから出ている空気が変わった。
なんだか怖い。
騎士たちも怯えている。
「……ふ~ん? 美少女三人組か~。ええなぁ、希君。そんな子たちとお友達なんて」
はやては何でもないような口調で話を続けた。
表情も笑顔のままだ。
ただし、目が笑っていない。
「希君が言うくらいやからさぞかし可愛いんやろうなぁ。そら、怪我してまで助けに行きたくもなるなぁ。とゆうかまた美少女なんか?」
「いや、あの、……はやてさん?」
「なんや?」
思わずさん付けで呼んでしまった。
超怖い。
何かヤバいことしてしまったのか、俺は?
「あの……俺、何か気に障ることをしてしまったでしょうか?」
「ははっ、おかしなことゆうなぁ、希君は。私は怒ってへんよ。なんも悪いことしてへんやん。それなのに怒るなんて、理不尽なことするわけがないやん」
いや、現在進行中でしているじゃないですか。
俺は騎士たちに助けてほしいと視線で訴えたが全員に目を逸らされてしまった。
なんて薄情な奴らだ。
「それとも……なんや後ろめたいことでもあるんか?」
はやてから出るオーラが一気に強くなった。
小学生が出していいオーラじゃない。
隣のヴィータが超震えているじゃないか!?
「な、ないです! 決して!」
俺は必死で否定した。後ろめたいことなんて本当にないのになぜか冷や汗が止まらない。
「ほんまかなぁ? なんかやましいことがあるから今まで何も話してくれへんかったんと違うか?」
「い、いや、今までは聞かれたことがなかったから……」
「まぁ、ええわ」
いや、絶対よくないだろう。
いいって顔じゃないじゃないか。泣きそうだ。
しかし、俺の心境などかまわずにはやては尋問を続ける。
「それで、その美少女のお友達とは普段は何をしてるん?」
はやては美少女の部分を強調していう。
それだけのことなのに、なぜか迫力満点だ。
「え、ええと、話をしたりたまにお昼を一緒に食べたりとか……です」
俺の答えを聞いたはやての眼が細まった。
「ほう? お昼をやて? 昼は本を読んで過ごしてるってゆうてなかったか?」
しまった! そう言えばそんなことを言った事があった。
しかし、その時はまだ昼飯を一緒に食べたりしていなかったし、はやてにも『そんな本ばっかり読んでいないで友達とかと一緒に遊んだ方がええよ』って諭された気がするが。
「あのときはまだそこまで仲良くなかったんだ! 決して嘘をついてわけじゃない! それに今だって誘われても偶にしか行かないし!」
「つまり、その子らは断られても誘い続けてるっちゅうわけか。人気者の美少女にそないさせるなんて。さすが希君やな。随分と女ったらしやないか」
はやてがまとう空気がまた一段と恐怖を増した。
なにがいけなかった? 言い訳じみたことを言ったからか? じゃあどうすればいいんだ!
「どうせその子たちにも所かまわず可愛いとかゆうてたんやろ。いややわ、恥ずかしい」
「いや、それは違う」
俺は先ほどまでと違い、真面目な顔をしていった。
はやてが怒っているのはわかるがこればっかりは勘違いしてほしくない。
「俺ははやて以外にそういった事は言わない。愛する人以外に、そういうことを言いたいと思わないからな。先ほど美少女と言ったのだって周りの評価がそうだったから伝わりやすいようにそう言っただけだ。第一、俺からすればはやての方が数百倍可愛いと思うし」
「……ほんまかなぁ」
「本当だ。どんな美少女だろうが、はやてには敵わないさ」
「いや、そっちとちゃうけど……まぁ、ええか」
気付くと、はやてから出る怖いオーラはなくなっていた。
なぜかは分からないがよかった。正直ほっとした。
今までで一番の恐怖体験だったからな。
穏やかになったはやてに安心したのか、騎士たちも会話に参加しだし、また楽しい夕食の時間が戻ってきた。
しかし、なんではやてはあんなに怒ったのだろう?
夕食後、こっそりシグナムやシャマルに聞いてみたが「お前が悪い」としか言ってくれなかった。
なぜだ?
結局、この日この疑問は解消されることはなかった。
翌日、今日も張り切ってはやての家に遊びに行こうと家を出ると黒塗りのリムジンが俺の行く手を遮った。
なんだこれ? 邪魔だなぁ。
そんなことを考えていると車の扉が開き中からメイドらしき人物がでてきた。
この人は……
「一ノ瀬希様ですね。私、月村家メイドのファリンと申します」
月村家のメイドロボか。昨日もいたな。
となると用件は……
「昨日はすずかお嬢様を救っていただきありがとうございました。つきましては、お礼がしたいのでこれから当家にご招待したいのですが。当主である忍さまもお待ちしています」
やはりそう来たか。
律儀な奴だからな、月村は。
しかし、今日は無理だな。
「悪いですが今日はこれから予定があるんで」
今日はこれからはやての家に行くんだ。
ヴィータにアイスを作ってやらなきゃいけないしな。
お礼なんかよりも優先順位は断然高い。
「そうですか。残念です。では、またの機会にご招待したいのでご都合がよろしい日を教えていただけませんか?」
と、言っても俺は休日平日問わず毎日八神家を訪れるからな。
都合のいい日なんてないんだが……
「別にお礼なんて学校で言ってもらえばいいですよ」
「そういうわけにも参りません」
だめか。
しかしどうしたもんか。
これは引き下がってもらえないな。
「都合のいい日なんてものはないんですよ。毎日予定が詰まってますから。お礼がしたいというのならこちらに来ていただけるとありがたいですね。十時くらいには家に帰っていると思うんで」
これが最大限の譲歩だな。
緊急事態ならともかく、それ以外ではやてとの時間を減らすなんてもったいなくてできない。
「かしこまりました。では、本日の十時にまた改めてお伺いいたします。お忙しいところ大変失礼いたしました。それでは」
そう言ってメイドロボはリムジンに乗って去って行った。
面倒なことにならなければいいんだが……
まぁ、とりあえず早くはやての家に行くとするか。
そう思って俺は走ってはやての家に向かった。
今日も一日皆で遊びまくった。
新作のアイスは大好評だったし、ゲーム大会では一等だったし、夕食はおいしかったし、はやては可愛いし、はやては愛おしいし。
ともかく、いつも通り楽しい一日だった。こんな日がいつまでも続けばいい。
いや、続けさせて見せよう。
そう、また心の中で決意し、自宅に帰る。すると家の前に高そうなリムジンが二台止まっていた。
これは……あぁ、今朝の奴か。本当に来たんだな。
「ただいま」
俺が玄関を開けるといつも通り両親が駆け付け抱きしめられた。
「おかえり~! 希ちゃん!!」
「希~! 今日も楽しかったか~!?」
「今日もとても楽しかったよ」
両親の熱烈歓迎を受けていると中からバニングスと月村が出て来た。
やっぱりいたか。
「こんばんは、月村、バニングス。待たせたか?」
俺が二人にあいさつをすると両親は俺を抱きつくのをやめ振り返り二人を見た。
「まあ、ごめんなさい。お客様がいるのをすっかり忘れていたわ。希ちゃん、お友達が来ているわよ」
「希、こんな可愛いお友達がいるならもっと早く父さんたちに紹介してほしかったな。急なことでちゃんとしたおもてなしもできなかったじゃないか」
「あぁ、ごめん父さん。今日来るかもとは知っていたけど、早くはやての家に行こうと思ったらすっかり連絡するのを忘れてしまった」
「なんだ、それなら仕方がないな」
「はやてちゃんのこととなると希ちゃんは他のことが抜けちゃうものね」
ひとしきり両親と雑談していると、二人はボー然とした表情でこちらを見ていた。
両親のキャラに圧倒されているのだろう。
初めてはやてが家に来た時もそんな感じだったな。はやての場合はすぐに慣れたけど。
いつまでも玄関にいるわけにもいかないので、俺たちは待ち人がいるリビングまで移動した。
そこには月村家当主の月村姉とそのメイドロボ、そしてバニングス家執事が待っていた。
俺が部屋に入るなり三人は立ち上がり、メイドロボと執事は深々とお辞儀をした。
「おかえりなさい。夜分遅くに悪いけど、待たせてもらったわ」
「いえ、わざわざすいません。こちらの都合に合わせてもらって」
「構わないわ、面白い話もいろいろ聞けたしね」
そう言って月村姉はバニングスと月村の方を向き、ニヤリと笑った。
二人はなんだか赤くなっている。
……何かあったか?
能力で確かめてみると両親が俺のアルバムを見せながら昔話をしたようだ。
なるほど。確かアルバムには小さいころのお風呂写真もあったな。それで二人は赤面しているのか。
まぁ、どうでもいいか。
俺が気にせずに両親とともに忍さんたちの前に座ると彼女は一つ咳払いをしてから真剣な表情に変わった。
「では改めて。……このたびは妹を助けてくださり本当にありがとうございました。月村家当主として、この子の姉として心より御礼申し上げます」
そう言ってメイドロボとともに深々と頭を下げてきた。
続いて
「わがバニングス家も貴方様に感謝いたしております。アリサお嬢様を救っていただき誠にありがとうございました。本来なら、当主様がお見えになられるつもりでしたがあいにく本日は都合が合いませんで。代わりに、バニングス家執事、鮫島が御礼申し上げます」
バニングス家執事も頭を下げてきた。月村とバニングスも続けて頭を下げる。
「ありがとう、あんたがいなかったら私たち……本当にありがとう」
「それと、ごめんなさい。危険な目に合わせちゃって」
……なんだかこれだけの人にいっぺんに頭下げられると変な感じだな。
この光景を見ても動じずにニコニコしている両親はやはり大物なのかもしれない。
普通、少しは恐縮したりするもんじゃないか?
平然としている俺が言うのもなんだが。
「とりあえず、頭をあげてくれ。そこまでされるとこちらが恐縮する」
してないけど。
話が進まないからな。
実は、結構眠いから早く終わらせたいのだ。
俺の言葉に従って皆は頭を上げた。
「俺自身はそこまで感謝されるようなことをしたつもりはない。ただ知らせただけで実際はほとんど何もしていないしな」
「そんなことはないわ。あなたの行動がどれだけ役に立ったことか」
「そうよ! それにあんた私を助けてくれたじゃない! 私が危なくなった時、危険を冒してまで石を投げて!」
バニングスはあの時の恐怖を思い出してしまったのか、涙目になりながら訴えてきた。
ばれていたのか。
消去法で考えれば、俺しかいないわけだが。
「さすがに目の前で友人が乱暴されるのを見たいとは思わなかったからな。そこまで気にするな。と、言うよりお前は早くあの時のことを忘れたほうがいい」
はっきり言ってトラウマだからな。
男性恐怖症になってもおかしくない。
バニングスはまだ何か言いたそうだったがそれより先に俺は言葉を続けた。
「あぁ、だからと言って感謝を受け取る気がないと言っているわけではない。そこまで大げさにしなくていいと言っているだけだ。そもそも、友人を助けるのは当然のことだろう?」
俺がそう言うとバニングスと月村は少し驚いたような顔をしていた。
一緒に遊んだこともなく、ランチに誘ってもちょくちょく断っていたから友達だと思われていないんじゃないだろうかとでも思っていたようだ。
二人は顔を見合わせた後、今度は頭を下げず、笑顔でお礼を言った。
「そう、じゃあ……ありがとう、希」
「ありがとう、希君」
「どういたしまして」
さて、これで収まったかな。
後はこいつらを返して早く寝ることにしよう。
俺がそう思っていると
「一ノ瀬君、それじゃあ私の気が収まらないから何かお礼がしたいのだけど」
「こちらとしても何か見える形でお礼を致したいのですが。わが家の沽券にかかわりますので」
大人組は納得してくれていなかった。
面倒だな。
まぁ、ここまで来てこの程度で帰れるわけもないか。
仕方ない、何か要求するかな。家に招待される気はないので物でいいか。
「父さん、何か欲しいものある?」
「久しぶりに希の作るアップルパイが喰いたいな」
「分かった、明日作る。母さんは何かある?」
「私は希ちゃんが作るチョコケーキが食べたいわ」
「ザッハ・トルテか、ならそれも明日作る」
両親は特に欲しい物なしか。
はやては何か欲しいとは言っていなかったし、理由もなしに何かあげると怒るからな。同じ理由で騎士たちにもあげられない。
となると
「なら、お宅にある本を貸していただけませんか? 種類は何でもいいんで」
共に金持ちなのだから相当量の本があるだろう。
新しい本を探すのも面倒だしな。その時間をはやてと一緒にいることに使いたい。
「あんた、忍さんが言ったのはそういう意味じゃなくて家に招待したいってことだと思うわよ」
明らかに面倒臭そうに言った俺に対し、バニングスが呆れたように言う。
「知ってる。でも俺はそんなことに時間を取りたくないから。妥協してもらうための案」
「あら? 嫌われちゃったかしら?」
月村姉は困ったような笑顔で聞いてきた。
実際はそんなこと思っていないくせに。
月村と違って腹芸もできるようだな。いや、月村もやろうと思えばできるか。
「そういうわけではないです。ただ、個人的な理由で時間を取りたいので」
「個人的な理由って?」
……ぐいぐい来るな。こっちが素か。
別に言っても問題ないけどそんなに気になるか?
「愛しい女の子と一緒にいる時間を取りたいんです」
あ、目が輝きだした。
「まぁまぁまぁ! はっきり言うわね! どんな子なのかしら?」
なんだ? 聞きたいのか?
「し、忍さん!? あまり人の色恋に首を突っ込まないほうがいいですよ!」
「そ、そうだよお姉ちゃん! 今日はもう夜遅いし」
だ人ぐすと月村は慌てて止めようとしたが月村姉は止まらなかった。
「あら? いいじゃない少しくらい。ねぇ?」
「……なら、すこしだけ」
聞きたいと言うなら眠いけど頑張って話そうじゃないか。
最近ははやての魅力を語る機会が少なくなってたまってきてるんだ。
はやてに言うと怒られるし、騎士たちにははやてが近くにいるせいで語れない、バニングス達は最初こそ聞いてくれたがなぜか二回目からは嫌がるし。
両親以外に話せていないのだ。
まぁ、夜も遅いし少しくらいは短めにしてあげようかな。
「まず、彼女に初めて会った時体中に電撃を浴びたのかと思うほどの衝撃が走った。初めてのことで何が起こったか分からなかったがそれが好きという感情だと気付いた時は体中に喜びが駆け巡った。彼女の表情やしぐさの一つ一つがとても愛おしく、可愛らしい物だと思ったものだ。声を聞いた時なんて天使の歌声とはこのことかと思ったほどだ。いや、俺にとっては彼女が天使そのものだ。会話をしていくうちに恋心はさらに強くなって行った。彼女は性格も素晴らしかったのだ。明るく、優しい。ちょっとお茶目で間違った事をしたらちゃんと叱ってあげれる強さも持っている。素晴らしい。一生ついて行きたくなる。反面、さびしがり屋で何かあると自分一人で抱え込んでしまう弱いところもある。こんな面を見ると俺は何があっても彼女を守ろうという強い決意がわいてくる。彼女のおかげで俺はいろいろと成長できた気がする。さて、導入はこれくらいにしてそろそろ彼女の真の魅力について話すと・・・」
結局、この後も止まらずにしばらく話していると引き攣った顔をした月村姉に止められてしまった。
「も、もういいわ。十分伝わったから」
「ん? まだまだ語りきれていない気がするが?」
「だ、大丈夫よ。あなたの気持ちはわかったから。それにそろそろお暇しないと」
言われて時計を確認するとなんと一時間以上時間がたっていた。
そんなに話した気はしないんだけどな?
まだ第二章の途中なのに。
しかし、明日も学校があるのだ。あまり引き留めるのも悪い。
「ならこれで終わりにするか。続きが聞きたくなったら電話してくれればいつでも話してあげるぞ」
「え、ええ。ありがとう」
なぜか月村姉はとても疲れた顔をしている。
……まぁ、いいか。
この後、俺は借りたい本を選ぶために在庫リストを作ってもらうことを約束して皆を送ることにした。
「それじゃ、また学校でね」
「また明日ね、希君」
「あぁ、二人とも気をつけて帰れよ」
皆を送りだした俺はそのまま今日は風呂に入るのをあきらめそのままベットに直行した。
なんだか最後の方がグダグダ立った気がするが、これで誘拐事件はすべて解決だろう。
明日からまたはやてのことだけを考えて生活ができる。
俺は満足し、笑顔のまま眠りについた。