謎の挙動をみせたアーチャー=サンは、その動作を完遂させる前に深々ととオジギをした。
「ドーモ。ハジメマシテ、ニンジャスレイヤー=サン。アーチャーです」
「ドーモ。ハジメマシテ、アーチャー=サン。ニンジャスレイヤーです」
両者がオジギを交わして戦端が開かれる、その間わずかに0.00002秒!
「イヤーッ!」
アーチャー=サンの腕が目にもとまらぬ速度で動く。
おお・・・なんたる不思議!
次の瞬間、ニンジャスレイヤー=サンの目は、飛来する剣をとらえていた。
「イヤーッ!」
手刀でたたき落とすニンジャスレイヤー=サンの前に、さらなる剣が!
「イヤーッ!」
さらに剣!
「イヤーッ!」
さらに剣! ナムアミダブツ・・・!
アーチャー=サンはゲイシャマジックさながらに、
真空から剣を取り出すように、次から次へと投げつけてくるのだ。
これにはニンジャスレイヤー=サンも防戦一方とならざるを得ない。
彼の背後にはエミヤ=サンがいるのだ。
受け損じるか、避ければ、間違いなくエミヤ=サンは串刺しになってしまう。
アブハチトラズ!
「どうだニンジャスレイヤー=サン。これが俺のアンリミテッド・ユミ・ジツ!」
アーチャー=サンの剣を投げつける手は止まらない。
ニンジャスレイヤー=サンは、この不思議なジツに心当たりがあった。
アンリミテッド・ユミ=ジツは、古事記に記された古のユミ・ジツの一つである。
驚異的な精神統一から生み出される脳波が現実の粒子に干渉し、
あっというまに剣を精製するのである。
このアーチャー=サンが使うジツはそれに違いない!
瞬時のニンジャ状況判断により相手の能力の予測をつけたニンジャスレイヤー=サンだったが、
同時に己の覆しがたい劣勢を悟っていた。
トーサカ=サンがもう一つ別のバイオクサリガマをオイランスカートから取り出し、
油断なくニンジャスレイヤー=サンの隙を狙っているのだ!ナムサン!
ゲイシャのごとく素早く剣を投げつけるアーチャー=サンと、
オイランスカートの裾から鉄球を旋回させるトーサカ=サン。
その光景はまさに地獄のザシキ!
(なにか、打開策は・・・ハイ! アレは!?)
焦るニンジャスレイヤー=サンの視界の端に、たったいま弾き飛ばした剣の一本が映った。
それは間違いなくニンジャスレイヤー=サンの知るカタナであった。
刀身がぼやけて見えるほどの、美しくも妖しいカタナ・・・
(妖刀「ベッピン」!)
かつては彼の宿敵の所有せるカタナである。
なんというインガオホー!
めぐりめぐって、宿敵の武器はいまニンジャスレイヤー=サンの前に垂らされたブッダのスパイダーであった。
(なんとか、あれを手にできれば・・・!)
しかし、次第に飛来する剣をたたき落とす手に疲労が生まれる。
アーチャー=サンは恐るべきユミ・ジツの力で、無限に剣を生み出せるのだ。
その瞬間であった!
「ニンジャスレイヤー=サン! ワッショイ!」
エミヤ=サンが常人のものとは信じられぬ跳躍を見せた――
(前話を書いた未熟なジェネレーター係はケジメしました。御安心ください。)