ここ最近の俺の振る舞いを省みたところ、ふと気付いたことがひとつ。
「新人の皆様の邪魔になっている、ような」
「気付いた……」
「そこに気づくとは……」
「やはり天災」
「今すぐ犠牲の犠牲にしてやろうか」
相談した相手は順にはやて・ヴィータ・ザッフィーだが、もしかしなくても相談相手を間違えたことを今さら悟る。
「まーそもそも、訓練やと出る幕ないやん。前回で懲りたってゆっとったやろ」
「せやけど工藤!」
「誰が工藤やバーロー」
「工藤はともかく、俺だって協力したいんです。ボンバーマンで言うところの、みそボン的なポジションに居座りたい」
「一度爆死したいということだな?」
「松永☆ボンバー☆秀久さんの二の舞は嫌なので、ドッヂボールでいうところの元外野的なシステムを希望します」
「レイザーは敵の外野におもいっきりぶつけてたよな……」
「嘘だとゆーてやオーリィ」
この人たちは逃げ道を塞ぐのが上手いので、会話してるとたまに詰みが来るから困る。
ちなみに詰みというのは具体的には今のように、俺が面白おかしく死ぬしかなくなる状況を指します。
「もういい。お前らにはポケモン世界土産のタウリンその他は使ってやらん」
「なっ……! そんなん聞いてへん! ちょーだい!」
「ののの飲む! 飲ませろ!」
「いやこれポケモン用……」
「平気だって! あたしはもともと人間じゃないから!」
そりゃそうだけど。
と思ったところではやてを見ると、なんだかうんうん唸っておられる。
そして一言。
「い……今までだまっとったけど、実は魔導士も人間ちゃうんよ」
「…………」
「だ、黙んなぁ! なんかゆえアホぉ!」
ダイの大暴言、もといテンパったはやての大暴言はともかく。そういやタウリンなんかのこの手のアイテムは新人の皆様にも有用なのではないだろうか?
そういえばとポケットを探ってみたが、シロガネ山で拾ったこのアメはもしかして……この勝負、もろたで工藤!
と言うわけで、突撃隣の朝ごはん。
「フェイトおおおおおおおおおお!!!」
「………………いっぱーつ」
きょとんとするスバルにエリオ、げっ、という顔のティアナ。その中にあって大変やる気のない声ながら、ちゃんと返事をしてくれるキャロはやっぱりいい子だと思います。
「何なら本当にフェイトがいた方が面白かったと思いませんか?」
「朝っぱらから何ですか。いつから大正製薬の回し者になったんですか」
「タウリンと聞いて、ついついノリで口走ったんだ。どうでもいいけどあのビンの蓋を親指一本で開けるのって人間には不可能らしいね?」
「聞いてないです。超聞いてないです」
「あと最近気付いたんだけど、リポビタンのD、アリナミンのV、オロナミンのCの間に暗号めいた物を感じませんか」
「お前は深く知りすぎた」
!?
「気付いたからには消えてもらいます。さよなら、お師さん」
「うわあああああああああああ」
少し頭冷やそうかのポーズをするキャロ。見えない電撃に撃たれる俺。
ビクンビクンする様をしばらく演じて満足したので、キャロの隣に普通に座る。
「……ふう」
(座った……!)
(何事もなかったように座った……!)
スバルとエリオの視線がブッ刺さってるけど気にしない。本題に入ろう。
「さすがお師さん、打ち上げられた深海魚も真っ青の震えっぷりでした。出口はあちらです」
「遠回しに帰れと言わないでいただきたい」
「エリオくんにスバルさんティアナさん、皆さん拍手でお見送り下さい」
「見送らないでいただきたい! これでもいい物を持ってきたんです!」
「リポDだったら要りませんよ。私のタフなエナジーサイクルは、そんじょそこらの有効成分の作用では満足しないのです」
「うるせえ。ならちょうどいい、このアメでも食って……み……」
口の中にアメを突っ込んでやろうとしたところで、ふと手が止まる。
よくよく考えたらこれも成分は知れてない訳で、タウリン同様いきなりあげたりすると良くないんじゃ……?
「うっ……ふぐっ……!」
「こ、今度は悶えてる……どうしたんですか……?」
「気にしないでくれ……『原作に介入できないと胸が苦しくなる病』の発作なんだ……!」
「今日もアレだな、と思っていただければ」
たまにちょっかいやめたらこの扱い。
「はあ……世の中には……こんなはずじゃなかっ……ええと……あ、お冷取ってくるわ」
「今めっちゃ名言を踏みにじりましたよ、お師さん」
「それはそうと時間の都合がついたらここでウェイターのバイトやりたいなあ、と思います。実現したらよろしく」
「えっ……ええー……」
「よし。スバルのスパゲッティだけソフト麺にしてもらうよう働きかけとくわ」
「な、なななぁっ! なんですかそれ! 最悪の嫌がらせですよ!?」
「額にスパゲッティ巻いた人が何か騒いでる……」
「ハチマキですよぉ!!」
半泣きのスバル。その横ではティアナが、俺がポケットにしまったアメをじぃぃぃ、と見つめているのだった。
(続く)
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あの麺時たま無性に食べたくなりませんか 私だけですか