== 魔法少女リリカルなのは ~ちょっとだけ、やさぐれフェイトさん~ ==
当てもなく走り続け……。
自問自答しても答えは出ず……。
頭の中で色んなことが入り乱れる。
誰も居ない公園で、フェイトは、ベンチに腰掛けた。
「どうすればいいんだろう……。」
『分からないから逃げ出した……。』
フェイトの耳にやさぐれフェイトの言葉が響いた。
第14話 やさぐれとフェイト
確かに声が聞こえた。
自分の中から自分に響く。
『修復が途中まで進むとありえないことが起きる……。
二人とも覚醒しているから話し合える……。
きっと、優先順位的には対等なんだろうね……。』
「もう一人の私……。」
『あたしは、隠しごとが下手みたいだ……。
記憶に制限を掛けていたのに
フェイトにほとんど見透かされてた……。』
「…………。」
『もう、隠しごとはしない……。
辛いことも包み隠さず話す……。
多分、そういう時期に差し掛かってる……。』
「うん……。」
『まず、自分のことから知ろう……。
フェイトの誕生のことから……。』
やさぐれフェイトは、ゆっくりと語り出した。
…
やさぐれフェイトから、フェイトに出生の秘密が語られた。
フェイトは、少し気落ちしていたが、やさぐれフェイトの予想以上には落ち込んでいなかった。
『思ったより、落ち込んでない……。
これは、少し意外だ……。
あたしの苦労は、一体……。』
「そのお陰なんだ。
キーワードに制限が掛かっていたから、
何かの拍子にキーワードへ当たる度に少しずつ気付かされた。」
『あたしの策略って、底が浅い……。』
「常に考えていることが伝わるからね。
完璧な制限は出来ないよ。
それに……君の気持ちは伝わってた。
私を気遣ってくれてた……。」
『うむ……。
主人格が馬鹿だったら、自殺することも考えた……。
だけど、フェイトは、とってもいい子だった……。
だから、あたしも安心して好き勝手を……。』
「そこは間違い!
周りの人が変な目で見てたよ!」
『大丈夫……。
別人格であることもカミングアウトした……。』
「その設定自体が変な人なんだよ?」
『今後のフェイトの人生に幸あれ……。』
「今、諦めたよね?」
『…………。』
「もう……。」
フェイトは、少し怒りながら、そっぽを向いた。
「私、こんなに話せたんだな……。」
『自分自身だから、遠慮がないんじゃないの……?』
「そうかもしれない。」
『満更、悪くもないでしょ……?』
「うん……。」
『あたしの暴走って、フェイトの欲求も加味されてたのかもね……。
フェイトは、少し話さなさ過ぎた……。
その反面、あたしは、言いたいことを言える……。』
「そうだね。」
『あたしの図々しさも悪いことだけじゃないはず……。』
「どうかな?」
『そこは、嘘でも頷く場面……。』
「……違う気がする。」
『まあ、いい……。
それは置いとく……。
次は、アリシアについて……。』
「母さんの本当の娘……。」
『うん……。
どうする……?
フェイトの立場は、取って代わられるよ……。』
「私は、母さんの娘じゃなくなるから……。
それでもいいかな……。
母さんに優しい笑顔が戻るなら。」
『もし、アリシアが助かったら、
フェイトは、どうするの……?』
「アルフと別世界で静かに暮らすよ。」
『フェイトがそれでいいなら、
あたしも従って眠りにつく……。
でも、諦める前に話すべきだと思う……。
プレシアが、アリシアを見て母親であることを思い出せば、
プレシアにも変化がおきるはず……。』
「そうかもしれない……。」
『気持ちは分かる……。
今のフェイトとプレシアは、少し離れているから……。
そして、そのせいでプレシアに自分の気持ちを伝えられない……。
もちろん、これも要因の一つでしかなく、
フェイトが、プレシアの病気に心を痛めているのも知っている……。
・
・
でも、一言いい……?』
「うん。」
『さっきのなのはの言葉を思い出して欲しい……。
人は間違える……。
一人じゃ気付けない時もある……。
プレシアは……フェイトの母親は、
間違いを犯そうとしているかもしれない……。』
「でも……。
それでも、私は……。」
『分かっている……。
最後まで、プレシアの味方でいてあげて……。
だけど、間違いを間違いだとも言葉にしてあげて欲しい……。
これは、なのはがフェイトにしてくれた優しさで、
フェイトがプレシアに出来る優しさ……。
その上で、プレシアがジュエルシードを求めるなら、
フェイトは、なのはと戦えばいい……。
時間はないようだけど、まだある……。
有効に使えば間に合う……。
・
・
フェイトも、次元震を起こす危険性は理解しているよね……?』
「うん……。」
『なら、なのはと友達になる日が来た時、
対等に話をするためにプレシアとも話して置く……。
やるだけやって、なのはとぶつかろう……。
少し辛いけど、フェイトの人生を歩むための試練……。』
「…………。」
フェイトは、目を閉じる。
そして、自分の中で気持ちを整理していく。
「逃げればいいってわけじゃない……。
でも、諦めればいいってわけじゃ……もっとない。
これからの自分を始めるために
今の自分の気持ちをぶつけよう……。」
『敵は、魔王プレシア……。』
「違うよ!
しっかり、お話しするの!」
『冗談だよ……。』
「折角、覚悟を決めたのに!」
『台なしだね……。』
「自分で言うんだ……。」
『それがあたしの生きる意味……。』
「本当に何で、こんな擬似人格が生まれちゃったんだろう……。」
『フェイト……。
君だけは、あたしの誕生を祝福してくれると思ってた……。』
「微妙だよ……。
今さっきまで感動してたのに……。
・
・
思い起こせば、刃牙とか……。
パチンコとか……。
猫とか……。
学校来襲とか……。
敵の子に迷惑掛けて仲良くなるとか……。
その友達にも迷惑掛けて……。」
『あたしの功績が羅列されている……。
照れる……。』
「褒めてないよ?
そして、一番落ち込んでるのが、
母さんにした仕打ちだからね?
これから、話しに行くのに顔を合わせづらいよ……。」
『逆に考える……。
あれだけのことをしたんだから、
恐れるものは何もない……。』
「会ったら、後悔と自責の念が噴出しそうだよ……。」
『優柔不断な奴め……。
あたしが付いてる……。
気をしっかり持つといい……。』
「……そうだね。
こんな爆弾を抱えてるんだから、
気をしっかり持たなくちゃ。」
『フェイト……。
言うようになったね……。』
「皆、君のせいだよ!」
こうして、フェイトは、再び時の庭園へと向かうことを決めた。