あなたは生まれ変わりを信じますか?
僕は信じませんでした。
とはいってもそこは現代日本で暮らすオタク寄りの一般人。
会社でのストレスなんかはニコ○動見たり、理想○郷のSS読んだりで解消していたもんだ。
そんな安上がりなストレス解消法があったから酒もタバコもやらなかったし、風俗なんかも行かなかった。
女性にもてないし、そのための努力だってしなかった。当然、彼女もいなかった。
彼女いない暦と童貞暦はイコールで年齢だ。
そんな人生だったからSSみたいに転生とか憑依とかできたらいいな、とか考えたことは一度や二度ではない。
とはいっても考えるだけだった。
もしもの時のため、内政系に必要な知識を蓄えたりもしなかったし、格闘技に手を出したりもしなかった。
そこまで不満がある生活ではなかったし、友人は片手で数えられるぐらいしかいなかったが、話や趣味の合う連中だった。
まあ、ここまでいえば分かるだろう。
何の因果か、僕は一度死んで転生を果たしたのだ。
さて、この手の転生者だと赤ん坊のときからはっきりした意識があるものだが、僕の場合そうではなかった。
僕に才能がなかったのかは不明だが、転生したとはっきり自覚したのはこの体が10歳になったときの事だった。
それまでの僕は年に似合わず賢い子供と言われる程度で、僕自身もかつての人生(この場合は前世だろうか?)を思い出すこともなく過ごしていた。
SSで見た他の転生者たちが修練などに費やしている貴重な10年間を無駄に費やしてしまったわけである。
少し言い訳をさせてもらえば、10歳になるまでここがどういう世界で何が起こるかという情報が手に入りにくかった。
大抵のSSでは生まれた時点、もしくはその暫く後でその世界における有名人に出会ったり、その世界特有の特殊能力を目の当たりにしたり目覚めたりするものだが、そういったことすらなかったのだ。
まあ、それで前世で一般人であった僕に気がつけといわれても無茶な話だ。
とはいえ、まったく気がつかなかった僕も間抜けといえば間抜けであった。
普通であれば小学校へ通っているであろうに、自宅で家庭教師とのマンツーマン、習い事は多岐にわたり礼儀作法やらなにやらもしっかり叩き込まれた。
さらに言えば自宅は豪華で巨大なるお屋敷であった、しかも洋館である。
使用人は山ほどおり、食事も豪華のものばかり。
今から思えば前世と違いすぎるというのに、疑問にすら思わなかったのだ。
まあ、これが僕の資質であったというわけだろう。
所謂オリ主には成れそうになかった。
さて、これ以上過去を悔やんでもどうしようもないので、これからの人生について考える。
僕が転生を果たした世界はすぐに判明した。
というより、自分自身が所謂原作キャラということを理解した瞬間に、前世の知識が覚醒したというのが正しいだろう。
それほどまでに僕の原作における立場はアレだった。
「どうしよう……」
ヨヒアムなんて名前だから気づかなかったのだ。
「どうしよう……」
どうして門閥貴族に転生したのであろう。
「どうしよう……」
よもや優しいオットー伯父さんが、あのブラウンシュバイク公とは思いもしなかった。
「どうしよう……」
この僕、ヨヒアム・フォン・フレーゲル男爵はいったい、
「どうすればいいんだ?」
割と、どうしようもなかった。