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No.26376の一覧
[0] けいおん モブSS[名無し](2011/05/27 23:56)
[1] けいおん モブSS (2)[名無し](2011/05/27 23:44)
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[13] けいおん モブSS (13)[名無し](2011/09/17 00:49)
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[26376] けいおん モブSS (7)
Name: 名無し◆432fae0f ID:12503c65 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/27 23:47
(7)




つみ重ねた思い出とか。
メモリいっぱいの写真とか。
同じ道を歩いているようでも目指す先は違っていて。
それでもなお。
願って望んだその場所にたどりついてからも私の心を掴んで離さない、ただ愛おしい記憶。




放課後。

「…」
「…」
「…」
「…」

今朝方他でもない、いちごちゃんたっての願いということで、バトン部の新入生勧誘のお手伝いを頼まれた私は。
六時間目の数学の授業が終わるやいなや、

体育館で待ってるから

とこちらの返事を聞くことなく一言だけ寄こして教室を出て行ったいちごちゃんの後を追うべく。
翌日の身体測定のために用意していたジャージに、人目をはばかることなくいきなり着替えだした私。
目を丸くして驚くふみちゃんや、そんなに焦らなくてもいいんじゃないと苦笑する姫子ちゃんの机やら椅子やらにぶつかりながらも。
制鞄と体育館シューズを抱えて、言葉通り、体育館に向けて全力疾走を敢行した。

「…」
「…」

小柄な、青い猟犬のごとき俊足で(別クラスで授業を受けていた帰り、すれ違ったというよしみちゃんに、後日そう言われた…)たどり着いた体育館は二階建て構造になっている。
一階部分は剣道部と柔道部が活動する武道場。
二階部分はバレー部、バスケ部、そしてバトン部が活動する。
三部間では、バスケットボールコート二面分の広さを、一面ずつ使用するローテーションが組まれており。
全国大会常連であるところのバトン部は、使用頻度においても他より優遇されている、とはバレー部長であるアカネちゃんの談。

「…」
「…」
「…」
「…」

授業が終わったばかりで人もまばらな屋内では、バレー部と思しき生徒達がネットの設置作業を行っている。
かくいうバトン部の人たちは、というと…、

「…」

部長であるところのいちごちゃんと、

「…」

お手伝い要員の私以外、まだ、その姿を見ていない…。

「…」
「…」
「…」
「…え、と」

体育館に入って、ジャージ姿のいちごちゃんを見つけて、声をかけてから、というもの。
私たちはただの一言も発することなく、見つめあっている。
…というには、語弊があるかもしれない。

「…」
「…」

ネットを設置し終えたバレー部の二年生達の(ジャージの色が赤い場合、二年生のカラーだ)、

なんだか緊迫した雰囲気だね…
こ、こ告白するのかなっ?

という、本人達は囁きあっているつもりかもしれないけれど、こちらまでまる聞こえな声は、この際、気にしないことにするとして。

「…」
「い、いちご、ちゃん…?」

堪らず声を漏らしたところで、はたと気づく。
彼女の視線の先。
その終点を追うところ、私の目というより、顔というよりはもっと下。
私が山のように抱えている、その手元を凝視しているようで。

「…」
「あ、こ、これのこと?」
「…」
「ここに来る途中でたくさんもらっちゃった…。おかしいよね、私三年生なのに、新入部員勧誘のビラもらっちゃうなんて」
「…童顔」
「はぅっ」
「ちび」
「はぅぅっ」
「…鬼太郎」
「き、鬼太郎は関係ないでしょーっ」

じたばたじたばた

「ふ…冗談」

そ、そんなふうには聞こえなかったんだけど…。
でも、口の片端をつり上げて笑う、そんないちごちゃんを見ていると。
三年生なのに躊躇無く新入生勧誘のビラを渡されてしまうのも、別に気に病むことじゃないのかな、と。
そんなふうに思えるから不思議です。
…このビラは数学の計算用紙にでも使うとしよう。

「中庭、今年も騒がしいんだ」
「え?あ、うん、そうだね。運動部の勧誘、すごい盛り上がってたみたいだよ?」
「部活棟の廊下も、人でいっぱいだったしね」
「そうなんだ…。あれ?いちごちゃん、そっちから来たんだね」
「うん。だってこっちのほうが、二階から直接入れるし」
「あ、そっかぁ。エリちゃんの屋内練に付き合ってたから、なんだかこっちのルートが身についちゃってたみたいで」
「仏像中毒女の自主練?」
「う、うん」

桜高のバトン部とバレー部は伝統的に仲が悪い、なんて言うけれど。
良い意味で、いちごちゃんはエリちゃんに容赦がない。
その逆もまた然り。
ちょっとだけ。
ほんのちょびっとだけ。
そんな二人の関係がうらやましいな、なんて、思わなくもない、かな…。
ふみちゃんや姫子ちゃんに言ったら、きっと苦笑されるけど。

「でも」といちごちゃん。

「私が着替え終わった時点で着いてるなんて」
「え?…うん、走ったからね」

中庭も駆け抜けようとしたはずなのに…。
勧誘につかまってしまう私って、いったい…。

「流石は全国レベルのスプリンター。鍛え方が違うよね」
「…元、だけどね」

いちごちゃんにしては珍しく、素直に評価してくれる言葉に。
はにかむ、というよりは、どうしても苦笑気味に返してしまう私。
そんな困惑したような、萎縮したような私を見て、いちごちゃんはつり上がった口端を元の角度に戻すと、

「ごめん」と短くつぶやいた。

「しずかにはこんな言い方、気まずいだけだよね」

分かってるはずなのにね

その無表情の中にも様々な感情の色を感じることができるようになった私は。
ただ純粋な悲しみに色どられてしまった親友の瞳を。
それでも。
違うんだよって、ひたむきにみつめ返すよう自分に課すことしかできなくて。

そんな顔、させたくないのに。

思うことをうまく伝えられない口。
無闇に動かそうとすれば、それこそ場違いな何かが飛び出してしまいそう。
どうにかして「いちごちゃん…」と一言。
親友の名前を呼ぶことでしか、今の私には応えられない。

なにか。
なにか、いわないと。
でも、なんていえばっ

「だいじょうぶ」

平坦な言葉と共に、ふうわりとやさしい香りに包まれる。
少し控えめな、それでも私よりかはあるふくらみに押し付けられる鼻先。
いちごちゃんに、抱きしめられている。

「だいじょうぶ」と繰り返される声。
背中に回ったすらりと長い腕にこめられた力が、今は不思議と心地よくて。
いちごちゃんの不思議な、優しい、熟したいちごのように甘い香りも相まって。
私の胸の中に立ち込めた薄暗い何かが、すっきりと晴れていく―。

「一年生のときのこと、覚えてる」
「…うん」
「しずかはあのとき、私たちのために必死で走ってくれた」
「うん…」
「しずか」
「…うん」
「しずかは、いつも誰かのために走ってる」
「…」
「私は、そんなしずかが好き。かっこいい」
「いちごちゃん…」
「でもね」

遠ざかる香り。
頭ひとつ分上から見つめられる。
肩に置かれた手に、きゅっと力がこめられたのが分かった。

「自分自身のために走るしずかも、見たいよ」
「…私は…」
「だいじょうぶ。ひとりじゃないから。みんながいるから」

だから、自分のために走りなさい。

それは私に向けても。
そしていちごちゃん自身にも言い聞かせるような、そんな言葉で。
どこまでも深い、優しさのたゆたういちごちゃんの瞳は、ただただ綺麗で。
やっぱりいちごちゃんは可愛いなぁ、なんて、少し場違いなことを思った。

「―えー、ぅぉほんっ」
「えっ?」
「きゃっ?」

すぐ横でわざとらしい咳払い。
驚いた拍子に再度抱き合ういちごちゃんと私。

「おーおー、お熱いですなーお二人さんっ」
「見てるこっちが恥ずかしかったよ…」
「え、え、ええエリちゃん、アカネちゃんっ?」
「やっほー」
「邪魔してごめんね二人とも。…ほらほら、見せ物じゃないんだから、早く勧誘に行ってきなさい。あなたたちは見学に来る子たちに練習見せられるように、アップっ」

は、はいっ
いってきますアカネ先輩っ
いいなーあたしも若王子先輩に抱きしめられてみたいなー
木下先輩かわいかったーっ

三々五々に散ってゆくバレー部員たち。
数が、増えて、る…っ。

「まったく」とため息混じりにアカネちゃん。

「人目っていうものもあるんだから。その辺のこともちょっとは考えなさいよね」
「え、あ、わ、私たちは、べつにそういうっ」
「あー、はいはい、分かってる分かってる。冗談だよ冗談」
「しずか、それ以上は反則。かわいすぎ」
「えっええっ?」
「いちごも。歓迎会の出し物の練習するんじゃなかったの?」
「…」
「いちご?」
「あぁーれぇー?そんなに顔真っ赤にして、どうしたのかなぁいちごちゃーん?」
「ちょ、かお、顔近いっ」
「なんかあたしのことも仏像狂いやらコーラ中毒やら好き勝手言ってくれちゃったりしちゃったりしてるみたいだしーっ?」
「別に。ほんとのことなんだからいいんじゃない」
「い、いいわけないでしょっ。この阿修羅娘、どの口がそれを言うかっ」
「…貧乳教(ヒンドゥー教)」
「にゃにをぉーっ」

アーユルヴェーダなめるなよこんにゃろーっ
どたどたばたた――

…い、行っちゃった…。

「…こういうの、なんて言うんだっけ」
「え、と…お、お約束、かな…?」

新入生歓迎会まで、あと、二日っ。




つみ重ねた思い出とか。
メモリいっぱいの写真とか。
同じ道を歩いているようでも目指す先は違っていて。
交わっては離れてを繰り返す、君と私の進む道。
それでもなお。
願って望んだその場所にたどりついてからも私の心を掴んで離さない、ただ愛おしい記憶。


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