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No.26407の一覧
[0] 【ネタ完結】魔法少女リリカルなのは A's ~ちょっとだけ、やさぐれフェイトさん~[熊雑草](2011/04/09 00:45)
[1] 第1話 フェイトさん、またやさぐれる[熊雑草](2011/04/12 01:05)
[2] 第2話 やさぐれた戦いの結末……[熊雑草](2011/04/12 01:06)
[3] 第3話 やさぐれの帰宅Ⅰ[熊雑草](2011/07/09 14:18)
[4] 第4話 やさぐれと守護騎士[熊雑草](2011/04/12 01:07)
[5] 第5話 やさぐれと守護騎士の主[熊雑草](2011/04/12 01:07)
[6] 第6話 やさぐれとの生活①[熊雑草](2011/04/12 01:08)
[7] 第7話 やさぐれとの生活②[熊雑草](2011/04/12 01:08)
[8] 第8話 やさぐれとの生活③[熊雑草](2011/04/12 01:09)
[9] 第9話 闇の書の秘密[熊雑草](2011/04/09 00:40)
[10] 第10話 監視者の日記[熊雑草](2011/04/09 00:40)
[11] 第11話 やさぐれの帰宅Ⅱ[熊雑草](2011/07/09 14:18)
[12] 第12話 何かが捻じ曲がっていく[熊雑草](2011/04/12 01:09)
[13] 第13話 フェイトとなのは、久々の再会[熊雑草](2011/04/12 01:10)
[14] 第14話 そして、時空管理局では……[熊雑草](2011/04/12 01:10)
[15] 第15話 そろそろ幕引き……[熊雑草](2011/07/09 14:19)
[16] 後日談・第1話 あれから、三年……[熊雑草](2011/07/09 14:20)
[17] 後日談・第2話 喫茶店会議①[熊雑草](2011/07/09 14:20)
[18] 後日談・第3話 喫茶店会議②[熊雑草](2011/07/09 14:21)
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[26407] 第12話 何かが捻じ曲がっていく
Name: 熊雑草◆890a69a1 ID:96ed7643 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/12 01:09
 == 魔法少女リリカルなのは A's ~ちょっとだけ、やさぐれフェイトさん~ ==



 プレシアは、盛大に溜息を吐いた。


 「仕方がないから、私が間に入ってあげるわ。
  その闇の書の関係の人と話をさせてくれる?」

 「うん……。
  電話して確認してみる……。」

 「何人ぐらい居るの?」

 「主のはやて……。
  管制人格のリインフォース……。
  烈火の将・シグナム……。
  鉄槌の騎士・ヴィータ……。
  盾の守護獣・ザフィーラ……。
  湖の騎士・ヘモス……。」

 「六人も居るのね。」

 「そうだよ……。」

 「時空管理局にも連絡を入れないといけないけど……。」

 「それは、闇の書の関係の人の
  お許しが出てからでいいんじゃないの……?」

 「そうね。
  じゃあ、終わったら、連絡してくれる?」

 「分かった……。
  時空管理局は、なのは経由でお願いする……。
  闇の書関係は、フェイトの部屋の携帯に電話番号が入ってるから、
  今から電話掛けて来る……。」


 やさぐれフェイトがリビングを出て行った。
 残されたアルフがプレシアに話し掛ける。


 「あのさ……。」

 「何かしら?」

 「フェイトの携帯がこの家にあって、
  そこに連絡先の電話番号があったんなら、
  フェイトの携帯から電話掛ければ連絡取れたなって……。」

 「…………。」


 プレシアは、激しく項垂れた。



  第12話 何かが捻じ曲がっていく



 八神家へ、二度目の電話……。
 やさぐれフェイトからの電話に誰かが出た。


 「あたしだ……。」

 『…………。』

 「返事しろ……。
  シグナム……。」

 『…………。』

 「この前、レヴァンティンのカートリッジに、
  ネギを詰めたのはあたしだ……。」

 『やっぱり、お前か!』

 「聞こえてんじゃん……。
  何で、返事しない……?」

 『私は、マナーを教えたはずだ。
  しっかりと自分の名前を名乗るようにと……。
  だから、名前を言うまで待ったのだ。』

 「オレオレ詐欺の防止策か……。
  くだらない……。」

 『な……!
  お前……!』

 「名前ぐらいディスプレイ表示しろ……。
  ごめん、機械オンチのシグナムには設定無理か……。」

 『久しく覚えがないぞ……。
  これほどの怒りを覚えたのは……。』

 「ゆとり教育のせいじゃないの……。
  キレ易い大人に育って……。」

 『この国で教育を受けた覚えはないのだがな!』

 「じゃあ、染み付いた哀しい性か……。
  修正出来ないところまで汚染は広がり、
  毒が末端まで広がり切ってしまったんだね……。
  さようなら……。
  シグナム……。」

 『何の話をしている!』

 「シグナムのどうしようもない性格……。」

 『お前を殺す……!』

 「最近、ガンダムWを見てたからね……。
  ヒイロ・ユイがいいって言ってたもんね……。」

 『全然違う!
  一体、何の用だ!』

 「話を逸らしたのはシグナム……。」

 『さっさと話せ!
  悪戯電話なら切るぞ!』

 「別に切ってもいいけど、後悔しない……?」

 『するか!』

 「そう……。」


 やさぐれフェイトは、電話を切った。


 …


 八神家……。
 リビングで大声を出していたシグナムに、全員の視線が集まっていた。


 「信じられん……。
  本当に切った……。」


 シグナムは、乱暴に電話の受話器を置いた。
 その態度に誰もが、相手が誰か分かっていた。
 頭から湯気が出そうなシグナムに、シャマルが話し掛ける。


 「やさぐれちゃんですか?」

 「アイツ以外に誰がいる!
  悪戯電話でも、ここまで悪質じゃないぞ!」

 「あはは……。」

 「しかも……!
  分解整備中のレヴァンティンのカートリッジに、
  ネギを詰めたのはアイツだ!」


 憤慨するシグナムに、ヴィータが話し掛ける。


 「いや、アイツ以外に誰がやるんだよ?
  私達は、自分のデバイスの大切さは、嫌って程、知ってるぞ?
  大切な相棒だからな。」

 「……その通りだったな。」

 「だから、アイツがキャラメルでベタベタにした時、
  マジで殺そうかと思った。」

 「そんなこともあったな。
  思い出したら、余計にイライラして来たが……。」

 「でも、主人格のあの性格の正反対さには吃驚したよな?」

 「あれを見ると耐えられる……。
  あまりの哀れさに耐えられる……。
  ・
  ・
  怒りが静まって来た……。」


 シグナムが落ち着きを取り戻し、はやてが微笑む。
 はやては、リインフォースに話し掛ける。


 「フェイトちゃんの方は、凄く落ち着いてんのよね?」

 「はい。
  少し恥ずかしがり屋で、食事の準備や後片付けもしっかりと。
  そして、その彼女が土下座するのは……。」

 「そうやね……。
  でも、それでいて、お互い嫌ってないのが不思議なんよ。」

 「何故、彼女達に信頼関係が築かれているのか……。
  大いなる謎ですね。」

 「ザフィーラは、どう思うん?」


 はやてが、ザフィーラに振ってみた。


 「私は、少し思い当たる節がある。
  最初の戦闘の時、主人格の彼女が信頼して、
  自分を傷つけてまで呼び出したのが壊れた人格の方だった。」

 (褒めてるみたいだけど……。
  ザフィーラも意外と辛口なこと言うとるなぁ……。
  壊れた人格って……。
  あの赤毛の犬の彼女の嘘話が、まだ許せないんやろか?)


 やさぐれフェイトの前科は、日々増えていっている。


 「そして、一番許せないのが……。
  あの壊れた人格の方に恩が出来たということだ……。」


 はやて以外にズーンと黒い影が落ちた。


 「はは……。
  この前、やっと話してくれた闇の書の……。
  呪いを解いてくれたんやっけ?」

 「あんなの有り得ない……。」

 「封印するでもなく……。」

 「防御プログラムを改竄するでもなく……。」

 「更に壊すって……。」

 「結果、機能を停止しましたが……。」


 そして、専門家に話を聞きに行くと、闇の書を持って八神家を勝手に出て行った。
 八神家に微妙な溜息が溢れた。
 ちなみに、はやての体への影響がないことにより、守護騎士達は、やっと真実を語ることが出来たばかりだった。
 尤も、口を滑らせたのは、ここに居ないやさぐれフェイトである。


 …


 十五分後……。
 八神家のインターホンが鳴った。
 シャマルがインターホンの受話器に走る。


 「はい。」


 しかし、シャマルを無視してドアノブが回り、やさぐれフェイトが入って来た。


 「何してんの……?」

 「だったら!
  何で、インターホンを押したんですか!」

 「連れが世間のルールだからとか言って……。」

 「はい? 連れ?」


 玄関のドアから、そっとプレシアが覗いていた。


 「どういう知り合い?」

 「シグナムが用件を言う前に切ってもいいって……。
  だから、勝手に連れて来た……。」

 「…………。」


 八神家を妙な沈黙が数秒支配する。
 既に上がり込んでいる、やさぐれフェイトの襟首をシグナムが掴んだ。


 「あの話は、本気だったのか!」

 「何言ってんの……?
  頭湧いたの……?」


 シグナムのグーが、やさぐれフェイトに炸裂した。


 「あんな話、信じられるか!
  ひやかしだと思ったに決まっているだろう!」

 「自分で話を切り上げたくせに……。」

 (私が悪いのか……?)

 「「「「「いや、シグナム悪くないから。」」」」」


 はやて達から的確なフォローが飛んだ。


 「お邪魔しても、よろしいでしょうか?」

 「「「「「「あ。」」」」」」

 「いいよ……。
  上がって……。」


 プレシアのグーが、やさぐれフェイトに炸裂した。


 「何で、貴女がよそ様の家で仕切ってるの!」

 (ああ……。
  あっちもか……。)


 シグナムは、プレシアの行動に戦友のような感覚を覚えていた。


 …


 プレシアが、はやてを始めとした守護騎士一同に頭を下げる。


 「本当にご迷惑を……。
  本当は、煮るなり焼くなりして欲しいのですが、
  本物の娘を人質に取られているので……。
  私が頭を下げさせて頂きます。」

 「…………。」

 ((((((苦労してるな……。))))))


 プレシアが包装された箱を差し出す。


 「詰まらないものですが、お受け取りください。」

 「ありがとう……。
  これは、翠屋のケーキだね……。
  はやて……。
  人数分のコーヒー……。」


 プレシアのグーが、やさぐれフェイトに炸裂した。


 「だから、仕切るなって言ってるでしょう!」


 やさぐれフェイトは、包装紙を剥ぎ取る。


 「勝手に開けないで!」

 「…………。」

 「はやて……。
  開けていい……?」

 「開けてから聞いてんじゃないわよ!」


 プレシアのグーが、やさぐれフェイトに炸裂した。
 はやては、苦笑いを浮かべながら頷くと、シャマルと一緒にコーヒーを淹れる準備を始めた。
 プレシアは、ハアハアと肩で息をしていた。


 「シグナムの姿とダブって見えるな。」

 「私は、あのような感じだったのか?」

 「ああ。
  戦場でも見たことないぐらい怒ってた。」

 「…………。」


 シグナムは、プレシアを見て自己嫌悪した。
 烈火の将の威厳など、何処にもなくなっている気がした。
 やさぐれフェイトを床に突っ伏すほどグーを炸裂させた後、プレシアがあらためて話し出す。


 「プレシア・テスタロッサと言います。
  主人格のフェイトの母親です。」


 はやてとシャマルを除く守護騎士達が小さく頭を下げる。


 「闇の書のことについて馬鹿の方から聞きましたので、
  少しお話に参上しました。」

 「わざわざ、すみません。
  では、我々も名乗ります。」

 「聞いています。
  貴女が烈火の将・シグナムさんでしょう?」

 「……はい。」

 「そちらが、管制人格のリインフォースさん。
  鉄槌の騎士・ヴィータさん。
  盾の守護獣・ザフィーラさん。」


 リインフォース、ヴィータ、ザフィーラが順番に頷く。


 「さっきの女の子が主のはやてちゃん。
  そして、最後に湖の騎士・ヘモスさん。」

 「…………。」


 沈黙にプレシアは、首を傾げる。
 そして、パタパタと台所から走る音。


 「シャマルです!
  もう、原型もないじゃないですか!」

 「え?」


 プレシアが、やさぐれフェイトを見る。
 やさぐれフェイトは、親指を立てた。


 「何で、私だけ名前を間違えるんですか!」

 (ワザとだろ……。)


 ヴィータは、何となく分かっていたが口に出さなかった。
 やさぐれフェイトは、頭を掻くとクセ毛を作る。


 「ごめん……。
  シャモス……。」

 「シャマルです!」

 「ごめん……。
  シャモル……。」

 「シャマル!」

 「こんな感じで変わっていった……。」

 「誰に説明してんですか!」

 「はやて……。」

 「どうして、今、ここに居ない人に説明するんですか!」

 「あのドンくさかったシャマルが、
  あたしのお陰で、今やこんなにも素晴らしい切り返しが出来る……。
  人って変われるんだという素晴らしい証明だと思わない……?」

 「全然思いません!」

 「ヴィータも喜んでいたのに……。」

 「……何で、ヴィータちゃんが?」

 「面白い玩具に育ったと……。」


 シャマルは、キッとヴィータを睨んだ。


 「言ってねーよ!
  思ったけど……。」

 「酷い!」


 シャマルは、リインフォースに泣きついた。


 「お前、いい加減にしろよな。」

 「ヴィータも、人のことを言えない……。
  とどめを刺したのは、ヴィータ……。」

 「あそこは、言う流れだろ?」

 「守護騎士で一番冴えてるのって、ヴィータだよね……。」

 「真面目に相手すると被害を被るのは自分だからな。
  下手に抵抗するより、乗った方が楽だ。」

 ((((それで、最近、突っ込みが減ったのか……。))))


 八神家の突っ込みの比率は、日々変化していた。


 「ところで、いつになったら、
  闇の書について、話を出来るのかしら?」

 「「「「「あ。」」」」」


 プレシアの一言で、ようやく本題を思い出した。
 そして、シャマルは、台所に戻って、忘れていたはやての手伝いを再開した。


 …


 プレシアの持って来たお土産の翠屋のケーキと、はやてとシャマルの淹れたコーヒーがそれぞれの前に置かれる。
 そして、プレシアからの説明が始まった。


 「まず、知って置いて貰いたいこと。
  私は、フェイトの友達から時空管理局との繋がりがあるわ。」

 「まさか……。」


 シグナムが言い切る前に、プレシアが手で制する。


 「連絡は、まだ。
  貴女達が自首するか捕まるかで大きな違いがあるから。」

 「我々が自首しないと言った場合は?」

 「話は終わり。
  好きにすればいいわ。
  私と話し合った上で決めて頂戴。」

 「……分かった。」


 シグナムは、黙って聞くことにした。


 「まず、私が聞いていた管理局の情報と、
  その子から聞いた情報に大きな食い違いがあるわ。
  その子の話では闇の書の呪いが、はやてちゃんを蝕んでいた。
  でも、管理局の無限書庫で調べた結果では、
  それを呪いと言い換えるのはおかしいの。」

 「呪いじゃない?
  しかし、主はやてのリンカーコアを抑圧して蝕んでいたのだ。
  それを呪いと称しても、おかしくないはずだ。」

 「呪いじゃないの。
  闇の書が改竄されたためなのよ。
  歴代の持ち主の誰かが闇の書を壊した……。
  いえ、夜天の魔導書を闇の書にしてしまったと言った方がいいわね。」

 「夜天の魔導書……。」


 リインフォースと守護騎士達には懐かしい名前のような気がした。
 ヴィータが、ポツリと呟く。


 「大事な名前だった気がする……。」

 「だから、ヴィータちゃんは気になってたのかしら?」

 「シャマル……。
  そうかもしれない……。
  でも、それ以外にも……。」

 「目的かしら?」

 「うん……。
  多分……。」


 ヴィータは、リインフォースを見る。
 リインフォースも思い出せないと首を振った。
 はやてが、プレシアに質問する。


 「元の魔導書の目的は、分からないんですか?」

 「『各地の偉大な魔導師の技術を収集し、
   研究するために作られた収集蓄積型の魔導書』らしいわ。
  でも、これだと目的が分からないの。
  収集した魔導師の技術が、夜天の魔導書を作った本人の手元には戻らないから。」

 「そうやね……。」

 「あたしは、何となく分かる……。」

 「やさぐれちゃん?」

 「手元に戻らない以上、誰かに託すしかない……。」

 「誰かって?」

 「真の主だと思う……。」


 やさぐれフェイトの言葉にリインフォースが聞き返す。


 「真の主とは?」

 「このロストロギアは、プログラムの塊……。
  守護騎士システム……。
  管制プログラム……。
  防御プログラム……。
  ・
  ・
  なのに人格がある……。
  あたしは、リインフォースやシグナム達に心があるのは、
  真の主を選ぶためだと思う……。」

 「私達が選ぶのですか?」

 「さっきのヴィータの言葉だと忘れているようだったけど、
  心の一番奥では忘れていないはず……。
  だって、シグナム達は、主だったはやての命令を無視して命を助けようとした……。
  ただの主だったら、命令を遵守して死ぬのを見ていただけのはず……。」


 やさぐれフェイトが守護騎士達を見る。


 「真の主を見つけてた……。
  そして、忘れていたと思っていたけど忘れてなかった……。
  皆は、はやてを自分の意思で守ってた……。」

 「…………。」


 リインフォースと守護騎士達は、やさぐれフェイトの言葉に自分達の行動理念を思い返す。
 はやては、微笑んで付け加える。


 「私は、皆が夜天の魔導書のことを
  忘れていなかったことを覚えてるよ。」

 (((((覚えてる?)))))


 はやては、目を閉じると静かに話し出す。


 「闇の書の機動を確認しました……。
  我等、闇の書の蒐集を行い、主を守る守護騎士にてございます……。
  夜天の主の下に集いし雲……。
  ヴォルケンリッター……。
  何なりと命令を……。
  ・
  ・
  夜天の主……言うてたよ。」

 「はやて……。
  覚えててくれたのか?」

 「大事な家族の出来た日や……。
  絶対に忘れへん……。」


 はやては、リインフォースを見る。


 「全てを管理してるリインフォースなら、
  『夜天の主』という言葉を消させなかった理由……思いだせるんやないの?」

 「私は……。
  私は……。」


 リインフォースは、思い出せないながらも、胸に残る想いを口にする。


 「私は、守りたかったのだと……思います。
  守護騎士達の心を消したくなかった……。
  そして、もう思い出せない夜天の魔導書を作った誰かの想いを……。
  きっと、守りたかった……。
  ・
  ・
  そう思えてならない……。」


 はやては、頷く。


 「私も、そう思う……。
  きっと、それが真実やと思う……。」


 闇の書の闇……。
 本来、壊れた防御プログラムだったはずの言葉。
 しかし、その闇は、いつしか管制人格と守護騎士達の心の影に変わっていた。
 そして、闇は、少しずつ晴らされていく。
 やさぐれフェイトが手を上げる。


 「あたしも、はやてと同じ……。
  守護騎士の心は、リインフォースに守られていたと思う……。
  よく分からないけど……。
  リインフォースの守護騎士を見守る目は、
  プレシアが、アリシアやフェイトに向ける目に近い気がする……。」

 「貴女……。
  そういう恥ずかしいことを言わないでくれる?」

 「じゃあ、いつも通り貶そうか……?」

 「黙ってなさい。」


 プレシアの言葉に、やさぐれフェイトは舌打ちする。
 プレシアが、はやて達に向き直る。


 「どうする?
  話の続きを聞く?
  後は、闇の書の改竄された主に及ぼす効果と、
  真の力を発揮したらの話だけど?」


 はやて達は、お互いを見合うと頷く。
 そして、はやてが代表して話す。


 「話は、聞きます。
  でも、管理局へも行きます。」

 「ええ……。
  いい判断だと思うわ。」

 「闇の書……。
  管理局で直るかな……?」

 「分からないわね……。
  どっちにしろ、はやてちゃんを真の主と認めるなら、
  蓄積された魔導師の技術を回収して渡す必要があるはずよ。
  そして、その壊れた魔導書を直すには管理局の力が必要……。
  ・
  ・
  それに教えて貰った通りの機能があるなら、
  直すか更なる改竄を加えなくてはいけないかもしれない。」


 リインフォースが、プレシアに質問する。


 「何故、更なる改竄が必要なのですか?」

 「まず、追加補足……。
  この子によって、闇の書が更に壊れてるのも知っている。
  そして、それを踏まえて続きを話すわよ。
  ・
  ・
  今、安定しているように見える闇の書も、
  このまま放置して大丈夫か分からないということ。
  『主の死という鍵』『闇の書本体の破壊という鍵』が切っ掛けで転生するかもしれない。
  闇の書の解析は、どうしても必要不可欠。
  何もしなかったせいで、貴女達が、再び他の誰かの手で蒐集するのは嫌でしょう?」


 全員が頷く。


 「だったら、今のうちに何とかするしかないわ。
  幸いにも、この子のお陰で時間を稼ぐことが出来たわ。
  それに……。」


 プレシアが、リインフォースを見る。


 「主の覚醒前に貴女が出て来れたというのは大きいんじゃなくて?」

 「はい。
  主の権限を使って闇の書を管理出来るものも多い。
  ただ……。
  未だ覚醒を果たしていない主に、権限が発動するか分かりませんが……。」

 「覚醒は出来ないわよ。
  無限書庫の歴史では覚醒した主によって、
  次元干渉レベルの力が発揮されるらしいから。」

 「では……。」

 「そこをどうするかを管理局の技術に頼る。」

 「そういうことですか……。」


 プレシアがガシガシと頭を掻いてクセ毛を作る。


 「問題は、貴女達がやっちゃったことの言い訳なのよね……。」


 守護騎士達は、申し訳なさそうに俯く。
 やさぐれフェイトが、プレシアを突っつく。


 「ここは、誠意を見せるしかない……。」

 「まあ、そうね。」

 「後は、あたしから、なのはに連絡を入れる……。
  皆、いいよね……?」


 はやて達が頷く。


 「日程は……?」

 「いつでもええよ。」

 「そう……?
  ・
  ・
  プレシア……。
  少しだけ問題……。」

 「何?」

 「あたしを連れて行くかどうか……。
  AMFの効いているあたしは、転送魔法を打ち消しちゃう……。
  フェイトを連れて行くなら、あたしの都合になる……。
  お留守番なら問題ない……。
  だけど、その時は、プレシアに全部お願いすることになる……。」

 「そうね……。
  貴女は、なのはちゃんに連絡を入れて終わりにしなさい。
  艦長さんに説明するなら、大人の私の方がいいわ。」

 「そうだね……。
  プレシア、ありがとう……。」

 「こういう外からの干渉で、
  人生を捻じ曲げられるのって好きじゃないだけよ。」

 「うん……。
  分かる……。
  優しいから、方法を間違っちゃったんだよね……。
  私達みたいに壊れる前でよかった……。」

 「ええ……。」

 「じゃあ、あたしは、なのはに連絡を入れて来る……。」


 やさぐれフェイトは、リビングを後にした。
 ヴィータが素直な感想を漏らす。


 「アイツも、普通に話せる時があるんだな。」

 「根っ子の部分は、フェイトと強く結びついているから……。
  よっぽどの場面じゃないと、いつもの調子だけど……。
  ・
  ・
  さて……。
  管理局に行くにしても、残りの説明をして置くわ。
  管理局に行ってから、質問で慌てるのも大変だし、
  しっかりと言い訳も考えて置かないと。」

 「ありがとな……。」

 「気にしなくていいわ。」


 プレシアは、項垂れる。


 「あの子がした悪さの償いだと思うと、
  これだけじゃ足りない気がしてならないから……。
  ・
  ・
  それに……。」


 プレシアが、シグナムを見る。


 「貴女からは、私と同じ被害者の臭いがするのよ……。」


 シグナムは、小さく呻くと眉間に皺を寄せる。


 「否定はしない。
  この家で一番被害を受けているのは、きっと私だ……。」

 「でしょうね……。
  だから、同情の念が消えなくて、
  協力しないわけにはいかないのよ……。」

 「貴女は、どんな仕打ちを?」

 「…………。」


 プレシアは、乾いた笑いを浮かべて視線を逸らす。
 救心と養命酒を一気飲みさせられたあげく、それが原因で病気が治って怒るに怒れないなどと……。


 (言える訳がない……。)


 シグナムは、何処となく察すると追求をやめた。
 プレシアを自分に重ねて哀れに思えた。


 「やめましょう……。
  全ては済んだことです……。」

 「そうね……。
  お互いのために……。」


 プレシアとシグナムは、視線を合わせると作り笑いの乾いた笑いを浮かべた。
 そして、闇の書事件は、そろそろ収束に向かおうとしていた。


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