== 魔法少女リリカルなのは A's ~ちょっとだけ、やさぐれフェイトさん~ ==
プレシア一家の住むマンションの一室……。
フェイトの部屋になのはが来ていた。
小さなテーブルの上には、コーヒーが二つ。
「久しぶりだね。
フェイトちゃん。」
「うん、なのは。
久しぶり。」
「この前は、ありがとう。
私を助けてくれて……。
それで、怪我させちゃって……。
ごめんね……。」
フェイトは、慌てて手を振る。
「だ、大丈夫だから、気にしないで!
・
・
その、結界を出るためには、
もう一人の私の力が必要だったし……。」
「ありがとう……。」
「うん……。」
なのはとフェイトは、久々の再会を果たしていた。
第13話 フェイトとなのは、久々の再会
なのはが、鞄からプリントの束を取り出す。
「これ、お休みしてた分のプリント。」
「ありがとう。
結構、溜まっちゃったね……。」
「後で、一緒にやろう。
私が授業の内容を教えてあげるよ。」
「ありがとう、なのは。」
フェイトは、プリントを流し見て、ある程度の内容を確認すると勉強机の上に置いた。
「今日、プレシアさんは、管理局に行ってるんだよね?」
「うん。
はやて達と一緒にリンディさんのところだよ。」
「はやてちゃんって、どんな子?」
「いい子だよ。
とっても料理が上手なんだ。
優しくて……。
何処か強い感じ……。
・
・
だから、守護騎士達も、はやてのために行動したんだと思う。」
「事情があったんだよね……。」
「うん……。
私も、少しだけ分かる……。
もう一人の私が暴走してなければ、
私は、なのはと戦い続けていたかもしれなかったから。」
「そうだね。
デタラメだけど、やさぐれちゃんのお陰なんだよね。」
「……うん。」
「そのやさぐれちゃん。
はやてちゃんの家で、悪さしなかったの?」
フェイトは、苦笑いを浮かべる。
「沢山したよ……。
さっき、玄関で返して貰ったバルディッシュに搭載された機能があるでしょ?」
「カートリッジシステムのこと?」
「うん……。
あの部分にネギ詰めたり……。」
「あ、相変わらずだね……。」
「シグナムを怒らせてばっかり……。」
なのはは、苦笑いを浮かべる。
「他にも商店街の福引でも……。」
「福引?」
「あのグルグル回して玉出すの分かる?」
「うん。
玉の色で賞品を貰えるヤツだよね?」
「そう。
あれを凄い雄叫びをあげて、思いっきり回したんだよ?
信じられる?」
「ちょっと……想像出来るかな?」
なのはの頭には、『うおぉぉぉ……!』と雄叫びをあげてハンドルを回すやさぐれフェイトの勇姿が、ちょっとではなく、はっきりと浮かんでいた。
「思い出すと凄い恥ずかしいよ……。」
(そうだよね……。)
「しかも、一回目で特賞出して、
目玉商品をいきなり失くして……。
商店街の人が涙目になってたよ。」
「一気に福引の魅力が激減だね……。
ちなみに商品は?」
「……範馬勇次郎の1/1フィギュア。」
なのはが、ガンッとテーブルに頭をぶつけた。
「あの商店街の人達、何考えてんだろう……。
それと特賞取ったこと、気にしなくて平気……。
誰もそんなの欲しがらない……。」
「そうかな?」
「寧ろ、やさぐれちゃんが引き取ってくれて
よかったと思う……。」
なのはは、溜息を吐いて部屋を見回す。
しかし、件のフィギュアはない。
「勇次郎さんは?」
「はやての家だよ。
なのはが欲しかった?」
「いらないよぅ……。」
「そうだよね……。」
フェイトは、小さく笑う。
「はやてちゃんって子も、迷惑してんじゃないの?」
「あ……。
あれ、意外と役に立ったんだ。」
「役に立つようなものなの?」
「もう一人の私が、はやての部屋に置こうとして拒否されて、
仕方なく玄関に置いてたら、泥棒を撃退したから。」
「そんなことがあったの?」
「夜に忍び込んで来たみたい。
変な仮面が二つ残ってたよ。」
「まあ、吃驚するよね……。
玄関に範馬勇次郎が居たら……。」
「しかも、両手をあげて構えたポーズ。」
フェイトが勇次郎の戦闘スタイルをしてみる。
(フェイトちゃんの中で、
だんだんと刃牙の設定がデフォルト化していく……。
そして、こんな可愛い勇次郎ポーズ初めて見た……。)
読んだこともないのに蓄積されていく呪いのような知識……。
なのはは、いつかアリサに聞いたトリケラトプス拳なるものをフェイトがしないか不安になった。
「や、やさぐれちゃんの話は、もういいかな……。」
「そうだね。
こっちが疲れちゃうもんね。」
「守護騎士さんのこと教えて。
え、と……シグナムさん。」
「……一番の被害者。」
「…………。」
なのはは、一筋の汗を流す。
お互いコーヒーを一口。
「ザフィーラさん。」
「アルフの旦那さんになってる……。」
「リインフォースさん。」
「皆の逃げ道……。」
「ヴィータちゃん。」
「最近、感化されてる……。」
「…………。」
(はやてちゃんの家で何が……。)
フェイトは、眉毛をハの字にしてコーヒーを更に一口。
「じゃあ、最後にベヒーモスさん。」
フェイトが吹いた。
「フェ、フェイトちゃん!?」
むせ返っているフェイトの背中を、なのはが擦る。
「どうしたの?」
「ゴホッ……。
ケホッ……。
・
・
……ベヒーモスって?」
「この前、やさぐれちゃんが電話で……。
守護騎士最強の狂戦士だって……。」
「シャマルだよ!」
「そ、そうなの?」
「また、要らないことに記憶の制限を掛けたんだ……。」
「た、大変だね……。
主人格のフェイトちゃんまで、からかう対象なんて……。」
「本当だよ……。」
「やさぐれちゃんの嘘だったのか……。
守護騎士っていうから、
そういう強い人が居るのかもって思っちゃった。」
「シャマルは、優しそうな女の人だよ……。
なのはが庇ってた手の人。」
「その人だったんだ。
・
・
そうだよね。
あの手は、女の人だよね。」
「うん。」
「……あれ?
何か拙いことを忘れているような……。」
「拙いこと?」
「まあ、いっか。
やさぐれちゃんの話をしたからだよ。
きっと……。」
なのはは、笑って誤魔化した。
…
一方、時空管理局の一室……。
「シャマルです!」
「シャ、シャマルさん?
ベヒーモスさんじゃなくて?」
「何で、そんなモンスターみたいな名前になっているんですか!」
やさぐれフェイト→なのは→リンディという伝達事項は、余計な波乱を管理局で起こしていた。