== 魔法少女リリカルなのは ??? ~ちょっとだけ、やさぐれフェイトさん~ ==
やさぐれフェイト……。
フェイトが頭に怪我をして、ほんの少しだけ出て来た擬似人格。
悪戯好きで迷惑しか掛けなかったと思われる奇怪な行動は、思いの他、色んな副産物を残している。
プレシアとアリシア……。
テスタロッサ家の親子関係……。
闇の書の管制人格リインフォース……。
などなど。
そもそも、何故、やさぐれフェイトなどという擬似人格が存在してしまったのか。
後日談・第1話 あれから、三年……
やさぐれフェイトが眠りについて、三年の時が流れていた。
そして、その間の三人の主人公の少女の時間経過を少し書き記して置く。
高町なのは:
『ジュエルシード事件』『闇の書事件』にて魔法使いの才能を完全に開花させることもなく、時空管理局との深い繋がりを築きあげるまでに至っていない……あくまで、現地協力者の魔導師。
そのため、時空管理局との接点が薄くなり、ジュエルシード事件で知り合い、闇の書事件で情報収集をしてくれたユーノと会う機会が少なくなってしまった。
会う機会が少なくなってしまった原因は、ユーノが闇の書事件の一件から、時空管理局の無限書庫で働くようになってしまったこと。
時空管理局と地球という果てしない距離が出来てしまった。
故に、なのはとユーノの関係は、距離と同じ様に遠くなってしまうと思われていた。
しかし、会えない時間の分だけ愛おしいのか、恋する乙女の力なのか……。
なのはは、プレシアに弟子入りして転送魔法を習得し、週に一度の通い妻をしている。
喫茶店経営の両親に料理を習い、日々、腕をあげ、愛の篭もった差し入れを届ける週末。
時空管理局では、微笑ましかった小さな恋のメロディが、なのはの成長に伴い、憎しみの嫉妬の篭もった恨みの呪い唄に変わっていった。
ちなみに、プレシアが協力してくれたのは、『やさぐれフェイト被害者の会』のメンバーだからである。
八神はやて:
闇の書の主として覚醒を果たさなかった魔導師。
リンカーコアの成長が未熟なため、リインフォースから夜天の魔道書の知識を受け継げない中途半端な状態。
真の夜天の主となるべく、リインフォースと新た生まれた制御プログラムの融合騎リインフォース・ツヴァイ……通称リインⅡに魔法の師事を受けている。
現在、魔導師ランクは、Cランク。
ただし、リインフォースとユニゾンすれば、SSランク。
そして、リインⅡとユニゾンすれば、Aランク。
ちなみに、リインフォースとリインⅡとの同時のユニゾンは出来ない。
一度、試みて、自爆をしている。
先に魔導師方面のことを記述したが、健康面も心配するようなことは起きていない。
寧ろ、驚くべき回復を見せている。
これは、やさぐれフェイトが大きく原因している。
本来、闇の書からのリンカーコアの侵食が解除されたら、徐々に快方に向かうはずだった。
しかし、やさぐれフェイトのAMFが、未熟なリンカーコアを抑圧する魔力の全てを結合解除してしまった。
そのため、本来なら徐々に回復する事象が一気に解決してしまい、麻痺の回復という工程を飛ばして、弱った足の回復から始めるという状態になった。
一方の守護騎士達も、元気にやっている。
厳重注意で済んでしまった闇の書事件。
奉仕活動などを強要されることなく、嘱託魔導師として時空管理局から依頼を受けて働いている。
ただ、少しおかしくなっている……。
部下に対する躾が、全てグーになっている。
絶妙な力加減で、殴られた相手に怪我はなし。
痛いと思わせつつもダメージを与えない。
最近、部下として派遣された管理局員の中から、シグナムやヴィータに殴られたいという局員が急増中。
そして、シグナムとヴィータは、そのことをプレシアに相談したりしている。
ちなみに、プレシアが協力してくれたのは、『やさぐれフェイト被害者の会』のメンバーだからである。
フェイト・テスタロッサ:
現在も将来を模索中の魔導師。
『ジュエルシード事件』『闇の書事件』で疾風迅雷の戦いをしたわけでもなく、それにより、悲しい事件から誰かを救い出せたわけでもない。
そのため、自分の力が何の役に立つのかを未だ模索している。
時空管理局に入って探すというのも手だが、母親であるプレシアは、組織の中で働くのを少し嫌っている気がある。
それは仕方がないこと。
かつて、組織の一員として魔導実験に参加して、無理やり押し進められた実験でアリシアを失った。
今は、フェイトに対しても、アリシアに対しても、母親としての時間を捧げられている。
嫌なことをを思い出させるような行動は控えたい。
それに、今は、アリシアと普通の姉妹として生きていくのも悪くないと思っている。
アルフも、それを認めてくれている。
更にアルフは、成長に違いがあるフェイトとアリシアを気に掛けて、姿を変えてアリシアぐらいの子供の姿になってくれている。
『学校に通うのも悪くないよ』と言ってくれるアルフに、フェイトは、頭があがらない。
「私のこれからか……」
フェイトは、将来について模索中。
そして、母であるプレシアに相談してみることにした。
ちなみに、プレシアが協力してくれたのは、『やさぐれフェイト被害者の会』のメンバーだからとは無関係である。
…
テスタロッサ家のマンション……。
台所のテーブルに、中学校の制服を着たままのフェイトと普段着にエプロンを着けたままのプレシアが座っていた。
「ごめんね。
夕飯の支度中だったのに。」
「構わないわよ。
フェイトも、そういうことを考える歳になったのね。」
「うん……。
それで、少し母さんに聞きたくて。」
「ええ。」
「母さんは、どうやって将来を決めた?」
プレシアは、昔の自分を少し振り返る。
そして、ゆっくりと語り出す。
「フェイトとは、少し状況が違うから参考になるかしら?
私の場合は、直ぐ近くに魔法という技術があったの。
自身の魔導師ランクを知ることも出来たし、
それを活かす技術……魔法文化というものが当然のようにあった。
だから、自分の才能を活かすのに迷うようなことは、それほど多くなかったわ。」
「じゃあ、魔法に関わるようなこと以外は……」
「あまり考えなかったわね。」
「そう……。」
プレシアは、小さく微笑む。
「私のことなら、気に掛けなくてもいいわよ。
フェイトが同じ道を進む可能性があっても、
今は、しっかりと受け入れられるから。」
「えっと、でも……。」
「だから、時空管理局とかの話を
無理にしないようにしなくてもいいわ。」
「……気付いてたの?」
「母親だから。」
フェイトは、少し照れ隠しして俯く。
「じゃ、じゃあ……。
あのね……。
・
・
私は、母さんみたいな研究者になれる……かな?」
「研究者?
そっちの方面に進みたいの?」
「まだ、可能性の話なんだけど……。
それなら、アリシアとも……。
母さんとも、一緒にお仕事出来るかなって。」
「私も?」
「……ダメかな?」
プレシアは、考え込んでしまう。
確かに自分で選んだ仕事である以上、意欲を持って取り組んだ。
しかし、その仕事が忙しくて、アリシアを一人にさせてしまった。
そして、あの悪夢の実験が何もなく終わった時、自分の時間は、アリシアに全て捧げると誓った。
それは、アリシアに対する罪滅ぼしではない。
自分で、そう望んだことだ。
アリシアと過ごす幸せな時間。
そして、今は、そのアリシアの妹が欲しいという願いから、フェイトが生まれ、使い魔のアルフも家族に加わり、いつの間にか求めていた以上の大きなものに変わっている。
しかし、大きくなり姿を変えたが、最初の願いのアリシアに全てを捧げるという意味は変わっていない。
寧ろ、フェイトも幸せにしたいと思うし、フェイトが幸せであるということは、全てをアリシアに捧げるという一部だ。
その中に、再び自分が仕事をするというのを含めていいのだろうか?
プレシアは、フェイトに質問する。
「私が仕事をするの……どう思う?」
フェイトは、何となくだがプレシアが気に掛けていることを察する。
きっと、母親でいることと仕事をすることは、別だと考えていると。
「私は、母さんと何かをするのは楽しいと思う。
母さんが取り仕切ってくれるなら、
あんな悲しいことは起きないと思うし。」
(私は、信頼されているのね。)
プレシアは、嬉しそうに微笑む。
自分は、しっかりと母親をやって来れたようだ。
「フェイト……。
ありがとう。
考えて置くわ。」
「うん……。
・
・
じゃあ、少しそっち方面の勉強とかしようかな?」
「いいかもしれないわね。」
「どうせだから、もう一人の私の研究とかを調べようかな?」
プレシアの顔が険しくなった。
「何で、あの馬鹿なのよ?」
「ちゃんと使えば、助けられる命もあるかもしれないよ。」
「プロジェクトF.A.T.E……。
あの藪医者の研究か……。」
「ドクター……。
ジェイル・スカリエッティ。
まともに研究してれば、犯罪者じゃないのに。」
「ジェイル・スカリエッティ?
ジョイル・スカリエッティでしょう?」
「え?」
フェイトは、プレシアの口から出た別の名前に動けなくなった。