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No.26407の一覧
[0] 【ネタ完結】魔法少女リリカルなのは A's ~ちょっとだけ、やさぐれフェイトさん~[熊雑草](2011/04/09 00:45)
[1] 第1話 フェイトさん、またやさぐれる[熊雑草](2011/04/12 01:05)
[2] 第2話 やさぐれた戦いの結末……[熊雑草](2011/04/12 01:06)
[3] 第3話 やさぐれの帰宅Ⅰ[熊雑草](2011/07/09 14:18)
[4] 第4話 やさぐれと守護騎士[熊雑草](2011/04/12 01:07)
[5] 第5話 やさぐれと守護騎士の主[熊雑草](2011/04/12 01:07)
[6] 第6話 やさぐれとの生活①[熊雑草](2011/04/12 01:08)
[7] 第7話 やさぐれとの生活②[熊雑草](2011/04/12 01:08)
[8] 第8話 やさぐれとの生活③[熊雑草](2011/04/12 01:09)
[9] 第9話 闇の書の秘密[熊雑草](2011/04/09 00:40)
[10] 第10話 監視者の日記[熊雑草](2011/04/09 00:40)
[11] 第11話 やさぐれの帰宅Ⅱ[熊雑草](2011/07/09 14:18)
[12] 第12話 何かが捻じ曲がっていく[熊雑草](2011/04/12 01:09)
[13] 第13話 フェイトとなのは、久々の再会[熊雑草](2011/04/12 01:10)
[14] 第14話 そして、時空管理局では……[熊雑草](2011/04/12 01:10)
[15] 第15話 そろそろ幕引き……[熊雑草](2011/07/09 14:19)
[16] 後日談・第1話 あれから、三年……[熊雑草](2011/07/09 14:20)
[17] 後日談・第2話 喫茶店会議①[熊雑草](2011/07/09 14:20)
[18] 後日談・第3話 喫茶店会議②[熊雑草](2011/07/09 14:21)
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[26407] 第2話 やさぐれた戦いの結末……
Name: 熊雑草◆890a69a1 ID:96ed7643 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/12 01:06
 == 魔法少女リリカルなのは A's ~ちょっとだけ、やさぐれフェイトさん~ ==



 ヴィータが、やさぐれフェイトに話し掛ける。


 「お、お前……。
  だ、大丈夫なのか?」

 「これが大丈夫に見えるのか……?
  放って置けば、失血死に決まってる……。」

 「失血死……。」


 ヴィータは、主の人生を守るために立てた『人殺しはしない』という誓いが果たせそうにないと知ると、その場にペタンと尻餅を付いた。



  第2話 やさぐれた戦いの結末……



 正直なところ、フェイトからやさぐれフェイトに切り替わったことで、死ぬという事態は起きない。
 そもそも、何故、フェイトがやさぐれたのか?
 それは、『プロジェクトF.A.T.E』の先駆者の悪戯とも言える設定のためである。
 やさぐれフェイトは、脳にダメージを受けた時に脳を修復する間だけ、フェイトを守る擬似人格でしかない。
 しかし、切り替わった時、以下の状態になる。
 1.自分の周り半径5mにAMF:アンチ・マギリンク・フィールドを展開させて魔力結合をさせない。
 2.自身にはAMFC:アンチ・マギリンク・フィールド・キャンセラーを展開して、魔力を肉体強化に変換する。
 3.肉体の活性化。生命危機を脱するため、異常な回復能力が備わる。
 4.上記三点のせいで、魔導師ランクがゴミクラスまで下がる。

 そういう訳で、破壊された左側頭部は、フェイトのために傷が残らないように時間を掛けて回復中。
 それでも、派手に血を撒き散らして、スプラッター状態継続中に見える姿は、誰もが息を飲む。
 そんな中で、やさぐれフェイトがヴィータに声を掛ける。


 「オイ……。」

 「あ…あ……。」


 ヴィータは、完全に混乱している。
 やさぐれフェイトの呼び掛けにも答えられない。


 (そういえば、さっき面白いことを言ってた……。
  はやての人生を血で汚さないとかどうとか……。
  ひょっとして、誓約があるんじゃ……。)


 やさぐれフェイトは、予想通りかを確かめるため、なのはを使って確証を得ることにした。
 振り返り、なのはに話し掛ける。


 「なのは……。
  あたしは、あと少しで死ぬかもしれない……。」

 「う…そ……?」

 「本当……。
  今、話せているだけでも奇跡に近い……。
  フェイトと最後の別れの挨拶をさせてあげたかった……。」


 なのはの目に、再び涙が溜まり始める。


 「いや……。
  そんなのヤダよ……。」


 なのはは地面に蹲り、大粒の涙を流して泣き始めた。
 やさぐれフェイトは、なのはがしっかり泣いているのを確認するとヴィータを見る。
 ヴィータは、両手で頭を押さえ、『はやてが……』と何度も繰り返している。


 (どうも、はやてという人が関係しているみたい……。
  そして、それ故に殺しは出来ないと見た……。)


 やさぐれフェイトは、ヴィータとシグナムに見えないように邪悪な笑みを浮かべる。
 そして、再び、なのはに話し掛ける。


 「なのは……。
  少し考えたけど、失血死さえ回避出来れば助からないかな……?」

 「……え?」

 「言葉は、しっかりしてるし……。
  体も動く……。
  脳自体は、損傷が少ないと思う……。」

 「じゃあ……。」

 「うん……。
  血を止めた後で、精密検査を受けられれば……。」

 「……あ。」


 なのはは目を擦り、涙を拭うと立ち上がる。


 「でも、あの人達が邪魔してるから……。」


 やさぐれフェイトの指し示す、あの人達……。
 ヴィータとシグナムは、やさぐれフェイトの言葉が耳に入り、少し希望を見たような顔になっていた。
 ヴィータが、やさぐれフェイトに叫ぶ。


 「お前!
  本当に助かるのか!」

 「知らない……。」

 「でも、私らが結界解けば、助かるかもしれないんだろ!」

 「そうだね……。」

 「だったら、直ぐに結界を解くから病院に行けよ!」

 「ヤダ……。」

 「「「え?」」」


 敵と味方の声が重なった。


 「な、何でだよ!」

 「そうだよ!
  やさぐれちゃん!」

 「敵の思い通りにはならない……。
  このまま死ぬ……。」

 「何でだよ!
  おかしいだろ!」

 「助かるかどうかも分からないなら、
  あたしは、一矢報いる方を取ると、今、決めた……。」

 「ど、どういうことだよ?」


 やさぐれフェイトは、ヴィータとシグナムを指差す。


 「お前達は、本当は、あたし達を殺しちゃいけなかった……。
  さっき、うろたえたのは、そういうことだろう……?」

 「コイツ……!」
 「っ!」


 ヴィータとシグナムが、やさぐれフェイトを睨む。


 「さっさと失せろ……。
  そして、人を殺して汚してしまった人生を悔いるがいい……。
  死ぬのは悔しいが、それで満足してやる……。」

 「やさぐれちゃん!
  ダメだよ!
  助かるかもしれないなら努力しないと!」

 「なのは……。
  これは、プライドの問題……。
  あたしは、怒っている……。
  ・
  ・
  フェイトに対しても、なのはに対しても……。
  コイツらは、しちゃいけないことをした……。
  いきなり襲って傷つけた……。
  ・
  ・
  あたしの命に代えても……。
  プライドに代えても……。
  コイツらは、後悔させる必要がある……!」

 「やさぐれちゃん……。
  でも…でも……。」


 やさぐれフェイトは、なのはから離れてヴィータとシグナムを睨みつける。
 ヴィータとシグナムは、奥歯を噛み締めて睨み返した。
 そして、その時、なのはの胸から腕が突き出した。


 …


 なのはは、混乱気味にその現象を見ていた。
 自分の胸から腕が生えている。


 「……え?
  なに…これ……?」


 やさぐれフェイトは、なのはに気付くと地面を蹴った。
 変換した魔力が脚力に変わり、地面にしっかりと足跡を残す。
 一瞬、消えるような動作の後で、その腕を掴んだ。


 「コイツら……。
  まだ……!」

 「やさぐれちゃん?」


 一方のシグナムは、心の中で舌打ちしていた。


 (タイミングの悪い……。
  主のためにアイツを病院に行かせねばならぬというのに……。
  これでは交渉も出来ない。
  更なる不信感を与えてしまった。)


 シグナムの表情を読み取り、ヴィータが念話を飛ばす。


 『シグナム……。
  拙いんじゃないのか?』

 『ああ、最悪だ。
  状況を知らないシャマルが行動に出てしまった。
  このままでは、アイツが失血死して主の人生に致命的な汚点がつく……。』

 『そんなのダメだ!
  私らはいいけど、そのせいで、はやての人生を汚すのはダメだ!』

 『分かっている!』


 しかし、この状況を打破するいい案は思いつかなかった。


 …


 別の場所では、肩までの金髪の緑の魔導師が困惑していた。
 彼女は、自分のデバイスを使用し、別空間から、なのはのリンカーコアを狙って自分の手だけを空間転移させていた。
 そして、繋がっているはずの空間からリンカーコアを掴み損ね、抜き通ろうとした矢先……。


 「あれ? 抜けない?
  どうして!?
  どうして抜けないの!?」


 理由は、簡単だった。
 やさぐれフェイトのAMFが作用していたからだった。


 …


 なのはの胸から生える手。
 なのはが少し苦しそうにしているだけで、他に問題はなさそうだった。
 やさぐれフェイトは、ちらりとヴィータとシグナムを見る。


 (これも、アイツらの仲間の手に違いない……。)


 やさぐれフェイトは、不快感を強くする。
 そして、一方で別の気持ちも膨れ上がる。
 一瞬、邪悪な笑みを浮かべる。


 「死ぬ前にいいものを見せてやる……。
  この腕……。
  お前らの仲間のだよね……?」


 やさぐれフェイトの問い掛けを聞いて、ヴィータがシグナムに話し掛ける。


 「何で、シャマルは、掴まれたまま逃げないんだ?」

 「分からん……。
  だが、状況がますます悪くなった……。
  敵に病院へ連れて行かなければいけない者が居て、
  シャマルの腕が人質になってしまった……。」

 「シャマルは、どうなってんだ?」


 …


 シャマルは、焦っていた。


 「どうして!?
  どうして抜けないの!?」


 腕は、ビクともしない。
 押しても引いても動かない。
 別の空間の先で、AMFが効いているとは知る由もなかった。


 …


 やさぐれフェイトが邪悪な笑みを強くする。


 「返事がないなら、体に聞くしかない……。
  ・
  ・
  なのは、少しの我慢……。」

 「へ?」

 「今から、最後の力でこの腕を切断する……。」

 「せ……。」

 「血が噴き出しても吃驚しないで……。」

 「吃驚するよ!
  やめてよ!」


 …


 シグナムが複雑な顔をしている。


 「何か向こうが揉め出したな……。」

 「っつーか、何て恐ろしいことを考えてるんだ!」


 …


 なのはが本気で泣き出した。
 自分の胸の前で、腕が切断されて血が噴き出すなど、九歳の少女には耐えられない。


 「仕方ない……。
  じゃあ、指を一本ずつ捻り切るだけで許す……。」

 「やさぐれちゃん……。
  もう、やめて……。
  やめてよぅ……。
  ・
  ・
  うっ…うう……。
  ひぐ……ひっく…うぁぁぁ!」


 …


 ヴィータとシグナムは、本当に困っていた。


 「どうすればいいんだよ?
  もう一人の方が粘ってないと、シャマルの腕が持っていかれるぞ?」

 「切られてもシャマルの治療魔法で生えてくれば……。」

 「生えねーよ!
  っつーか!
  家に帰ってシャマルの腕が片方なくなってたら、
  はやてがショック死するって!」

 「そうだな……。」


 …


 シャマルも涙目になっていた……。


 「何か掴んでます!
  私の腕!
  どうなってるの!?
  ・
  ・
  ザフィーラ!
  ザフィーラ!
  助けてください!」


 …


 やさぐれフェイトが、なのはに優しく微笑む。


 「なのは……。
  人生辛いことも沢山あるんだよ……。
  ただ目の前で知らない人の腕がもげるだけ……。」

 「いや~~~!
  そんなの怖いよ!
  ・
  ・
  やめてよ!
  やめてよぅ……。
  うっ…ううっ……。」

 「大丈夫……。
  泣かないで……。
  ちょっと、バリアジャケットが血に染まるだけ……。」

 「やだ~~~!
  やだやだやだやだ~~~!」


 なのはの泣き方が絶叫に変わって来た。


 …


 シグナムが観念する。


 「何か……。
  もう、見ていられない……。
  降伏して負けを認めよう……。」

 「シグナム!」

 「どの道、アイツが死ねば我々の負けだ。
  シャマルの腕が切られても負けだ。」

 「っ! でも!
  ・
  ・
  仕方ねぇか……。
  そもそも、私がミスしたから……。」

 「全ては、主のためだ……。
  そして、我々は、失敗したのだ……。」


 シグナムの言葉にヴィータは、悔しそうに俯いた。
 そして、先に歩き出したシグナムに続いた。


 …


 なのはは、泣きながら必死に胸の腕を庇っていた。
 やさぐれフェイトには渡せない。
 この誰か分からない人の腕を傷つけさせない。
 いつしか本来の目的を忘れていた。
 もう、言葉はない。
 ただ泣きじゃくる。


 …


 シャマルは、沈んでいた。
 ザフィーラが来ない……。


 「一体、何が……。
  それにこの腕の感触……。」


 何かに守られているような温かい感覚……。
 さっきから腕を叩いている温かいものは涙だと分かった。


 「何だろう……。
  この相手にもの凄く悪いことをした気がする……。
  ・
  ・
  罪悪感が胸に広がっていく……。」


 …


 やさぐれフェイトの前で、なのはが動かなくなった。
 腕を守って蹲っている。
 涙を流して震えているだけになってしまった。


 (やり過ぎた……。)


 やさぐれフェイトは、頭をガシガシと掻くとクセ毛を作る。


 「いいか?」


 やさぐれフェイトは、視線を移す。
 一方のなのは、やさぐれフェイト以外の声に、過剰に反応した。


 「助けてください!
  やさぐれちゃんが、この腕を切断するって聞かないんです!」

 「…………。」

 ((どういった状況だ……。))


 ヴィータとシグナムは、激しく項垂れた。
 なのはを無視して、やさぐれフェイトが話し掛ける。


 「何の用……?」

 「我々の負けだ。
  お前に死なれるのも困るし、
  その腕を切られるのも困るのだ。」

 「はやてという人に関係あるんだね……?」

 「その通りだ。」


 やさぐれフェイトは、邪悪な笑みを浮かべた。


 「え? え?」


 なのはは、混乱していて訳が分からなかった。
 やさぐれフェイトは、なのはをまた無視する。


 「じゃあ、降伏の証を見せて……。」

 「股の下でも潜ればいいのか?」


 やさぐれフェイトは、首を振る。
 そして、シグナムとヴィータのデバイスを指差す。


 「それを待機状態にして渡して……。」

 「おま……!
  ふざけんな!」


 シグナムがヴィータを制する。


 「従おう。」

 「シグナム!」

 「いい子だ……。
  少し分かってないから、付け足しといてあげる……。
  逆らったら、次の標的になるのは『はやて』っていう子だ……。
  そっちの人は、理解しているみたいだよ……。
  死ぬかもしれない人間の凶行ってヤツを……。」


 ヴィータは、シグナムを見た後、やさぐれフェイトを見て舌打ちする。
 そして、自分のデバイスを待機状態のアクセサリーにすると、やさぐれフェイトに投げた。
 同様にシグナムもデバイスを待機状態に戻すと、やさぐれフェイトに手渡す。
 やさぐれフェイトは、にやりと笑うと、シグナムとヴィータのデバイスをバリアジャケットの胸の隙間に入れた。


 「約束だ。
  直ぐに病院に行って貰う。」

 「分かった……。
  腕も解放する……。
  あたしから離れて仲間に連絡して……。」


 シグナムとヴィータが、やさぐれフェイトとなのはから離れてシャマルに連絡を入れる。
 そして、念話が終わるのを確認すると、やさぐれフェイトも、なのはから離れてAMFの効果をなくす。
 やさぐれフェイトが離れると、なのはの胸から腕が消えた。
 やさぐれフェイトがあらためて、なのはに近づく。


 「大丈夫……?」

 「うん……。
  でも、やさぐれちゃんに酷いことされないって、
  安心感の方が上だよぅ……。」

 「よかったね……。」

 「全然よくないよ!」

 「冗談なのに……。」

 「……冗談?
  どういうこと?」


 シグナムが割って入る。


 「早く病院に行け。」

 「冗談なのに……。」

 「……冗談?
  どういうことだ?」

 「「「ん?」」」


 その場に居るやさぐれフェイト以外が首を傾げた。
 やさぐれフェイトは、出血部分をガシガシと掻く。
 すると、固形化して黒くなった血が粉のように舞った。


 「…………。」


 やさぐれフェイトが両手をあげる。


 「怪我なんて、とっくに治ってる……。」

 「じゃあ……。」

 「死ぬのも嘘……。」

 「う…そ……?」


 やさぐれフェイトは、口に人差し指を突っ込み、唾液をつける。
 そして、固形化した頭の血をちょんと付けて、ヴィータの腕を取る。


 「これ、あたしの携帯の番号……。」


 ヴィータの腕に携帯電話の番号が書かれる。
 携帯電話の番号は、傍から見るとダイイングメッセージのようにも見えた。
 そして、やさぐれフェイトは、なのはの手を掴むと歩き出す。


 「じゃあね……。
  明日、事情を聞いてあげる……。」


 なのはは混乱したまま、やさぐれフェイトに引かれるままオロオロして付いて行った。
 そして、シグナムとヴィータがポツンと残された。


 「ふざけんな!
  あのバカヤローが!」


 ヴィータは大声で叫び、シグナムは訳が分からずにがっくりと地面に手を着いた。
 そして、別の場所で、シャマルがザフィーラに怖かったと泣きついていた。


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