この作品は以下の要素を含みます。
・独自解釈
・10話までの設定
・キャラ崩壊
・ご都合主義
それでも構わないという方は、是非ご覧下さい。
ビル裏。
広い空き地。
クレーター。
湧き上がる煙。
なにやら激しい戦闘があったことを髣髴とさせるその空間に、1人の男がうつ伏せに倒れていた。
年は18前後。
中肉中背。身体的特徴は見当たらない。
服装はジーパンにジージャンにバンダナ。丈夫さ、そして汚れなどに気を使ったファッションであろう。
服が全身を覆っているので、怪我などは見当たらないが、この惨状を見れば無事であるとは考えにくい。
そんな青年に歩み寄る少女が1人。
クレーターから少し離れた所で立ち止まり、青年を凝視している。
その瞳には何の感情も見受けられない。どうしようもない無表情。
諦め、達観、絶望、屈折、悔恨、不信。
カウンセラーを名乗る有象無象らは、少女を『そう』表現するであろう。
しかし、もしここに少女のことを深く理解する人間が居れば、それは真逆の評価になる。
それは期待。
希望と言ってもいい。
見る人が見れば、少女の考えていることが透けて見えたかもしれない。
もしかしたら、ひょっとして、いやしかし。
表情は揺れていないように見えるが、心は揺れている。
期待している、希望を抱いている。目の前の青年に。
何故か。
何故少女は、クレーターに沈む、冴えない青年に期待するのか。
その理由はを知るためには、一時間程時間を巻き戻す必要がある。
そして、その刻こそが、青年と少女の人生の転機となったのだった。
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【横島がクレーターに沈む一時間前】
キュゥべえがまどかに近づかないように妨害をした帰り道、私は魔女に遭遇した。
『前回』はこのタイミングでは魔女に会わなかった。
やはり、繰返すたびに細かい違いが出てしまうのだろうか?
だが、それは好都合でもある。
現状のままでは、まどかを救うのは難しい。
前回はそれなりにうまくいったのだが、最後の最後でインキュベーターにしてやられた。
今回は、ワルプルギスの夜に対抗する為に、2人、最低でも1人の協力を要請するつもりだ。
理想としては、巴マミと佐倉杏子に協力してもらうことだ。
しかし、佐倉杏子はともかく、巴マミを説得するのは難題である。
巴マミにとって、キュゥべえは命の恩人である。
妄信に近いそれを、キュゥべえに抱いてる巴マミを、どうやって説得すればいいのか。
私からソウルジェムを離して、実際に『肉体が死ぬ』ところを見せれば納得するかもしれないが……、
『前々回』を思い返すに、その行為は危険すぎる。
……もう少し巴マミを理解するべきか?
そう思いながらも、私はまどかを最優先に行動してしまう。
例え巴マミを理解することがまどかを救う近道になるかもしれないとしても、私はそれを容易く実行には移せない。
本当は、まどかから一時たりとも目を離したくないのだ。
私の時間移動も、無制限である、と思い込むほど楽観はできない。
これが最後のチャンスかもしれない。
そう思うと、まどか以外のことは諦めがちになってしまう。
そんなよそ事(私にとってはむしろ本命)を考えながら、魔女の使い魔を殺していく。
この魔女がまどかを襲い、キュゥべえがそれを利用するかもしれない。
魔女は可能な限り私が殺す。それが最善。
そう思い、機械のように使い魔を削除していく。
気配が近い。もうすぐだ。
「……音。
これは……悲鳴?」
あと少しで魔女、といったタイミングで、私の耳に人間の声が飛び込んでくる。
この空間は魔女の結界のようなものだが、そこに人間が迷い込むのは珍しくない。
むしろ、積極的にソレを行う魔女も多数確認したことがある。
だが……、
「……っ!」
目の前の光景は、『それどころではなかった』。
魔女と戦えるのは、魔法少女…、もう少し広い定義で言うならば『キュゥべえが見えるモノ』のみだ。
それ以外は魔女を知覚することが出来ないし、攻撃などもってのほかだ。
魔女には、普通の銃器は効かないし(私のは魔力を付与している)、そもそも普通の人間には視認すらできない。
だから、目前の光景はおかしいのだ。
『高校生くらいの男が手から剣のような物を出して魔女と戦う』なんて、考えられない。
いや、キュゥべえは少女とじゃないと契約できないわけじゃない。それが一番効率が良いから、そうしているだけだ。
だから、少女以外が魔女と戦っているのは、まだいい。
しかし、アレは魔法じゃない。アレはもっと別の何かだ。
「ひいいいいいい!!
突然変な所にワープしたと思ったら、滅茶苦茶グロいのに襲われるしっ!
こいつ弱いけどっ、攻撃にギャグがないっ!
死んでしまう! 死ぬのはヤダっ!
だずげでみがみざ~ん!」
だって、魔法少女は魔女に苦戦なんかしない。
油断、慢心、相性、経験不足、才能不足、知識不足。
最低でも、上のうち2つが該当しない限り、魔法少女は魔女に負けたりしない。
『そういうバランスなのだ』。
これは魔法少女に絶望してもらい、その際のエネルギーを回収する為に、インキュベーターが仕組んだマッチポンプ。
よって魔法少女には『死なれては困る』のだ。
だから魔女と魔法少女の間には、実力差が存在する。
ワルプルギスのような例外はともかく、普通は楽に勝てる。
目の前の魔女も、ただの雑魚。
一度の時間停止で簡単に殺せるだろう。
つまり、『あの青年はエネルギー回収効率判断中の昔に作られた魔法少年』だという仮定は成り立たない。年季のある戦い方ではない。
私たちとは『違う特別』の人間なのだろう。
何故あの青年が魔女と戦えているのか、あの剣のような物は何なのか、疑問は尽きないが……しかし、助けよう。
他人は積極的に助ける。
それはまどかが望み、行っていたことだ。
まどかの身の安全に支障が出ない限り、私もそれに従う。
青年は魔女から逃げるように走り回り、遠距離攻撃を剣で撃退している。
よって、今の青年は、魔女からかなり距離が離れている。
この距離なら手榴弾の爆風は、まず届かないだろう。
そう判断し、時間を止めようとした……その時。
「かかったなアホゥめがっ!
あんなの半分嘘泣きじゃボケェェェ!
美神霊能事務所なめんな! 往生せいやあああ!」
突然振り返った青年は、勝ち誇ったような顔(非常に悪人くさい)をしながら、野球選手のような構えをする。
手には小さな珠のような物を握っている。
相手を油断させて、遠くから爆発物でドカンといったところか? サイズが小さい気もするが、きっとそういう作戦だろう。
……魔女には明確な意思が存在しないので、今のような騙す行為に意味なんてないけど、それは黙っておこう。
「喰らえっ、大リーガーボールッ!!」
素人目に見ても、かなり雑なフォームで投げたソレは、意外なことに、魔女の元まで余裕で届いた。
鍛えられている……ようには見えない。
魔法少女と同じで、なにかしらの身体能力強化ができるのだろうか?
そうした疑問の上投げられた珠は、魔女に当たって、砕けた。
…瞬間、
「なっ……!」
爆発が起きた。
それはいい、想定していた。
しかし、『ここまで大きな爆発は想定していなかった』。
私の一番利用する武器、手榴弾を1とすると、今の爆発は10くらいの規模である。
おかしいと思った。『いくらなんでも離れすぎ』だと。
しかし、この爆発を見れば納得できる。むしろ未だ近いくらいだ。
「……もしかしたら」
青年から目を離せない。
もしかしたら……、もしかしたら彼は、イレギュラーかもしれない。
彼がまどかを救う『鍵』かもしれない。
そう思うと、居ても発ってもいられず、私は青年の元へ駆け出した。
……しかし、
「ああっ! 今の俺すごく輝いてる!
ねーちゃん! どっかに俺の活躍を見てた、綺麗で乳のでかいねーちゃんはおらんか!?」
魔女を倒すと、異常空間は元に戻る。
今回もそうだった。
しかし、青年の起こした爆発は、『現実の世界にまで影響した』。
「…ん?
君は……」
青年が私に気づいた。
それに動揺し、一手遅れてしまった。
「…お姉さ、ンゴッ!!」
『青年の起こした爆発により舞い上げられたのだろう木片が、青年の頭に直撃した』。
青年が何を言おうとしてたかは分からないまま、青年はその場に倒れこみ、クレーターの中に落ちていった。
これが、謎の青年と、私の出会いだった。
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少女は青年の元に歩み寄る。
木片は頭に直撃していた。それなりに血が出ている。
脳震盪を起こしたのだろう。しばらくは目覚めまい。
少女は青年に期待をしていた。
通常なら、ここで行う行為は『近寄る』ではなく『救急車を呼ぶ』だ。
しかし、それをしてしまうと、二度と青年とは会えないかもしれない。
それは避けたい。逃がしたくない。
少女は思う。
絶望しかけていた。諦めるなと、自分に言い聞かせていた。
横になるたびに、友達の涙を思い出した。
しかし、これならば『敵』の裏をかけるかもしれない。
少女はそう思考し、青年を自らの部屋で介抱するという選択肢をとる。
少女が青年の体に触れようとした……、その時。
「あー、死ぬかと思った」
「……!」
そんな間抜けな声とともに、青年は起き上がる。
大き目の木片が直撃したのに。それなりに高い所から落ちてきたのに。
しかし、青年はまるでギャグ漫画かのように起き上がり、次の瞬間には血が止まっていた。
青年の名前は横島忠夫。
この世界の……いや、少女にとっての、救世主である。
物語は崩れ、動き出した。
書いちゃったよ。
続くのかこれ? 続けれるのかこれ?
とりあえず頑張ります。
おまけ
「…右手に炎(の文珠)、…左手に氷(の文珠)。
大魔道師ポップの技……お借りします!
発動しろ! メドロー……って熱い! 冷たい! 死んでしまう!」
「漫画の技を試すな! おのれは小学生かっ!」
私の中の横島はこんなイメージ。