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第一話「そうだ、宇宙行こう」
やあ! 皆大好き転生チートオリ主だよ! 今日も元気にニコポ祭りだ!
……ゴメン。あんまりにもアレだったんで嘘ぶっこいてみた。
改めましてこんにちは。佐倉源蔵、今年で十四歳です。転生チートオリ主です。マジで。
新ルールの「神様ルーレット」で見事チート頭脳とIS世界への転生を果たしました。
束と同い年で。
え、それ意味なくね? 公式チート頭脳に勝てるわけなくね? とか思ったね、三歳ぐらいの時に。
その次の日には幼稚園で篠ノ之って名前の女の子見つけました。ゆかりんヴォイスの。
いやー、ホント性格ぶっ飛んでるよねアイツ。最初一ヶ月ぐらい凄かったもん、目つきとか。虫けらを見る目ってあーゆーのなんだね。
でもそれさえ乗り越えれば楽しいよ。まだ子供だったからかあっさり身内カテゴリーに入れたし。あと可愛い、これ正義だよね。
やることもぶっ飛んでるけどね。あの回転するジャングルジム、グローブジャングルだっけ? あれ改造したりするし。幼稚園児なのに。
巨大な球体がパンジャンドラムみたいに火噴いて転がってく様はトラウマもんだよね。片手で止めた挙句投げ返してくるのも充分トラウマだけど。
え、千冬さんですけど何か?
まあそんなこんなで元凶束、扇動俺、鎮圧千冬のトライアングルが出来上がる訳ですよ。これがまた面白い。
ただまあ、他の連中が騒ぎの規模についていけなくなって束の身内カテゴリーが増えなくなっちゃったんだけどね。別にいいけど。
そんなこんなで二人との付き合いも十一年目! で、今は何をしてるかって言うと―――、
「………。」
「………。」
「………。」
織斑家のリビングで頭抱えてます。俺達の前には織斑パパと織斑ママの言い訳が書かれた紙。要するに夜逃げだね。
あ、今思い出したけど二人ってホントは高校の時に知り合うのか? 原作読んだ時にそんな記述があったよーな無かったよーな。まあいいや。
「……どーする?」
「どうもこうも……私が『二人』を守って行くしかあるまい」
「だよねー。ゲンゾーもそれくらい解るでしょ?」
そりゃ解るけどさ。でもここ日本よ? 普通に考えれば警察行きの問題でしょ。住居はあるけど保護者無しってケースは珍しいだろうけどさ。
……ん? ああ、解ってるよ。この世界の千冬は『五人家族』だ。いや、二人抜けて今は三人だけどまあそれは別に良いや。
イレギュラーの名前は『織斑千春』、数字に季節と織斑家ルールに則ってるのがよく解るね。一夏の双子の姉なんだそうだ。
俺と同じ転生者かどうか探りを入れてみたがどうにも解らん。まあヘイトでもない限り敵に回る事は無いだろうから放置。
「まあ、いざとなったらこの天才束さんがなんとかしてあげるから!」
「束には敵わんが俺も神童と呼ばれた身だ。何か問題があったら言ってくれ」
「束、源蔵……ありがとう」
ありゃりゃ、こりゃ大分参ってるな。普通俺達が天才だの神童だの言ったら何だかんだでツッコミ入れてくれるんだが……。
(ね、ね、ゲンゾー)
(ああ、解ってる。こりゃ何か気を逸らせるようなイベント作らねーと駄目だな)
(ゲンゾーも中々解ってるね。そう、イベントが無ければ作れば良いんだよね!)
(だよね!)
しかし何が良いかな、と居間でテレビを見てる双子に目を向ける。最初はこっちに興味があったみたいだが、今はテレビに夢中だ。
因みに一夏はまだ箒ちゃんとはあまり仲が良くないらしい。姉の繋がりで多少は面識があるみたいだが、子供の足じゃここから神社って遠いしな。
あ、そうだ。皆想像してみてくれ。千冬と束のセーラー服。徐々に女性として主張を始める胸の膨らみ。うん、良いね。最高。
「……ん?」
ライトブラウンの地毛を弄りながらテーブルに突っ伏すと、二人が見てるテレビが目に入った。宇宙特集……だと……?
「そうだ、宇宙行こう」
◆
時は流れて約一年。俺達は中三に、一夏達は六歳になっていた。ついでに言うと今は高校受験も終わった三月半ば、当然主席入学ですよ。束が。
ダカダカと唸りをあげてキーボードが文字を吐き出し、俺と束の前のブラウン管モニターにそれが溜まって行く。
しかし、俺は『右腕一本』だからどうしても束より遅くなってしまう。まあ仕方ないか。
「おーい、中二病ー。そっち準備良いー?」
「誰が中二病じゃ誰が。そっちこそ終わってなかったら乳揉むぞ」
「焼き殺されてもいいなら良いよー?」
何とも物騒な内容だが、現在俺達は世界初のIS【ハミングバード】の最終チェック中だ。まあ、今はまだ開発コードもロクについてないんだが。
それにこの程度の罵詈雑言はデフォですよ僕達。ゆかりんボイスでナチュラルに罵倒される日々って割と楽しいんですよ、知ってました?
なんて手を休めずに考えてると、ハミングバードを着込んだ千冬が呆れたように声をかけてくる。
『全く……源蔵、いい加減にそれは止めろ』
「馬鹿な! 俺からセクハラをとったらメガネしか残らんではないか!」
『……随分と偏った肉体構成だな』
あ、ツッコミ諦めやがった。もっと熱くなれよヤンキー予備軍。これから物理的に熱くなるがな。
「それにしても、まさかこの束さんがこの程度の物を作るのに一年もかかるとは思わなかったよー」
「まあ一応学生だしな。理論と実践の差ってやつだ」
『……むしろ一介の中学生がどうやってこんな装甲材を持ってきたのかが気になるんだが』
そこは内緒ですよ。ちょちょっと帳簿を弄っただけですよ。
「それよりなによりちーちゃんちーちゃん、どっか変な所とかある?」
『いや、大丈夫だ。それに往還自体は何度か試したからな、慣れたものだ』
「デブリが怖いが、そんな装備で大丈夫か?」
『それは設計した本人が言う台詞ではないだろうが……』
「俺がまともに作ったのなんざブースターぐらいだよ。他は束に聞け」
全く、神様にチート頭脳を貰った筈なのに束の方が頭良いって何だよそれ。乳に脳味噌でも詰まってんのか?
「ゲンゾー、少し頭冷やそうか……?」
「ヒィッ!?」
やめてやめて天地魔闘の構えやーめーれー!
と、手を上下に構えた束がぴたりと動きを止めた。その視線の先には俺の頭皮。ヅラじゃねーぞ?
「……あれ? ゲンゾー、背伸びた?」
「ん? ああ、そーいや追いついてきたな」
この時期の人間と言うのは大体女子の方が成長が早い。それに追いつくように男がグーングーン伸びて行く……なんかMSみてぇ。
「ま、そんな事どーでもいっか。今回ので技術蓄積も充分できたし、次はもっと武装とか載せれそうだよー」
「……ああ、こないだ作ってたのはそれか」
白騎士ですねわかります。今回のでまともな話題にならないって解ってんだな、お前さん。
もう有人大気圏離脱&再突入もクリアしてんのに話題にならないとかね。因みに今回は手近な廃棄衛星をバラす予定です。
「さて、漫才やってる間に打ち上げ時間だ。千冬、準備は良いか?」
『ああ―――では、行って来る』
「いーってらーっしゃーい」
ドゴン、と音の壁をぶち抜いて巨大なブースターが尾を引いていく。その風に揺られて長袖の左腕部分がバタバタとはためいた。
……学生のみによって作られた単独大気圏離脱可能なパワードスーツ、これが話題にならない筈が無い。ならば何故話題にならないか。
簡単な話、話題にしてはいけないのだ。だってパーツの九割以上が盗品だし。普通に作れば何億ってレベルだからね、ISって。
「……よし、じゃあ次はゲンゾーの番だね」
「は?」
「―――だから、それ」
ぴ、と束は俺の左腕を指差す。表面上はいつも通りだが、やはりこの話題になるとどこか空気が硬くなる。
「いや、別にもう慣れてきたし」
「嘘ばっかり。ノート取るの手伝ってるの誰だと思ってるのさ」
「……まあ、可能なら治したい所だけどな」
先月の初回起動実験時、妙にハイになってきて徹夜した俺達は揃って配線を一つずつ間違えたまま起動。ギャグ漫画かってレベルで大爆発が起こった。
その時に束を庇ったら左腕が吹っ飛んだ。こう、スパッと。どうも作業並行してやってて中途半端に搭載してた装甲の縁で見事にやってしまったようだ。
まあそんな訳で現在俺は左肘から先が存在しない。これがまた中々に不便だったりするが、束にはこの程度で止まってほしくは無い。
「技術蓄積もできた、ってのはこっちの意味もあるからねー」
「成程。じゃ、一つ頼むわ」
「まっかせて! 最高の手に直してあげる!」
なんか漢字が違う気がするがスルーで。
◇
「で、何してくれちゃってんの君達」
「んー……お披露目?」
あれから一ヵ月後。何か空が騒がしいと思ったらやっぱり予想通りやってくれちゃったよこん畜生。おーおー白騎士頑張ってます。
あ、そうそう。遂に一夏達が篠ノ之道場に入ってきたよ。俺も一応入ってるよ、弱いけど。っつーか柳韻さん強すぎ。聖闘士かってレベルだよあの人。
しかし学校帰りに異性の家に上がりこむ、という心躍るシチュエーションの筈なのになんとも無いのは機材でこの部屋が埋め尽くされてるからだろうか。
なんてことを『左手』で柿ピー食いながら考える。そしてどうしてお前はこっちを見ずに掌を差し出してくるのか。
「ちょっとちょーだい」
「はいはい」
一瞬ナニでも乗せてやろうかと思ったがまず間違いなく細切れにされるので止めておく。ただでさえサイボーグなのにこれ以上怪我してたまるか。
「この線ってミサイルだよな。何発出てる?」
「2341、だね」
「キリ悪いしあと四発撃っちまえよ」
「んー、良いよー」
頑張れホワイトナイト。俺達は君の活躍を柿ピー食いながら見守ってるよ。あ、寒いからコタツ入れて。
◆
そんでもって現在年末、16歳。ここ暫く束がどっか行ってます。失踪癖はこの頃からなんだなー、と現実逃避。
だってさ、
「ですから私はあくまで篠ノ之束の助手として開発に携わっていただけでコアの製造法なんて知らないんですよっつーかこれ何度目だこの糞豚が!」
一息で言い切り、ぢーんと若干古めの受話器を電話本体に叩きつける。今度は国某省(誤字に非ず)だ。毎週決まった時間に電話かけてくるんだね、歪みねぇな。
束っぱいの代わりに電話応対の毎日ですよ。一日五回は確実に鳴るし、その度に同じこと言わないといけないし。でもまだスーツにグラサンが来ないだけマシか。
「だぁーもぉーめんどくせぇーなぁー! 束ーっ! 早く帰ってくるか乳揉ませろボケェーッ!」
「やだー」
「ってうぉおっ!?」
某最強地球人の真似を窓から外に向かってやったらその相手が現れた。何を言ってるか解らねぇと思うが俺もよく以下云々。
「ただいまー」
「はいお帰り。世界情勢凄いことになってるって言うか随分と楽しくなってきてるけど」
「おぉー、頑張った甲斐があったねぇ」
頑張ると世界がめちゃくちゃになる、なにこのフリーザ様並の天才。
「腕の調子は?」
「ああ、上々だ。最近は変形機能とかつけて遊んでる」
「相変わらず頭のネジ飛んでるねー」
や か ま し い わ 。お前だって似たようなもんだろ。
「あ、そうだ。コア一個よこせ。趣味に走った機体作るから」
「良いけど、まだ男性開放はできてないよ?」
「良いよ良いよ、どういう戦い方するか考えてニヤニヤするだけだから」
ほい、と世界が求めて止まないコアの一つを手渡される。これ一つで一軍に匹敵するんだから驚きだよね。
それとこの世界のISは千冬のパーソナルデータを元に作ったせいか、やっぱり女性しか扱えなくなっていた。
束の奴が『不可能なんてない』って豪語するキャラ付けしてるのが原因で束の気まぐれとか思われてるんだよね、世界中に。
まああと何年かあれば一時的に開放するのは可能だろうし、白式が大丈夫なのは白式の意思による物だろう。
「……って言うかゲンゾー、また背伸びた?」
「応、遂に180の大台に乗ったぜ。そっちこそ乳デカくなったな、揉ませてくれ」
「そんな流れるような土下座されてもねー」
「そしてナチュラルに人の上に座るって凄いなお前」
体格差を利用した谷間覗きから見事なDOGEZA。その背中に束がちょこんと座る。あの、動けないんですが。
「しかし今外務省は大変らしいぞ。やれよこせだのやれ情報開示しろだの」
「ふっふーん。まあ束さんが本気を出せばこれくらい楽勝だよ! 最近ゲンゾーはどんな感じ?」
「日本政府から声はかかってるけど、お前が前例として逃げてくれてるから俺は刺激しないようにって最小限の干渉で済んでる」
「おー、そっかそっか。流石は束さんだね!」
物凄く情けない格好のままで黒幕っぽい会話をする。あ、でも尻の柔らかさが心地いいので継続決定。うん、駄目人間だね俺。
「っつーかそんなどーでもいい事聞いてどーすんだよ」
「あれ? 解った?」
「何年幼馴染やってると思ってんだよ。あとたまには家に顔出してやれよ、箒ちゃんがお前の扱いについて悩んでたぞ?」
「なにぃっ!? 待っててね箒ちゃん! 今から束おねーちゃんが遊びに行ってあげるからねっ!」
言うが早いが束が窓から飛び出していく。来る時も来る時だが玄関使えよ馬鹿野郎。
「あ、出席日数足りてないって言うの忘れてた」
知ーらね。
◆
はーい皆さんこんにちは。一年ぶりの佐倉君だよー? なんて言ってられる状況じゃないんだけどねー、っと危ない危ない。
『無事か、源蔵!?』
「何とか。いやー、いい加減に大ピンチだねー」
『……もう少し緊迫感を持ったらどうだ貴様は』
そんな事言われてもねぇ。こちとら高校生で国のお抱えになった人間ですよ? こんな襲撃なんて日常茶飯事ですよ。
大体ここ数ヶ月、グラサンスーツが山盛りで来てるんだぞ? 何でエージェントホイホイ(巨大ゴキホイ)が一日で全部埋まるんだよ。
因みに最近まで来なかったのは日本政府が頑張ってたからなんだそうだ。やるじゃん、日本人。
「で、亡国機業の連中か。相変わらず手荒だねぇ」
っつーか何で外人がIS使ってんだろーね。建前上はまだ国内にしか無い筈なのに。
『全くお前といい束といい……私の周りの天才はこんな連中ばかりか』
「んー、でもまあ千冬がこっちに来てて助かったよ。他の連中に【暮桜】を使わせる訳には行かないしね」
白騎士の次に作られた織斑千冬専用IS暮桜。装備こそ刀一本だが、それを補って余りある機動性と頑強さを併せ持った傑作機。
そもそも格闘戦のデータ取り用に作られていた機体だったが、白騎士事件時の銃器使用率の低さと俺のロマンと束の気まぐれでこうなってしまったのだ。
まあ、元々千冬って機械あんま得意じゃないしね。ISの操作がイメージメインなのもそのせいだし、多分銃器も苦手なんだろう。
……俺が一零停止だの何だのの銃器使用に関する項目をノンストップで講義したのがトラウマになってる可能性もあるが。
『それもそうだな。私としてはさっさと調整を終わらせて帰りたい所だったが』
「それに幾ら調整で直せるとは言え変な癖がつくのも嫌だし、慣性制御も最低限に抑えてるし……ぶっちゃけここの人間じゃ使いこなせないよ」
『ん? ああ、そっちの話か。まあ慣れてしまえばどうと言う事は無い』
ホントバケモンだなテメー。きっと俺でも無理だぞ、最近鍛えてんのに。
『……何か不快な気配を感じたが、今は何も言わないでおいてやる』
「そんな理不尽な。で、そろそろ行ける?」
『―――ああ、完璧だ。相変わらず良い腕だな』
「お褒めに預かり恐悦至極。じゃ、頑張ってな」
『任せろっ!』
最終調整を済ませた千冬が銃火の中をカッ飛んでいく。その音を聞きながら俺は机の影に身体を預けた。
「しかし、まだ【零落白夜】が無いんだよなぁ……まあ、【第二形態移行】してないからなんだろうけど」
そろそろなる頃だとは思うんだけどね。ほら、なんかビカーって光ってるし。
◆
ういっすお疲れオリ主だよ! 現在僕はアラスカに居ます! 何でかって?
『それではここに【IS運用協定】の締結を宣言します!』
そう、アラスカ条約だよ。しかも束の奴が居ないから俺が代わりに色々とやらされてるんだ。ふざけんじゃねえよ。
「えーっと、【国際IS委員会】の設置と国別のIS所持数の規定に特殊国立高等学校……通称【IS学園】の設立、と。あと【モンド・グロッソ】もか」
中々に面倒な事が山積みである。ねえ世界の皆さん、僕まだ未成年なんですけど。あえて一人称変えちゃうくらいめんどくさいんですけど。
あとパーティーの席でナチュラルにワイン勧めてくんなよ。こちとらスーツも親の金だぞこの野郎。ここんとこ苦笑以外の親の顔見てねーぞこの野郎。
「まぁ、まだ暫くは動けないか。学園も土地と建物何とかしないといけないし、モンド・グロッソ終わってからかな。なぁ束」
『あ、あれれー? 何でわかったのー?』
ヴン、と低い起動音をたてておっぱい、もとい束を映した空中投影モニターが姿を現す。わからいでか。
「お前が接触してくるなら、ホテル戻って来たこのタイミングかなーと思ってな」
『むむむ、ゲンゾーに行動パターン読まれるとは束さんもまだまだだねー。精進精進』
「心にも無いことを言うのはどうかと思うぞ。精進って単語を辞書で引いてみろ」
『ゲンゾーにだけは言われたくないなー』
何を仰る。俺ほど欲望に忠実な人間はそう居ないだろ? おっぱいとかおっぱいとかおっぱいとかとりあえず揉ませろ。
『そう言えば今度出てくる桜花、だっけ? ゲンゾーが作ったんだよね』
「ああ。可もなく不可もなく、ついでに拡張性もあんまりない機体に仕上げてみました。ぶっちゃけハミングバードの方が強いぞ」
『懐かしー。他の国のも一通りやったんだよね?』
「ああ、イタリアの【フォルゴーレ】、イギリスの【ブルーハリケーン】、アメリカの【ダブルホーネット】にドイツの【ヴァイサー・ヴォルフ】……フランスと中国はまだかかるな」
どれもこれも後に第一世代と呼ばれるであろう機体達だ。とりあえず今までの兵器の延長線上って考えだろうしな。
そして世界がモタついてる間に俺は一人で第二世代を作るのだよ。フゥーハァーハァーハァーハァー。
『フランス? あそこってそんな会社あったっけ?』
「まだどこも作っちゃ居ないがデュノア社の動きが活発になってる。数年以内に国のお抱えで参入してくる筈だ」
『ふーん』
現在IS条約に加盟しているのは日本、中国、CIS(ロシア含む)、中東IS連盟、インド、イスラエル、パキスタン、オーストラリア、アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、イギリス、ドイツ、フランス、オーストリア、イタリア、ギリシャ、北アフリカ諸国連合、南アフリカ、ナイジェリアの18ヶ国と3地域だ。多分もう増えないだろ。
それを現在所在がハッキリしている467個のコアをそれぞれ割り振り(議論すると年単位で揉めそうなんで俺が勝手に決めた)、勝手にドンパチしたらあかんよーとか書いてあるのが今回の条約な訳だ。
「あとはまあちょこちょこマイナーチェンジしたやつを各国に、って感じかな。汎用性を無駄に高くして発展を遅らせてやる」
『万能兵器ほど弱い物は無い、だっけ? 暴論だと思うよ束さんは』
「やかましいわい。ある程度共通したフレームに違う武器を載せて多様化、ここに量産機のロマンがあんだよ」
『ふーん』
流すなボケ。
「そんな訳でパーツ変更による多様化ってテーマに気付けばそれが第二世代、【イメージ・インターフェース】使った特殊武装試験機が第三世代って所かな」
『イメージ・インターフェースって……【ちーちゃん用簡単操作できる君】の事?』
「それそれ。武装に転用しようと思えばできるからな。本当は寄り道なんだが歴史の発展には必要な寄り道だから無問題」
『じゃあパーツ変更無しで全領域・全局面対応可能なのが第四世代?』
「だな。第一世代でもある程度は可能だが、IS同士の戦いを目指すのは第二世代からだし」
因みに今の俺の頭の中には『第五世代』の構想もあるんだが、それは暫く保留だ。きっと束に追い抜かれるだろうし。
あとこの特殊武装ってのはアレだ、【単一仕様能力】を汎用化した物。零落白夜が出てきてからポコポコ出てきたんだよね。シンクロニティ?
『んー、全領域対応……あ、そうだゲンゾー、暮桜が進化したって本当?』
「ん、ああ。コアと操縦者の意識シンクロが一定以上になった劇的な形状変化……第二形態移行、って呼んでるけど」
『うーん、我ながらよく解らない物生み出しちゃったねぇ。で、何か変な能力が出たっても聞いてるよ?』
「誰だよリークしたの……攻撃対象のエネルギーを0にするとんでもない技だよ。ブレードが変形してエネルギー刃が出てくるようになった」
ま、原作通り捨て身技なんだけどね。暮桜が勝手にブレードに雪片って名前付けちゃうし。暮桜さんマジ厨二病。
『ほうほう……他のISで再現はできないんだよね?』
「ああ、だから単一仕様能力って呼んでる。っつーかぶっちゃけお前に解らん物は俺にも解らん、ことISに関しては特にな」
『おやおやゲンゾー、当然の事を言っても褒めた事にはならないんだよ?』
ムカつくこの小娘。畜生、通信じゃなけりゃ押し倒してあひんあひん言わせてやんのに。
「知りたけりゃ自分の目で見る事だな。来年には丁度良さそうな祭りも有る、たまには顔出せよ」
『うん、そーする。あーでもちーちゃん怒ってるかなー』
「怒ってるだろうな。まあアイアンクロー食らっても愛が滾ってるだけだと考えれば良いさ」
『おおう、ナイスアイディア! じゃ、そーゆーことでー』
相変わらず破天荒なお姫様だこと。
◆
良い感じに一夏がフラグ職人やってます。どーも、ゲンゾーです。まだまだプロローグだよ。
今日は第一回モンド・グロッソがあったよ。ちなみにイタリアだよ。
「そんであっさり優勝してるコイツは本当に人間なんだろうか」
「ふむ、辞世の句はそれでいいな?」
「ごめんなさい」
ヒュパァァァンと見事なDOGEZAを繰り出し、目の前の最強人類の魔の手から逃れる。
「知らなかったのか? 私からは何人たりとも逃げられんぞ」
「なにその大魔王って痛い痛い痛い痛い、やめれ」
「やはり吊り上げんと威力が出ないな……」
何この人恐ろしい。幸いにも俺の身長が190超えてたお陰で威力が下がっていたようだ。
「と言うか本当に伸びたなお前は……」
「何だ惚れたか? だったら是非束と3Pをだな」
「やっちゃえちーちゃん」
「心得た」
どうしてこのタイミングで出てくるかなこの兎娘はってだから痛い痛い頭蓋が軋んでるーっ!
「久しぶりだな、束」
「ひっさしぶりー! ゲンゾーは相変わらずオープンな変態だねー」
「ふむ、それには同意するが迷惑度ではお前の方が遥かに上だと言う事を忘れるなよ?」
「痛い痛い痛いー! やーめーてー!」
こ、これはまさかのダブルアイアンクロー!? とか考えちゃうくらい痛いです。そろそろ離して。
「それで束、どうしてここに居る? 優勝を労いに来た、と言うわけでも無かろう?」
「そうだぞ。それにどうして兎キャラなのにバニーガールで来ない」
「黙れ」
ぎゃあ。ねえ、なんか出てない? 俺の頭から出ちゃいけない物とか出てない? それくらい痛い。
「んー、なんか箒ちゃんがお引越しするって聞いたから。大会見に来たってのもあるけど」
「ああ、それか。その情報は正しいぞ、要人警護プログラムとか言うものだそうだ」
「ウチの親はそれ使って日本中の観光地転々としてるらしいよ。誰かが場所のデータ弄ったのかね」
それ警護できないよね、ってツッコミは無しだ。俺からのささやかな親孝行なのだから。
「んんー、そりゃ参ったねー。箒ちゃん盗さ…保護用カメラも新しくしないと」
「しかしこれで箒ちゃんは『幼い頃別れた幼馴染』という珍しい属性を得る訳か……嫌いじゃないわ!」
「……本当にお前らは相変わらずだな」
そういう君もね。顔が笑ってるよ、苦笑だけど。
◆
さて、今度は一気に二年だ! はっはっは、一年ずつだと思ったか!? ネタがないだけなんだけどな!
「精々【打鉄】と学園ができたってぐらいだしなー」
しかもまだ学園は完成してねーでやんの。国際IS研究基地として見れば充分完成してるんだがな。
「……ん?」
と、緑茶飲みながらニュースサイトを眺めていた俺の手が止まる。そこには大規模な列車事故の記事。
「オルコット家の頭首が死亡、か……大変だな、あの子も」
とは言えここに居てできる事はそう多くない。IS絡みの事でなければ俺はただの若造なのだから。
「鈴もちゃんと転校してきたみたいだし……そろそろ楽しくなりそうだ」
誰にとってか、は言わんがね。ふっふっふっふっふ。
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とりあえず第一話です。期間が長いので話を細切れにしてあります。この辺はバトルが無いんでパッパと飛ばします。
第一話って言ってますがまだプロローグ前半みたいな感じですからねー。本編キャラも喋ってるのが2人だけと言う事実。
っつーか条約加盟国とか第一世代とか考えんの超楽しいんですけど。どの国がどの国に肩入れしてるとかね。
それと何か原作で矛盾してるように感じられる設定が幾つかあったのでわざと無視している部分があります。ご注意下さい。
源蔵は基本的に束と同ベクトルの人間です。若干マイルドになってるくらい。あとエロスと一夏弄り。
釣り合いを持たせるために束と同レベルのキャラにしてみました。あと原作にちょこちょこ介入します。
特徴は長身メガネとサイボーグ。現時点で「神の手(ゴッドハンド)」等の異名を持ってます。チートキャラですから。
千春については本編開始後に。これもまた別の地味なチート能力持ちです。
尚、このSSは可愛い束さんを目指しオリジナルISで満足する事以外は考えていません。ではまた次回。
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