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第五話「踏み込みと、間合いと、気合だ!」
さて、入学式から一週間が経った。まあそれは良い。一夏が竹刀でべちべち叩かれたり弐式をどこから手をつけていいのか解らなかったりしたが予定調和だ。
結局簪君(更識妹って呼んだら泣かれて千春にボッコボコにされた)は解らない所は俺に頼るらしい。うん、これでも先生だからね俺。頼られたら全力で動くよ。
「……で、まだ来ないの?」
俺は一夏の専用機【白式】が来るのをモノレールの発着場で待っていた。その隣には眼鏡を光らせた千春が座っている。
「おっかしぃよなぁ……今日の昼には着くって言われてたんだが……」
「もう放課後よ? 一夏達はもうピットに着いてる頃だろうし、オルコットさんだってとっくに準備してる筈よ?」
そんな事俺に言われても困りますがな。ぶっ壊れてても手元にあれば何とかできるが、手が届かない場所だとどうしようもない。
っつーか束が手ぇ加えたらしいし、そのチェックでもやってんのか? やめろよそういう徒労。
「それで源ちゃん、一夏の専用機のスペックってどんな感じ?」
「佐倉先生、な。ホントはまだ授業残ってるんだわ俺。でも受領は指導部か技術部、あと経理部及び渉外部の部長クラスじゃないと駄目だからさ。
で、スペックだったな? 簡単に言えば暮桜の焼き直しだ。速くて堅くて刀が一本、以上」
「……それ、大丈夫なんですか?」
先生として話しているので千春も生徒としての口調に直す。こういう所ってこの双子似てないよね。
「んー、元々零落白夜を再現する為の機体だったんだけど計画が頓挫してな。そんで色々あって束が手を加えて完成させたんだ。
実体剣を包むエネルギーフィールドがどうしても再現できなかったらしいが、束の手にかかればそんなもんさらっとクリアできるだろ」
「零落白夜って……姉さ、織斑先生が現役時代に使ってたISの技ですよね?」
「ああ。相手のシールドエネルギーに干渉して対消滅するエネルギーを発する技だ。
競技用ではリミッターをかけてあるが、全開放状態だと一瞬でISが待機状態まで戻るんだ。おっそろしい技だぞ」
威力測定の時に危うくやまやが真っ二つになる所だったからな。少しぐらい乳削ればよかったのに。
「そんで話を戻すが、白式は格闘戦オンリーの機体だな。やれる事は近付いて切る、それだけだ」
「……凄いとんがった機体だって言おうとしたけど、よく考えたら姉さんってそれで世界最強になってるのよね」
「だが高機動型の割には堅いし、乗り手次第でどこまでも強くなれる機体だな。中々楽しみだ」
「……スルーしたのは姉さんが怖いから?」
うん!
「やれやれ……こんな風に見られるから貰い手が見つからないのよ。幼馴染なんて良いポジション持っといて……」
「いやぁ、俺としては束の方が好みなんで。千冬も好きではあるけど」
「それもそれでぶっ飛んでるけどね。やっぱり源ちゃんも学者ってこと?」
「多分なー。お、来た来た」
誰か(主に世界最強の人間)に聞かれてたら色々と面倒な事になる会話を切り上げ、ようやく姿を現したコンテナを見る。
「佐倉博士ですね。それでは白式、確かにお渡しいたしました」
「んー。何か凄い遅れたけど何で?」
「……その、ウチの主任がごねまして。最後まで反対してたんで大人しくさせて持ってきたんです」
「それで大丈夫なの? 日本最高峰の研究所」
多分駄目だろうな。あとどう大人しくさせたかが気になる。まさか×××板行きの方法じゃなかろうな。
「よし、手伝え千春。【一次移行】はオートでやればまず三十分前後はかかるからな、一秒でも早く装着させてやらんと」
「りょ、了解! それじゃあありがとうございました!」
「え、ええ。こちらこそ遅れてしまい申し訳ありませんでした」
千春と一緒に糞重いコンテナを運ぶ。ああもう、授業みたく外なら牽引車使えるのに。
「っと、そういえば源ちゃん」
「なんだよ。佐倉先生だって何回言えばわかんだ」
「私の専用機ってまだなの?」
ああ、なんだそれか。やっぱり千春も気になるのか?
「ガワだけならもう完成してるよ……そうだな、今日夕飯食ったら整備棟に来な。そろそろ良い頃だろ」
「……何か物凄い嫌な予感がするんだけど」
「なぁに、ちょいとばかし調整が難しくてな。それにホレ、一人だけ先にゲットしたら後ろめたいだろ?」
特に未完成のもん渡された奴と同じ部屋だと特にな。
◇
一夏改造計画の甲斐もありラストにビシッと決めた以外は殆ど原作通りになった一夏対セシリア戦。
二戦目は初心者の一夏に配慮してセシリアと鈴なのだが、ちょいとここで思い出してほしい事がある。
一夏はさっきブルー・ティアーズを切り払った。うん、これはいい。原作通りだ。
そしてISには自己修復能力が備わっているが、パーツが全損した場合は再生できない。うん、これもいい。
さて、この二つの要素が合わさるとどうなるか? うん、そうだね、プロテインだね。
「………。」
「……申し訳ありませんわ」
「別にいいさ、こうする事が俺の仕事だからな。ただ、元々調整に時間がかかるBT兵器をこの短時間で完璧に直さないといけないんだよなぁ……」
「ぐっ……」
そう。いくら予備パーツがあるとは言え、ブルー・ティアーズの調整をしなければいけないのだ。
「しかもさっきの試合、インターセプター使ってれば勝てたよなぁ……」
「うぐっ……」
「一次移行してないズブの素人をいたぶった挙句に負けるんだもんなぁ……」
「せぐっ……」
一応整備科の生徒達には課題を出してあるから問題ないと思うが、こちとら無断欠勤してるようなもんだ。
手前ふざけんな馬鹿野郎、と言いたくもなる。だってバレたら減給もんだし。いや、注意だけかな。
「……でもさ」
「?」
「良い目、してたろ? 一夏の奴」
「……はい」
ちょろいなイギリス代表候補、流石イギリス代表候補ちょろいな。
そして今から戦う相手はそんな所は既に通過している相手だ。こりゃ勝ち目がない。
「―――よし、調整完了! ちゃちゃっと行って来い!」
「はい、ブルー・ティアーズ、セシリア・オルコット! 行きますわっ!」
さぁて、何秒持つかな?
◆
「おいーっす、不順異性交遊やってるかー?」
次の試合に向けて千春、箒、簪の三人と白式の調整をしていると源兄ぃがピットに入ってきた。何言ってんだアンタ。
「何ってまあ、ナニだけどよ」
「こんな所で考えてる事読まれた!?」
「それぐらい楽勝だっつーの。で、どうだ? コイツは」
いつも通りの源兄ぃは不意に優しい目をして白式の装甲に触れる。
それは普段の悪戯好きな兄貴分ではなく、どこか……そう、まるで娘を見る父親の目のようだった。
「そうだな、最高だよ。射撃武器がないってのはちょっと驚いたけど」
「武装が試作品同然だからな。だが高出力のエネルギー体でできてる刃だから、大抵の物は一撃で切り落とせるぜ」
「やっぱりそうなのか……」
とは言え競技用に最大出力は抑えてあるが、と源兄ぃは言って空間投射モニターを一つ呼び出した。
「さて、それじゃあ鈴に勝つ為に一つアドバイスだ。言っとくが鈴は強いぞ、相性的な問題で」
「鈴のISってどんなのなんだ?」
「中国の第三世代型【甲龍】だ。基本的には近接型だがフロートユニットを丸ごと空間圧作用兵器【衝撃砲】に使ってるのが特徴だな」
衝撃砲? 名前からして射撃武器だってのは解るけど……って、それかなり相性悪くないか!?
「そう、かなり悪い。しかも衝撃砲は砲弾及び砲身が不可視なのが特徴でな、射角もほぼ360度。ただ突っ込むだけじゃ勝てないぜ」
「砲弾も砲身も見えないって……それじゃどうやって避けんだよ」
「勘。まあオルコット君との試合を見る限りは稼働率も40%かそこらだろうし、気をつけるのは射角制限が無いくらいだろ」
勘って……まあ鈴の事だから結構簡単に見破れそうだけどさ。
「それで佐倉先生、策って?」
「ああ。離れたら勝ち目がないし、かと言って常時接近戦ができるほど優しい相手でもない。なら最大の一撃をぶち込むしかない」
「確かに零落白夜は当たれば終わりだけどさ……そう簡単にはいかないだろ?」
理屈は簡単だ。けど世の中簡単なことほど難しいからな。どうすりゃ良いんだよ。
「ああ。だから玉砕覚悟で常時零落白夜って手もあるな」
「手『も』って事は、先生の策は違うんですか?」
「当然。その名も【瞬時加速】―――千冬が現役時代に得意としていた技だ」
◇
頭の中で源兄ぃに言われた事を反復しながらピットを出る。そこにはさっきまで試合をしていた筈なのに疲れが見えない鈴の姿があった。
「一夏! 今謝るならちょっとは手加減してあげるわよ!」
「手加減なんざいらねぇよ。でも約束を勘違いしてたって事は謝る。悪かったな」
「な……べ、別にそんなうわべだけ謝られても嬉しくなんかないわよ!」
何だ? 鈴の奴……まあ、確かにそうかもな。意味は自分で考えろって言われちまったし。
「さて、それじゃあ準備は良いか? さっさと始めようぜ」
「第一これじゃ折角の計画が―――って通信? 誰よこんな時に! 一夏、ちょっと待ってなさい!」
「あ、ああ」
何かボソボソ言ってたと思ったら誰かから通信が入ったらしい。相変わらず忙しい奴だな、鈴は。
『―――。』
「……そう、そうよね。約束した時点で気付かなかったんだもんね、確かにそうだわ」
『―――。』
「うっ……わ、解ったわよ。それじゃ切るわよ? いい加減始めたいし」
さっきから妙に顔を赤くしたままの鈴が通信を切ってこっちに向き直る。やっぱり忙しい奴だな。
「一夏、こないだは殴ったりして悪かったわね」
「殴ったって言うかビンタだったけどな」
「そこ突っ込む所違う! っとに……それじゃあ、お互い謝ってスッキリした所で始めるわよ!」
「ああ!」
お互いに武器を構えた所で試合開始のブザーが鳴る。わざわざ待っててくれたのか。
「たぁぁぁっ!」
「背中で吐いて……吸って……ぶっ飛ぶっ!」
「っ!?」
一度エネルギーを吐き出し、それを吸引。そのまま勢いをつけて吐き出す事でスペック以上の加速を行う事が出来る技だ。
源兄ぃに教わったのはイメージと『最初の一手にこれを使う』こと。どうせ手が無いのはバレてるんだし、最初の一撃で決められなければ負けだと思えとまで言われた。
「はぁぁぁぁっ!」
「瞬時加速!? でもっ!」
加速しながら零落白夜を起動。鈴も一瞬驚くが、手に持った大刀でカウンターを取りに来た。
けど負けるか! 源兄ぃに教わったこの台詞の通りにするだけだ!
「踏み込みと、間合いと、気合だぁぁぁぁっ!」
◆
総当たり戦の結果は一位鈴、二位一夏、三位セシリアの順になった。が、ここで一夏以外が代表になると困るので鈴には色々と吹き込んでおいた。これで代表を譲るだろう。
……しかしまずいな。少し一夏を強化し過ぎたか? セシリアが折れても困るし、ゼフィルス戦までに何とかしないとな。
「でも惜しかったね。やっぱり青竜刀と正面から打ち合ったのがまずかったのかな」
「青竜刀じゃねぇ! ありゃ柳葉刀だ! ゴテゴテしすぎてて解り辛いが柄の長さが決定的だ!」
「……武器マニア」
で、現在俺の城には客人二人。千春と付き添いの簪である。はっはっは、その称号は褒め言葉だぜ?
「それじゃあ千春、コイツが俺からの入学祝いだ。受け取ってくれ」
ドアのロックを外し、その中へと歩を進める。ここには小さいながらもIS整備には充分なガレージがあるのだ。
「これが……私の、機体」
「綺麗……」
「あんがとよ。コイツの名前は【六花】、雪の結晶の別名だな」
そこに鎮座しているのは俺が丹精込めて作った『第五世代概念実証用第三世代機』である。
「よし、早速一次移行始めるか。今回は俺が手動でデータ入れるから十分ぐらいで終わる筈だ」
「は、はいっ」
事前に借りておいたISスーツ(管理科に変な目で見られた)を千春に投げて寄越し、六花に繋げてある端末を起動させる。
入学時の身体測定で解っている範囲のデータを入力しながら待っていると、数分で着替え終わった千春が六花の装甲に触れていた。
その表情は硬く、緊張か興奮かそれともまた別の何かが渦巻いているような顔であった。
「よし、そんじゃ乗ってくれ。データの微調整するから」
「あ、はい!」
言われるまま千春は六花に乗り込み、シートに身体を預ける。六花は自動的に搭乗状態へと移行し、リアルタイムでデータの取得を始めていた。
そのまま誰一人として言葉を発する事無く数分が経ち、俺は空間投射ディスプレイをかき消す。
「ほい調整終了、と。超速いな流石俺」
「………。」
「………。」
「……はいスンマセン。ナマ言ってマジスンマセン」
こういう無言の圧力やめてホント。胃がキリキリするから。おっかしいなぁ……束なら許される言動なのに。
―――第五世代概念実証用第三世代IS、六花(リッカ)。
この機体は第二世代の特徴である装備変更による用途の多様化を突き詰め、固有装備ごとの性能の特化を目指している。
故に素体の状態では多少足が速いだけの機体であるが、勿論俺お手製の機体なので白式に若干劣る程度の速度は出せる筈だ。
だが、この機体の最大の特徴はそこではない。伊達に第五世代の概念実証機ではないのだよ。
『おはようございます。独立型戦闘支援ユニット、六花です。操作説明を行いますか?』
「……しゃべ、った?」
「シャベッタァァァァ」
千春も簪もポカンとしているので合いの手を入れておいてやる。
「……う、動けぇぇぇぇ! で、良いの?」
『はい。流石は我がマスター、完璧な返答の入力に感謝の意を表します』
そして千春は中々にメタトロンに毒されていた。まあ俺のせいなんだけどさ。
「あの……これ、って……」
「ああ、IS『六花』に搭載されている戦闘補助用人工知能『六花』だ。背中側の腰のちょっと上にそいつのメインユニットがある、そこだけは絶対に守れよ」
『私としては絶対防御を発動させたい所ですが現状では不可能です。よろしくお願い致します、マスター』
六花の起動を完全に確認し、俺は機体に接続されている全てのプラグを排除する。その間も限りなく白に近い水色のボディがライトの光を受けて輝いていた。
形状は殆ど俺の設計通りだが、全体的に流線型になっている。それと尻の後ろ側にあったフロートユニットが外側へと移動している。六花自身が必要だと判断した結果だろう。
千春はバイザーに覆われた顔を巡らし、着け心地を確かめるように手を握っていた。下半身にブースター系が集中しているせいかドレスを着ているようにも見える。
「見ての通り、コイツの最大の特徴は戦闘支援用AIを搭載している事。そいつとの意思疎通のレベルがそのまま強さに反映されると言っても過言じゃないな」
「意思の疎通……」
「ホレ、お前他人と打ち解けるの早いだろ? だったらAIでも行けるかなと思ってな」
『よろしくお願いします、マスター』
「う、うん……」
どうも難しく考えて緊張しているようだが、別にそう構える必要は無いさ。女の子らしくお喋りでもしてなさい。
「さて、そんじゃあ機体特性の説明だ。まず固定武装は腕部パーツの内側にナイフが一振りずつ。最後の武器だな」
『武装展開:特殊複合ナイフ』
俺の説明に合わせて六花がナイフを展開する。手首の部分に柄が来る設計になっているので、片手で展開するのは少しばかしコツが居る筈だ。
「それと量子展開用武装には六銃身型のGAU-19をベースに改造したガトリングガンが二丁、銃剣付きでな」
『武装展開:GAU-IS』
「きゃっ!」
千春がナイフを仕舞ったのを確認し、今度は展開用の武装の説明に入る。急に重さが生じて驚いたのか、千春が一瞬倒れそうになる。
が、ISのパワーアシストがあればこの程度は何も問題は無い。すぐに持ち直して重さを確かめるように振っている。危ないっての。
これは本来なら固定武装として使用する物だが、集弾率を気にしなければ片手で運用可能だ。銃剣は殆どおまけだが直接殴るよりはマシだろう。
「細かいデータは後で確認するとして、次は基本的な機体性能だな。コイツはこの状態だと高速戦闘型になるが、このままだと真価を発揮できない。六花を積んでる意味が無いからな」
「このままだと……?」
「そう。両肩と腰、あと背中にジョイントがあるのが解るか? そこに換装パーツを装着する事で様々な場面に対応できるようになるぞ」
それじゃあパーツセットのご紹介だ、と指を慣らして大型の空間投射モニターを出す。
「現在完成してるパックは四つ、設計が終わってるのが二つと構想段階が二つ。ただし試合用のISは転換容量が規制されてるから一度の戦闘で使えるのは二つ、ギリギリ三つだけだな」
「どうして一つ分増えるの?」
「手持ちのガトリングと予備の弾を全部抜けば丁度一つ入るんだよ。ただ弾切れになったらナイフしか使えなくなるから、その辺は考えないと駄目だけどな」
まず一つ目、と言ってパックの詳細を表示する。
「ガトリングパック『レインダンサー』、コイツはGAU-8の改造品をジョイント部に六つ搭載する大火力仕様だ。その分機動性は犠牲になるが毎分4,200発×6の銃火に反撃できる奴なんざそう居ない」
「毎分25,000発以上……!?」
「ただマガジンの方も改造済みなんだが、2,000発ちょいしか入んなかったんだ。だから無補給だと30秒で弾切れになる」
何をそんなに詰めてるんだお前は、という視線が二人から来る。そう怒るなって。
「だから予備のマガジンもセットで量子化してあるんだって。それに一気に全部撃つ必要は無いしな」
「まあ確かに……」
「……凄いけど、尖りすぎ」
的確な評価ありがとうございます。それじゃあ次。
「ミサイルパック『メテオストライク』、コイツは一つのジョイントに八発の誘導ミサイルと一発の対IS用小型巡航ミサイルを搭載してる。合計五十四発のミサイルが隕石のように降って来るぞ」
「これって……山嵐?」
「ああ、そう言えば弐式にも似たようなの積んであったな。アレよりは一発ごとの誘導性は低いが、六花の火気管制があるから遜色ない命中率が期待できる筈だ」
それに何より殆ど機動力が低下しない、というのが良い。パック全体の中でも火力と速度のバランスが一番良い。
「タッグ組む機会があればお前ら二人でやってみろよ。百二発のミサイルパーティーの始まりだぜ?」
「……ちょっと、良いかも」
「うん、良いかも」
『流石は我がマスター、中々に病的ですね』
はいそんじゃ次ー、と表示データを切り替える。今度は先の二つに比べて大分スマートな印象のパックだ。
「レーザーパック『レーザービーム』、今完成してる中では一番の速度を誇るが、継戦能力は一番低いな。カードリッジ式のレーザー砲を六門装備してる」
「レーザー兵器って……オルコットさんのBT兵器みたいな?」
「そうそれ。まあアレは思念操作がメインだからレーザーはオマケなんだがな。単発の威力ではこのパックが最高だが、最大威力で撃つと十発も撃たない内に弾切れになるので注意、と」
勿論予備のエネルギーパックも同梱してあるが、それでもやはり心許無い。ではどうする? こうする。
「ただここのエネルギーパイプを繋ぐ事で機体側のエネルギーを使う事も可能だ。使いすぎると自滅するが」
「ふむ……その辺は戦術との擦り合わせって事?」
「そうなるな。まあ余程無茶な戦い方しない限りは特に問題ないだろ」
それじゃあラスト、と最後のファイルを開く。今度は今まで三つのパックの特徴が合わさった形だ。
「腰にガトリング、背中にミサイル、肩にレーザーを装備したミックスパック『スタンダード』だ。勿論特徴らしい特徴は無いが、問題が一つ。コイツを使うと手持ちガトリング用の弾を半分に減らさないといけないんだ」
「どうして?」
「元々最初の三つは使用容量に若干の差があるんだが、別種の装備を一つのパックに入れると使用容量が跳ね上がるんだよ。だからコイツは若干使う容量が大きいんだ」
もう一つ別種の装備を一つに纏めたパックがあるが、そいつも多分容量が大きくなる。
もしそれとスタンダードを同時に使うとなると、手持ちガトリングの予備弾はゼロになってしまうだろう。
「どれを使うかはお前の自由だが、このパックは基本的に六花側からの操作で動かす事になる。そこは注意しろよ?」
「え? って事は……」
「最悪の場合、足の引っ張り合いになるって事だ。そうならないようにお互いの性格を知っておくのも大事だぞ」
「わ、解った」
『よろしくお願いします、マスター』
コイツは元々『六花』の戦闘経験を蓄積させる為の機体だからな。他にも色々と積んではいるが……まあそれは良いか。
「他にもガードパック、ワイヤードパック、ファストパックなんかがある。追々作ってくから、まあ期待しとけ」
「は、はい。よろしくお願いします」
「お願いされました、と。ああそうそう、手持ちガトリング以外の装備も設定し直せば使えるからな。変えたくなったら言ってくれ」
今は開発コード『多目的拳型エネルギー発生器』『X型高機動ブースター』『プレートバスター』『カスタムシールド』の四つが企画中だ。どれから作ろうかな。
『まずは私とマスターの相互理解に勤めるべきと判断します』
「そうだね。よろしく、六花」
『よろしくおねがいします、マスター』
と、俺が思索に耽っている間に話が進んでいたようだ。おお、もうこんな時間か。いかんいかん。
「それじゃそろそろ終わりにするか。待機状態にしてみ」
「はい―――とわっ!?」
「千春……!?」
難なく千春は六花を待機状態にするが、着地時に何かがあったのかすっ転んでしまった。どーした?
「あてて……な、何これ!?」
『入力情報が不適切と判断します。不適切でない場合は具体的な入力をお願い致します』
「……ダブルメガネ?」
どうも六花は眼鏡を待機状態に選択したらしい。それも今まで千春が使っていたようなシンプルな物ではなく、妙にメカメカしいデザインだった。
……と言うか、ぶっちゃけMP3プレーヤー付きのサングラスである。色は機体色と同じ限りなく白っぽい水色だ。
「あれ? これ、度も入ってる……」
「……そう言えば、千春……目が悪いんだっけ……?」
「うん。でもこれ凄いわ、ちゃんと見えるもん」
『ありがとうございます』
今まで使っていた眼鏡は予備にするらしい。そろそろ戻った方が良いぞ、千冬に怒られる。俺が。
「それじゃあ源ちゃん、ありがとうね」
「どういたしまして。書類は明日渡すからな」
「う……簪が書いてたアレ?」
「アレ。経験者が居るんだから細かい事はソイツに聞け」
とっとと帰れ。俺はまだやる事残ってんだよ。
「……それじゃあ、先生……おやすみなさい」
「おやすみー」
「応、寝ろ寝ろ……っと、忘れる所だったな」
二人の姿が闇に消えた後、俺は机に置いておいたケータイを鳴らす。
滅多にかけないその番号は数回の呼び出し音の後、その主へと声を届けた。
『もすもす終日~? どったのゲンゾー』
「終日お前を愛してるー。いやちょっとな」
『(ブツッ)』
あ、切りやがったあの野郎! ふざけんじゃねえよ! リダイアル連打連打連打ァッ!
『……それで? コアでも欲しいの?』
「ああ。ちょっと面白い機体を作ってな、それ用にもう一つ欲しいんだよ」
『どんな感じの? こっちで基本的な調整はやっとくけど』
どんな感じか、か。そうだな……。
「AI用に調整って出来るか? コア自体の意思は希薄な方がいいな」
『オッケー。けどその代わりに最近の箒ちゃんとちーちゃんとはるちゃんといっくんの様子を教えて貰おうじゃねえか、げははははは』
うーむ、精一杯ダミ声にしてるのが可愛らしいとか考えてしまう俺は重症なんだろうか。
「良いぜ、それじゃあ―――」
さて、今日も寝るのは遅くなりそうだな。
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うおぉー! オリジナルIS考えんのマジ楽しい! 尖がった性能のIS最高!
衝撃砲の稼働率とかは完全に独自設定です。もう少し上の性能があってもいいと思うんだ、第三世代機は。
そしてこのSSの『第五世代機』は……もう解りますね。原作でも度々出てくるアレです。閣下には反対されそうですが。
そしてラストにフラグ立てる馬鹿。お前のせいかよって言う。
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トチ狂って三次ネタやらかしましたがご指摘を頂いたので削除致しました。
不快に思われた方が居られましたらこの場を借りて謝罪致します。申し訳ありませんでした。
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