バーサーカーとの戦闘を終え、私達は衛宮邸に戻っていた。
帰り道、ずっと士郎はもう少しで和解できたはずだと悔やんでいた。
今も顔を伏せ、考え込んでいる。仕方ないからそっとしておいて、私たちは無事だった台所で料理を作っていた。
いや、本来目的を達した以上は私たちは一緒にいる意味はないんだけど、それでも、突然現れたイレギュラーもあるから相談したいしね。
「凛さん、こんな感じですか?」
「ええ、いいわよまどか」
バーサーカーとの戦いで多大な消耗を私たちは強いられた。だから少しでも体力と気力を回復するために食事の準備をしている。
それまでに士郎が少しでも前向きになってくれればいいんだけど。
そして、料理を道場に運び込んでいたら、セイバーを連れて士郎が道場に入ってきた。
「士郎さんもういいんですか?」
心配そうにまどかが士郎に問いかける。
「ああ、すまない遠坂、鹿目。心配かけた。お、飯もうできてるのか。うまそうだな」
と、笑うが、その顔はやっぱり無理にふるまっているように見える。まあ、それでもさっきよりはマシと言えるわね。
「そうね。早く食べちゃいましょ」
「ふう、食った食った」
と、士郎がぽんぽんとお腹を叩く。
うん、あれだけ食えれば十分でしょうね。セイバーなみに食べていたし。
それから、士郎は居住まいを正す。
「あー、えっと、食い終わってすぐで悪いんだが、二人に頼みがある。もう同盟の条件であるバーサーカーを倒すって目的は果たしたけど、イリヤを助けるのを手伝ってもらいたいんだ」
ああ、やっぱりそれなのか。でも、
「士郎、あんたもわかってるでしょうけど」
「ああ、もうイリヤの命がないかもしれないって言いたいんだろ? わかってるさ。でも、それでも生きていたら助けてやりたいんだ」
と、士郎はまっすぐに答える。
「……わかったわ。まどかもセイバーもいい?」
「はい」
「ええ、アーチャーは強敵です。正直あなたたちがいてくれるのは心強いです」
まどかもセイバーも頷く。
ほんと、情が移っちゃったわね。でも、それでいいと今は思える。
「とりあえず、今は情報を整理しましょう。セイバー、あのサーヴァントのことを教えて頂戴」
私の言葉にセイバーがうなづく。
「正体は知りませんが、彼は、前回の聖杯戦争に参加したサーヴァントの一人で、最後に私と戦いました」
「前回の聖杯戦争のサーヴァントが残っていた……?」
十年間も現界していたなんて、常識的に考えればあり得ない。だが、バーサーカーのようなでたらめな存在もいたのだから、なんらかの手段を講じればなんとかなるのかもしれない。
「彼はアーチャーのクラスでしたが、弓は一度も使っていませんでした。その代わり、どこからか取り出した大量の武器をまるで矢のように飛ばしてきます。その全てが宝具だ、と彼は言っていましたが……」
確かにあれすべてに宝具のような威圧感はあったけど、まさか本当に全部宝具だなんて……
あの態度といい、生前は相当な権力者だったとか?
「そう、ところで……その前回の結末は?」
そう問いかけた瞬間、セイバーは表情を歪めた。な、なにがあったのよ?
「……私と彼は聖杯の前で対峙していました。私は直前の戦闘で満身創痍、彼は他のサーヴァント、ライダーと戦闘した直後でしたが、傷一つない状態でした。相当な強者だったのですが」
セイバーすら強者と認める相手に傷一つないって……
「そして、彼は何を思ったのか私に自分のものになれと言い出しました」
……はあ? あいつそんなこと言ったんだ。
そういえば去り際に我のものになる覚悟って言ってたけどそういうことだったのか。
「その後、私のマスターが令呪を二つ使い、聖杯ごと宝具で薙ぎ払ったはずなのですが……」
なるほど、だから死んだはずだと……ちょっと待て。
「聖杯ごと?」
「……はい。もともと彼が何を考えていたかわからなかったのですが、なぜ聖杯を破壊させたのか理解できません」
そうか、だからセイバーはあんな顔をしたのか。
「そう……で、まどか今の話で心あたりあった?」
「す、すいません、わかりません」
と、まどかが謝ってくる。
まあ、相手が男って時点であまり期待してなかったけど、残念。
「じゃあ次、士郎。さっきのあれはなに?」
まだ聞いてなかったことを士郎に問う。
突然バーサーカーと互角の戦いをして見せたけど……
「ああ、あれは一時的に『イリヤ』の能力を借りたんだ。英霊の力の一端を写し取って、自身の存在へ上書きする擬似召喚……つまり一時的に英霊になるってことらしい」
え、英霊になるって……とんでもない能力ね。
でも、それは心強い。なにせこちらにサーヴァントが三人いるのと同義なのだから。
「で、あんたのなる英霊ってなんなの?」
と、私の問いに士郎が目を逸らす。
「どうしたのよ?」
「えーっと、驚かないで聞いてくれよ? あの英霊の真名はエミヤ……俺が英霊になった姿らしい」
ふうん、士郎が英霊になった姿ねえ。
…………は? 英霊になった姿?
セイバーもまどかも目を見開いて驚いている。
「な、なんですってえぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」
それから簡単に士郎は語った。士郎が辿る結末。
といっても、どうやら英霊となった士郎の記憶は記憶や精神が摩耗してるせいで相当曖昧だったようで、今回の聖杯戦争の情報は無きに等しかったが、それでも私たちにとって衝撃的だった。
自らの正義を信じて、理想を追い求めて戦い続けて──最後には、助けた人々に裏切られて死んだという。それでも『士郎』は誰も恨まず、死後にその魂を英霊としてまで、正義の味方になることだけをただ一途に望んだという。
なんて、報われない。
セイバーも、まどかも沈痛な面持ちで士郎を見ている。
ふっと話し終えた士郎が自嘲気味に笑う。
「俺さ、ずっと誰かのために命を使わないといけないって思ってたんだ」
と、士郎が独白する。
そうなんでしょうね。だから、あの時も、そして、さっき私たちに協力を頼んだのも……
「でもさ、今は少し考えが変わったんだ。俺は、イリヤや桜にふじねぇ、大切な人や仲間のために戦う。そして、誰かのためじゃない俺自身の願いで正義の味方になるために命を使う。それが俺の祈り、俺の正義だ」
それは士郎らしいまっすぐな答え、それでも、彼の成長を十分感じさせた。
誰かのためじゃない。己の意思で命を使う。それが正しいと言えるかはわからないけど、私も納得できる命の使い方だ。
そしてそれを教えたのは……まどかを見る。
不思議そうにまどかが見返してきたからなんでもないと笑う。
「そう……ならこれ以上もうなにも言うことはないわ。行くわよ士郎。イリヤスフィールを助けに」
私の言葉に士郎が笑う。
「ああ!」
私たちは立ち上がった。
そして、私たちは柳洞寺の前に立っていた。そこに禍々しいまでの濃密な魔力が充満していた。それのせいか、空は赤黒く染まってまさに死地を演出している。
いったいここになにがあるかわからないけど、相当ヤバイものがあるとだけはわかるわね。
「行こう」
静かに告げる士郎に頷いて、踏み出した。
長い階段を昇る。ここって柳洞くんや葛木とか武闘派が多いけど、もしかして、足腰鍛えるため長くしてるわけじゃないわよね?
って、葛木か。キャスターがいなくなってしまった彼はどうなったのだろうと今更ながら思い出した。
そんな疑問を抱きながら階段を登って、ピンと針積めた殺気が私達を襲う。
「何者だ!?」
セイバーの声に、そいつは現れた。
「ふむ、あやつらの言う通り現れおったか」
山門の前に悠然と立つのは、紫の陣羽織を羽織り、身の丈はある刀を持った侍だった。
サーヴァント?! 残りのクラスからしておそらく……
「アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎、その首を貰い受ける」
とんっと、佐々木小次郎と名乗ったサーヴァントはこちらに躍りかかった。
一瞬で接近したアサシンの一閃を飛び出したセイバーが受ける。
「セイバー!!」
「ここは私に、シロウ、あなたはイリヤスフィールを!!」
セイバーの言葉に士郎は一瞬躊躇ってから対峙する二人の横を走り抜ける。ちゃんと成長してるのね士郎。私とまどかも士郎に続く。
しかし、佐々木小次郎か……この国では知らないものがいないほどの大剣豪。
それがなぜアサシンとして召喚されたのかわからないけど、油断は禁物よセイバー!
そして、境内に入る。
そこにアインツベルンの森に現れ、イリヤスフィールを連れ去った黄金のサーヴァント……
「アーチャー!!」
士郎が名前を叫ぶとふんとアーチャーは鼻を鳴らす。
「やはり、面倒だ。聖杯を起動させるためとはいえ、我が雑種の相手をせねばならぬとは」
と心底退屈そうにアクビをするアーチャー。その人を人と思わない態度、ほんと、腹が立つわね!
だが、それよりも気になることがある。
「聖杯を起動させるため? どういう意味よ」
聖杯は聖杯戦争は勝ち残ったマスターとサーヴァントの前に現れると言う。
それならまどかを倒す意味はあるとわかるけど、現時点でサーヴァントは三騎、いや、こいつを入れれば四騎。
一人欠けてもまだサーヴァントが残っている以上、聖杯は出ないんじゃ?
いや、まどかを倒した時点でアサシンをセイバーがもしくはその逆にセイバーをアサシンが倒せば今回呼び出されたサーヴァントは一様、一騎にはなる。
もしくは、セイバーが言ってたけどこいつとセイバーは聖杯の前で戦ったという。その時に聖杯が起動していたとするなら残り二騎になった時点で聖杯が起動するってこと?
こいつが言いたいのはそういうこと?
しかし、なにか違う気がする。そもそもイリヤスフィールが拐われたのはなぜ?
わからない。情報が足らない。
「その疑問には……凛、私が答えてやろう」
聞きなれた声に目を向ければ、聖杯戦争の監督役であるはずの、言峰綺礼が柳洞寺の境内の中にある池の前に佇んでいた。
「綺礼……?! あんた、なんでこんなところに……」
そこまで言って自分の発言が愚問だったことに気づいた。
サーヴァントとともにいる、ならあいつが、あの黄金のサーヴァントのマスター!
そしてその後ろには、貼付けにされているイリヤスフィールの姿……ぴくりとも動く事は無く、既に事切れているのであろう事がわかった。
私の隣りにいる士郎が拳を握りしめ、ぎりっと歯を食いしばる。
最悪の場合として想定してはいたものの、実際に見るのでは違うだろうし、生きていれば絶対に助けると意気込んでいたのだから。
「お前ら……よくもイリヤを!!」
士郎の怒声を 綺礼は涼しい顔で流して語りだした。
「そもそも、冬木の聖杯は二百年前アインツベルン、マキリ、そして……お前の先祖遠坂が『根源』に至るために作り出した贋作だ」
そこから綺礼が語ったのは私たちの知らない聖杯の真の姿だった。
聖杯の本来の目的は、サーヴァントとして召喚した英霊の魂を一時的に留め、その魂たちが座に戻る際に生じる孔を固定して、そこから世界の外へ出て『根源』に至る事。
確かに魔術師の最大の目的は『根源』に至ることだけど、まさか、そんなものだったなんて……考え方を変えれば私たちはそいつらに踊らされたとも言えるわね。
なにせ、別に戦わなくたって、召喚したサーヴァントをその場で皆殺しにしてしまえばいい話なのだから。
まあ、そんな都合良くいくわけがないからこんな面倒なシステムが出来上がったんでしょうね。
「そして同時に「願望機」としての役割も確かに持つ。儀式の完成によってもたらされる膨大な魔力を用いれば大抵の願いは叶えることが可能ではあろう。そして、聖杯が起動するには最低で六騎のサーヴァントを生贄としてくべる必要がある。だが……既に聖杯は『この世全ての悪』アンリマユによって汚染されている」
聖杯が……汚染されてる?
「アンリマユ? なによそれ?!」
「アンリマユとは、過去にアインツベルンがルールを破り召喚した『アヴェンジャー』のサーヴァント。『この世全ての悪』を背負わされた反英雄。その彼が敗れて聖杯に取り込まれた際に聖杯は汚染されてしまった。そして、使用者の願望を破壊活動によって叶えるように変質したのだよ……そう、十年前の大火災もそれが原因だ」
と綺礼が語る。十年前の火災が聖杯戦争のせいってこいつ自身が言ってたけど、そういうことだったのね。
「それで、あんたはなにをするつもりなのよ。そもそも、イリヤスフィールを浚って殺したのはなぜ?」
その問いに綺礼が笑う。どこか歪んだ笑みだ。
「私はな、凛、昔から普通の人間が美しく感じたり、嬉しいと思うことになんの価値も見いだせなかった。誰もが醜いと思うものにしか価値を見いだせない。だから、見てみたいのだ。生まれついての悪である私が見つけられなかった「答え」を「この世全ての悪」が出すことを。そして、そのためにはイリヤスフィールが、アインツベルンが作り出した聖杯の器である彼女の心臓が必要だったのだ」
その告白は、どこか懺悔するようかのように聞こえた。
だけど……
「そんなことはさせません!」
まどかが強く断言する。その眼に欠片の恐れもない。
「ああ、セイバーには悪いが聖杯は破壊する! もう二度とあんなこと起こさせない!!」
たく、こいつらは……
私は聖杯が欲しかった。別に願いを叶えるためじゃない。ただ、それが遠坂の悲願だったから、私が私であるために欲した。
でも、そんなのいらない。そんなものよりも、価値のあるものが今の私にはある!
「行くわよ、まどか!」
「はい凛さん!!」
そう、まどかというこの聖杯戦争を共に戦ったパートナーが!!
自然と笑みが浮かぶ。相手の能力はセイバーの情報しかない。それでも、なんででしょうね、負ける気が全然しない!
「ふん、不愉快だな。貴様ら雑種ごときが我を倒せると思っているとは……王を愚弄した罪は万死に値するぞ!!」
アーチャーの奴、ずいぶんと頭に血が昇っているようね。
その唯我独尊を絵に描いたような態度だけにプライドも高いのかしらね。
「まどか、最初から全力でいきなさい!」
「はい! 行きます、魔法少女連合(マギカ・カルテット)!!」
まどかの瞳が金色に輝いて魔法少女たちが召喚される。
さらに、
『お兄ちゃん!』
「ああ、夢幻召喚(インストール)!!」
マギカ・カルテットの影響下にいる士郎が英霊エミヤに変身する。
アーチャーの後ろの空間が歪み、燦然と輝く無数の宝具が出現した。
「消えろ雑種ども!!」
アーチャーの号令にすべての宝具が飛び出す。
同時にさやかと杏子が飛び出す。
「今度は!」
「前のように行かない!!」
二人に向かって宝具の雨が降り注ぐ。
そこに、マミの弾とまどかとほむらの矢がその宝具に向かう。
そしてぶつかり合った瞬間、まどかたちの矢が撃ち砕かれる。
それでも、まどかたちはペース配分を考えずひたすら乱射する。一発で駄目なら二発、二発で駄目なら三発。
宝具が弾かれるまで弓を、引き金を引く。さらに、
「―――停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)!!!!」
士郎が目に見える限りのアーチャーの宝具を投影し、撃ちだす。
そして、いくつかの宝具を弾き、それでできた隙間をさやかと杏子はすり抜け、アーチャーに接近する。
「このお!!」
さやかと杏子が間合いに辿りついた。アーチャーに向かって剣と槍を突き出し、
「ふん!!」
空間から出てきた剣を引き抜き、アーチャーが振る。
さやかの剣が、杏子の槍がアーチャーの剣に触れた瞬間、砕けた。
さらに返す刃でさやかが切り伏せられ、杏子は距離を取る。
「ふはははは! 大口叩いておいて所詮この程度か?」
と、腕を組んで高笑いしているその様は……はっきり言って隙だらけ。
一瞬で傷を治したさやかが起き上がり、切りかかる。
「舐めんじゃないわよ!!」
「む」
さやかの剣を避け、距離を離すかのように後ろに飛ぶアーチャー。
「ふむ、致命傷だったが……再生能力か。存外しぶといな」
さやかが駆ける。対し、アーチャーが一つの剣を抜く。
再び間合いに入ったさやかに対し、アーチャーが剣を振るい、再びさやかの剣を砕いてその足を斬り落とす。
地面に転がるさやか。だが、すぐに立ち上がろうとして、再び地面に落ちる。
「え? なんで?」
さやかが自分のない方の足を見る。
普通だったら足がないなら当然と思うだろうけど、さやかの再生能力は私見だが死徒レベル。
だけど、その再生が働いていない?!
「これは、不死殺しの剣、死徒であろうとも、これで斬られたならば再生は不可能。雑種には過ぎたものだな」
そう言い捨て、さやかにその剣を投擲、その腹に剣が突き刺さり、ソウルジェムが砕けた。
それでさやかは光となって消えた。
「さやかちゃん!!」
「さやか! てめえええええ!!」
杏子が飛び出そうとして、その胸を貫かれる。
まどかや士郎に撃ち落とされた宝具のいくつかが、人手によらず宙に浮き背後から杏子を襲ったのだ。
さらに、槍が、剣がその身を貫く。
一撃でも直撃を許せば、致命傷を免れることの出来ない魔力に満ちたそれらに杏子が砕かれ消滅する。
「杏子ちゃん!!」
「お前!!」
士郎が両手に剣を執り飛び出そうとして、先と同じくアーチャーの宝具の斉射に阻まれる。
必死に宝具の群れを弾く士郎とまどかたち。だが、
捌ききれなかった宝具の一つ、巨大な槌にマミの頭が砕かれる。
「マミさん!!」
マミが倒れながら光になって消える。
「まどか、前!!」
マミがいなくなった分弾幕が薄くなり、いくつかの宝具がまどかに迫る。
その瞬間、ほむらがまどかの前に飛び出し、腕を広げる。
そして、その全身を貫かれた。
「ほむらちゃん!!」
「ちっくしょおおぉぉおぉお!!」
無理に前に出ようとした士郎だが、その身をいくつもの宝具が打ち据える。
「ぐあああああ!!」
吹き飛ばされ地面に転がった士郎の胸からカードが弾け飛ぶ。
赤い外套の姿から元の姿へ戻る。それでも、ボロボロの体で地面を這いながら弾かれてしまったカードに手を伸ばすが、そのカードをアーチャーが踏みつけた。
「ふん、そのような贋作程度で我に勝てると思いあがったか雑種風情が!」
そう吐き捨て容赦なく士郎を蹴り飛ばす。
「さあ、終局だ」
そう宣言して、アーチャーが手を挙げると、再び空間が歪み、大量の宝具が現れた。
くっ! どうする、どうすればいい?! どうすれば、こいつに勝てる!?
なにか、なにかないの?
まどかの弓も、魔法少女連合も勝てなかった。セイバーが加わったとしても……どうすればいい?
不意に令呪を使えばという考えが思い浮かぶ。そうだ、令呪は全て残っている。
令呪とは本来サーヴァントを律するもの。そして、同時に英霊に強制的に命令を実行させる程の強力な魔力の塊。本来は不可能なことも実行させるそれは、サーヴァントの力のブーストにも使える。
でも、となればどういう命令を、ブーストするって言っても弓を強化しても勝てるとは思えないし、さらに魔法少女を円環の理から呼び出したとしても…………円環の理?
……それは、単たる思いつき。失敗する可能性も高い。
だけど、もうこれしかない!
「まどか!!」
私は袖を捲る。そして、令呪を翳し、
「あなたの全てを解き放ちなさい!!」
令呪が一つ消える。
同時にまどかの瞳が金色に輝いて、莫大という表現も陳腐なほどの魔力が光となって天に昇った。
~~~~
ギルガメッシュ編。ちょっと長くなりました。
次回、またはその次位で終わりかなあと。