さて、いきなり私たちは教会から呼び出しを喰らった。
しかも、使い魔はだめでサーヴァントを連れて来いという厳命で。いったいなんなのよ?
そして、連れてこられた冬木市民体育館で、暗い中なんかの席に座らせられ……
そして、明かりがつくと、そこはなにかのバラエティー番組のような会場。大勢の観客。
『第五次魔術師大激突! チキチキ聖杯戦争!!』
と、アイリさんが司会席で輝かんばかりの笑顔でそんなことを宣言する。
な、なによそれーーーーー!!!???
『はーい、みなさんこんばんわ! 司会のアイリスフィール・フォン・アインツベルンです!』
『言峰 綺礼です』
あんたが司会か!! いや、監督役だしまちがってないのかしら?
『いよいよ始まりました第五次聖杯戦争、今回はここ冬木氏市民体育館特設スタジオからお送りしています。さーて、十年ぶりに出現した聖杯! その行方がいよいよ今夜決定するのです! 見事、聖杯を手にし、願いを叶えるのは誰か!』
楽しそうに、本当に楽しそうにアイリさんが進行する。
ああ、こんな内容だから、父さん生きてたのね……
カメラが参加者を写す。
「それは俺だ! ふん、せいぜいひと時の賑わいを楽しんどきな!」
とか言いながらランサーがこっちを、いやまどかをちらっと見る。
あんた……
「拙者も力の限りを尽くそう」
アサシンが笑う。あんた、なんで山門から離れてんのよ。
「まどかは私が守るわ」
「ほむら、せめてマスターのためって言ってちょうだい……宗一郎様、見てますか~? 私全力で戦います!」
ほむらあんたがキャスターなの?! 隣でほむらちゃーんとまどかが手を振ると、ほむらが笑顔を返してくる。
で、マスターがメディアなのね……
「えっと、その、がんばります……」
「なーにライダー、僕に任せとけ。聖杯は僕らのものだからな」
なぜかちみっこくなったライダー、そして、その頭を撫でる慎二。なんでさ……
「お嬢様のためにも勝たせていただきます」
「バーサーカー、お願いね!」
紳士服を着たバーサーカーが丁寧に会釈し、その肩に載ったイリヤがカメラに向かって手を振る。
「士郎! 前回といい、神聖なる騎士の戦を、こんなちゃらちゃらした催しにしてよいはずがありません!!」
「いや、俺に言われても……」
当然だが、こんな聖杯戦争にセイバーは憤る。ああ、やっぱり前回もそうだったの……
そして、私の出番。
「えっと、頑張るわ」
「凛さんのためにも頑張ります!」
もう何言えばいいのかわからなかった。ってか、なんか突き刺すような視線を複数感じるのは気のせい?
まあ、いいわ。
でも、集められてこんなことをするってことは、ルール無用のバトルロワイヤルからルール制、もしくはトーナメント制にでもなったのかしら?
「え~、ちなみに、みなさん宝具とか使うの禁止です」
待ちなさい、それはちょっと待ちなさい! サーヴァント全員がおどろいてるじゃない!!
「だって街とか壊して危ないじゃん?」
「なにを今更!」
言峰の発言にツッコム私。
「正直事後処理がめんどくさい」
「いきなりぶっちゃけたわね」
こいつこんな奴だったかしら?
「学校生徒全員衰弱しているなんてどうやったってごまかしきれん」
泣いてる! あの言峰が泣いてる?! 私の知っている言峰はもういないってこと?!
「中年オヤジの仕事の泣きごとかよ……でも、それじゃあどうやって戦うのよ!」
「えっと、対戦方法は」
と、アイリさんがどこからともなくボックスを取り出して、出したのは……かるたのプラカード。
かるた
「やああああ!!」
「おおおおお!!」
ぱしんとまどかがランサーより早く札を弾く。
たとえランサーの敏捷性とはいえ、初めてのゲームはうまくいかないみたいね!
「へ、やるなお嬢ちゃ」
「犬も歩けば棒に当たる」
「狗って言うな!!」
ランサーが言峰に文句を言ってる間に、
「はい!!」
まどかが札を取る。
ふ、こっちが優勢みたいね。でも、なにこの言いようのない空しさは……
「マッチ一本火事の元」
それにまどかは……動かなかった。
「……どういうつもりだ嬢ちゃん?」
訝しげにまどかを睨むランサー。
「その、私はできたら、全力でランサーさんと戦いたいから、さっきの分どうぞ」
その言葉にランサーはぽかんとしてからへっと笑う。
「いいね嬢ちゃん。そんなこと言ってくれるたあ、俺は嬉しいぜ」
そうしてランサーはじっくり探して札を取る。
「さあ、ここからが本番だ!!」
そして、二人は笑顔で一進一退の激闘を繰り広げたのだった。かるたで……
私たち、なにやってるんだろう……
そして、競技は続けられ、今度は黒ひげ……って今度は運に任せるんかい!!
「で、なんで俺が黒ひげなんだよ!」
等身大の黒ひげの代わりとしてランサーが入れられる。
この競技は三人参加型で、ランサーを飛ばしたら、他の二人の勝利、最後まで飛ばなかったらランサーの勝利。
「しかたありません、クジに従ってくださいランサー!」
容赦なく刃を突き立てるセイバー。さすが王様。処刑はお手の物ってわけね。
「おおい、やめろー!!」
ランサーが悲鳴を上げる。
「えっと……ごめんなさいランサーさん!」
「嬢ちゃんまで!?」
まどかに突き立てられたことにショックを受けるランサー。が、
「見ものではないか雑兵!!」
突然、尊大な物言いが会場に響いた。
「ぎ、ギルガメッシュ!!」
げ、いないと思ったらこんな段階であんたが出るのか。
「だが、まどろっこしい! まどろっこしいぞ!! ゲートオブバビロン」
多数の宝具がその背に現れる。あ、相変わらず圧倒的ね。
「おいおい、宝具とか使うの禁止だろ!!」
「我がルールだ」
あんたも相変わらずね……
そして、宝具の雨あられがランサーに襲いかか……
「ダメえ!!」
ばっとまどかがゲートオブバビロンの前に立ちふさがる。
「ぐう?!」
慌ててギルガメッシュが宝具の方向を転換。観客席の一角が吹き飛んだ。
ほむらを始めとした数人が臨戦態勢に入った。
「せっかく、せっかくみんなで楽しくできてるんです! 台無しにしちゃダメです!」
毅然とまどかがギルガメッシュに投げかける。
その視線をまっすぐギルガメッシュは受け止めて、ふっと笑った。
「そうだな、せっかくの余興だ。興を削ぐのは無粋というものか」
そうとだけ言ってギルガメッシュはバビロンを閉じる。
「命拾いしたな雑兵、今回はアーチャーに免じて見逃してやろう」
その言葉にまどかはほっと息を吐く。
ギルガメッシュもだいぶ変わったわね。
「嬢ちゃん、あんたってやつは……惚れ直したぜ」
ランサーの言葉は聞こえなかった。ええ、私には聞こえなかったわ。
こうして、熾烈な戦いが繰り広げられ……ついに聖杯が現れた。
「これが、聖杯……」
それを勝ち残ったまどかが取って、振り向く。
「へ、流石だな嬢ちゃん」
「可憐な花と思ったが、獅子の類だったか」
「お嬢様にお渡しできず残念です」
「おめでとうございます」
「ふ、よい赦そう」
「残念ですが、あなたに聖杯は相応しい」
「まどか……」
ランサー、アサシン、バーサーカー、ライダー、ギルガメッシュ、セイバー、ほむらがまどかを称える。
それにまどかは笑顔を浮かべ、私に向き直る。
「凛さん!」
「ええ」
私たちの願いは……
次回に続く。
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カーニバルファンタズム風です。
ミスを習性しました。
なお、前回はトーナメント式で会場が壊れたせいでこうなったということで。