まどかを再召喚した翌日、私達は衞宮くんの家に行くことになった。本来なら意味がない行為どころかこれから戦う上でマイナスにしかならないだろう。
でも、いいかと思えたのは以前の経験のお陰か、それとも、このどこかおかしい聖杯戦争のせいか、まあ、結局のところ、心の贅肉ね。やっぱり悪い気はしないけど。
父には衞宮邸の偵察とだけ言っておいた。
そしたら、「絶対に衞宮の人間には負けるな!」なんて、言ってきたけど、前回になにかあったのかしら?
対し母さんは「なら、これをアイリさんに渡してくれない?」と、母さんにお土産を持たされた。いつの間にか知らないけど仲良くなったみたい。
「って、そういえば、あんたそっちの姿だけど、セイヴァーじゃなくて、アーチャーなのよね?」
と、まどかに尋ねる。そう、今回のまどかはセイヴァーの姿。
すらっと伸びた背は私くらいになっているだろうか? そして、以前より発育したバスト。あれ? なんだろうこの敗北感……
「あ、はい。能力はアーチャーの時と同じです。なんでこっちの姿かはわかりませんが」
そう。まあ、あんなデタラメスペックなんて、私があっという間に息切れしそうだし、こっちの方が助かるわ。
なんて、考えていたら、
「おおおお! そこの嬢ちゃん!!」
声に振り向くと、こっちに駆けてくる凶暴なまでの魔力を纏った赤い槍を携えた青い戦闘装束を着込んだ男、ランサー。
ま、まさか、また初戦はランサーと?!
私達は身構え、がしっとランサーがまどかの手をとった。
「惚れた、俺と付き合ってくれ!」
えっ?
「なあ、頼むよ、ちょっとお茶するだけでいいからさ」
などと、ランサーはなおもまどかを口説こうとする。
「いえ、その……お、お断りさせていただきます。い、今から用事があるので」
「なら、今度でいいからさ! 頼むよ嬢ちゃん」
私は額を抑える。
確かに、前回、ランサーはもう少し歳がいっていたら口説いていたって言ってたけど、まさか本当に口説こうとするとは思いもしなかった。
先の言動からしてランサーはまどかのことを覚えていないのだろうけど、どうも前回の影響か、好みのタイプがまどかになってしまっているみたいね。
ランサーの熱烈なアプローチにまどかは真赤になって、「じゃあ、また機会がありましたら」なんて約束してしまった。
まあ、前にランサー倒した時にランサーみたいなタイプなら素敵なんて言ってたし、まんざらじゃないのかも。
そして、私たちは衛宮邸に向かって……なぜかランサーが着いてくる。
「あんた、なんでついてくんの?」
私の問にランサーはふっと笑う。
「決まってんだろ? こんないい女を他の奴が放ってくとは思えねえ。だから、悪い虫がつかねえように見守ろうとしてんだ」
……すでに悪い虫が一匹ついてるわね。
「……まどか、飛んで逃げるわよ」
「は、はい」
申し訳なさそうにまどかはランサーを見てから私を抱えて空へ飛翔する。
「うおおおお! 待ってくれ嬢ちゃんたち!!」
誰が待つか。
そして、なんとかランサーを撒いて衛宮邸に着いた。
な、なんか、ここに来るまでだけで体力がかなり削られたわ。
改めて衛宮邸を見れば、前回と全然違う近代的一軒家。ただし、前回のと同じように結界は張られている。そして、あの金ぴかの高級外車。
さてっと……
私は深呼吸してからチャイムを押した。
結論から言って私たちは普通に客間に通された。
「あの、これ母からです」
「あら、ありがとう」
と、アイリさんがお土産を受け取ってくれる。
「へー、この人が凛さんのサーヴァントなんだ」
「はい、アーチャーの鹿目まどかです。よろしくねイリヤちゃん」
普通にまどかはイリヤに自己紹介をする。
真名を軽々しく明かしてるが、あー、もうなんだかどうでもいいやと思えてしまう。
「初めましてお嬢さん、私はバーサーカー。イリヤお嬢様の従者です」
と、バーサーカーがまどかに自己紹介する。
そして、
「お待たせ遠坂」
と、やっと士郎がやってきた。
サーヴァントはやはりセイバー。ただ……なんかお菓子食べながら部屋に入ってきた。
「シロウ、おかわり、おかわりはありませんか」
……腹ペコキャラ強化したのかしら?
と、その時気づいた。ギルガメッシュがじいっとこっちを見ていることに。
な、なによと思ったら、
「さらばだセイバー!」
と言ってこっちに突撃、そして、まどかの前に立つと、
「我のものになれ雑種!」
……ギルガメッシュ、お前もか。
え、え? と戸惑うまどか。セイバーも「久しぶりに会った上にせいせいしたはずなのに、なにか納得いきませんね」と言って衛宮くんに慰められている。
さらに……がしゃんと窓ガラスが割れ、ランサーが突入してきた。
「てめえ、人の女に手を出そうたあいい度胸だな」
不法侵入よねえ。あ、なんか窓の向こうにいる誰かが泣いてるけど、もしかしてランサーのマスターかしら? ご愁傷様ね。
「いや、まどかはいつからあんたの女になったのよ」
私のつっこみをスルーしつつランサーがギルガメッシュに槍を突き付ける。
「ふ、狗が王の邪魔をするな! この者は我のものだ」
「てめえ、言うに事欠いて狗だあ? 上等だこの金ぴかやろぶ!!」
「なんだ?! うおおおお?!」
ランサーがバーサーカーに殴り飛ばされ、ギルガメッシュも家の外に放り出される。
「喧嘩は外でお願いいたします」
とバーサーカーが二人を睨む。真赤になって右往左往するまどか、あらあらと面白そうなものを見つけたと言いたげな笑みを浮かべるアイリさん、顔を赤くしながらも、興味深げに見ていたイリヤ、こんな騒動の中でもお菓子を食べ続けるセイバー。
どうしろって言うのよこのカオス空間……
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なんかいきなり書きたくなった。反省も公開もない。