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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/07 17:50
「さって、と……すまねぇが、早速知りてぇ事がある。美樹さやかについてだ」
「彼女の事? まだ、何で?」
「彼女も、対ワルプルギスの夜戦の、こちら側の駒になってもらう。今さっき、おもいついた」

 俺の言葉に、暁美ほむらは首を振った。

「あなたらしからぬ、非合理な判断ね。
 彼女は所詮、新人よ。素質はあっても不安定で暴走しやすい以上、ワルプルギスの夜相手の戦力には成り得ないわ」
「勘違いすんじゃねぇ。何も、直接、ワルプルギスの夜にぶつけようってんじゃ無ぇヨ。
 あいつの役目はな、対ワルプルギスの夜戦における『鹿目まどかと、その身内の護衛』だ」

 俺の言葉に、暁美ほむらの目が見開かれる。

「どんな計画を練っていたとしても、不測の事態ってモンは起こり得る。
 そン時に、魔法少女の真実を知ってて、かつ、鹿目まどかに近く、かつ、彼女を護り得る人材、っつーと……アイツしか思いつかなかったんだ」
「なるほど……え、待って!? 真実を……知った?」
「ああ、ついさっき、な」

 そう言って、俺は先程の出来事をテキトーに端折りながら暁美ほむらに話し……。

「あ、あなたって……いえ、あなたたちって、本当に、何者なの?」
「知るかボケ。こっちが聞きてぇよ。
 ……まぁ、アイツは馬鹿で間抜けで脇が全く見えちゃいないが、カンも筋もいい。やりようによっちゃ化ける可能性も否定は出来ネェ……恐ろしい事にな。
 とりあえず、ざっと今、俺が考えてるのは、お前、巴マミ、佐倉杏子をワルプルギスの夜にぶつけ、俺個人は遊撃、もしくは要撃に回り、美樹さやかは鹿目まどかの護衛っつーシフトだ」
「FWにベテラン魔法少女三人、MFがあなた、美樹さやかがDFって事、ね?
 ……待って、あなた自身の仕事は具体的には?」
「だから、要撃だよ。快速と銃器の射程を活かしながら、ワルプルギスの夜が展開する使い魔たちを排除して、お前ら攻撃組がワルプルギスの夜相手に専念できるような、サポートだ。
 時々こっちからもワルプルギスの夜にカマす事は考えておくが、基本あまりアテにしないでおいてくれ」

 俺の提案に、暁美ほむらは意外そうな表情を浮かべる。

「あなたの事だから、ワルプルギスの夜に、イの一番につっかかると思ってたんだけど」
「本当は、そうしてぇ所なんだが、こっちはこっちで辛くてな。
 悪いが、最前線で支え続ける程の防御力が、俺には無い。一発被弾したらアウトだし、ましてワルプルギスの夜の一撃なんて食らったら、即、人生終了なんだ。
 つまり……美樹さやかとは別の意味で、俺の戦闘能力ってのは不安定なんだよ。
 ……ってわけなんだが。どうだ、ざっとだがプランに異存は?」
「なるほど、だから要撃に回る、と……了解したわ、基本方針は、それで行きましょう。細かい作戦のツメは後日って事で。
 とりあえず、美樹さやかの情報ね?」
「おう。とりあえず、アイツに告白させる事までは何とか決意させたが、相手がいる事だからな。
 そのへんの未来情報……いや、何でもいい。とりあえずお前さん、知ってる事を教えてくれないか?」
「そう、ね……彼女は正直、私とは相性が悪いわ。半端な正義感で暴走して、魔女化する運命を繰り返してるように見える。
 魔法少女になった段階で、魔女になる事を誰よりも宿命づけられてるような、そんな子よ」
「だろうなぁ」

 何も考えないで、俺に土下座して弟子志願してきたりとか。ハンパに感が鋭くて他人の地雷を踏みに来るところとか。
 正味、佐倉杏子よりかは良識を備えている分、好感が持てるが、魔法少女という存在には一番向いてないんじゃないかとも思う。

「まあ、アイツがワルプルギスの夜まで持ってくれりゃ、あとは魔女になろうが天使になろうが、俺は知らん。
 重要なのは、あいつが『鹿目まどか』を守れる戦力として機能し得る状態で、ワルプルギスの夜の闘いを迎えるって事だ」

 と……
 
「……ありがとう。まどかに気を使ってくれて」
「勘違いすんな。
 鹿目まどかってのは、ワルプルギスの夜を超える、最悪の魔女の元ネタなんだろ? そいつを修羅場でQBが見逃すとも思えん。
 巴マミみたいに、『選択の余地が無い状況に追い込まれて契約しました。ドッカーン』なんて事態が、一番ヤベェ。
 ……本当は、俺的には殺しておきたいくらいではあるんだが……ああ、分かってる分かってる! そんな目で見んな! 俺もタダの一般人は、殺したくなんてネェんだよ! だからこんな無茶な作戦に付き合ってんじゃねーか!」

 ものすげぇ殺気だった目線で睨まれて、俺は両手をあげる。

「……一応、その言葉は信じておいてあげるわ。
 で、美樹さやかの情報だったわね?」
「おう。……正味、魔法少女の願いなんて踏み込みたくないんだが、こればっかりは仕方無ぇ。
 っつーか、アイツの願いって、色恋沙汰に絡んだモンなんじゃねぇのか? 『恭介ぇ』とか叫んでたから……彼がらみとか?」
「ご明察よ。上条恭介の左腕が、交通事故で動かなくなっていたのは知っている?」
「あっちゃー、マジかよ!?」

 俺はその段階で、頭を抱えた。

「目的と手段がゼンゼンズレてやがる……あいつ、ひょっとして願いをかなえる時に、自分の本心に気付いてなかったとかってんじゃねーだろーな?」
「と、言うより……見てられなかったんでしょうね。過激な程のリハビリを繰り返して努力しても、治らないと宣言されてたから」

 最悪である。これ以上無いくらいに、最悪の未来しか見えない。

「……あのバカ、男のプライドとか、分かってんのかな?」
「プライド?」
「女はドーだか知らんが、男にゃあな、誰しも踏みこまれたくない領分ってモンがある。
 例えば、彼にとっちゃバイオリンだったりとか。俺にとっちゃ和菓子作りだったりとか。こう、なんつーのかな……己が己で在るために依ってるモンってのは、ある意味、手前ぇの命よっか大切なモンだったりするんだよ。
 もしうっかり、上条恭介が、その事を知っちまったら……最悪の結果に、なりかねんぞ」
「最悪の結果?」
「バイオリンを捨てるかもな」
「まさか……」

 笑い飛ばす暁美ほむらだが、俺は真剣にその可能性を考えていた。
 はっきり言って、上条恭介のバイオリンのスキルは、素人の俺から見たって『ホンモノ』である。そこに積んできた研鑽や自負は、一見草食系な外面からは見えないだろうが、恐らくは誰よりも激しいモノだったに違いない。
 交通事故で動かない腕を、必死に治そうとしていたのは、その表れだろう。
 そこに、美樹さやかが『私が魔法少女になってまで、あんたを救ったんだ、だから私と付き合え!』なんて、恩着せがましく迫ったとしたら?
 幾ら幼馴染だとはいえ、彼のプライドは一瞬で崩壊してしまうだろう。あとは双方、破局まっしぐらである。

 まして、美樹さやかと上条恭介は『近過ぎる』のだ。
 近過ぎるが故に、お互いに『見えているつもり』になって、全然見えてない心の死角に気付かずに、互いに互いの地雷を踏んでしまう。
 美樹さやかが魔法少女になったのも、恐らく上条恭介自身が踏んだ、彼女の地雷が原因だろう。
 そして、近過ぎる関係であればあるほど、『他人』と『自分』の境目というのは、極端に曖昧になっていき、しまいには、他人を『自分に属するモノ』として扱ってしまう。
 いわゆる、ボーダー障害という奴である。
 この障害の厄介な所は、『他人が指摘するまで、自覚症状が絶無』だという事だ。
 いわゆる、パワハラや児童虐待なんぞはこれに当たるケースが多い。部下を好きに使って何が悪い、息子や娘は自分の『モノだ』、という奴である。例をあげるなら、一家無理心中を図った、ウチの両親が正にソレだし、正直……俺も、沙紀に対して、そう思ってるんじゃないかと危惧している部分は、ある。むしろ、その症状があると思って、意識して行動している……つもりだ。

 それに、美樹さやかと上条恭介の場合は幼馴染という関係だが、あそこまで接近しておきながら色恋沙汰に発展して無い時点で、おそらくそのへんの境界は、彼女や彼自身、かなり曖昧になってるのでは無かろうか?
 だとするなら、彼女が自覚も無く上条恭介の(そして自分自身の)爆弾を握っているのは、限りなく危険である。

「……改めて思ったぜ。彼女の爆弾度は、巴マミなんぞ比じゃねぇな……」
「でも、大丈夫だと思うわ。彼女の恋敵は大人しいし、筋を通す子だったし」

 ちょっと待てぇい!?
 さらに聞き捨てなら無いファクターが出てきて、俺は絶句する。

「おいおいおいおい! この上、恋敵までいるのかよ!! アレか、ウチの妹みたいに、ファンだったとか!?」
「いいえ、志筑仁美っていう子よ。まどかとさやかのクラスメイトで、仲良し三人組の一人」
「うわ、何? 美樹さやか自身の親友で? んで彼女の恋敵? 最悪のパターンじゃねぇか!」

 ……うちの妹といい、あんたドンだけモテるんだ、上条さんよぉ!?

「すまねぇ、その志筑仁美とやらの情報をくれ。最悪は回避してぇ」
「そうは言ってもね……私の知る限りだと、彼女は美樹さやかにしっかりと恋敵だと宣言した上で、彼女に一日の猶予を与えているわ。お嬢様育ちで気は弱いけど、しっかり筋は通す子よ。
 そして、聞く限り、あなた……というか、御剣沙紀が、文字通り美樹さやかの尻を蹴飛ばした事で、彼女は彼との関係を前に進める決心が出来ている。
 だから、問題は起こり得ないと思うわ」

 そう言う暁美ほむらだが、何かが引っかかる。

「……なあ、あんたが経験した時間軸での美樹さやかは、その『一日の猶予』を無駄にして、上条恭介を取られた結果、魔女になってんのか?」
「ええ、そうよ」
「……その、なんだ。俺がこんな事を言うのも何なんだが。
 女って生き物は、自分の感情的な打算を、理屈で糊塗すんのが、ひじょーに上手い生き物だと思ってんだ。
 で、な……その志筑仁美、だっけか?
 そいつ、もしかして……『美樹さやかが一日の猶予じゃ告白に持ち込めないであろう脆さを、見切った上で賭けに出てたんじゃないのか?』」

 俺の推論に、暁美ほむらが何処か呆れた目で見返してきた。

「まさか……あなたの考え過ぎよ」
「いや、だといいんだがな。
 あの馬鹿は顔に出やすい。まして志筑仁美は、彼女と仲良しトリオで組んできた仲だ。
 もし、仮に俺の推論が当たってたとしたら、彼女は美樹さやかの変化に、敏感に気付くだろう。そうなった時の、志筑仁美の行動パターンが、はっきり言って読めねぇ。
 黙って下向いてくれてる大人しい子だったらイイんだが……もし『筋を通しても勝ち目が無い』って悟った瞬間に、破れかぶれになって『筋も友情もかなぐり捨てて』前に出るタイプだったりしたら、今の美樹さやかにとって厄介すぎんぞ」

 何というか。美樹さやか自身、盛大な爆弾だが、周囲も爆弾だらけである。
 ぶっちゃけ、ボンバーマンで爆弾四方に囲まれちゃってる状態だ。

 ……どーしろってんだ、こんなん!?

 正味、全てを放り出して、鹿目まどかの護衛に、別に相応しい人材を探すべきかと考えたが、自分も含めて彼女のガードの適任は、美樹さやか以外みつからなかった。強いて言うなら巴マミだが、彼女は彼女で最前線での役割がある以上、論外である。
 ワルプルギスの夜戦を乗り越えるには、戦闘云々とは別に、キュゥべえの動向を抑えるために彼女の存在が必須である以上、この爆弾解体作業は放棄が出来ないらしい。

「……そうね。それとなく監視はしてみるけど、期待はしないでちょうだい。私、学校ではまどかたちと、そんな近しい関係じゃないの。
 それに、恐らくはそんな事にはならないとは思うわ」
「おいおい、頼むぜ。俺だって明日、登校しないといけねーんだ。一応、奨学生だから病欠が多いのは困るんだ。
 それに、幾ら未来知識があるアンタだからって、不確定要素の俺がいる状況下、甘すぎる目算で行動してたら命取りになりかねんぜ?」
「……あれだけのお金持ちが、何で奨学生なんて……いえ、そうね、ごめんなさい」

 暁美ほむらが、気付いたように言う。
 『お金』は、確かに強力な力ではあるが、だからこそ『無制限』では無い。
 事に、強力すぎる……つまり、多額の現金程、その動向には意図しない者たちの監視の目が、付きまとうのである。
 俺が税務署を『恐怖の存在』と表現したのは、別に冗談でも何でもないのだ。

「それは兎も角、流石にそれは、あなたの考え過ぎよ。志筑仁美は、典型的な大人しいくて臆病なお嬢様タイプの子よ」
「……そういうタイプって、俺的にはかなり怖いんだがな。
 大人しいって事は、周囲に真意を悟られ難いって事だし。臆病ってのは、それだけ慎重にコトを進めるタイプだって事だ。
 ンで、お嬢様ってのは世間を知らねぇ分、一度火がついたらトコトンまで暴走する可能性を秘めている。
 想像以上に、厄介かもしんねぇぜ?」
「……まあ、確かに。
 上条恭介に、美樹さやかが告白するに当たって、最後の障害は志筑仁美な事に、変わりは無いわね。
 それとなく、気を使っておくわ。でも、あまり期待しないで頂戴」

 アテになりそーにない言葉に、俺は嫌な予感が止まらない。
 あえていうなら、いつ時計が狂ってタイマーがゼロになるか分からない、不安定な時限爆弾の解体作業をさせられてる気分。
 コードを切るべきは、赤か、黒か。それとも『切る事』そのものが間違いで別回答が存在するのか。
 答えがマジで出てこない。

「……とりあえずこっちは最悪に備えて、『魔女の釜』から何個かグリーフシードを用意しておく。
 魔女化の前に、説得の時間くらいは確保しておきてぇ……無理なら見捨てざるを得ないが」
「だから、あなたの考え過ぎよ」
「考え過ぎて悪い事でも無いだろ?
 ……よし、マジになれねーなら賭けでもしようぜ。志筑仁美が暴走するに、グリーフシード一個。どうだ?」
「はぁ……余程、気になるのね、弟子の事が」
「弟子ちゃうわい! ……どーだ、乗るか、時間遡行者?」
「OK、では彼女は沈黙を守るに……栗鹿子一つね」

 ……は?

「……えっと、何か、聞き間違えたと思うんだが」
「あなたの和菓子よ。とても美味しかったわ。それに、分の良い賭けだと思ってるし、ね」
「っ!! ……おだてても、何も出ねぇゾ。
 それに……あー、やっぱ、それじゃ賭けが釣り合わねぇ。分かったよ。和菓子はお前が勝った時、オマケでつけてやる。
 それでいいな?」
「了解したわ、イレギュラー。……自らベットを跳ね上げたのは、あなたよ?」
「それでコトが収まるんなら、安いモンさ。スッて悔いの無い博打ってのは、保険って意味もあるしな」


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