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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/21 19:13
「……ひょっとして。お前……」

 栗ぜんざいを飲みほして、気を落ち着けた後。

「俺と佐倉杏子の『爆弾処理』をしようとしていたのか?」

 大よそ、鹿目まどかの事以外、クール通り越してロボみたいな反応しか返さない魔法少女にしては、あまりに『らしからぬ』感情に訴えた『説得』に、俺は首をかしげる。

「悪い? こうでもしないと、ワルプルギスの夜が来るまでに、あなたと佐倉杏子が暴発しかねないわ」
「……チッ! あー、あんがとヨ」

 イラつきながら、俺は、次にソバガキを注文する。

「……ごめんなさい。
 でも、どこか、あなたが佐倉杏子と重なって見えたのは事実……っ! 悪かったわ」

 思いっきり睨みつけてテーブルを叩き、俺は暁美ほむらを黙らせた。

「仮定の理屈はナンボでも抜かして構わねぇが……今の俺は、今のアイツとは違う。
 犯した罪の軽重は兎も角、『自分のためダケ』に魔法使って犯罪を犯し続けてる魔法少女と一緒にされちゃ、コッチが迷惑なんだヨ……
 二度は言わねぇ。アイツと一緒にすんじゃねぇヨ」
「ごめんなさい。悪かったわ」

 頭を下げる、暁美ほむらに、俺は再度舌打ち。

「……まあ、お前の言わんとする所も、分からネェワケじゃねぇよ。
 『もし』の話なんて、あんま好きじゃねぇから、考えた事も無かったがな……そうだな、俺は本当に『運が良かった』。
 それは理解出来るぜ」
「それだけ理解できるならば、私が『らしからぬ』説得をしている意味も、分かるでしょう?」
「……分かったよ。しつけぇなぁ……こっちからは喧嘩売らない。
 向こうがどー絡んでくるかは、知らないがな」
「多分、それは無いと思うわ。彼女は、あなたに対して負い目がある。
 ……だから、御剣颯太。あなたの名前を使わせて貰えないかしら?」
「……あ?」

 切りだした言葉に、俺は首をかしげた。

「言ったでしょう、彼女は本来、優しい子だった、って。
 佐倉神父の下で、それなりに豊かに暮らしてきた自分の生活が、あなたの一家の破滅を前提に成り立っていた事に、負い目を感じているのよ。
 だから、あなたを襲撃した時に、それを否定したくて激昂した。そして、今、殻に籠ってしまったのよ」
「アイツが? そんなタマかぁ?」
「その証拠に、再度の襲撃は無いでしょ?
 一つ、言うけど。
 巴マミが抑えてる程度で、彼女があなたへの再襲撃を諦めるような魔法少女だと、あなたは思ってる?」
「……………つまり、何か?
 俺が一言『ワルプルギスの夜を退治するのを、手伝ってくれ』って言えば、佐倉杏子はそれに従ってくれる、ってのか?」

 あまりにも突拍子もない提案と内容に、俺は首をかしげる。

「ホントにそんなモンで、通じるのかよ?
 ……いや、目的を達するためだったら、そんな事の許可なんぞ、幾らでも出すがよ。結果はちゃんと、出してくれよな?
 確かに、どたばた騒ぎは起こしたものの、お前……佐倉杏子の説得に関しては、失敗続きなんだぜ?」
「ありがとう、御剣颯太。この事は、借りにしておくわ」
「……おう」

 嫌に素直で気味が悪ぃが……しかも『借り』とまで言ってのけやがった。
 ……この鉄血女が、名前を貸した程度で、素直に『借り』だってぇ? ホントは、何か裏があるんじゃねぇのか?

「……あ、すまん。ちょっと……その、なんだ」
「?」
「いや、本当に、佐倉杏子を説得するため『だけ』なんだな? 俺の名前を使う目的は?」
「それが何か?」
「いや……なに。忘れてくれ。下らない勘ぐりだ。
 どうも、インキュベーターなんて相手してっと、コトを疑ってかかる癖がついちまってヨ。
 『殺し屋』の俺の凶名なんざぁ、脅し以外に使い道が思いつかないが、考えても見りゃ、アンタにその必要は無いもんな」
「っ……そうね。失敗続きの挙句、あなたの名前を借りるのだから、『借り』になるのは当然でしょ?」
「あ、なるほどね」

 彼女なりに筋を通した、ってワケか。納得。

「そんじゃ、ついでに、メッセンジャーを頼むぜ。
 『俺は、家族の……姉さんの敵が、討ちたいだけだ』ってな……。
 『復讐』っつー俺の動機も立場もハッキリさせとけば、佐倉杏子としても、お前さんとしても動きやすいだろ?」
「……承ったわ」

 その言葉を聞いて、俺は、湯飲みの中のソバガキを餡子と箸で練りあげた塊を、口に運んだ。



「……『借り』ねぇ」

 普段、密会の時の俺持ちの費用すらも、『ここは私が』と言って払っていった暁美ほむらの行動に、俺は首をかしげつつも。
 とりあえず、俺はスーパーで買い物をして、家路を急ぐ事にした。

 ……今晩は、とりあえず、こないだ喰い損ねた肉じゃがだな。佐倉杏子に吹っ飛ばされた時、キッチンにぶちまけちまったからなぁ……

 と、

「……」

 何か、嫌な予感がする。
 家の中に、こう……決定的な、ヤな予感を感じ、俺は玄関を開ける前に、足を止めた。

「……丸腰で行動するのは、暫く控えたほうがいいかもな」

 上着の下に、ハンドガンくらいは仕込んでおくべきかもしれない。
 その場合、単純にソウルジェムへのクリティカルショットを狙うべきだから、精度重視でリボルバーよりオート……Cz75あたりがよさそうだ。ダブルカラアムで、あれだけグリップも握りやすい銃は無いし。あるいはP210かP220あたり……か?

 ……さて、この時間なら、沙紀が家に居るハズだ、が?

 とりあえず、ケータイを鳴らして、沙紀に確認。

『あっ、お兄ちゃん♪』
「よう、沙紀……家の中に、誰がいる?」

 ここの段階で、沙紀の答え方によって、状況が変わって来る。
 無論、受け答えのやり取りは暗号だが……

『誰も居ないよ♪ 問題無いから帰ってきてー♪』
「そっか、ならいい」

 幸い、俺の錯覚だったようだ。
 玄関を開けて……!!??

 そこに、見慣れない『女物の靴』が一揃い……『魔法少女』!? まさか!

「沙紀っ!!」

 靴も脱がずに、俺はリビングに飛び込み……

「あら、お邪魔してますわ、颯太さん♪」
「えへへー♪」

 ニヤニヤ笑いを浮かべる沙紀と、優雅に紅茶を嗜む、巴マミの姿が、そこに在った。

「って、どうしたの、お兄ちゃん。靴履きっぱなしで……」
「沙紀。ちょっとこっちおいで?」

 なんというか。我ながら、お寺の仏像さんみたいな笑顔を浮かべて、沙紀をくいくい、っと手招きする。

「な、なんかお兄ちゃんが怖いんだけど……あ、ひょっとして、マミお姉ちゃんが来てて黙ってたの、怒ってる?」
「……いいからいらっしゃい? ちょっとこっちに?」
「いいじゃない、お兄ちゃんの愛の」

 次の瞬間。
 反射的に俺はキッチンの包丁をひっつかむと、手裏剣術の要領で、沙紀が座ってるソファーの背もたれの部分に投げつけた。

「沙紀。コッチにいらっしゃい」
「おっ、お兄ちゃん……本気で怒ってる?」

 顔の左わきにブッ刺さった包丁に、冷や汗をかきながら沙紀が絶句。

「当たり前じゃあっ! いいか、あのコールサインは遊びでお前とやり取りしてるワケじゃねぇんだ!
 『敵じゃない来客』って事ならば、それ相応のやり取りをするって取り決めだっただろうが! 本当に殺されたら、どうすんだ!?」
「うっ……だ、だって……『マミお姉ちゃんが来た』とかって言ったら、お兄ちゃん逃げちゃいそうだったんだもん」
「遊ぶなっつってんだ! 馬鹿っ!」
「あっ、あの……颯太さん、私、お邪魔、でしたか?」

 うろたえる巴マミの姿に、俺は説明していく。

「いえ、そうじゃなくて……沙紀の奴が、ケータイで確認したってのに、来客のコールサインを出さずに不意打ちさせた事に、怒ってるんです。
 ……ごく稀にね。魔法少女に、家の中で待ち伏せされてる事とか、あったりするんですよ」

 そう。
 対魔法少女のトラップを仕掛けてきた俺だが、それは絶対ではない。
 中には、俺の家に到達して、奇襲や待ち伏せを仕掛けて来る魔法少女も、暁美ほむらも含めて、全く居なかったワケではないのだ。……数は奴含めて、三度程だが。

「巴さん。アンタは沙紀の客なんだから、堂々としていていい。
 それに、魔法少女たち相手に、『殺し屋』の俺を庇ってくれてる事も、感謝していますから、遠慮なんてする必要は無いですよ」
「あとねー、マミお姉ちゃんに、お兄ちゃんが入院中のご飯、作ってもらってたのー♪」

 衝撃の発言に、俺はうろたえる。

「なっ!!?? おまえ、非常食のミリメシはどうした!?」
「米軍レーション不味いから、嫌ー」
「おっ、お前なぁっ! どこまで巴さんに迷惑かけりゃ気が済むんだ!!」

 タダでさえ、巴マミの保護下にはいる事によって、色々とメリットを享受しているのだ。
 その上に実生活の面倒までなんて……

「いやっ、本当に申し訳ない! 巴さん! 詫びに飯でも食べて行ってくだせぇ!」
「えー、マミお姉ちゃんのビーフシチュー、また食べたいなぁ……」
「や・か・ま・し・い!!」

 とうとうブチギレた俺は、靴を玄関に放り投げると、むんず、と沙紀の首筋をひっつかんで、ソファーからつまみあげる。

「昨日の一件といい、今日のコレといい、お前最近、本気で兄ちゃんナメてんだろ?
 もう勘弁ならん! 徹底的にとっちめてやる!!」
「やーっ!! 暴力反対ーっ!」
「やかましい!!」

 そう言って、隣の部屋に移動。本気拳骨連打の末に、ジャーマンスープレックスで沙紀を沈黙させる。
 ……いちおう、畳の上だし、魔法少女だから死にはすまい。多分。

「……あ、相変わらず、仲の良い兄妹ですね」
「昨日の一件でもそうですが、最近、ほんと生意気になってきましてね……まったく、誰に似たんだか」
「…………………」

 何か言いたそうな巴マミだったが、それは無視する。
 ……少なくとも、俺のせいではない! きっとインキュベーターの仕業だ!!(断言

「それより、飯、喰っていきますか? こないだ喰わせ損ねた、肉じゃがなんですけど」
「是非、喜んで♪」



「……そういえば、肉じゃがって料理の由来、知ってます?」

 例によって、汁気が出るものを鍋に、ニンジンやジャガイモ等は別々に炒めながら、俺は巴マミに問いかけた。

「え? いえ……」
「昔ね。日本の明治時代に、帝国海軍の高官が、軍制度を学ぶために、イギリスに留学したんですよ。
 その時に振る舞われたビーフシチューに彼はえらく感激して、お抱えのコックに『これと同じものを再現しなさい。部下に振る舞うために』って、指示を出したんですね。
 ところが、そのお抱えコックってのも当然、明治の日本人。
 ワインもドミグラスソースも、存在そのものを知らないわけですよ。
 それでも、軍組織の上官命令である以上、そのお抱えコックは『ビーフシチュー』を作る事に、挑戦せざるを得なかったんです」
「……つまり、ワインもドミグラスソースも無しに、ビーフシチューを作れ、と?
 で、どうしたんですか、そのコックさん?」
「その高官から聞いた材料を元に、必死になって工夫したそうです。醤油やみりん、その他諸々を使って、期待にこたえようと何とかかんとか、悪戦苦闘して。そして、苦心惨憺の末に、出来上がったのが『肉じゃが』ってワケです。
 ちなみにその高官は、後々、戦争で大手柄を立てて、世界的な名提督にまでのしあがるんですがね……それは料理とは関係ない、どうでもいい話」
「名提督、ですか? 誰です、それ?」
「アドミラブル・トーゴー。東郷平八郎元帥、その人だそうです」

 鍋に、フライパンでいためたニンジンやジャガイモを投入。調味料やだし汁の諸々を入れて、火を強める。

「まあ……偶然とはいえ、こんな形で、ビーフシチューのお返しが出来るのも、何かな、って思って」
「……なるほど。
 そういえば、カレーライスが、日本の海軍の食事だとは、何かで……」
「ああ、レシピ教えてもらってるから作れますよ。本物の海軍カレー」
「え?」
「もっとも、カレーが一般に普及したのは、海軍じゃなくて陸軍が原因なんですけどね。
 海軍は専任の給養員……専任コックがいるんですけど、陸軍は持ち回りですから兵士みんながコックなんです。
 ……その分、レシピも単純化してて、誰でも楽に作れるわけで、それが、カレーが普及した原因なんじゃないかなぁ? 戦争に負ける前は、男はみんな徴兵制度で軍隊に行ってましたからね」
「……颯太さんて、意外な知識をお持ちですね」
「割と有名な話ですよ」

 そう言いながら、俺はアク取りの作業に没頭する。

「以前ね、キュゥべえ……インキュベーターが、俺の前に現れた時。『人間の歴史に、如何に自分や魔法少女が関わってきたか』なんて偉そうな事を、奴が垂れてのけたんですけどね……
 この肉じゃが作ってのけたコックみたいに、奇跡や魔法が無ければ達成出来ないような無茶苦茶な事だって、創意工夫で何とかかんとか、美味いモノが作れるわけですよ。
 勿論、肉じゃがは肉じゃがで、ビーフシチューじゃない。でも、ビーフシチューとは別に、美味しいモンに仕上がっちまえば、それはそれでアリなんじゃないかな、って。
 だから……俺は、奴が言ってた、『インキュベーターが居なければ、人類は今でも穴倉で暮らしてた』なんて言葉、これっぽっちも信じてないんですよ。いや、穴倉で暮らしてたとしても、穴倉の中に電気が通ってたりとか、それなりに発展してたんじゃないかな、って」

 アク取りをしながら、鍋に集中しつつ。
 そんな他愛も無い事をボヤいていると、

「……颯太さんは……」
「え?」
「いえ、今、わかりました。颯太さんが信じてるのは、奇跡でも魔法でもなくて『人間』なんですね」
「……まあ、ね。言い方はアレですけど。奇跡や魔法を望むのだって、結局のところ『人間』じゃないですか。
 俺の場合は、『奇跡や魔法』じゃなくて、そこに『努力と根性』って言葉が入るんですけどね。だから俺は、佐倉杏子みたいな魔法少女が嫌いだし、インキュベーターはもっと嫌いなんです。
 ……宇宙人が人間様に、何偉そうな寝言垂れてんだ、ってね♪」
「くす……なるほど」
「まぁ……知っての通り、実際には、奇跡や魔法から逃げ回りながら、がたがた震えつつ必至になってるだけの雑魚なんですけどね……っと。ん、アク取りはこんなもんか……」

 中蓋を落とし、あとは煮込むだけ。

「手伝いましょうか?」
「いや、座っててください。あんたは客人だ。それに、沙紀に飯を食わせてもらった礼もある」
「あ……あれはその……見るに見かねて……」

 その言葉に、嫌な予感が……

「まさか……巴さんにイイトコ見せようと『沙紀が、料理しようと』しませんでしたか?」

 その言葉に、巴マミが真剣な表情で、ぽつりと。

「……魔法少女を殺せる毒って……台所で作れちゃうんですね」
「絶対口にしてはいけません。魔法少女でも一口で致死量です! 癒しの力が無いなら、なおさらだ!」
「ええ、身をもって理解しました!」

 真剣な目で、お互いがお互いを理解しあう瞬間、というのは……こういう時だからこそかもしれない。

『……ぶっ……』

 お互いに、なんかおかしくて吹きだしてしまい……

「あ……失礼」
「いえ……こちらこそ」

 目を合わせないようにして、とりあえずコンロのほうに目線を戻す。あとは味噌汁と……もずくがあったな。

「……三日、いや、四日立たないだけで、久方ぶりな気がするなぁ」
「え?」
「いや、キッチンに立つのが、いつもの事だったんでね。
 ……考えてみれば、沙紀の奴を、過保護にし過ぎたかも知れん。家の事は、全部俺がやっちゃってたから」
「そうですか? 私は、颯太さんの背中を見て、逞しく育ってると思いますけど?」
「自分に出来もしない事を『出来る』と主張してる段階じゃ、タダの餓鬼ですよ。『その意気や良し』ですけどね……
 それに、俺が言うのも何ですが……時に詭弁は必要でも、詭弁を弄するだけの人間は信用されませんし。
 どこかで実績と実力を示さないと、人は人に信用してもらえませんから。そういう意味で、沙紀の奴は、まだまだです」
「……そして、沙紀ちゃんがあなたに認められたら。颯太さん、あなたは死ぬつもりなんですね?」

 ぴたり、と……味噌汁を作る手が止まる。

「昨日のあれは忘れてください、と言ったはずですよ? 所詮、美樹さやかを説得するための方便です」

 味噌汁を作る手を、再び動かす。

「方便ではあっても、真実でしょう? 彼女のカンの鋭さは、颯太さんも知っているはずです。
 あなたの言葉は、キュゥべえと一緒で、全てを語る事は殆どない。でも……口にした言葉は、ほぼ真実。だからこそ、あなたは彼女を説得出来たのだと、私は思ってます」
「……買い被り過ぎです。成り行き任せのグダグダで、上手く行ったに過ぎない。冷や汗通り越して、肝が冷えました。
 それに『自ら死ぬ』つもりはありません。『殺される』んですよ。恨みを買った、どこかの誰かに」
「……それは、自殺と何が違うのですか?」
「復讐の連鎖が、俺で止まります。
 ……俺が生きてる限り、俺を恨む魔法少女は増える。そして負の力に囚われて、魔女になる魔法少女が増えやすくなる。
 『復讐』を原動力に出来るのはね、『希望』を振り撒く魔法少女には出来ない、人間だけの特権なんですよ」
「……『復讐』、ですか? 何に対しての?」
「ワルプルギスの夜。……話してませんでしたっけ? 俺の姉の敵です」
「初耳です」
「……そうですか。なら、対ワルプルギスの夜への同盟関係の強化のために、話すのもいいかもしれません」

 それから、俺は暁美ほむらに話した内容と、ほぼ同じものを巴マミに話した。

「……まあ、そんなところですかね。
 さて、肉じゃがもいい具合だし、味噌汁も出来た……あ、もずくは大丈夫ですか?」
「ええ、沙紀ちゃんの『料理』に比べたら、もう何もこわくありません」

 そう言って、にっこり笑う巴マミの笑顔は……なんというか、非常に魅力的だった。


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