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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/03 11:27
「おっ……てっ……めぇ!」

 今日も一人、魔法少女を仕留める。
 ……今回は馬鹿で助かった。

「……人間、ナめ過ぎだぜ。魔法少女」

 腹に大穴を空け、顔面を吹き飛ばされた魔法少女が、地面に倒れ伏して痙攣する中、ソウルジェムを踏み砕く。

「……もしもし。そう、俺……ああ、ボディ一つ。10代の少女だ。場所は見滝原のハズレにある●×ビル。そう、屋上だ。
 鍵は空けておく。早めにカタをつけてくれ。振り込みはいつもの口座、な」

 いつもの『処理業者』に連絡。ケータイで入金。後始末をつける。

「っ……チッ! 何なんだチクショウ!」

 『魔法少女』が増えるペースが早すぎる。一体何なんだ、これは。
 グリーフシードを手にするために、魔法少女は狩り場としての縄張りを主張する。
 それは、俺……というか、沙紀も、一緒だ。が……俺の主張方法は、無論、普通とは若干異なる。
 警告は無し。
 ただ、ちょっかいを出した魔法少女が『地上から消えて無くなる』。
 『フェイスレス』『シリアルキラー』『アサシン』『ジャック・ザ・リッパー』……様々な過激な異名が、魔法少女たちの中で、噂になっているらしい。御蔭で、ウチの縄張りは『見滝原のサルガッソー』扱いだとか。

 ……無理も無い。
 彼女たちの大半は、自分がゾンビにされた事も。そして最終的に魔女という化け物になる事も知らない。
 だが、俺からすれば、彼女たちは魔女予備軍である。可能な限り化け物になる前に狩り取るに限る。
 俺が戦い続ける限り、魔女も魔法少女も少なくて済む。
 そう……


 全てのキュゥべえを滅する事が出来なければ。沙紀以外の全ての魔法少女と魔女を、狩るしかない。


 魔法少女というのは、素質や素養の問題らしい。
 誰もが契約すれば成れるわけではない。
 ただ、無限にいる、あの悪魔、キュゥべえが片っ端から契約を望んでも、魔法少女の数は一定以上は増えない事を考えると、実はそれほど人口比の割合で考えれば、問題はないんじゃなかろうか? しかも、魔法少女になれるのは、10代~20代まで。
 そうなれば、自ずと狩るべき人数も相手も絞る事が出来る。

「……にしても、異常だぜ」

 ビルの階段を下りながら、俺は一人、ごちる。

 今月に入って、これで5人目。いずれも、ルーキーと言っていい新人だ。
 無論、タダの新人に後れをとる俺では無い……と、言いたいが、戦闘能力そのものは新人以下な俺にとって、一瞬の油断が死という最悪の結果に繋がる事に、変わりはない。
 ……今日はもう、店じまいだな。
 『妹』のソウルジェムの濁りをグリーフシードで消しながら、俺は天を仰ぐ。
 魔力は兎も角、武器弾薬を使いこみ過ぎた。特に、例のお菓子の魔女相手に、C-4を使い過ぎたのは痛い。
 ……また『仕入れ』に行かないとなぁ。はぁ……


 そして、その日の夜。運命が流転を始めた。


 ピーンポーン♪

「……?」

 それは、妹と取っていた、夕食の団欒の時だった。
 ……ちなみに本日のメニューは、カレーライス。元、海上自衛隊のコックだった知り合いに、レシピを教えてもらった秘伝の代物だ。

「……宅急便かな?」

 玄関からのチャイムに、俺は玄関に繋がった監視カメラとマイクの映像を覗き……絶句した。

「っ!!」

 そこに居たのは、この間、お菓子の魔女と戦っていた金髪縦ロールの魔法少女、巴マミ。
 しかも、『変身済みの姿』だった。つまり、やる気だと言う事。
 さらに……

「沙紀!」
「動かないで」
「おーっと、動くなぁ!」

 気がつくと。
 黒い髪の少女に、蒼い髪の少女が、それぞれ俺と沙紀に銃と剣を突き付けていた。
 黒い髪のほうは知らないが、蒼い髪の少女には見覚えがある。……この間の一般人の片割れ……魔法少女の体験ツアーとか言ってた。
 ……ああ、なっちまったのかよ……魔法少女に。ってことは、彼女はルーキーだな。

「……キュゥべえの言う事が大当たり、とはね」
「ここが、あの、『顔無しの魔法凶女』の家、か」

 魔法少女が二人。
 さらに、黄色い紐のようなモノが、鍵穴やドアの隙間から伸びて、我が家の玄関の鍵を開け、巴マミが入って来る。

「夜分遅く、食事中に失礼します」

 優雅に靴を脱いで揃え、礼儀正しく上がって来る。ただし……その両手に、マスケット銃を携えたまま。

「……お兄ちゃん?」
「大丈夫。大丈夫だ、沙紀」

 引きつった笑顔を向ける。
 ……とはいえど。
 状況的に、かなり『詰み』な事は事実だ。
 何より問題なのは……この黒髪の少女が『いつの間に、俺に銃をつきつけたのか』。全く認識出来なかった。
 立ち姿や雰囲気で分かる。
 巴マミも相当の手錬だが、一番ヤバいのは、この黒髪の少女だ、と。
 問題なのは……彼女の『何』がヤバいのか。俺が理解できないという事。

「……頼む。妹から剣を引いてくれ」
「それは無理。
 魔女も魔法少女も見境なしに、爆殺、狙撃、当たり前の、正体不明の暗殺魔法少女を前に、油断出来るワケがないよ」
「……俺はどうなってもいい。妹から剣を引いてくれ!」
「あー、もしかして、お兄さんは知らないのか? あんたの妹が、魔法少女をやってるのって……」
「違う! ……やってるのは俺だ。俺に恨みがあるのなら、俺を殺せ!」

『へ?』

 その言葉に、全員の目が点になった。

「何か、複雑な事情が、おありのようですね?」

 そう言うと、巴マミが細長いリボンで、俺と沙紀を拘束。

「……とりあえず、お話をお聞かせ願えませんか?」



「魔法少女じゃないのに……魔女と戦ってた、ってぇ!?」
「何て、無謀な……」
「確かに、不可能ではない。けど……限りなく綱渡りな事をしてるのね、御剣颯太」

 三者三様の反応を示しながらも、俺はとりあえず、自分が今までしてきた事『だけ』は話した。

「……しっかし分っかんないなー。どうして、あたしら、魔法少女を戦う前に倒せたんだ?」
「コツがあるのさ」
「コツ?」
「……お前らが今、俺たちにやってる事だよ。奇襲、暗殺、恐喝、利益誘導。その道のエキスパートたるキュゥべえの存在を失念していた、俺のミスだ」

 キュゥべえ。インキュベーター。
 その、全にして一、一にして全という概念を、具現化したような悪魔。
 情報が漏れたとするならば、恐らく奴らからとしか考えられない。
 俺は、彼らを見かけるたびに、駆除してきた。その結果、少なくとも俺の家の周囲には、キュゥべえは現れない程度には、なっている。無限に存在する彼らだが、体を吹っ飛ばされ続けるのは、あまり気分のいい話じゃないらしい。
 後はまあ……根競べの世界の話である。
 それが、マズかった。キュゥべえの動向を、把握し損ねた。

「それは、魔法少女の戦い方ではありません。ただのテロリスト……いえ、殺し屋です!」

 巴マミが、非難めいた目線を向けてくる。

「……そうだな。で、何か問題があるのか?」
「大アリです! あなたは確かに、魔法少女を狩る事には長けているかもしれない! でも、話を聞く限り、あなたは魔女を狩る事に、決して長けているワケじゃない! あなたの活動は、魔女を跳梁させて、世界に絶望を撒き散らし続けてるのと等価だわ!
 いいえ、なまじな魔女よりもタチが悪い! あなたは……最低だわ!」
「……じゃあ、聞くがな、ベテラン。その『魔女』ってのは、どっから来るか、知ってんのかい?」
「魔女が……どこから? それは、未熟な使い魔が人を襲って、成長して……」
「まあ、確かにそーいうケースも無いわけじゃない。だが、俺が懸念して、恐れているのは、もうひとつのケースだ」

 真実を口にし、相手の動揺を誘おうとした、その時だった。

「待ちなさい、御剣颯太!」

 黒髪の少女が、俺に向かって叫んだ。

「……何だ。アンタは知ってんだな?」
「御剣颯太……あなたは、魔法少女の真実を知って、なお妹を庇うの?」
「庇うさ。俺に残された、たった一人の身内だからな。そんで、沙紀もそれを知って、俺に全部を預けてくれてる」
「……いずれ、『その時』が来るのを、あなたは知っていて、なお?」
「もしかしたら、将来。妹は魔法少女を辞められる……かもしれない。そんな都合のいい奇跡が、見つかる……かもしれない。
 タダの人間だって、未来に無い物ねだりをするくらい、許されるだろうよ」
「……そう」

 絶望的ではある。だが……俺は足掻くのを、やめるつもりはない。
 どんな血まみれになろうが。どんな罪を背負おうが。

「あなたは……未来を信じてるのね」
「……それ以外に、信じられるモンがあるんなら、お目にかかりテェよ」

 皮肉に笑いながら、俺は天を仰ぐ。

「……なんだよ、おい? 魔法少女の真実って、何なんだよ、転校生」

 困惑しながら、問いかけてくる蒼い髪の少女に、俺が答えてやる。

「知らねーほーがいいぞ、ルーキー。少なくとも、それを知って、自殺した魔法少女を、俺は三人知ってる」
「じっ、自殺!?」
「死ぬしか無かったんだろ? まっ、賢明な判断だ」
「何。一体……何なんだよ? おい! 転校生! あんたも黙ってないで何とか言えよ! 気味が悪いぞ!」
「しょーがねぇな、じゃあ、教えてやるよ……」

 ふと。

 ルーキーに問われて、黙り込む黒髪の少女の睨みつけるような目線に気付き……次の瞬間、俺は何とかオブラートに包もうと、必死に頭を巡らせ始めた。ここで彼女たちに暴発されたら、沙紀の命が危険だという事に、今更ながら気付いたからだ。
 ……馬鹿だ、俺は。『いつもの手口』と状況が違うんだった!!
 特に、蒼色の髪の毛のルーキーはヤバい。
 キュゥべえに騙されてるとも知らず、希望に満ちた目を輝かせて、この修羅の世界に入って来る新人が、絶望という奈落に堕ちる瞬間が最も危険なのだ。
 そんな自分の迂闊さに気付いて、考えに考え、出てきた言葉は……

「あー、『汝が久しく虚淵を見入るとき、虚淵もまた汝を見入るのである』……だったっけか?」
「何だよそれ!? ワケが分かんないよ!」
「えっと……何か聞いたような……?」
「……知りたきゃ、どっかのパソコンでググってみな。ヒントは与えた」

 ギリギリの冷や汗を、内心ダクダクたらしながら、俺はやり取りを交わす。
 こちらは捕虜の状態だ。暴れ回られちゃ、困る。

「……で、どうするつもりなんだ。俺らを……殺すのか?」

 その問いに、巴マミが、何か閃いたようにつぶやいた。

「そう、ですわね。魔法少女としての魔力の源を砕かせてもらうのが、一番手早いと思うのですけど」

 げっ!!

「ダメだっ! それは……それだけはダメだっ!!」
「殺すわけではありません。ただ、魔法が使えなくなるだけ……相応の罰でしょ?」
「おっ、おまっ、お前、自分が何を言ってるか、分かって無いのか!? 」
「安心なさい。これは魔法少女の世界の話。殺し屋には関係の無い話ですから」

 にこやかに冷たく微笑む、巴マミ。だがその目は、明らかに『分かって無い』。

「やめろっ! やめてくれっ……殺すなら、俺を殺せっ!!」
「何も、あなたの妹さんを、殺すワケではありませんよ?」
「バカヤロウ! お前は何も分かってねぇ! 死んじまうんだよ!!」
「……どういう、事ですか?」

 ようやっと、彼女の手にした、マスケット銃が下がる。

「……OK、落ち着いて聞いてくれ」

 ……さあ、どうする!?
 真実全てをぶちまけるには、ルーキーが居る上に、俺も妹も拘束されている以上、この場では危険極まりない。
 とりあえず、嘘はつかない事を前提に、話せる範囲で何とか誤魔化すしかない。

「……妹は、重い心臓病だった。それを、キュゥべえが救った。そこまではイイな!?」 
「……つまり、彼女は魔法少女となる事で、生かされてる。そう言いたいんですの?」
「解釈は好きにしろ。兎も角、そいつを砕かれるのは、妹の命にかかわるんだ。
 だから頼む……やめてくれ。殺すなら、俺を殺してくれ!」

 金髪の少女と、俺の目線が交わり……降参したように、彼女が溜息をついた。

「……ふう。しょうがないですね。でも、魔法少女として彼女が戦えば、それで済む話では?」
「さっきも話しただろう? 出来ないんだよ、沙紀は。
 戦闘能力……というより、攻撃能力が著しく欠如していてな。
 誰かのサポートに回れば確かに有能なんだろうが、そのサポートしてる相手に、奴隷扱いで裏切られるのを繰り返してる。だから俺が戦うしかないんだ」
「なる、ほど。『見滝原のバミューダ・トライアングル』を縄張りにする、正体不明のアサシン魔法少女の正体は、そういう事だったのですか……業が深い。本当、どうしたものやら」

 深々と溜息をつく、金髪の少女。

「なんだか、あたしたちが悪役みたいな立場になっちゃったなー……ああ、そうだ! この子にさ、あたしたちの仲間になってもらってさ! このお兄ちゃんは殺し屋休業って事で!」

 脳天気な意見を放つ蒼髪のルーキーに、俺は全力でガンを飛ばす。

「夕飯時に鉄砲と刀振りまわして人の家に踏み込んできたテメェらの、ドコのナニを信用して俺の大事な妹を預けろってんだヨ?」
「そりゃアンタの自業自得じゃないの?」
「だとしても、俺の妹にゃ戦闘能力が無いんだ! 性格的にも、能力的にもな。そんで……テメーらに裏切られたら?
 ……言っておくが、勝手に拉致るよーな真似したら、俺はテメーらを『狩る』ぜ……」
「うっ……たっ、立場分かってんのか、こんにゃろう! マミさんに芋虫にされてる今のアンタに、何が出来るんだよ!」
「じゃあ、今の内に殺しておけよ。でないと、後悔すんぜ?」
「んぐぅ……こ、この頑固なシスコン兄貴めぇぇぇぇぇ! 私たちは『正義の味方』だっつってんのに!」
「そりゃ御苦労さん。で、この頑固な悪党を前に、正義の味方さんはどうするつもりだい?」

 拳を握りしめて苛立つルーキー。
 と……

「ふ……ふふふふふふ、ふふふふふふふふふふのふー。お、に、い、さ、ん♪ そんなクチ利いて、いいのかなぁ?」

 唐突に。何か、邪悪な笑顔を浮かべる、ルーキー。
 その魔法少女らしからぬイビルスマイルに……最初、俺は呆れ果ててた。

「なんだ、拷問か? 拷問なのか? 好きにしろよ。ただし、妹に指一本でも触れたら……」
「まっさかー♪ 私たちは『正義』の魔法少女なんだから、拷問なんてするわけないじゃなーい♪」

 ニッコニッコと楽しそうな表情を浮かべる蒼髪のルーキーに……初めて俺は、果てしない程の嫌な予感を覚えた。
 ……何だ? 何を考えてる、このアマ!?

「マミさん! 彼をしっかり押さえててくださいね! あと、五月蠅かったら口も塞いじゃってください!」
「え!? え、ええ……さやかさん、一体、何を?」

 戸惑う巴マミ。見ると、黒髪のほうも、何やら戸惑っている。
 そして……

「これより、正義の名のもとに、シスコンお兄ちゃんの秘蔵本と武器を全部押収しまーす!!」
 
 高らかなる声で、死刑宣告が、ルーキーの口から飛び出しやがった!

「ぶーっ!!!!!!!! ちょっ、ちょっ……ちょっと待てぇぇぇぇぇぇ!!」
「あの物騒な鉄砲とかと一緒にー、あーんな本とかー、こーんな本とかー♪ こう、お兄ちゃんお気に入りのー、青少年にふどーとくな書物を、妹さんの目の前で朗読しちゃおうかなー、と♪ あるんだろー? ンー?」
「ちょっ、そっ……ソンナモノはっ……無いっ!!」
「ほっほーん? そう言い切りますか?」

 と……

「ねえ、沙紀ちゃん、って言ったっけ?」
「……ぅん……」
「このお家にさ、お兄ちゃんしか入っちゃイケナイ場所とかー? 開けちゃダメって言われてる場所とか、教えてくれない?」
「ふぇ……だめだよぉ! お兄ちゃん、危ない鉄砲とか爆弾、いっぱい持ってるんだから! うっかり触ったら、爆発しちゃうよ!」
「大丈夫大丈夫! このほむらお姉ちゃんが、危ない鉄砲とか爆弾とかの扱いには慣れてるから、爆発させたりはしないよ」
「……ぅぅぅー? ほんと?」
「だっ、やめろ馬鹿! マジでトラップとか仕掛けてあるんだから! 家ごと吹っ飛んじまう!」

 などと、最後のハッタリをカマしてみるのだが……

「はっはーん♪ そこに秘蔵のアイテムがあるワケですなー? OKOK、ほむら先生、危険物対策は、よろしくお願いしまーす♪」
「問題無いわ、行きましょう。魔女と戦って生き延びた、彼の所有する武器に興味がある。巴マミ、引き続き、彼の拘束をよろしくね」
「はいはーい♪ じゃ、沙紀ちゃん、お兄ちゃんの秘密のお部屋に、お姉ちゃんたちと一緒に行こうか?」
「うん♪ お兄ちゃん、ごめんね。ホントは、ちょっとお兄ちゃんの秘密のお部屋に、入りたかったの♪」
「待てぇぇぇぇぇ! やめろーっ!! やめてぇぇぇぇぇお願いぃぃぃぃぃマイシスタァァァァァプリィイィイィイイズッッッッッ!!!!!」

 俺がもし魔法少女だったら、イッパツで魔女化しかねない程の、絶望的な魂の絶叫も虚しく。 


「うわっ……うわぁ……何これぇ?」
「へぇ……男の人って、こんなモノが……」
「……お兄ちゃんって、こーいう女の人が好きだったんだー?」
「…………(ちらっと一瞥した後に、武器庫の物色に戻る)」


「…………………………いっそ、殺せ…………………………」



 ……その日。俺の人生は、色々と終わった……

 ……本日の成果:魔法少女1匹。魔女2匹。
 ……トータルスコア:魔法少女24匹、魔女(含、使い魔)53匹。
 ……グリーフシード:残14+1。

 本日の料理:日本式海軍カレー、マンゴージュース。
 デザート:……俺の血の涙。


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