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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/13 08:26

「ただいまー、っと♪」

 とりあえず、斜太興業の連中全員を、美樹さやかの実地研修を兼ねて『不幸にしてあげた』後。
 美樹さやかに『俺の家まで自分の足でランニング。ただし、今からダッシュで逃げないと警察に捕まるぞ。あ、魔法少女の力は当然、抜きでな♪』と言い含めて、帰った頃には夕方になっていた。
 無論、途中で食材の買い出しも忘れない。
 今夜は麻婆豆腐と春雨スープ。米も買い足しておいた。……何しろ、晩飯の人数が、最悪五人って事もありうるわけだし。

「あら、お帰りなさい、颯太さん。……美樹さんは?」
「斜太興業からランニング中。もーすぐ着くんじゃないか? 俺、寄り道して帰って来たし」

 と……

「しっ、しっ、しっ……しぃぃぃぃぃしょぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおっ!!」

 汗だくになった美樹さやかが、我が家の玄関口に到着。……言いつけたとおり、律儀に生身の体で走ってきたらしい。

「……おお、いい記録だな。生身でも結構運動神経あるじゃねぇか?」
「まっ、まっ、魔法少女にヤクザを襲わせるなんて、何考えてるんですか!?」
「ヤクザが魔法少女使って襲って来たんだから、しょうがねーじゃねーか。おめーがやらなきゃ、巴さんと一緒に、俺らがやってたさ」
「そっ、そっ、それじゃ何であたしだけで!? っていうか、師匠は何やってたんですか!?」
「そりゃお前の実地訓練のために決まってんじゃねぇか。あと、俺はお前が暴れてる間に、ビルに爆薬仕掛ける必要があったからな。
 ……念のため、ビルの設計図持って『計算済み』だった事が、役に立ったぜ」
「……へ?」
「火薬使った内破工法の計算って、すげー面倒でさー。俺でも酷いと一週間くらいかかっちゃうんだよ。
 んで『こんなこともあろうかと』市内のヤクザ屋さんたちの組事務所とか、組長の住まいとかの設計図、こっそり手に入れて『計算だけ先にしておいてある』んだよねー。爆薬仕掛ける『ダケ』なら二時間かかんないし」
「……………!!!!! あ、あの、それ、それって……」
「ん? 勿論、ウチにちょっかい出してきたら、C-4使って『内破式で周りに迷惑がかからないように』吹っ飛ばすために決まってんじゃん。
 まあ、その気になれば、確かに見滝原全部のヤクザ壊滅とかできるんだけどさー。あいつらどーせインキュベーターみたいに、潰しても潰しても沸いてくるから、しょーがなく対症療法で『カタギに害の無い連中だけを』生かしておく事にしてるんだよねー。面倒くさいし。
 あとは、撮影テープの消去だろ? 武器や麻薬の証拠の確保だろ? その他諸々痕跡の抹消と……まあ、お前がヤクザ相手に『正義の味方』が出来るようなフォローを、色々と、な」
「な、何よそれ……わけがわかんない」
「それが分からないから、お前は『脇が見えてない』って言われるんだよ」

 もう、酸欠の金魚みたいに、口をパクパクさせる美樹さやか。

「じっ、じゃあ、何で……帰りの、最後のランニングは!? 行きみたいに、バイク乗せてくれればよかったのに!」
「ん? 本当は、免許取って一年以内は法律違反だから。行きの時は非常事態って事で……捕まらない自信、あったし。
 あと、体鍛えるのは精神を鍛える一番の手っ取り早い方法だからな。万能じゃないし個人差はあるけど『確実に効果が現れる』のは間違いが無いからね」
「かっ、体を、鍛えるためって……」
「それより、どうだった? 『初めて魔法少女の力で、死んでも構わない一般人を、ぶん殴った感想』は?」
「っ!! しっ、死んでも構わないって!!」
「そーだよ? あいつら一般人を食い物にして、『自分たちだけ食物連鎖の上に立った気分で』のうのうと生きてる連中だよ? なら『食い物にされる覚悟』くらいは、あって然るべきじゃね?」
「っ……そっ、それは……」

 戸惑う美樹さやかに、俺は笑う。

「怖かっただろ? 『自分が振るった力で、相手が死んじゃう』のが?」
「当たり前じゃない! 『死んだらどうしよう』って、凄く怖かったんだから!!」
「それでいいんだよ。それが普通なんだ」
「っ!!」

 俺の言葉に、絶句する美樹さやか。

「……分かるか?
 お前ら『魔法少女が握っちまった力』ってのは『そういう事が可能な力だ』って事が。
 今回は、俺がちゃーんと『死んでも構わない、お手軽骨付き生肉サンドバッグ』を用意してやったからいいけど、魔女も、敵対する魔法少女も、『元々は人間だった』んだぜ?」
「っ!! ……そっ、それは……」
「力は『使いこなす』モンで、振りまわされるモンじゃねぇ。今のお前なら、分かるはずだ。……まあ、俺もあまり言えた義理じゃねぇんだけど、それを中学二年の、しかも女が握っちまう事に、そもそもの間違いがあるんだよ。
 第一、フツーだったら、ヤクザの事務所に単身放り込まれたら『自分の命の心配だけで、何も分かんなくなっちまう』。それを『相手が死んだらどうしよう』なんて、考えられる余裕が出来ちゃう時点で、どっかオカシイんだよ」
「……」

 沈黙と共に、うつむく馬鹿弟子の肩を、俺はポン、と叩いた。

「まっ、誰も『殺さなかった』のは、正義の味方志望としちゃあ、上出来だ。正味、ヒスの一つ二つ起こして、死人こさえるかと思ってたんだが、中々見どころがあるじゃねぇか」
「あっ、あたしが殺してたら……どうするつもりだったの?」
「ん? どーもなんねーよ? 死んだも当然の連中だし。生きてたとしても、あいつら破門だろうから」
「破門?」
「赤札回るかもとか言ってたから、多分ヤクザの世界でも生きちゃ行けねぇだろうなー、今後」
「赤札?」

 なーんにも分かって無い馬鹿弟子に、俺は説明してやる。

「んっとねー、ヤクザが何で、犯罪を犯せると思う?」
「えっと……それが『仕事』だから?」
「仕事だって刑務所に行くのは誰でも嫌なんだよ。でも、ヤクザやる以上、どうしても行かなきゃいかん事もある。
 そのためにな、刑務所に行ってる間のヤクザの家族の面倒や出所後の仕事ってのは、そのヤクザの組織が面倒を見る事になってんだ」
「……はぁ?」
「そういう事情があるから、ヤクザはヤクザ専用の刑務所ってのがあるんだよ。一般の犯罪者とは、別に、隔離されて収容されるんだ。
 『罪を犯す事が仕事ならば、それを保障するシステム』ってのが、裏社会にだって、ちゃーんとあるわけだな」
「……………まさか? 師匠?」
「うん、その梯子も、ちゃーんと外しておいた♪
 しかも『赤札』ってのはねー、『ヤクザの世界に今後一切立ち入り禁止』っていう意味でもあるんだよ。どこのヤクザ組織にだって、二度と拾ってもらえません、って意味でね。
 たーいへんだろーなー……出所しても誰も保障してくれない。しかも、ヤクザしかやってこなかった人間が、真っ当にカタギとして生活するには『元・犯罪者』って肩書は重すぎる。
 ……そんでね、俺は妹をシャブ漬けにしようとした連中に対して『そんな程度で笑って許す程』人間出来てるワケじゃないんだよ」
「っ!!」

 ようやっとこの段階で……馬鹿弟子は、俺の目が『昨日からゼンゼン笑ってない事に』、気付いたらしい。

「刑務所内のイジメってさー……ものすごーく陰湿らしいんだよねー。
 しかも『ヤクザが一杯入ってる』刑務所に『ヤクザの世界にヤクザとして認められない』連中が、そこに行くわけじゃない? 何人、新人イビリに耐え抜いて、首吊らないで刑期勤めあげて出所できるかなー? それとも、刑務の作業中に『不幸な事故』に遭うか。
 まっ、何れにせよ斜太興業の連中が『幸せになれる』可能性は、魔法少女辞められるよりも望み薄だと思うけどね。案外、お前に殺されてた方が、あいつらにとって『幸せ』だったんじゃねぇの?」
「おっ、鬼だ……鬼師匠だ……」

 ガクガクブルブルと、玄関先で震えはじめた馬鹿弟子に、俺は溜息をついた。

「まっ……問題は、この方法がインキュベーターには通じない、って事なんだよなぁ……まったく、困ったもんだよ」

 と……

「颯太さーん。ご飯作っておきましたよー。ウチから食材もってきました」

 ふと、気付く。
 キッチンからのいい匂いに……あれは、グラタンか何かだろうか?

「えっ! ちょっ、巴さん、悪いですってば! っていうか、食材買ってきちゃったのに!」
「えへへー、マミお姉ちゃんの料理ー♪ たーのしみだなー」
「くぉら、沙紀! 遠慮しやがれ!
 ……いつもほんと、すんませんね、巴さん」

 と……

 ピンポーン

「……あん?」

 玄関先のチャイムの音に、俺は覗き穴から外を見る。……と。

「……鹿目、まどか?」

 そこに、真剣な顔の、鹿目まどかが立っていた。



『……………』

 何故か、上座に座る鹿目まどかに、俺も含めたその場に居た全員、目が合わせられなかった。
 無理もない。
 彼女は、『魔法少女の世界』に、絶対関わらせちゃいけない存在だからだ。
 だからこそ……

「御剣さん。いえ、さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃん……『今日、なんでみんな、学校休んだの?』」
「っ……それは……」

 暁美ほむらが、目をそらす。
 言えない。彼女に、言えるわけがない。

「さやかちゃんのママから聞いた。御剣さんに……『何か』あったんでしょう?
 マミさんから聞いてる。
 魔法少女の世界って、物凄く危険で、危なくて、怖い所だ、って。
 だから、大した願いも望みも無い私は、魔法少女になっちゃいけない。絶対になるな。だから私、キュゥべえと契約しなかった……でもね。私、『そういう魔法少女が必要なんだ』って事も知ってる。
 だから教えて! 今日、一体、何があったの!? 学校を休んでまで、一体みんな何をしていたの!?」

 その言葉に、俺は、鹿目まどかに両手をついて、頭を下げる。

「すまない。俺の責任だ!」
「御剣……さん?」
「……実は……ああ、その前に。
 お前さんは、自分自身の事を、知っているのか? 『最強の魔法少女の素質』って奴を」
「え? ええ……キュゥべえに、聞いたけど」
「じゃあ、『魔女と魔法少女の真実』は、知らないのか?」

 その言葉に、巴さんと暁美ほむらがいきりたつ。

「颯太さん!?」「御剣颯太!」
「ここまで来た以上、彼女も知るべきだ!
 ……下手に隠しごとが通じるタイプじゃねぇよ、彼女は。
 この馬鹿弟子と一緒で、何も知らないまま正義感だけで突っ走っちまうタイプだ」

 そして、俺は彼女に、語り始める。魔女と魔法少女の真実、インキュベーターがどういう存在か、そして、昨日の一連の事件の顛末を。

「っ……そんな……そんな! じゃあ、さやかちゃんは! マミさんは! ほむらちゃんも! ……沙紀ちゃんまで?」
「そうだよ。だから俺たちは、お前をそういう世界から遠ざけようとしたんだ。
 俺は構わん。好きこのんで、沙紀を守っているだけだからな。
 だが……」
「私が……じゃあ、私が魔法少女になるから、みんなを!」
「最後まで聞けぇっ!! キュゥべえの狙いは『それなんだよ』!!」
「っ!?」

 彼女の肩を掴み、俺はゆさぶる。

「いいか? お前が最強の魔法少女になれるのは、どういう理屈か理由かまでは、俺も奴も知らん。
 だがな? 『最強の魔法少女になれる』って事は『最悪の魔女になっちまう』って事なんだ。分かるか?
 『お前が魔女になったら、誰の手にも負えない存在になっちまう』んだよ……ワルプルギスの夜より最悪って事は……ウッカリしたら、地球全部、まとめて吹っ飛んじまうような魔女になるのかもな」
「そんな……そんなの、やってみなけりゃわからないじゃない!」

 そう来るだろう。そうだろう。
 彼女なら、そう言うと思った。だから……

「じゃあ、聞こう! お前、兄弟はいるか?」
「……弟が一人、います」
「じゃあ、仮に『お前が最弱の魔法少女になっちまった』としたら? ……ここにいる沙紀みたいな『家族の助けを借りないと、生きる事すら出来ない存在』になっちまったら?
 お前、自分の弟を、『魔法少年』にしたいっていうのか!? 見ただろ、俺の体を!」
「っ!! ……そっ、それは……」
「分かるか? 魔法少女になるっていうのは『そうなっちまう可能性だって』秘めているんだぞ?
 ……確かに、お前は最強になれるかもしれない。でも、その『最強になったツケ』は?
 はっきり言おう。
 お前のパパも、ママも、この場に居る魔法少女や魔法少年全員が力を合わせたとしても、『そのツケは、誰も肩代わりして払ってやる事が、出来ねぇ』んだよ」
「っ……………そんな……」

 絶句し、うつむく鹿目まどか。

「正直、お前さんみたいなタイプは、俺は嫌いじゃねぇよ。『誰かを救いたい』って思うのは、間違っちゃいねぇ。
 だがそれはな、『テメェのケツをテメェで拭いてから』っていう前提条件がつくんだ。
 基本的なトコのテメェのケツを拭けて、初めて『誰かを救う』事を、人間は赦されるんだ」
「っ……っ……でも、でも、こんなのって……」
「感情的に、カッとなって、救えもしないモンまで救おうと手を差し伸べちまう。俺も何度か憶えがあるよ。
 でもな……結果は全部全部全部、無残なモンだった。
 お前もあの場に居ただろう? ここに居る馬鹿弟子を救ったツケに、俺は危うく殺されかけて、短い時間とはいえ入院する羽目になった。
 いや……正直、あれから佐倉杏子に、命を狙われ続けてる状態だっていっても、過言じゃねぇんだ」
「そんな!」
「そういうもんなんだよ。自分を救えない奴が、他人を救おうとすると『そうなっちまうんだ』!!
 だからな……無謀な行動を取るな。キュゥべえの言葉に耳を貸すな。お前がキュゥべえと契約しちまったら『みんなが努力してきた事が無駄になっちまう』んだよ。
 上条さんの一件、聞いただろ? 彼も、一時の感情で、危うくバイオリンを捨てるところだったんだ。そいつに至るような与太話を振っちまた事をな、俺は今でも後悔してるし、彼に幾ら頭を下げたって下げ足りねぇンだよ……」
「っ……………」
「冷静になれ。
 お前がもし、本当に『誰かのために他人を救いたい』って思うなら、まずは一時の激情に身を任せるんじゃなくて、冷静になるんだ。
 自分の行動が、誰に迷惑をかけているか、誰かを困らせて居ないか。まずは冷静に、一歩引いて考えるんだ。
 ……勿論、人間は神様じゃねぇ。俺だって完璧じゃねーから、色んな人を泣かせたり、迷惑かけたりしながら生きてる。むしろ、誰にも迷惑かけないで、人間は生きて行けるもんじゃねぇ。
 でもな、少なくとも……俺の剣の師匠の言葉なんだが『どんな幸せだろうが、どんな不幸な身の上だろうが、他人に迷惑をかけて不幸にする権利なんて無い。それを無視すると、自分だけじゃなくて周りまで不幸になって行く』んだ。
 お前は……『誰かを救いたいと願って、その誰かを不幸にしたいのか』? そこまで救いようのない馬鹿なのか?」
「っ! ……私……私、誰かの助けになれると思ってた。だから、いざって時は、魔法少女になるつもりだった。
 でも……」
「そのな、『いざって時』を来させないために。みんなみんな、世間のみんなは、お前のパパもママも、自衛隊も、警察官も、消防士さんも、魔法少女や魔法少年も、頑張ってるんだ。
 そういう時に現れる『正義のヒーロー』になりたいってのはな……言い換えれば『正義のヒーローが居なければ、どーしょーもない状況』を、望んでいるに等しいんだ。
 だからお前は、『いざって時を来させないために』頑張るべきなんだ。本当は『正義のヒーロー』なんて居ちゃいけない。悲惨な事になる前に、まずその元を断っておくのが、一番のベストなんだよ。
 ……分かるな? お前は今、その『ヒーローが必要な最悪の元』を、自分で抱え込んじまってると自覚すべきなんだ」
「……はい……わかりました」
「頼むぜ。お前がキュゥべえと契約しちまったら……俺も、沙紀も、馬鹿弟子も、巴さんも、何より……コイツが悲しむ」
「……え?」

 そう言って、俺は暁美ほむらに、話を振った。

「どーする? お膳立ては整えたぞ? 胸の内吐きだすなら、今の内だが?」
「御剣颯太……あなたは!」
「この場でダマテン決めこみてぇなら、好きにしな。後は知らねぇヨ。
 ただ『そのほーがいーかなー』って思っただけだ」
「っ……」

 沈黙。やがて……

「御剣颯太」
「あンだヨ?」

 恨み節でも聞かされるのか。と思ったのだが……

「ありがとう」

 その言葉に、思わず。

「キモッ! ……キャラに会わねー」
「……やっぱりあなたは最悪だわ」
「おうヨ、それそれ! 今のオメーにゃ、その無愛想ヅラが一番お似合いだぜ。なぁ、みつあみ眼鏡のほーむたん♪」
「そうね。『たーすーけーてーはーやーたー』でしたっけ?」

 ……くそ! やりにくくなっちまった。

「あ、あの……仲、悪いの? 二人とも」
『最悪ですが、何か?』
「………………」

 冷や汗を流しながら、鹿目まどかは引きつった笑顔を浮かべていた。



「……時間、遡行者……」
「へぇ……それで、ワルプルギスの夜が来るのを、知ってたんだ」

 暁美ほむらの説明に、周囲が納得したかのように頷いてる。

「そして、私が繰り返し続けた中で……初めて現れた存在。それが、魔法少年……御剣颯太と、御剣沙紀。
 この二人は、この時間軸において、完全な特異点なのよ。」
「……って事になってるらしい。だが、あながち嘘じゃねぇと思うんだな、これが」
「どういう事?」
「最初に接触した頃、こいつは結構な部分、俺に先回りする形で色んな手を打ってきていた。巴さんとの接触なんかは、そうだな。
 だが、俺が存在し続けた事で、徐々にこいつの知ってる歴史と違ってきたらしくてな。……こいつの視点からすれば『狂ってきた』とも言えるらしいが。
 その象徴とも言えるのが、昨日の斜太チカの騒ぎなんだが、こいつは斜太チカの存在を、全く知らなかったハズなんだ」
「と、いうと?」
「時間遡行者様が、あんな間抜けなトラップに引っかかると思うか?
 『あらかじめ知ってれば』あんなのは避けられるんだし、そもそも沙紀が誘拐される前にフォローに入ればいい」
「……なるほど」

 納得したように、うなずく、暁美ほむらを除いた、沙紀と、鹿目まどかと馬鹿弟子と巴さん。

 と、

「ちょっと待って。御剣颯太。つまり、私の未来知識と武器の取引は……」
「有効だよ、まだ。『使えるかも知れネェ』だろ?
 情報なんて、そんなもんなんだよ。数集めて総合的に判断下して行かなきゃいかん。
 一つの情報源を鵜呑みにすんのは危険だし、元々、俺っつーイレギュラーがいるのに、お前さんの知識に全部当てこむワケが無いだろ? それに、美樹さやかに関しては、お前の情報が無ければ動きようが無かったのも、間違いない事実だしな。
 さらに、ワルプルギスの夜相手の戦力アップにもつながる、とくれば、俺が損するのなんて時間と金くらい。結構痛いけど、まあ、許容範囲だよ」
「っ……本当に、あなたは……喰えない奴」
「おめーのほーが、俺にゃ喰えないんだけどね……」

 少なくとも。
 時間止めるなんて反則技能を持った魔法少女なんて、俺は知らないし見た事も無い。
 その気になれば、彼女は俺を殺せるのだし。だから、俺も彼女を殺す手段が無いわけではない、と示さないとやってられないし、ついでに利害関係を一致させていかないと、彼女は容赦なく俺を処分に来るだろう。
 そして、それを踏まえた上で……俺は彼女をからかって『遊んでいる』のである。

 だって、こんなスリルのある遊び、他に……遊び、か……そんな余裕、無かったもんなぁ。今まで。

「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」
『元からだと思います』

 その場に居た魔法少女全員が、声をそろえてピシャリ、と俺に向かって、言い切った。


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