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No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
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[27923] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/25 23:58
「お兄ちゃん。お兄ちゃんは今、重大なミスを幾つも犯してるよ。
 お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」

 テストが終わり、沙紀がもどってきて開口一番。
 俺にいきなり言ってのけたのは、それだった。

「お、おい、沙紀? ……なんでだよ? 俺の刀がすげぇ力持ってたんだぞ?
 こいつがあれば……」
「っ……はぁ……ホントに、自分の事が見えてないんだから」

 深々と溜息をつく沙紀。

「まず第一に、魔女をどうやって見つけるのよ?」
「あ……」

 指摘されて、絶句。
 確かに、サーチ&デストロイにしても、サーチの部分で躓いてます。
 さらに、

「次に、そんな接近戦専用のリスキーな武器『だけ』で、魔女や魔法少女と戦い抜くつもり? 斜太チカの時みたいに!?」
「ぐっ、そっ、それはもう、魔法少女全てが背負ってる……」
「他の魔法少女は、多かれ少なかれ自己修復なり防御系の能力、持ってるよ? 特に接近戦型の魔法少女は高速型であろうが、それをフォローする手段がある。
 お兄ちゃんのソレは、完全な攻撃一辺倒なくせに回復能力ゼロなんだから、一回二回ならともかく……ううん、その一回二回で、死亡とか有り得るんだよ?」

 ぐは、反論できません。

「もう一つ。お兄ちゃんは『自分を簡単に捨て過ぎる』。自分を『道具だ』と割り切り過ぎなのよ。
 ……今までの戦い方見てると、お兄ちゃん『だけ』だったら、特攻とか普通にしてたような場面、結構あったよ?
 『私を背負って一緒に闘ってる』っていう自覚が、土壇場ギリギリの勝機を見出していたように思うの」
「っ………」

 否定、できません……

「さらに言うけど、その刀が、お兄ちゃんのソウルジェム……ううん、『擬似ソウルジェム』だとして。
 『グリーフシードで浄化すれば元通りになる』ってモノなの? その、奇跡や魔法を消す力は、無限に使えるモノなの?
 魔法少女の魔法だって有限なモノなのに、そう都合よく『無限に魔力を消去できる』魔力を持つなんて、私にはとても思えない。
 絶対に、回数制限とかそういうのがあると思うけど、『それを測る基準値が全く見えない』のは、問題だと思う。さらに、その回数制限を増やす手段も分かって無い。
 色々な意味で、兗州虎徹『だけ』に頼るのは、物凄く不安定なんだよ」
「あう……」

 最早、反論不可能でございます。

「ついでに言うよ? 一度二度ならともかく、街中で日本刀持ってウロウロし続けていたら、いくら許可証持ってるお兄ちゃんでも警察に捕まっちゃうよ?」
「………………………」

 ずどーん。
 ……どーやら、俺個人だけで闘うにしても、問題山積なよーである。

「あとこれは私、御剣沙紀、個人の視点。
 どっちにしろ、お兄ちゃんが居ないと私は生きて行けない。だったら、私がソウルジェムを貸す事で、少しでもお兄ちゃんの『死』を回避しようとするのは、当然の話でしょう?
 ついでに、『お兄ちゃん自身には』魔女と戦う理由も、魔法少女の世界に首を突っ込む理由も無い! あくまで『私のために』『自分の意思で』闘ってくれてるわけでしょ? ……その事については感謝してもし切れないけど、だからといって、一人で特攻なんかされたって、ちっとも嬉しくなんて無い!!
 ……逆に聞くよ、お兄ちゃん? いつかは真面目に聞かなきゃって思ってたんだけど……『もし私がどうしようもなくなって魔女に特攻して、自分一人残されたら?』
 そう考えた事、一度でもあるの!? 真剣に! 真面目に!! 私がどんな気持ちで『お兄ちゃんの闘いを見ていたか』分かる!? だから私、今までお兄ちゃんに、何も言えなかったんだよ!?」
「っ!!!」

 絶句する。
 背筋が凍った。
 ……馬鹿だ、俺は……こんな簡単な事も、指摘されなきゃ分からんかったのか?

「『未知の力』だっていうのに、『闘える』ってだけで踊り過ぎ。
 そんなんじゃ『感情も分からないくせに、感情をエネルギー源にしよう』なんて思いついた、どっかの誰かさんと一緒だよ?
 能力や性能を知る事は大切だけど、それに踊らされちゃ何の意味も無いでしょ!?
 そんなの全然お兄ちゃんらしくない!」

 最早、返す言葉もありません。

「私もそうだけどさ……人間は、自分の事なんて、ぜんぜん分かんないんだよ。
 岡目八目って言葉があるけど、誰かが一歩退いて指摘してあげないと、間違ったまま突っ走っちゃう。
 特に、お兄ちゃんや美樹さんみたいなタイプは」
「いや、これと一緒にしないで欲しいなぁ……」
「一緒だよ。美樹さん見てると、昔のお兄ちゃん見てるみたいだもん。
 いきなり助けられたからって、胡散臭いオッサンに弟子入りしようとしたりとか、そのまんまじゃない!」

 ぐはぁ!! そ、そ、それはぁぁぁぁぁ!!

「ぶーっ! 沙紀! しーっ、しーっ!!」
「本質的に、物凄く似てるんだよ、美樹さんとお兄ちゃんって……だから、多分、ソウルジェムの相性も良かったんだよ。
 ただ、お兄ちゃんのほうは、色々経験し過ぎてひん曲がっちゃってるだけで」
「一緒にしないで……オネガイ」
「認めたくないものよね、若さゆえの過去の過ちって」

 どっかの赤い彗星とか赤コートの人のよーな事を言い放つ、沙紀。

「美樹さん、そういうわけで、しっかりお兄ちゃんに『弟子として』付きまとってあげてください!
 ネジネジ曲がっちゃったベテランの根性を、真っ直ぐに叩き直すには『過去の自分』を見せつけてやるのが一番だって、どっかの苦労性の余りに総若白髪になっちゃった赤コートの英霊様が、『身を持って』証明しています!」
「らじゃー!」

 頭痛がした。
 もう、なんというか……

「あ、っていうか、沙紀ちゃん。その、師匠が弟子入りしたっていう……師匠の師匠って、どんな人だったの?」
「んー、言うなれば……『今のお兄ちゃんを4倍濃縮した』ような性格と実力と性根の持ち主?」
「OK、何となくわかった気がする」

 さらに、沙紀と馬鹿弟子のやり取りに、俺は絶叫した。

「ちょっと待てぇぇぇぇぇ! 俺はあそこまで無茶苦茶じゃねぇぞ!
 クリスマスイブに、サンタの格好でヤクザの事務所にダイナマイト放り込んだりとか、するわけねぇだろ!」

 って……なんだよ……おい。みんなして、何見てるんだよ。

「……あたし、なんか師匠についてった自分の末路を、垣間見ちゃった気がするなぁ……魔女化とかとは別の意味で。
 きっと、誰にも理解されないで、無限の荒野に剣とかいっぱい並んでたりとかするんじゃないかなー」
「そうね、颯太さんなら、そのくらいやりかねないわ」
「同感」
「あ、あうう……その……」

 鹿目まどかまで、否定の言葉を発してくれない。

「お、お前ら……俺を、どういう目で見てるんだよ……」

「ん? 無軌道シスコン兄貴特攻型」、と沙紀。
「煮ても焼いても殺しても喰えない男」、と、暁美ほむら。
「高校一年にして、親父で、兄貴で、師匠な、魔法少女の『メシ使い』」と、馬鹿弟子。
「その、とてもいい人だと思うんだけど……同時に『すごく厳しい人』だな、って思います。自分にも、他人にも」と、鹿目まどか。

 ……なんというか。鹿目まどか以外、フォローのしようがないくせに、妙に的確な評価。
 と……

「と、巴さん!? 巴さんは!?」
「えっ、えっと……ご、ごめんなさい、ノーコメント」

 ガーン!

「こ、コメント不能な程ッスか……そうッスか……」
「あ、あの、颯太、さん!?」
「いえ、浮かれて足元が甘かったのは事実です。
 ……そうですよね、魔法少年は魔法少女の相棒(マスコット)ですもんね……」
「い、いえ、そうではなくて……」
「分をわきまえる、ってのは重要ですよ。下手な夢見て死ぬよっかマシだ。
 ……そうだな、沙紀が居てくれたから、俺は今まで生きてこれたんだ。それは忘れちゃいけない事だ。
 俺、どうかしてました。ありがとうございます、巴さん! ……いえ、皆さん!」

 そう言って、全員に頭を下げる。

 そうだ。慢心して生きて行けるほど、世の中甘く無い。
 ……巴さんだから、ある程度優しいが、師匠が聞いたら鼻で笑われてフルボッコの地獄に落とされてる所だった。

「ね、だから美樹さん、言った通りでしょ? 『私が一番、お兄ちゃんを上手く扱えるんだから』って♪」
「おみそれしました、沙紀師匠」
「って……だから人をガンダ○にしてんじゃねぇよ!」
「白くないけど、大体、悪魔じゃん……」
「同感」
「やかましい!!」

 二人の脳天に、拳骨を落とし、俺は絶叫した。



「……巴さん、味噌、取ってくれますか」
「はい」

 キッチンに立ちながら、料理を作る。

 あの後、暁美ほむらの奴に、ひととおり買ってきた銃器の中で、奴の扱い方の分からない、手持ち式にした重機関銃やガトリング砲その他諸々をレクチャーした後(流石にぶっ放したらヤバいので、本番までに自分で何とかしろ、と忠告)。
 『どこでメシを食うか』という話になった結果、何故か全員一致で『俺の飯が食いたい』という話になった。

 で、『魔法少女の殺し屋』のお家のリビングに、勢揃いする欠食児童……もとい、魔法少女共+1。

 ……どうしてこうなった?

 まあいい。
 流石に、この大人数相手なので、手伝いを名乗り出てくれた巴さんに色々手伝ってもらいながら、俺は必至になって料理を作っていた。
 とりあえず、今夜のメニューは、じぶ煮と、こんにゃくと油揚げの白和え、根深汁(ネギの味噌汁)、ご飯。デザートに作っておいた和菓子……といいたいが、あいにくバタバタ続きで弾切れなので、白玉を作って代用だ。

 ……いかんな、趣味の腕を錆つかせちゃダメだろ、俺……

「……巴さん、味醂、取ってもらえますか」
「はい」

 と……

「……なんだ、沙紀?」

 何か言いたげな目で俺を見て来る沙紀に、問いかける。

「い、いや……お兄ちゃんが、キッチンに『誰かを入れて料理してる』姿なんて、初めて見たなー、って。
 なんていうか……我が家の『聖域』じゃん、お兄ちゃんにとってキッチンって」
「お前がマトモに料理出来りゃ、助手にしてるよ、タコ! もー手に負えないから追い出してんだ!
 おう、馬鹿弟子、よーっく憶えておけ。俺の剣の道を極めたければ、まずは料理が出来んと話にならんぞ?」
「剣と料理と、何の関係があるんですか?」
「料理は人間が人間として生きる、全ての基本だ。
 喰わなきゃ生きて行けんのが人間の業ならば、偽善だろうが何だろうが、せめて喰いモンを粗末にしないためにも『可能な限り美味しく料理して、犠牲になった命に感謝しながら頂戴する』のが人の道ってモンだ。それも出来ねーで、目先にぶら下げられた喰いもんにガッつくだけじゃ、餓鬼畜生と変わらんよ。
 炊事洗濯道を馬鹿にする奴に『御剣流』の継承資格は無いと思え」

 そう言って、根深汁の入った鍋の火を切る。……これ以上煮込むと、ぶつ切りにしたネギから、苦みが出てしまう。

「……なんか、師匠がマトモな事言うと、違和感があるなぁ……」
「お前の尊敬する巴さんは、見ての通り、ちゃんと料理が出来るぜ」
「うっ……」

 言葉に詰まる馬鹿弟子。と……

「大丈夫だよ。
 お兄ちゃんが料理出来るのって、小学生の頃から、池波○太郎の時代劇小説読んでた影響だから。
 正確には、そのドラマから入ったんだけど。『火付盗賊改方、長谷○平蔵である!』とか、中村吉右○門の真似でよく時代劇ごっこしてたよ? だから、レパートリーが和食系に偏ってるんだよ」
「……そうなの?」
「沙紀、五月蠅ぇぞ」

 じぶ煮もほぼ完成。白和えも出来た奴を冷蔵庫で冷やしてある。
 後は……

「ありがとうございます、巴さん。後は俺がやりますんで」
「え、でも?」
「デザートは白玉です。……ここんトコのバタバタで、和菓子のストックが切れちまったんでね。
 とりあえず、出来た奴を器に盛って、卓に並べておいて貰えますか? 食器はあそこ。盛りつけのセンスはお任せします」
「なるほど。では、デザートはお任せします」

 白玉粉に少しずつ水を加えながら、耳たぶの固さまで練った後、熱湯に入れ、浮いてきたのを氷水に次々放り込んで冷蔵庫に投入(ちなみに、手を水につけて丸めるとグチャグチャになるので注意)。
 ……後は食後のお楽しみだ。

「颯太さん、出来ましたよ」
「おう、美味そうだ……馬鹿弟子、なにつまみ食いしてる」
「え、食べてないよ?」
「……口元に白和えの汁がついてんぞ」

 慌てる馬鹿弟子の脳天を、軽く小突く。

「あー、そんじゃ、『いただきます』」
『いただきます』

 手を合わせ、全員が料理に口をつけた瞬間……無言でモリモリと喰い始める。
 そして……

「師匠、お代わり!」
「あ、私も」
「……おかわり」
「お代わりおねがいします」

 ……もりもりもりもり、もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。

「……ま、いいけどヨ。デザート分の腹具合くらい、残しておけ」

 三杯目の御茶碗も、そっと出す気ゼロな、魔法少女共+1の飯をよそいながら。
 あまりの食いっぷり(特に馬鹿弟子)を見て『カロリー計算とか魔法少女に必要なのかな?』とか、謎な事を、俺は漠然と考え始めていた。
 ……ま、成長期だし、いっか。



「……おお」

 水を切った白玉を底の浅いグラスに入れ、サイダーをかけるという、シンプルなデザートを振る舞う。

「アンコとか使わないんですね」
「あいにくアンコが切れててな。こんなのしか作れん」
「切れてる、って……」
「小豆から自分で作らないと、市販の奴は甘ったるいし泥臭いから好かん。イイのがあったら教えてくれ」

 そう言うと、俺は自分の分の白玉に、素直に和三盆の砂糖をかける。

「し、師匠は……砂糖のみ!?」
「ん? ……下手な小細工するよりも、材料がイイからな。これで十分美味い」

 絡めたあと、竹楊枝で突き刺して口に運びつつ、冷やした麦茶と流しこむ。

 と、

「……颯太さん、もし、余ってらしたら、それ、味見させて頂けませんか?」
「こんなシンプルなのでいいのか? 俺の分、喰って構わねぇぞ」

 そう言って、巴さんに、別の竹楊枝……が、切れたので、フォークを持ってきた後に、別のコップで麦茶を入れてやる。

「ほれ」
「頂戴します」

 そう言って、口に運び……何か、敗北感に打ちひしがれたような表情になる、巴さん。

「……口に合わないか?」
「いえ、その……何でもありません。はい」
「っていうか、何で美味しいの? 砂糖だけなのに!」

 横からヒョイパクと、つまむ馬鹿弟子。

「そりゃ、材料がイイからな。俺は素材を活かすように心掛けてるに過ぎん。『これも成仏よ』とか、師匠なら言っただろうな。
 ……あと、横から他人様のデザートをつまみ食いすんな」
「ぶー、ケチー」

 ……まったく。こいつらは……

「さて、洗い物しちまうか」
「あ、手伝いましょうか?」
「いや、結構。こんな大人数の料理作るの手伝ってくれただけで、恩の字ですよ、巴さん」

 エプロンをつけ、洗い場でいつもより多い皿だの茶碗だのを洗って行く。
 相変わらずリビングでは、俺の介入の余地のない、ガールズトーク満開だ。洗い物を終えた俺は、そっとその場を離れ、二階の自室へと向かった。



 愛刀の手入れをしながら、俺は苦笑した。

「『奇跡も、魔法も、あるんだよ』、か」

 それを否定し続けた俺が、一番最後にソレに頼っていた、という皮肉。
 それに、ふと思い出す。

 『怪物と戦う者は、みずからも怪物とならぬように心せよ』。

 ……皮肉にも『怪物』になってしまった、我が愛刀を見て、俺は思わず、身ぶるいをしてしまった。

 もし、この愛刀が『俺の写し身』だとするならば?

 俺自身もまた、魔法少女という『モンスター』の仲間入りを果たそうとしていなかったか?
 あの時、沙紀が止めてなかったら……俺は、もしかして?

「っ!!」

 手入れを終えた後、刀を収めて、俺はそれを立てかけると、地下にある武器庫へと向かった。

 現実の手触りが欲しい。
 奇跡でも、魔法でもない、リアルな鉄と火薬とガンオイルの匂いが欲しい。
 ……俺の体は剣で出来ているワケではない。ただの血と肉と臓物が詰まった、肉袋なのだから。

 だから、俺は武器庫に飛び込むと、メンテナンスの道具を引っ張り出し、日ごろ使う銃器を、片っ端から分解清掃し始める。

 ……そうだ。
 もし、武器に命が宿るとしても、俺は兗州虎徹だけを使って、生き延びたわけではない。
 『あらゆるものを状況に応じて用い、生き延びろ。剣に拘る物は、剣に足元をすくわれるぞ』ってのは、師匠が教えてくれたじゃないか。
 とりあえず、俺の武器に奇跡と魔法が不安定ながら使える武器が、一個加わった。そう、それだけだと思えばいい。

 それだけ……そのハズなのに、銃器の手入れを一心不乱にしながら、俺はどこかで怯えていた。

 あの時、俺は自然に『自分が魔法少女や魔女相手に、普通に五分に闘える』と思ってしまった。得体のしれない奇跡や魔法に、自然に身を委ねようとしてしまっていた。
 そんな自分が、今になって物凄く恐ろしくなり、俺はリアルな火薬と鉄の匂いに囲まれたくて、こんな場所に逃げてしまった。

 恐ろしい。
 力に酔って無茶苦茶やらかした魔法少女たちを、俺は笑えないのではないのか?
 奇跡や魔法に身を委ねた揚句、力に振りまわされて、俺はトンデモナイ事をしでかす寸前だったんじゃないのか!?
 いや、確実にそうだ……少なくとも俺は『沙紀を泣かせる』寸前だったのだ。

 あのまま、一人、兗州虎徹一本で挑んでいたら、どうなっていたか!?
 剣の腕に自信があっても、それだけじゃどうにもならない状況を、俺は銃や他の知識で補って、生き抜いて来たんじゃないか。

 『妖刀』

 ふと、そんな単語が頭をよぎる。
 そんな生き方を……『俺の剣士としての生き方』が、『俺自身を乗っ取ろうとしている』ような錯覚。
 そんな恐怖に怯えながら、必死になって銃の手入れをしていると……

「颯太さん、忘れ物ですよ?」
「っ!!」

 兗州虎徹を手に持ってやってきた巴さんに、俺は絶句した。

「と、巴さん……その」
「これは、颯太さんの剣でしょ?」
「違う!!」

 思わず、絶叫してしまい、巴さんが呆然となる。

「あ、いえ……すいません。ちょっとその……怖くなっちゃったんです」
「怖……く? ですか?」
「……………はい。恥ずかしながら。
 沙紀に指摘されるまで『魔法少女相手に、これがあれば闘える』って思ってしまった事に」

 彼女に隠し事をしてもはじまらない。
 俺は、素直に心の内を話す。

「奇跡や魔法を否定していながら、結局、最後の最後は、自分自身が生み出した奇跡や魔法の産物に助けられていた……お笑い草じゃないですか。
 ……俺ね、今まで、魔法少女たちの事を、正直、馬鹿にしてたんです。
 『力』や『奇跡』を求めた代償に、『魔女化』の運命を背負う。それを知って、悲劇のヒロインを気取る彼女たちを、内心、笑ってたんです。
 何かの代償も無しに、何かを得る事なんて、出来るわけがない。馬鹿じゃないのか? 世の中、そんな甘かぁ無ぇぞ、って……
 でもね、じゃあ……『俺が手にしてしまった、有り得ない力を得てしまったこの刀は? この力に対して、俺はどんな代償を払わねばならないのか?』……って。そんなの、キュゥべえにだって分かるわけがない。
 だっていうのに、調子に乗って、そいつに酔い始めてた自分が、途方も無く恐ろしくて……こうしてよく知った、鉄と火薬とガンオイルのシステムに、思わず逃げちゃったんです」
「っ……颯太さん」
「すんません。
 今の俺は、魔法少女たちを笑えない……笑えるわけがない。
 『俺の力だ』『俺が好き勝手にできる力だ』『誰の力も借りず、『敵』に立ち向かえる』。
 ……そう思った瞬間……何かこう、タガが外れたような、ね……やっぱ未熟です、俺は。本当に師匠失格ですよ。
 俺の師匠が生きてたら、生き地獄の説教フルコース&ヤクザの事務所腹マイト特攻三連チャンくらいはさせられたでしょうね」
「……………」

 沈黙する彼女に、俺は俺自身の苛立ちをぶつけてしまう。

「巴さん。今なら俺……本当の意味で、魔女になる恐怖におびえる、魔法少女の気持ちが分かる気がします。
 『自分はどうなってしまうんだ?』『自分はどうなっちゃうんだ?』って。
 真面目であればあるほど、空恐ろしくなりますよね。
 ……沙紀の奴は……いや、巴さんも、馬鹿弟子も、暁美ほむらも、こんな怖い思いしながら、闘い抜いてたんですね……強いはずだ。
 ただ『速いだけ』で『最弱』の俺が、敵うワケがない……」

 と、

「それじゃあ……その『最弱』に、今日二度も負けてしまった私は、どうすればいいんでしょうか?」
「え?」

 巴さんの苦い顔に、俺は絶句する。

「颯太さんと立ち会った時ね……本当に怖くなっちゃったんです。
 私のような遠距離攻撃型は……ライフルを扱う颯太さんなら分かるでしょうけど、照準(エイム)と発射(ファイヤ)の手順があるのは分かりますよね?」
「はい」

 それは、銃を扱う者ならば、当たり前の手順だ。例外は散弾銃のような……いや、それでも『大体』の照準は必須である。

「聞きます。
 もし、颯太さんが、高速型の魔女や魔法少女を相手にする場合、どうなさいますか?」
「散弾銃か、連発型で取りまわしの利くカービンライフルやサブマシンガン、あと罠を仕掛けてクレイモア地雷とかかな? どうしても接近されたら、兗州虎徹に頼るか。どっちにしろ、スナイパーライフルは高速型相手には向きませんからね。
 でも魔法少女なら、何とかなるんじゃないですか? こう、奇跡や魔法でパパーっと……」
「なりません。魔法少女だって無敵じゃないんですよ?」

 エース・オブ・エースの意外な告白に、俺は絶句した。

「私が知る限り、あそこはまだ『颯太さんの間合いの中』に見えていたんです。
 距離なんて関係ない。一気にあの速さでランダムな軌道で突っ込んで、ソウルジェムを斬られたら?
 上段に構えた颯太さんが……その、とてつもなく巨大に見えて。プレッシャーで反射的に『本気で眉間を』撃っちゃいました」
「ちょ、ちょっと待ってください? あの時、俺、巴さんの『銃弾のリボンの塊の筋』すら見えちゃったんですよ?
 あんな遅い弾なんて、誰でも簡単に斬れるじゃないですか? 俺はてっきり手加減してくれたモノと……」
「そこまで! ……それだけ、颯太さん自身が『速い』って事なんですよ。私なんかとは次元が違いました」
「……」

 意外過ぎる告白に、俺は戸惑った。

「颯太さん。
 颯太さんの本当の力って……本当の強さって、颯太さん個人の祈りだとかそういったモノじゃ、無いんじゃないですか?」
「?」
「いうなれば……そう。『信用』でしょうか?」

 その言葉に、俺は噴き出した。

「俺が? この殺人鬼が? 自分でも救いようのない、家族ひとつ満足に守り切れない、情けない男が!?
 笑わせないで下さいよ、巴さん。上っ面に人間、騙されちゃいけませんぜ?」
「じゃあ、何で、颯太さんは、魔法少女や魔女の世界に、『全てを承知で』首を突っ込んでいるのですか?」
「そりゃ、それ以外に無いからですよ。逃げ場なんて、あるわきゃ無いじゃないですか!?」

 そうだ。それ以外に、もう俺に道なんて……生きる術なんて、あるワケが無いのだ。
 だというのに。

「逃げようと思えば、逃げられるはずですよ? 『颯太さんだけならば』」

 その言葉に、俺は怒りをぶつけてしまう。

「っ……………!! それは……そんなのは豚の生き方だ!! 少なくとも『人間』の生き方じゃない!!
 よしんば、俺が取り返しのつかない修羅道に堕ちてるとしても、餓鬼道や畜生道にまで、俺は堕ちたかぁ無い!!
 最後の最後まで、俺は人間として生きて、人間として死んでやる! 少なくとも、家族全員、宇宙人の戯言に踊る人生なんて、まっぴらごめんだっ!!」

 叫んでおいて……俺は、その言葉の取り返しのつかなさに、絶句する。
 なにしろ、目の前にいるのは、その『宇宙人に』踊らされた、犠牲者の代表格なのだから。

「……すんません、巴さん。その……悪い事言ってしまいました」
「いえ、気になさらないでください。
 ……ねえ、颯太さん。
 私の知る限り……みんな、そんな『豚』の生き方を、多かれ少なかれ妥協して生きているのですよ。
 勿論、それが悪いとはいいません。仕方ないのかもしれません。
 でも、颯太さんは、一度も『仕方ない』で済まそうとしなかった。少なくとも、家族の事に関しては、無理な物は無理と割り切りながらも、一度だって絶望しないで、闘い続けて逃げなかった。
 誰かのせいにしたりもせず、『御剣詐欺』を駆使してまで、沙紀ちゃんや家族を救おうとしていた。違いますか?」
「そいつは結果論ですよ。
 ついでに、『よく闘いました』なんて敢闘賞に、何の価値も無いんです。『家族を守れなかった大量殺人鬼』、それが俺の全てです」
「じゃあ、何故、魔法少女だけを殺すのですか? 魔法少女の家族に手を出さず、周囲にも迷惑をかけようとせず」

 その当たり前すぎる質問に、俺は逆に、また頭にキた。

「あたりまえじゃないですか、そんな事! どんな野郎だって……『佐倉杏子ですら』家族が居たんですよ?
 奇跡を願ったワケでもない、魔法を欲したわけでもない……いや、頭の中で考えてはいたかもしれないけど、現実にその報酬を受け取ったわけでもない。
 そんな『奇跡も魔法も関係ない』連中を、弱肉強食の理屈だけで食い物にして生きるなんざぁ、餓鬼畜生の発想と考え方だ! 俺の師匠が知ったら、半殺しどころじゃ済まない! 全殺しで山に埋められてますよ!
 そんなのは極道どころじゃねぇ、外道のする事だ! シャブ捌いて魔女の釜で生きようとして、俺の妹拉致りやがった斜太チカと、何が違う!?」
「それが答えですよ、颯太さん」
「っ!?」

 真剣な目で見て来る巴さんに、俺は戸惑った。

「少なくとも。
 颯太さんは『無力な者は牙にかけない』『魔法少女の世界に他人を巻き込まない』『弱者は可能な限り守る』……それを知ったからこそ、私も、美樹さんも、暁美さんも、颯太さんを信じているのですよ?」
「そんなのは、当たり前の話じゃないですか! 誰がこんな腐った理屈丸出しの世界に……」
「それを知らなかった私は……彼女が望んだ事とはいえ、美樹さんを巻き込んでしまったのですよ?
 それに、沙紀ちゃんだって『魔女の釜』を生み出すのに協力したのは、颯太さんに無謀な事を続けてほしくなかった、一心だそうです」
「っ……すんません!!」

 なんというか。謝ってばっかだ。
 こりゃあ、早々に話題を変えたほうがいい。

「……なんでかなぁ。
 あの馬鹿を拾う羽目になってから、師匠の事ばっかが思い出される……もうなんつーか、師匠の言葉、受け売り丸投げ状態なんですよね」
「……ほんと、凄い師匠だったんですね?」
「巴さん……だから、上っ面だけで」

 呆れ返る俺に、巴さんが指をつきつける。

「結果論。それが全てですよ、颯太さん? 違いますか?」
「……ま、まあ、そうっちゃあ、そうですが、あの人の『舞台裏』を知ってると、どうもねぇ……」

 もう本当に、インチキとペテンと暴力と剣術の化身としか、言いようのない人だったし。

「じゃあ、お尋ねしますが、本当に、颯太さんは、颯太さんの師匠の過去全てを知ってるのでしょうか?
 『謎の人物』っておっしゃってましたが、颯太さんは、そのお師匠様の過去を尋ねしたりとかはしなかったのですか?」
「聞いてもデタラメ言われて、踊らされてばっかなので諦めました。
 大学教授だったとか、傭兵だったとか、実は皇族だったとか……もーなんというか、走り回って調べては『馬鹿が見る~♪』状態で。
 ペテンの達人です、あの人は」
「そうですか……だとするならば、案外、当たってるのかもしれませんね、颯太さんの推論」

 ……は?

「『お坊さんだった』って話ですよ。案外、徳の高い、禅僧のお坊さんだったんじゃないでしょうか?」
「無い無い無い無い! それは無い! っていうか、何でそんな結論が出るんですか!?」
「颯太さんを見てて、何となくです。説教とか説法とか、得意じゃないですか?」
「いや、全部、口から出まかせの代物だから、ホントに! あんなのは技術の問題ですよ。ディベートなんて、そんなもんです!」

 何の根拠も無い巴さんの推論に、俺は絶句する。

「そうでしょうか?
 その……私の推論なんですが、徳の高い、剣の修行を積んだお坊さんが、修行を通じて寺に籠るのをやめて、俗世に降りてきたような図が浮かんだのですが? こう、一休さんみたいな風に?」
「無い無い無い無い無い。ありえないありえないありえない!! っつーか、何ですかその『バイオレンス一休さん』説は! 肉体言語で禅問答とか、無茶苦茶だって!
 それにお坊さんの世界だって階級社会だし、そんな事したら下っぱのお坊さんたちが大迷惑です。よしんばそうだとしても、修行途中で逃げ出したような半端坊主です、絶対に!!」
「そうかしら? ……っていうか、お詳しいのですね?」
「いや、一応、『修行だー』っつって禅寺に放り込まれた事もあるし、姉さんが願った奇跡の関係上、税金関係で宗教法人とか調べましたから。
 だから断言できます。『ありえない』と」
「……はぁ」

 首をかしげる巴さんに、更に続けて行く俺。

「まあ、確かに、雲水衣や数珠や編み傘は持ってたけど、あれ、変装用だし。時々、ほんと得体のしれない変装道具持ってたりするんだよねぇ、股間が白鳥な白タイツとか、何に使ったんだろ?
 それに、本当に徳の高いお坊さんなら、金襴の袈裟くらい持ってるハズだからなぁ……遺品整理でも、身元証明するようなモノ、何一つ無かったし。
 しまいにゃ、女装とかもさせられたからなぁ……ほんと、何考えてたんだか」
「じ、女装……ですか!? 颯太さんの!?」
「モヒカン刈りもちょんまげも、裸エプロンまでさせられましたよ!
 ……頭オカシイとしか言いようがないです。写真一つ残って無いのが、せめてもの救いですよ!」

 と……

「すいません。その……見てみたいんですが、よろしいですか?」
「は?」
「颯太さんの……女装」
「ぶーっ!! とっ、とっ、とっ……巴さん!?」

 自分の迂闊発言に、頭を抱える。
 ……さて、どうしたものやら……

「じ、冗談です。冗談、あは、あははははは、第一、服とか化粧道具とかありませんものね」
「い、いや……その……魔法少女相手に、変装して奇襲とかやってるから、女装もやりましたがね」
「……え゛!?」

 ちょっと墓穴を掘ってるかなぁ……とは思うのだが。
 まあ、巴さんだし、いいか。

「その……怒らないでくださいよ? 女子更衣室って、一番無防備になる瞬間じゃないですか?
 そこをね……注意をそらした隙に、置きっぱにしたソウルジェムをかっぱらって、影でパキッと……」
「はっ、颯太……さん!? それって……」
「学校の中にね、上級生で居たんですよ。魔法少女が一人。しかも、ウチを襲ってきてたのが。
 何食わぬ顔で校内うろついてたんで、こっちもまあ手段を選ばず。正直、命がかかってたし、正面からじゃ絶対勝てませんからね」
「……………」
「暫く、校内をうろつく『背の高い、謎の三年生の美少女』の噂が出回った時は焦りました……って、巴さん?」

 何か、座った目で俺を見てる、巴さん。
 ……おかしいな? 俺が『手段選ばずの魔法少女の暗殺者』だって事は、知ってるハズだろうに?

「つまりその……『女装して、学校の女子更衣室に潜入した』って事ですか?」
「ええ、まあ……そうなりますね。
 でも、決してやましい気持ちじゃなくて、本当に沙紀と俺との命がかかってたから……って、あの、巴さん?」

 と……

「……颯太さん? ちょっと見せていただけますか?」
「え?」
「颯太さんの女装。今、ここで♪」
「い゛っ!? えっ……ま、まあ……はあ、構いませんが……巴さんならば、信じますし。
 ……でも、絶対、誰にも明かさないでくださいね? 流石に生き恥晒したくはないので。約束してもらえますか?」
「約束しましょう」
「……魔法少女の名誉にかけて?」
「かけましょう。ですから見せてくださいね♪」
「……分かりました。
 でも、笑わないでくださいよ? 本当に恥ずかしいんだから……」

 そう言って、俺は、自分の部屋から変装道具を持って来る。
 そんで、化粧だの何だのエトセトラを繰り返し……

「っ!?」

 なんというか……俺の姿を見て、何も言わない巴さん。
 ……やっぱ、ドン引くよなぁ……これ。

「……あの、すいません。もういいですか?」
「えっ、ええ。その前に、写真だけ取らせてもらえますか?」
「っ! そっ、そいつは勘弁してください! したくてやってるワケじゃないってのに、写真残されたら生き恥だ!」
「いえ、取らせてください! 是非に! でないと色々負けっぱなしなので!」
「何がですか! 勘弁してくださいよ! 巴さん!」

 結局……ケータイで一枚、並ぶ形で撮影されてしまいました。とーほーほー。


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