<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.27923の一覧
[0] 続・殺戮のハヤたん-地獄の魔法少年-(オリキャラチート主人公視点・まどか☆マギカ二次創作SS)[闇憑](2011/07/22 09:26)
[1] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:22)
[2] 第二話:「マズった」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[3] 第一話:「もう、キュゥべえなんかの言葉に、耳を貸しちゃダメだぞ」[闇憑](2011/05/22 06:27)
[4] 第三話:「…………………………いっそ、殺せ…………………………」[闇憑](2011/09/03 11:27)
[5] 第四話:「待って! 報酬ならある」[闇憑](2011/05/22 14:38)
[6] 第五話:「お前は、信じるかい?」(修正版)[闇憑](2011/06/12 13:42)
[7] 第六話:「一人ぼっちは、寂しいんだもん」(微修正版)[闇憑](2011/09/03 11:16)
[8] 第七話:「頼む! 沙紀のダチになってやってくれ! この通りだ!!」[闇憑](2011/09/03 11:19)
[9] 幕間『元ネタパロディ集』(注:キャラ崩壊[闇憑](2011/05/22 16:31)
[10] 第八話:「今宵の虎徹は『正義』に餓えているらしい」[闇憑](2011/05/29 09:50)
[11] 第九話:「私を、弟子にしてください! 師匠!!」[闇憑](2011/05/24 03:00)
[12] 第十話:「魔法少女は、何で強いと思う?」[闇憑](2011/05/29 09:51)
[13] 第十一話:「……くそ、くら、え」(微修正版)[闇憑](2011/07/03 00:29)
[14] 第十二話:「ゆっくり休んで……お兄ちゃん」(修正版)[闇憑](2011/07/03 00:31)
[15] 第十三話:「……俺、知ーらね、っと♪」[闇憑](2011/05/29 02:56)
[16] 第十四話:「……どうしてこうなった?」[闇憑](2011/05/29 12:51)
[17] 第十五話:「後悔、したくなかったの」[闇憑](2011/05/30 09:02)
[18] 第十六話:「そうやってな、人間は夢見て幸せに死んで行くんだ」[闇憑](2011/05/31 05:06)
[19] 第十七話:「……私って、ほんと馬鹿……」[闇憑](2011/06/04 00:21)
[20] 第十八話:「……ひょっとして、褒めてんのか?」[闇憑](2012/03/03 01:24)
[21] 第十九話:「なに、魔法少年から、魔法少女へのタダの苦情だよ」[闇憑](2011/06/06 19:26)
[22] 第二十話:「まさか……あなたの考え過ぎよ」[闇憑](2011/09/07 17:50)
[23] 第二十一話:「『もう手遅れな』俺が、全部やってやる!」[闇憑](2012/03/03 01:28)
[24] 第二十二話:「……あなたは最悪よ、御剣颯太!!」[闇憑](2011/07/07 07:27)
[25] 幕間「魔術師(バカ)とニンジャと魔法少年」[闇憑](2011/06/15 03:50)
[26] 第二十三話:「これで……昨日の演奏分、って所かな?」[闇憑](2011/06/17 04:56)
[27] 第二十四話:「未来なんて誰にも分かるもんかい!!」[闇憑](2011/06/17 17:05)
[28] 第二十五話:「……ぐしゃっ……」(微修正版)[闇憑](2011/06/18 20:28)
[29] 第二十六話:「忘れてください!!」[闇憑](2011/06/18 23:20)
[30] 第二十七話:「だから私は『御剣詐欺』に育っちゃったんじゃないの!」[闇憑](2011/06/19 10:46)
[31] 第二十八話:「……奇跡も、魔法も、クソッタレだぜ」[闇憑](2011/06/19 22:52)
[32] 第二十九話:「……『借り』ねぇ」[闇憑](2011/06/21 19:13)
[33] 第三十話:「決まりですね。颯太さん、よろしくお願いします」[闇憑](2011/06/23 05:46)
[34] 第三十一話:「……しかし、本当、おかしな成り行きですね」[闇憑](2011/07/29 02:55)
[35] 第三十二話:「だから、地獄に落ちる馬鹿な俺の行動を……せめて、天国で笑ってください」[闇憑](2011/06/26 08:41)
[36] 幕間:「~ミッドナイト・ティー・パーティ~ 御剣沙紀の三度の博打」[闇憑](2011/06/26 23:06)
[37] 幕間:「魔法少年の作り方 その1」[闇憑](2011/07/20 17:03)
[38] 幕間:「ボーイ・ミーツ・ボーイ……上条恭介の場合 その1」[闇憑](2011/07/04 08:52)
[39] 第三十三話:「そうか……読めてきたぞ」[闇憑](2011/07/05 00:13)
[40] 第三十四話:「誰かが、赦してくれるンならね……それも良かったんでしょーや」[闇憑](2011/07/05 20:11)
[41] 第三十五話:「さあ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いキメる覚悟完了、OK!?」[闇憑](2011/12/30 17:53)
[42] 第三十六話:「ねぇ、お兄ちゃん? ……私ね、お兄ちゃんに、感謝してるんだよ?」[闇憑](2011/07/08 18:43)
[43] 第三十七話:「泣いたり笑ったり出来なくしてやるぞ♪」[闇憑](2011/07/12 21:14)
[44] 第三十八話:「……なんか、最近、余裕が出てきてから、自分の根性がネジ曲がって悪くなっていった気がするなぁ」[闇憑](2011/07/13 08:26)
[45] 第三十九話:「『死ぬよりマシ』か『死んだ方がマシ』かは、あいつら次第ですがね♪」[闇憑](2011/07/18 14:42)
[46] 第四十話:『……し、師匠は優しいです、ハイ……』[闇憑](2011/07/23 11:00)
[47] 第四十一話:「まだ共に歩める可能性があるのなら! 『感傷なんて無駄な残骸では無い』というのなら! 是非、それを証明したい!」[闇憑](2011/07/22 00:51)
[48] 第四十二話:「……ありがとう、巴さん。今日の御恩は忘れません。本当に、感謝しています」[闇憑](2011/07/26 10:15)
[49] 第四十三話:「お兄ちゃんひとりだけで闘うなんて、そんなの不可能に決まってるじゃないの」[闇憑](2011/07/25 23:58)
[50] 幕間:「特異点の視野」[闇憑](2011/07/31 06:22)
[51] 幕間:「教会での遭遇」[闇憑](2011/07/27 12:16)
[52] 第四十四話:「……少し……二人で考えさせてくれ」[闇憑](2011/07/29 05:28)
[53] 第四十五話:「営業遅ぇんだよ、キュゥべえ……とっくの昔に、俺はもう『魔法少年』なんだよ……」[闇憑](2011/07/31 11:24)
[54] 幕間:「御剣沙紀、最大の博打」[闇憑](2011/07/31 18:28)
[55] 四十六話:「来いよ、佐倉杏子(ワガママ娘)……お前の全てを、否定してやる」[闇憑](2011/08/01 00:14)
[56] 第四十七話:「いや、付き合ってもらうぜ……あたしと一緒になぁっ!!」[闇憑](2011/08/01 12:45)
[57] 第四十八話:「問おう。あなたが私の、魔法少女か?」[闇憑](2011/08/04 00:58)
[58] 第四十九話:「俺の妹は最強だ!」[闇憑](2011/08/06 07:59)
[59] 第五十話:「さあって、反撃開始だ! 魔法少年の……魔法少女の相棒(マスコット)の『喧嘩』は、魔法少女よりもエグいぜぇ……」[闇憑](2011/08/07 08:51)
[60] 幕間:「特異点の視野、その2」[闇憑](2011/08/09 18:08)
[61] 終幕?:「無意味な概念」[闇憑](2011/08/14 21:37)
[62] 幕間:「神々の会話」[闇憑](2011/08/09 04:55)
[63] 幕間:「師弟の会話、その1」[闇憑](2011/08/10 08:12)
[64] 幕間:「師弟の会話、その2」[闇憑](2011/08/11 14:22)
[65] 終幕:「阿修羅の如く その1」[闇憑](2011/08/13 21:46)
[66] 終幕:「阿修羅の如く、その2」[闇憑](2011/08/14 17:37)
[67] 終幕:「阿修羅の如く その3」[闇憑](2011/08/16 06:33)
[68] 終幕:「阿修羅の如く その4」[闇憑](2011/09/04 08:25)
[69] 幕間:「特異点の視野 その3」[闇憑](2011/08/21 10:17)
[70] 終幕:「阿修羅の如く その5」(修正版)[闇憑](2011/09/03 20:17)
[71] 幕間:「御剣家の人々」[闇憑](2011/09/16 10:25)
[72] 嘘CM[闇憑](2011/09/08 09:26)
[73] 終幕:「御剣家の乱 その1」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[74] 幕間:「御剣沙紀のちょっとした博打」[闇憑](2011/09/11 01:58)
[75] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練」[闇憑](2011/09/11 23:14)
[76] 幕間:「御剣冴子の憂鬱」[闇憑](2011/09/16 20:12)
[77] 幕間:「御剣家の人々 その2」[闇憑](2011/09/17 06:53)
[78] 終幕:「御剣家の乱 その2」[闇憑](2011/09/30 20:58)
[79] 終幕:「御剣家の乱 その3」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[80] 幕間:「御剣沙紀、最大の試練 その2」[闇憑](2011/09/22 20:36)
[81] お笑い[闇憑](2011/09/25 09:22)
[82] 終幕:「御剣家の乱 その4」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[83] 幕間:「作戦会議――御剣家の乱・決戦前夜」[闇憑](2011/09/30 20:59)
[84] 終幕:「御剣家の乱 その5」[闇憑](2011/10/01 09:05)
[85] 終幕:「御剣家の乱 その6」[闇憑](2011/10/21 09:25)
[86] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その1」[闇憑](2011/10/04 08:23)
[87] 終幕:「水曜どーしよぉ…… その2」[闇憑](2012/01/12 14:53)
[88] 幕間:「斜太チカの初恋 その1」[闇憑](2011/10/14 11:55)
[89] 幕間:「斜太チカの初恋 その2」[闇憑](2011/10/19 20:20)
[90] 幕間:「斜太チカの初恋 その3」[闇憑](2011/10/30 03:00)
[91] 幕間:「斜太チカの初恋 その4」[闇憑](2011/11/07 04:25)
[92] 幕間:「斜太チカの初恋 その5」[闇憑](2011/11/13 18:04)
[93] 終幕:「水曜どーしよぉ…… 3」[闇憑](2011/11/21 04:06)
[94] 終幕:「最後に残った、道しるべ」[闇憑](2012/01/10 07:40)
[95] 終幕:「奥様は魔女」[闇憑](2012/01/10 07:39)
[96] 幕間:「神々の会話 その2」[闇憑](2012/03/11 00:41)
[97] 最終話:「パパはゴッド・ファーザー」[闇憑](2012/01/16 17:17)
[98] あとがき[闇憑](2012/01/16 17:51)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[27923] 幕間:「教会での遭遇」
Name: 闇憑◆27c607b4 ID:cb2385d9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/27 12:16
「……よし!」

 見滝原の中心から少し離れた、人気のない雑木林の中。
 あたしは、剣道の胴着に着替え、木刀を握る。

 本当は、魔法少女の姿になって剣を振りまわしてもいいのだが、師匠はそういった事を極端に嫌う。

 師匠は、『努力の人』だ。あの人の剣には、一切の嘘が無い。だというのに、あたしはインチキをして、師匠の技を憶えてしまった。
 だから……

「せめて、これくらいは、自分でしないとね」

 師匠が教えてくれた『型』をなぞる。
 ……体に馴染む、師匠の技。だが所詮、それはあたしにとって、まだまだ借り物に過ぎない。
 本当は、一年か、二年か、いや、もっとか? その分の修練を経てマスターすべき所を、すっ飛ばしてしまったのだ。
 だったらその分に追いつくために、必死に努力をしなくては。

『基本だけは教えてやる。あとは自分で何とかしろ!』

 そう言って、ぶっきらぼうに怒鳴りつけられたが……本当に、何だかんだと、面倒見のいい師匠だと思う(鬼だけど)。
 考えてみれば、あの時、あたしや沙紀ちゃんより多く走り回り、叫び、叱咤していた。あまつさえ、海外旅行から帰ってきて即誘拐事件→戦闘→料理→復讐まで、ほぼノンストップで暴れ倒していたのだ。
 
 どれだけ体力のある人なのだろうか? 男の人とはいえ、本当に鍛え方が根本から違うとしか、思えない。

 『型』をなぞり終え、次は腕立て伏せ、腹筋、背筋etc……そして、雑木林の木を利用した、懸垂。
 魔法少女の力を使わないで、体力作りのメニューをこなしていく。
 昨日の帰り際、『適当に作った』と書いてあるメニューだが……恐ろしいまでに『ギリギリ、今の自分が努力すればこなせる限界』の数字が書いてあった。

 なんというか。
 『努力や根性は大切でも、それのみに頼ってはいけない』って言葉を、的確に体現してる人だと思う。
 よく『岡目八目』などと言うが、あの人が魔法少女を見る目は、それ以上だ。
 あたしに何が必要か、何が足りて居ないのか、全部見抜かれていそうで恐ろしい。

 いや、実際に見抜かれているのだろう。
 何しろ、あの人は、人間のまま『魔法少女を専門に』殺して行くという、非常識で非情な殺し屋だ。
 魔法少女の弱点を見抜き、仕留める事に長けているのだからこそ……その魔法少女の弱い所を指摘して、鍛え上げる事も、可能なのだろう。

 と……

「……何やってんだ、お前?」
「え?」

 その場に現れた人物の姿に、あたしはびっくりした。
 佐倉杏子。彼女が、何でこんな所に?

「あのさ、ここ……一応、あたしの縄張りなんだけど?」
「……あ」

 そうだ、魔法少女って、縄張りがあったんだっけ?

「まあいいよ。……今、調子が悪いんだ。行きなよ」
「っ!!」

 更に忘れていた。師匠の刀の事……『斬魔刀』なんて、とんでもない武器の事を。

「待った! あんた『ドコが痛む』の?」
「っ!! てめぇ……」
「……頭と、喉と、胸……いや、いっぱい師匠に斬られてたよね?
 あれから、ずっと痛みが引かないんでしょ!?」

 あたしの言葉に、佐倉杏子がいきり立つ。

「何で知ってやがる……っていうか、師匠?」
「いいから! うっかりすると、魔法少女の命に関わる事!
 ……痛む場所を、教えて!」
「っ……今言った、三か所だよ……今までは、もっと全身がひどかったんだけど、なんとか他の所の痛みは落ち着いたんだ。でも、その三か所の痛みだけが、まだ深い所で疼いて取れねぇ。
 なぁ、何なんだアイツは? あたしもちょいと『速さ』に自信があったほうだけど、あいつはアッサリそれの上を行きやがった。
 しかも、あの刀は得体が知れねぇ。斬られると物凄く痛ぇし、傷の治り方もすごく遅ぇ……一体なんなんだ?」
「そりゃそうだよ、あの人は『魔法少女の殺し屋』で『正義の味方』だもん。あの人が振りまわしていたのは、魔女も魔法少女も関係ない『斬魔』の刀なんだ。
 それより、痛む所を、取ってあげられるかもしれない」

 沙紀ちゃんに教わった、癒しの力の応用。
 他人の傷を癒す力……あたしになら、出来るはずだ。

「治すよ」

 そう言って、額に手を当てる。……何というか、触れた額の奥の所に、淀んだシコリのような感触がある。
 それを、ゆっくりと癒しの力で溶かしていく。次に喉。その次に心臓。

「どう、楽になった?」
「っ……!?」
「他に痛む所、無い?
 ……一応、あれも『奇跡』に類するモノだから、魔法で『相殺する事そのものは』可能なのかなって思……って、うわ!」

 結構、黒く濁ってしまったソウルジェム。
 ……あの時、師匠は『軽く吹っ飛ばした』だけのように見えたが、それでも、この有様だ。バッサリ斬られたら、肉体の修復だけで魔法少女辞める事になりかねない程、ソウルジェムの消耗が必要になるだろう。

「参ったなぁ。師匠の『奇跡や魔法の否定』が、こんなに強力だなんて。
 『否定の否定』って物凄く消耗するんだ……ひょっとして『怨念』に近いモノなのかなぁ?」

 何しろ、あの人の剣は殺人剣だ。『祈り』というより、最早、『呪い』に近いモノなのだろう。
 ……そういえば、昔、某有名RPGの漫画で、呪われた武器を呪われず扱う戦士とか、居たなぁ……

「おい、お前……アイツの事を、知ってるのか?」

 真剣な目で迫って来る、佐倉杏子に、あたしはさらっと答える。

「ん、あれから色々あってね……弟子入りした」
「はぁ!? あっ、あの『殺し屋』に!? じゃ、じゃあ、お前、その格好……」
「うん。自主的な修行の場に、丁度イイかな、って思ってココに来たんだけど……ごめん、あんたの縄張りだったもんね。
 とっとと他所に移るよ。邪魔したね」

 あー、ソウルジェムどうしよう。どっか適当な所で魔女狩らないと……でも、間に合うかなぁ?
 しょうがない、頭下げてマミさんに借りよう。でなければ転校生。師匠に頭下げるのは、絶対最後だ。

 確かに、師匠は『魔女の釜』なんてモノを持ってるけど、こんな事したって知ったら……

 『自分も救えんくせに、他人を救おうとするとは何事だーっ!! つけあがるなこの馬鹿弟子がーっ!!』って怒り狂われた末に、ギアナ高地にでも放り込まれて地獄の特訓メニュー追加される構図が、ありありと脳裏に写る。いや、うっかりすると、ガチで破門されて捨てられる。

 そういう意味で、あの人は本当容赦が無い『鬼師匠』だ……こうなったら、マジで『修羅バレ』する前に『菩薩』様におすがりするしか!!

 と、

「おい、ルーキー!」
「っ!?」

 放り投げられるグリーフシードが二つ。

「使いなよ。一個は治療費。それで貸し借りなしだ」
「……ん、サンキュ」

 助かった。
 グリーフシードを使って、ソウルジェムの穢れを取る。

「あとさ、ルーキーって言い方、やめてほしい。あたしは『美樹さやか』って名前が、ちゃんとあるんだ」
「……ん、分かった。じゃあさ、美樹さやか。その……あんたの師匠と、あたし自身の事で、ちょっと話があるんだ。
 ……時間があるなら、顔、貸してくんないか?」



「……ここは?」

 ボロボロになった教会。そこの扉を乱暴に蹴り開けながら、佐倉杏子は、話を切り出した。

「……ここはね……あたしの親父の教会だった。あたしの親父は、正直過ぎて、優しすぎる人でね。
 いつもテレビや新聞を読んでは涙浮かべて、どうして世の中が良くならないのか、真剣に悩んでいるような。
 そんな、純粋過ぎる人だった……」
「……………」

 その話は、漏れ聞いている。
 佐倉杏子の父親が、師匠……いや、『御剣家そのもの』を破滅に追いやった事を。だから師匠は、あの時、八つ当たりで無謀な事をしてしまった、とも。
 その話の内容から、何となく『悪徳宗教家』というイメージを抱いていたのだが……どうやら、何か間違いがあったようだ。

「『新しい時代を救うには、新しい信仰が必要だ』って……それが親父の言い分で。
 だからある時、親父は信者たちに、教義に無い事まで説教をするようになっちまった。
 当然、信者の足はバッタリ途絶え、本部からも破門され、あたしたちは一家揃って、食うにも事欠く有様になっちまった。
 親父は、間違った事なんて言ってなかった。だけど、誰も真面目に取り合ってくれなかった。
 
 ……悔しかった……

 誰も、あの人の事を分かってくれないのが、あたしには我慢できなかった―――だから、キュゥべえに頼んだんだ。
 『みんなが親父の話を、真面目に聞いてくれますように』って」

「それって!!」

 その話が本当だとするならば……師匠のあの時の『八つ当たり』は、まさしく『復讐』だった事になる。

「次の日から、怖いくらいの勢いで信者が増えたさ。そしてあたしは晴れて、魔法少女の仲間入り。
 ……馬鹿みたいに意気込んでたよ。親父の説法と、あたしの魔女退治。表と裏から、この世界を救うんだ、って……
 でもね、ある時、カラクリがバレた……信者が魔法の力で集まったって知った時、親父はブチ切れたよ。あたしの事を、人の心を惑わす魔女だって罵った。
 それで……親父は壊れちまった。
 酒におぼれて、頭がイカレて、最後は家族で無理心中さ。あたし一人を置き去りにして、ね」

 一家無理心中。

 師匠と沙紀ちゃんの関係を見るに、御剣家の家族仲は、荒っぽくはあっても、それなり以上に良かったのだろう。
 『都内の下町出身』というが……見滝原で育ったあたしには、漫画の中でしか見た事の無いような『狭い我が家』の中での生活だ。
 隠し事なんて出来ないだろうし、しようも無いからこそ、あの二人はお互いに相手を慮る事が、出来るようになっていったのではないか?
 あの荒っぽさは、全てを知りながらも、お互いに『適切な』距離を置くための、彼らなりの流儀なのではないか?

 だとするならば……彼女の父の『新しい信仰』に狂っていく両親を、冷静に見てきた師匠の気持ちは、どんなだっただろうか?
 あまつさえ、それを止める事が出来ず、結局、無理心中に抗う形で『手にかけた』などと……

「他人の都合を知りもせず、勝手な願い事をしたせいで、結局誰もが不幸になった。
 ……あたしの祈りが……あたしの家族『だけ』を壊してしまった。……そう思ってた。
 だからあたしは、二度と『他人のために魔法を使わない』って誓ったんだ。
 奇跡ってのはタダじゃない。祈った分だけ、同等の絶望が撒き散らされる。そうやって、差し引きゼロにして、世の中は成り立っている。
 だからあたしは……その『高すぎるモン』を払っちまったツケを取り戻すために……釣銭を取り返すくらいのつもりで、生きてきたんだ」

 涙を流しながら……あの、傍若無人な佐倉杏子が、涙を流しながら、その場に……誰も居ない、祭壇に向かって、祈るように膝まづいた。

「だっていうのに、あいつは……あいつは自分だけじゃ無く、妹の命まで預かって……首を突っ込む必要も無い魔法少女の世界に、首を突っ込んで! 妹を守るために必死になって……ぶちのめした時、ホントにあいつの体は、人間のままだった。
 挙句の果てに、命を狙ってくる魔法少女たち相手に『殺し屋伝説』なんてモンを背負わされて……だっていうのに……あいつは一言も『誰かに分かって欲しい』なんて言い訳しなかった!

 あんな優男ヅラして……トンデモネェ奴だよ、アイツは!

 ……なあ、教えてくれよ! 『あいつはキュゥべえに、なんて願ったんだ!?』 あいつは『どんな願いを叶えて、魔法少年になった』っていうんだ!? あの刀に、どんな意味があったんだよ!?
 あんた、アイツの弟子なんだろう!? アイツの本当ントコが知りてぇんだよ!」

 その言葉に、あたしは……

「願いなんて、何も叶えちゃいないよ。あの人は……本当に『人間』で『男の人』そのまんまなんだ。
 正確には……あの人の願いは、もう二度と。キュゥべえにだって叶える事が出来ない願いなんだ」
「嘘だっ! そんな事があるわけがない! あたしには……いや、アンタにだって分かるだろう!?
 人間、追いつめられて、目の前に『奇跡』なんて都合のいい餌チラつかせられりゃ、どんな針がついていようがダボハゼみたいにそいつに喰いついちまう!
 あたしら魔法少女の世界は、『他人の力を借りるだけ』で、正義気取ってる馬鹿が生きてられる世界じゃねぇ!」

 佐倉杏子の叫びは、もっともだ。
 あたしも、師匠やマミさんが居なかったらどうなっていたかと考えると、ゾッとなってしまう。
 だからこそ。

「そうだよ。
 だから、今のあの人は、普段絶対に『正義』なんて言葉を口にしないんだ。
 ……あの時ね、あの人は猛烈に怒ってたんだ。
 あんたと、あたしと、キュゥべえと、そして……それら全部が泣かせた、泣いてるあたしの親友に。
 だから、カッとなって、思わず『昔の癖』が出ちゃった。それだけなんだよ」
「っ……なんだよ、それ……ワケが分からねぇよ。
 『魔法少女の殺し屋』で『正義の味方』って……何なんだよ、それ?」

 その言葉に……あたしは、あたしがマミさんや沙紀ちゃんから聞いた限りの、師匠の過去を、話して行く。
 その、壮絶なオチに……流石の佐倉杏子も、絶句する。

「なっ……魔女、に……だと!? そんなカラクリが……」
「そうだよ。
 だからあの人は最初、沙紀ちゃんを介して、複数の魔法少女たちのグループの中に、その事実を、それとなく広めようとしていた。
 でも、誰も信じなかった。
 そのくせ、彼自身に恋心を抱いた、馬鹿な魔法少女たちのトバッチリで沙紀ちゃんが酷い虐待に遭って……結局、あの人は沙紀ちゃん以外の魔法少女全てを、信じる事が出来なくなっちゃったんだ。
 あの人の究極の願いは『家族を守る』……ただそれだけだったハズなのに。
 それが『魔法少女の殺し屋伝説』の正体だよ」
「っ……チクショウ! キュゥべえの奴!」

 憤る佐倉杏子を制して、あたしは言葉を続ける。

「だから。
 あの人にとって、もう魔女も魔法少女も、あたしたちと出会うまでゴッチャになってたんだ。
 今、あなたの体を治して、分かっちゃったんだけど。あの人の中には、多分、とんでもない憎悪が渦巻いているんだと思う。
 あなただけじゃない。魔女全てに、魔法少女全てに……何より、キュゥべえ……インキュベーター全てに対して。
 それでもね……あの人は、自棄になったりしなかった。逃げたりしなかった。
 怒りに身を任せず、ずっと人間のまま、闘い抜いてきたんだ……その結果が、あの刀なんだよ」
「っ……あれは、何なんだよ」
「『斬魔刀』だってさ……魔女や魔法少女を『あまりにも斬り過ぎた』結果、ああなっちゃったらしいんだ。
 ……もっとも師匠は、何も知らずに振るってて、あの刀そのものを『あまり役に立たないから』って理由で、捨てようとすらしていたんだけどね」

 あれだけの武器を、捨てようとすらしていた。
 その事実に、愕然となる佐倉杏子。

「っ……あいつは……そんな事実を知ってて、なお、闘い続けてきたのか?
 何一つ、願いを叶えたりもせず、こんな魔法少女の世界に、人間のまま生身の体で! 『家族が大事』ってそれだけで!」
「そうだよ。
 ……あの人さ、沙紀ちゃん以外の魔法少女が近づくと、結構、気付いちゃうんだよ。特に寝てる時は。
 最初は『達人なんだなー』って思ってたけど……『寝てる時に、魔法少女に襲われる事を考えて寝る』生活なんて、あたしには想像もつかない。
 しかもね、毎日、殺した魔法少女たちの悪夢にうなされてるらしいんだ。

 結局ね……そういうのって心の病気なんだよ。魔法少女に襲われる恐怖が、芯まで染みついて拭えなくなっちゃってるんだ。

 だからあたし、あの人についていくと……あの人を信じると決めたんだ。
 マミさんと一緒に、いつか『妹以外の魔法少女が周囲に居ても』あの人が……『人間』が安心して、夜、寝られるように。
 それが、あたしの最初の目標……かな」

 それだけを言うと、あたしは彼女に問いかける。

「聞きたい事は、それだけ?
 ……あと、ごめんね。思わずだけど、余計な事したかもしれないから、謝っておく。
 じゃ、作戦会議の日に……」
「っ……待ってくれ! その……」

 呼び止める佐倉杏子に、あたしは溜息をついた。

「言わないよ。言えるわけが無い……そんな事。
 師匠の家族全部破滅させたのが、『どっかの馬鹿でワガママな魔法少女の、身勝手な祈りのせいだった』なんて。しかも、魔法少女相手にあの人は……いや、沙紀ちゃん含めて、あの兄妹は、酷い目に遭い続けてる。
 そんな事がバレたら、幾らあの『計算高い』師匠だって怒り狂うに決まってる……あたしだって本当は、ひっぱたいてやりたいくらいだよ。
 でも、今のあたしには、そんな権利も実力もない。
 全ては、ワルプルギスの夜の闘いが終わってから。
 ……何しろ、本当にヤバい闘いになるみたいなんだ。あたしみたいな新人は『足手まといだ』って切り捨てられたくらいに、ね」
「っ……………あいつは、本当に知らないんだな?」
「知ってたら、今頃、あんたか師匠か、どっちかは生きちゃいないよ。第一、あの場で見逃してくれるワケが無いじゃないか。
 あの人が怒ってつっかけたのはね、『今のあんたの生き方』が、師匠的に我慢できなかったからだよ。
 『魔法少女がカタギに迷惑かけんな』だってさ。任侠映画の人みたい。
 じゃあね……」
「っ!!」

 うつむいた彼女を放置して、あたしは佐倉杏子の教会を、後にした。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.051961183547974